原題:Southern Comfort

わたしはなにも後悔しない 自分のまんなかを歩いてきたんだから

2001年サンダンス映画祭審査員大賞受賞 2001年サンフランシスコ国際映画祭ゴールデンゲート賞受賞(グランプリ) 2001年山形国際ドキュメンタリー映画祭コンペ部門出品(上映題名:安らぎの土地) 第11回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭正式出品

2001年2月21日全米初公開

2000年/アメリカ/カラー/35mm/90分/日本語字幕:西村美須寿/監修:野宮亜紀 配給:パンドラ、ボックスオフィス

2004年08月06日よりDVD発売開始 2002年9月28日よりBOX東中野にてロードショー公開

(C)Kate Davis

公開初日 2002/09/28

配給会社名 0063/0114

公開日メモ 性の境界を越え愛し合う2人を静かに見守るドキュメンタリー作品。監督は幅広いテーマでドキュメンタリーを製作しているケイト・ディヴィス。山形国際度九面足り−映画祭など多数の映画祭に出品された作品。

解説



ロバートとの衝撃的な出会い
監督のケイト・デイビスは、ハーバード大学在学中から映画製作を始め、以後、幅広いテーマでドキュメンタリー作品を製作してきたベテランの女性監督。彼女はドキュメンタリー番組の製作で、メリーランド州のトランスセクシュアルの大会を訪れ、そこでロバートと出会った。ケイトはすぐにロバートの温かい人柄や彼の歩んできた人生に魅了され、彼の映画を撮りたいと思ったという。
ところがロバートはすでにガンに侵されており、残された時間はわずかだった。また彼の両親や息子たちのプライバシーに関わるため、最初は映画の出演をためらっていた。しかしひとたび撮影を承諾すると、ロバートは熱心に取り組んでいく。ケイトは自分の夫や子どもをニューヨークに残しデジタルカメラと親中な機材だけを持って、ロバートの住むジョージア州に向かった。
ここにある“幸せのかたち”
カウボーイハットにブーツ、そしていつもタバコをふかして笑う、この魅力的な人物、ロバート・イーズ。彼は自分を取り巻く状況がどんなものであっても、自分の信じる道をまっすぐに歩んでいった。たとえ失うものが多くても、決して逃げることなく、人を愛し続けた。息子たちも母親であるロバートを愛し、友人たちも彼に厚い信頼を寄せていた。そしてローラも、いつか訪れるロバートの死を恐れず、愛を貫いていった。ロバートの深く大きな愛は、性や人種や国境といった垣根を飛び越え、観るもの全ての胸に響く。この“幸せのかたち”は、忘れかけていた人の温もりや、自分の存在すべき在処を私たちに思い出させてくれるだろう。
『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』のジョン・キャメロン・ミッチェルがローラに歌を捧げた!
『ロバート・イーズ』はフィルムフォーラム(ニューヨークの映画館)で2週間上映したのち、2001年11月にHBO(Home Box Office−−−アメリカ最大のケーブルテレビネントワーク)で放映された。またサンダンス映画祭、サンフランシスコ国際映画祭、ベルリン映画祭など数々の映画祭でも上映され、高い評価を得た。サンダンス映画祭では大喝采をあび、映画祭に参加したローラは会場で一番の人気者になった。年配のカップルは泣きながらローラに声をかけ、また「ぜひ生徒に見せたい映画だ」と言う学校の先生もいたという。『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(同映画祭で最優秀観客賞、最優秀監督賞を受賞)の監督・演であるジョン・キャメロン・ミッチェルも手放しで絶賛し、自分の歌をローラに捧げて歌った。そして『ロバート・イーズ』は、見事ドキュメンタリー部門の審査員大賞を獲得。また、サンフランシスコ映画祭でもゴールテンゲート賞(グランプリ)を受賞した。

ストーリー


アメリカ南部、ジョージア州。カウボーイハットにパイプをくわえた男は、仲間たちにご馳走をふるまう。男の名はロバート・イーズ。彼は女性として生まれながらも男として生きることを選んだ。集まった仲間、マックスとキャスも同じくトランスセクシュアルであり、特にマックスとは親子のような関係である。ロバートの最愛のパートナーであるローラは、男性として生まれ、今は女性として生きている。
彼らの最大の関心事は、アトランタで開催されるトランスシェンダーの大会のこと。ロバートには時間がなかった。彼の子宮は末期ガンに侵されているのだ。なんとかしてこのもう一つの家族と共に、大会に参加することを皆で願っている。
ロバートの友人たちは医者への不満をもらす。出血多量で緊急の処置が必要だったロバートに対し、一度は診察を承諾するものの、性転換者だと明かすと態度を一変し断る。20人以上の医師が診察を拒んだ。ある医者が本音をもらした。見た目がこれだと他の患者がいやがる、と。ロバートは語る。「最後まで残っていた“女”が命取りになった」。

ローラの前ではロバートはナイトのようだ。「世界一の美女」とロバートが褒めると、ローラは顔を赤らめる。今も仕事ではジョンと名のる彼女は、かつてローラと名のれば、誰からも愛されないのではと不安に思っていた。ロバートは言う。「大切なのは心だ」。
ロバートはかつて女性として生き、結婚をして2人の息子を育てていた頃を振り返る。胎内で新しい生命が育っていく喜びを感じる一方で、自分の身体に裏切られたという想い。父親である男と結婚した時には同性愛者のようだった、と。今でも息子はロバートのことを“ママ”と呼び、誰に何と言われようとも、自分にとってロバートはいつまでも母親だ、と語る。「自分に正直であれ、とママから教わった」。
ロバートの家を彼の両親と孫が訪れた。ロバートがかつて性同一性障害だと告白した時・母親は泣いて自分を責めた。父親はロバートのとった行動を立派だと讃えながらも、まわりには彼を甥だと紹介する。両親はカメラの前に決して顔を出さない。「失うものは多い。特に家族を失うことが最もつらい」とロバートは言う。孫を愛おしそうに抱きしめるロバート。幼い目にロバートは祖父として映っている。
季節は過ぎ・ロバートの病状が悪化し始めた。ローラは彼のもとで暮らし、身の回りの世話をする。「まるで専業主婦よ」と笑うローラ。「理想の女性にやっと会えた」と語るロバート。2人は、未来のないこの恋にのめり込まないようにしていた時期もあった。しかし今では深く愛し合っている。ローラはロバートに、残りわずかな時間を幸福に過ごして欲しいと願い、ロバートはトランスジェンダーの大会でローラと踊るのを楽しみにしている。
大会の日は近づいていた・・

スタッフ

監督・撮影・編集・製作:ケイト・デイヴィス
録音・共同製作:エリザベス・アダムス
音楽:ジョエル・ハリソン
歌:The DCvers
製作プロダクション:キュー・ボール・プロダクション

キャスト

ロバート・イーズ
ローラ・コーラ
ロバートの家族と2人の友人たち

LINK

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