SWEET SIXTEEN
原題:SWEET SIXTEEN
オレはココにいるよ
2002年カンヌ国際映画祭脚本賞受賞
2002年10月4日イギリス初公開
2002年/イギリス・ドイツ・スペイン・/カラー/106分/1:1.85/ドルビーSRD 配給:シネカノン
2003年08月22日よりビデオ発売&レンタル開始 2003年08月22日よりDVDリリース 2003年12月28日より銀座シネ・ラ・セット、新宿武蔵野館にてロードショー
公開初日 2002/12/28
配給会社名 0034
解説
●オレはココにいるよ
服役中の母ジーンはリアムの16歳の誕生日前に釈放される。リアムは胸をときめかせ今の生活を抜け出す決意をしていた。まだ味わった事のない夢に見た暖かい家族のぬくもり、それはチンピラどもの手の届かない安息の場所で母と姉とささやかながら幸せな生活を送る事だ。しかしそのためには何よりもまずお金を貯めなければならない。リアムが親友ピンボールと始めた計画は大きなトラブルを巻き起こし深みにはまって行く…。
●ケン・口ーチの最高傑作
クロード・ルルーシュ、今村昌平、ショーン・ペン、サミラ・マフマルバフ・・・鋒々たる11人の名監督が8.11の全米同時多発テロをモチーフに競作した。
「110901/セプテンバー11」でもその圧倒的な力量を見せつけ、世界中のあらゆるジャンルにわたる多くのクリエーターがリスペクトする。イギリスの至宝ケン・ローチ監督口その話題の長編最新作が遂に登場する。本作は今年(2002年)第55回カンヌ国際映画祭で見事に脚本賞を受賞している。そして本作はケン・ローチの集大成とも言える作品だ。舞台はローチのほとんどの作品がそうであるように、イギリスの労働者階級の人達が住む小さな町。主人公は『ケス』と同い年の15歳の少年。親子の関係は幼児虐待と福祉局の問題を描いた『レディバード・レティバート』に、トラックの問題はアルコール依存症の問題を描いた『マイ・ネーム・イズ・ジョー』につながる。そして全ての作品に共通するのは社会に対する批評性と人間を見つめる厳しくも優しいまなさしである。そんな中でも本作は社会性よりも特にそのドラマ性が突出した輝きを見せており、それはカンヌで脚本賞を受賞した事でも証明されている。
そしてカンヌでは全てのマスコミが絶賛し、BBCは「ケン・ローチの最高傑作」
と評している。
緑と水の豊かな美しい風景が広がるスコットランドの田舎町。厳しい現実から抜けだそうともかき苦しむ少年たちの焦燥感、母を想う無垢な心と親友との葛藤、少年期に特有の無軌道な高揚感、そんな青春の光と影を、カメラはすくい取る。そして少年たちのヒリヒリする様な心の叫びを見事に描き出している。今回は『ケス』以来の少年が主人公の青春物語だが、ローチの描く青春が甘酸っぱいだけのものであるはずもない。物語の背景には、トラッグや経済、家族の問題などか複雑に絡み合いながら横たわっているが、母親の愛情を受けすに育った15歳の少年リアムが、自分が夢見る暖かい家族の形に未来への希望を見出し、知恵と勇気を持って人生を切り開いて行く姿は、観る者全ての胸に突き刺さるような切ない感動を残すだろう。主人公のリアムには2ヶ月をかけて行ったオーディションの結果、プロ・サッカー
選手のマーティンーコムストンが選はれ、純粋さとしたたかさを併せ持ち、様々な表情を見せる難役を演じ切った。
ストーリー
「みんなは勇気があると言ったけど、あれは勇気じゃない。自分を捨ててただけよ」「今の生活を抜け出すのよ。約束して」リアムは天体観測とサッカーが大好きな15歳。学校にも行かす、児童養護施
設からの親友ピンホールとつるんて望遠鏡で子供に星を見せたり、パフでタバコを売ったりして小遣い稼ぎをしている。リアムは母親ジーンと祖父ラフ、そしてヤクの売人をやっているジーンの恋人スタンと一緒に小さな共同住宅に住んでいたが現在ジーンはスタンのせいでムショ暮らし。リアムの18歳の誕生日前日に出所する予定だ。姉のシャンテルはまともな生活を送れない母を嫌って離れて暮らしている。シャンテルは未婚の母になっていたが、息子のカルムをしっかりと大切に育てている。ある日リアムはスタンとラブと連れだってジーンとの面会に向かっていた。道すがらリアムはスタンから無理矢理歯の裏にヤクを隠すように言われる。面会の時にジーンに渡してムショ内で売らせているのだ。見つかって刑期が延びるのを恐れて従わなかったリアムは、帰り道でスタンにホコボコにされてしまう。一人で家に戻ると大切にしていた望遠鏡や、色々な自分の持ち物が外に投げ出されていた。窓を見上けるとラブが「二度と戻ってくるな」と叫んでいた。リアムはピンボールと一緒に荷物を持ってシャンテルの家を訪ねた。二人はそこでシャンテルの友達スーザンと知り合う。そしてシャンテルはリアムに「カルムと遊んでくれれはしばらく居ていい」と優しく受け入れ、今の生活から抜け出すように忠告してくれた。二人は約束をする。
翌日ピンボールが盗んだ車でドライヴに行ったリアムは湖畔のコテージを見つけ、その家でシーンとシャンテル、カルムと一緒に暮らす事を夢見る。今まで叶えられなかった家族の姿、それはスタンやラブの様な卑劣なチンピラの手の届かない安息の場所だった。リアムはどうしてもその家が欲しいと思ったが、そのためには15才の少年には手の届かない大金が必要だった。リアムとピンボールが双眼鏡を覗いていると、スタンがヤクを仕入れているのが見えた。隠し場所を知っているリアムはそれを横取りして一緒に売りさばこうとピンボールに持ちかけた。それもあの家を手に入れるためだった。夜、ヤクを盗み出し警察にタレ込んでおくと、次の日特捜班が来て、スタンはヤクを警察に持って行かれたと勘違いし上手くハメられてしまう。二人は早速ヤクを売って頭金を稼いで、家の契約に行く。ピンボールやスーザンも一緒でみんなで写真を撮ったり湖畔で水遊びをしたり夢のような時間を過ごす。しかし家の支払いはまだ4,500ポンドも残っていた。
リアムはピンボールが必死に止めるのを押し切って、麻薬売買の胴元であるビッグ・ジェイの客に横から声を掛けて売り始める。しかし3人組に殴られて逆にヤクを奪われてしまう。見かねたピンボールの助けを借りて、ボロボロになりながらも奪い返すが、それは”ビッグ・ジェイ”の知るところとなり、二人は事務所に連れ去られる。しかしビッグ・ジェイはヤク中ではないまともな売人を捜していて、リアムが目を付けられる。ビックジェイの下に付けばいくらでもヤクを流して貰えるのでリアムは事務所からつまみ出されて機嫌の悪いピンボールをなんとか誘ってビックジェイのヤクを売る事にした。二人は友達が働いている宅配ピザのバイクに便乗してあらゆる場所に出没して売りさばいた。そんな時、組織から呼び出されて待ち合わせ場所に行くと、リアムだけが車に乗せられ、ピンホールは今度はその場に取り残されてしまい怒りを爆発させた。
リァムは組織の溜まり場である八一に連れて行かれて、ある男を始末するように命令される。ナイフを受け取りトイレで後ろから刺そうとした瞬間、みんなの声が掛かった。それはりアムの度胸を試すためのテストだったのだ。これで晴れてリアムは組織の仲間入りをする事になり、そのナイフを記念にもらった。リアムはシャンテルとカルム、スーサンと再び湖畔の家を訪ねる。しかし家は跡形もなく焼け落ちていた。リアムは犯人がスタンだと思いタクシーを飛ばすがスタンは不在でラフから追い返される。意気消沈したリアムが家にいると、車のクラクションがけたたましく鳴り響いた。窓から覗くとそれはヒッグシェイの車だった。しかしリアムが急いで降りて行くと、運転席に座っているのはピンホールだった。これは自分がコケにされた事に対する仕返しで、お前とはもう友達じゃないと告げると、ピンホールは車を発進させた。そしてビッグジェイが経営する店にそのまま突っ込んで壁に`間抜けども”と落書きを残して立ち去った。
翌日リアムはビックツェイと話をする。リアムはピンボールをかはったがヒッグ・シェイはそれを遮って、ピザ屋を買い取ったのでリアムが切り盛りするように命令した。さらに焼かれた家の事を聞いて空いている貸家の提供を示唆した。そして最後にピンホールを始末するようにと付け加えた。リアムはどうしたらいいか分からないまま、ピンボールを訪ねた。しかしピンボールは投げやりな態度でまるで話を聞こうとしない。そしてもみ合っているうちにリアムのナイフに気が付く。ピンボールは「俺を刺しに来たのか?」と挑発しながら、家を焼いたのは自分だと告げた。そして「お前のために働いた俺をお前は裏切った。こんな風にお前は俺を傷つけた」と言いながら、ピンボールは自分の顔をナイフで切りつけた。リアムは救急車を呼び、ビックジェイの部下に「終わった」と報告した。リアムはバイトを増員してピザ屋を切り盛りし、どんどん隠れてヤクを売りさばいた。リアムはビックジェイの貸家を手に入れ、シャンテルにカルムと一緒に住むように勧めた。まだ母親を赦せないシャンテルは、そうすべきだと分かっていながらなかなかもう一歩を踏み出す事ができない。しかしリアムの説得に遂にうなずき二人は強く抱き合った。いよいよジーンの出所の日。リアムはバッチリ服装を決めて出迎え、早速ジーンを新しいわが家に連れて行った。ジーンは驚いて喜びながらも、戸惑いを隠し切れなかった。
その夜シーンを祝うホーム・パーティーが開かれ、大勢の友人が集まりみんな楽しそうに騒いでいた。シャンテルもカルムを連れて現れ、久しぶりにシーンと対面した。みんな幸せそうだった。翌朝リアムが遅く目覚めるとシャンテルがキッチンで後片づけをしていた。母親の事を尋ねると「出て行った」と言う。興奮したリアムはシャンテルをののしり、「出て行け!」と吐き捨ててタクシーを走らせた。やはりジーンはスタンと一緒だった。二人はだらしなく依存し合い離れる事ができないのだ。リアムは必死にジーンに哀願するが、ジーンは帰ろうとしない。そしてリアムは、自分を小馬鹿にするスタンに逆上し、ナイフでスタンを刺してしまった。人気もまばらな砂浜を呆然と歩くリアムの携帯電話が鳴った。シャンテルだ。「今日はあなたの18才の誕生日よ。リアム愛してるわ」。一本の電話が未来へのささやかな希望につながった。
スタッフ
監督:ケン・ローチ
脚本:ポール・ラバディ
撮影:バリー・エイクロイド
編集:ジョナサン・モリス
音楽:ジョージ・フェントン
録音:レイ・ベケット
美術:マーティン・ジョンソン
衣裳:キャロル・K・ミラー
プロデューサー:レベッカ・オブライエン
共同プロデューサー:ウルリッヒ・フェルスベルグ
ヘラルド・エレロ
キャスト
リアム:マーティン・コムストン
ピンボール:ウィリアム・ルアン
シャンテル:アンマリー・フルトン
スーザン:ミッシェル・アバークロンビー
ジーン:ミッシェル・クルター
スタン:ガリー・マコーマック
ラブ:トミー・マッキー
カラム:カラム・マッカリーズ
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