原題:Spider

私の母は殺された。

第55回カンヌ国際映画祭正式招待作品 ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2003特別招待作品::http://www.nifty.ne.jp/fanta/yubari/sakuhin2003/

2002年11月6日フランス初公開

2002年/イギリス、フランス、カナダ/カラー/98分/ 提供:メディア・スーツ、ビッグショット/ 配給:ブエナビスタインターナショナル(ジャパン)

2005年06月08日よりDVDリリース(05年7月29日までの限定出荷) 2003年08月22日よりビデオ発売&レンタル開始 2003年08月22日よりDVDリリース 2003年3月29日よりニュー東宝シネマほか全国ロードショー

(C)2002 spider productions Limited/spider film Limited

公開初日 2003/03/29

配給会社名 0069

解説



2002年のカンヌ映画祭コンペ部門に選出され、デイヴィッド・クローネンバーグの危険な成熟!と映画祭参加者の間に波紋をひろげ
た話題作『スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする』がついに公開される。

クローネンバーグ流の生理的なヴァーチャル・リアリティ世界を展開した前作『イグジステンズ』から3年、新世紀のクローネンバーグがどこへむかうのか、その方向性を占う注目作は、ここ10数年、ニュー・ゴシックという人間のダークな側面に知的な探求をむけてきた新しい文学運動のリーダー格、パトリック・マグラアどの共闘だった。マグラアのもっともミステリアスな小説『スパイダー』の映画化だが、なにしろ物語の語り手が心を病んでいて、かれの語る内容のなにを信じていいのかおぼつかない。[仕掛けられた罠の暗楡に蜘蛛の糸を使うのはよくある。だれかが仕掛けた糸に捕らえられるだけでなく、人は自分の周りに糸を張り巡らせることもあるのだ」(クローネンバーグ)。記憶が混濁した語り手の語る物語の核心にある殺人の暗さもあって映画化は不可能と思ねれていた。しかし、これまで不可能といわれたウィリアム・S・バロウス『裸のランチ』をみごと映像に移し変え、その内容のタブー度からこれまた映画化困難といわれてきたJ・G・バラード『クラッシュ』をごうごうたる非難をものともせず映像にしてみせたクロ一ネンバーグに不可能はなかった。

不可能を可能にしたのは、出演したスター俳優たちの強力な援護だ。このことはクローネンバーグ作品の場合常に起こる。製作資金提供者側の映画内容への不安をこれまで打ち消してきたのが、俳優たちのクローネンバーグ映画への思い入れの強さだ。実際、本作でも俳優たちが賭ける意気込みは熱狂的だったが、特に当然ながら主人公のデニス(スパイダー)を演じるレイフ・ファインズ『シンドラーのリスト』、『イングリッシュ・ペイシェント』)はまさに入魂といっていい存在感で圧倒する。ファインズの存在があって、クローネンバーグが監督する決意をした、というからそもそも最初にファインズありき、の本作なのだ。

俳優陣はほかに、本作で2002年サンフランシスコ批評家協会賞助演女優賞を受賞した母親役(実は、その他にも極めて重要な役を演じている)のミランダ・リチャードソン(『フライング・ゲーム』、『ダメージ』)、父親ビル・クレッグにガブリエル・バーン(『ミラーズ・クロッシング』)、主人公が身を寄せる施設を運営するウィルキンソン夫人にリン・レッドグレーヴ(『シャイン』)、施設の先輩格にジョン・ネビル(『バロン』)、少年時代のスパイダーに映画初出演の10歳のブラッドリー・ホールと考え抜かれたすばらしい実力派が結集している。

本作で特筆すべきは抑えた色彩と調度品、壁紙ほか室内デザインのみごとさだ。美術にアンドリュー・サンダース。かれは語る。「物語自体がミニマリスト(最小限主義者)のものなので、われわれは60年代のサミュエル・ベケット、ハロルド・ピンターといった劇作家の舞台をイメージした」。撮影はこのところクローネンバーグと多く組んでいるピーター・サシツキーが担当している。

ストーリー



ロンドンのある駅に一人の男(レイフ・ファインズ)が降り立つが、男はなかなか歩き出せない。よれよれのコート姿で持ち物は鞄がひとつ。男はなにやら書いた紙切れをとりだし「・・・ウィルキンソン夫人・・」とつぶやく。寒々と汚れた古いビルのあいだを用心深く歩きながら、男はようやく目的の家を見つけ、ドアをノックする。家は心療施設から退院させられ社会復帰まで行き場のない患者を預かる施設のようだ「クレッグさんね」と迎えてくれたのがウィルキンソン夫人(リン・レッドグレーヴ)だ。

談話室に入ると、そこには一人の老人(ジョン・ネビル)がいて、「ここを支配しているのはウィルキンソン夫人だ、君はアフリカのさそりに詳しいか?」などと話かけるが、男はぼぞぼぞとしか反応しない。夫人に部屋をあてがわれ、男はようやくくつろぎ、鞄をあけ全財産ともいえるその中身から、1冊のノートブックを大切そうにとりだし、引き出しのなかの、湿気とりの新聞の下にしまいこむ。風呂に入り、ようやく落ち着いたかに見える男だが、かれにやすらぎは訪れない。次の日にはどこか鉄道に隣接した土地、農園と小屋がある土地をうろつき、その農園にくずおれながら「お母さん」とつぶやく。

男は戻った部屋でノートブックにぶつぶつうなりながら小さな字でなにか書き付けていく。

回収された少年時代の記憶、母親(ミランダ・リチャードソン)と少年の自分(ブラッドリー・ホール〕がいる。夕食の支度を終えた母親は息子に父親(ガブリエル・バーン)をいきつけのパブに迎えに行かせる。そこで、少年は娼婦とおぼしき女たちにからかわれる。またある夜は、子供をおいてパブへ行く両親が庭先で激しく抱き合う野卑な光景を見てしまう。少年が目撃することになる最悪の光景はパブの娼婦イヴォンヌとできた父親が、母親を農園の小屋でスコップを用いて殴殺する姿だった。

しかし今、男の記憶の闇からまたもうひとつの真実が浮かび上がろうとしていた・・・。

スタッフ

監督:デビッド・クローネンバーグ
脚本、原作:パトリック・マグラア
撮影:ピーター・サシツキー
美術:アンドリュー・サンダース
編集:ロナルド・サンダース
音楽:ハワード・ショア
衣装:デニース・クローネンバーグ

キャスト

レイフ・ファインズ
ミランダ・リチャードソン
ガブリエル・バーン
リン・レッドグレーヴ
ジョン・ネビル
ブラッドリー・ホール

LINK

□公式サイト
□IMDb
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す