原題:24 Hour Party People

第55回カンヌ国際映画祭正式招待作品

2002年4月5日イギリス初公開

2002年/イギリス/115分/ 配給:ギャガ・コミュニケーションズ

2003年09月05日よりビデオレンタル開始 2003年09月05日よりDVDリリース 2003年3月22日より、シネセゾン渋谷他全国順次ロードショー

公開初日 2003/03/22

配給会社名 0025

解説



世界が急速にアクセルを踏み込み、窓の外の景色が今までにないスピードで過ぎていくことに酔いしれながら、後先考えずに加速していった金と欲とエゴにまみれた80年代から90年代後半、一見、時代に乗り遅れたかにみえたイギリス北西部の“元祖”工業地帯マンチェスターから、世界中の誰もが予想だにしなかったとんでもなムーヴメントが勃発していた。それは互いに吸い寄せられるように集まった、自惚れの強い小集団から飛び火し、瞬く間にダンス・ミュージックの世界観を買えるまでに膨れ上がる、まさに“狂気(マッド)”と“マンチェスター”をかけ合わせた“マッドチェスター”の誕生を意味していた。

だがこれはジョイ・ディヴィジョン、ニュー・オーダー、ハッピー・マンデーズといった、革新的かつエキセントリックなバンドを世に送り出し、パンク・ロック、テクノ、ダンスの橋渡し役を煮ない、クラブ・ミュージックの原型を作ったファクトリー・レコードと、ハシエンダというクラブの物語ではない。

それなら、これはマンチェスターのBBC版、グラナダ・テレビのレポーター/音楽・クイズ番組の司会者でありながら(今は同社の社長!)、ファクトリー・レコードを創設したトニー・ウィルソンについての映画だろうか。期せずして、時代の方から呼ばれたように、運命に翻弄された男の数奇な人生についての…。

いや、ここでは、ウィルソンはただ媒介に過ぎないのかもしれない。彼は語り部であって、その鏡に映ってるいるのは自分の姿ではない。監督のマイケル・ウィンター・ボトムが、フランク・コトレル・ボイスの脚本を通じて本当に描きたかったのは、期せずしてスポットライトを浴びることになったマンチェスターの冴えない天才たちの放った一瞬の閃光と、陰も陽もひっくるめた、一夜の夢と化した乱痴気騒ぎを生み出したエネルギーが一体何だったのかという素朴な疑問。あのエクスタシーにブーストされた興奮と熱狂は何だったのか?ひとつのジャンルに収まることなく、結果的に、ひとつの時代にも、ひとつの場所にも収まることのなかった大きなムーブメントに光を当てること。『24アワー・パーティ・ピープル』が、ただ懐かしむ映画になっていない理由かもしれない。

ストーリー


マンチェスターのグラナダ・テレビのレポーター、トニー・ウィルソンは、ハンググライダーでいきなり飛ばされるような体当たり取材と、音楽・クイズ番組の司会で食べていた。ケンブリッジ大卒を何かとひけらかす彼がなぜ伝説のファクトリー・レコードを興すまでになったのかはこの映画を見れば分かる気がする。

セックス・ピストルズによるマンチェスターでの初めてのライヴに集まった42人の中で踊っていたウィルソンは、ひとつの時代の終わりと次の時代の始まりを、身をもって体験することになる。その強烈な体験の場には、バズコックス、ワルシャワ、マーチィン・ハネットなど、後のマンチェスターのミュージック・シーンを形成する人間が勢揃いしていた。

その日を境に、ウィルソンと相棒のエラスムスの、バンドのマネージメントをしたいという欲求は高まり、遂にライヴ・ハウスを見つけて、ワルシャワ改めジョイ・ティヴィジョン(ナチス時代の白人純血種の娼婦組織の意)とそのマネージャーのロブ・グレットンらの前で血判状を書くと、それを契約書の代わりとした。“ファクトリーは何も所有せず、アーティストが全てを所有する。アーティストはクリエイティヴに自由で、やめるのも自由”’それが後でファクトリーの破滅を招くものになるとは誰も気づかなかったが、新しい何かが生まれそうな理想に溢れていた。

ファクトリー・レコードと命名された会社は、エラスムスのアパートに本拠を置き、昼のグラナダでの仕事の合間を縫って行われたが、締め切りを守らないことで有名なデザイン界の風雲児、ピーター・サヴィルを起用し、そのテザインの質の高さで、他のインティーズ・レ−ベルでは群を抜いた存在になっていく。

だがジョイ・ディヴィジョンのアメリカ・ツアーまで決まり、これから、という時になって、ボーカルのイアン・カーティスが突然自殺したという報せが、ロンドンで仕事に出かけていたウィルソンの耳に届く。友人の死を悲しむ暇もなく、失意のウィルソンに、愛妻リンジーとの別れが追いうちをかける。

しかし1年も経たないうちに、ジョイ・ディヴィジョンは、女性メンバー一人を加えてニュー・オーダー(これもまたナチス系の名前で物議を醸す)として奇跡的に復活し、シングル曲〈ブルー・マンデー>は大ヒット。原始的なコンピューターを使いながら、サヴィルの先鋭的なグラフィックと相まって、新しい電子音楽とダンス・ミュージックの原形を作っていった。

だがその間にファクトリーは、マンチェスターにハシエンダという名の大型クラブを作る。黒と黄色の縞模様とブルーの壁に覆われた巨大な箱は、ファクトリーのオフィス購入と共に、彼らの財政を圧迫するものでしかなかったが、世界の目を、ロンドンではなく、マンチェスターに向かせたことで、十分にその価値はあった。

そして次にウィルソンが目をつけたのは、ファクトリー・ナイトのオーディションでビリだった元チンピラ集団のハッピー・マンデーズ。ウィルソンがイェーツの再来と称するように、ボーカルのショーン・ライダーの独特な歌詞と、エクスタシー(“E”)という幻覚剤に彩られたファンキーな音楽は、ドラッグと抱き合わせであっと言う間に世界中に広まった。

妻のリンジーが出て行って以来、ミス・イングランドのパートナーを得て前のめりになっていた彼の人生だったが、ファクトリー帝国にもそろそろ陰りが見え始めていた。

相次ぐレコード・リリースの延期、膨み続ける制作費に、ハシエンダの慢性的な赤字経営も手伝って、もうこれ以上、資金を捻出できなくなったファクトリーは、彼らが忌み嫌う、ロンドンに本拠を置くロンドン・レコードの手を借りようとするが、ウィルソンの書いた血判状では、ファクトリーの所有するものは何もないことを意味し、ハシエンダにも手が下ると分かった時には、もう倒産という道しか残されていなかった。
そして伝説の、ファクトリー最後の夜がやってきた。溢れんばかりの観客。ハシエンダを愛する全ての人々が集った…。

スタッフ

監督:マイケル・ウィンターボトム
脚本:フランク・コットレル・ボイル
撮影監督:ロビー・ミュラー
編集:トレヴァー・ウェイト
衣装:ナタリー・ウォード、スティーブン・ノーブル
美術:マーク・ティルズレイ
ミュージック・スーパーバイザー:リズ・ギャラシャー
製作:アンドリュー・イートン

キャスト

スティーヴ・クーガン
レニー・ジェームズ
シャーリー・ヘンダ−ソン
パディ・コンシダイン
アンディ・サーキス
ショーン・ハリス
ジョン・シム
ラルフ・リトル
ダニー・カニングハム
ポール・ポップウェル
クリス・コグヒル
エンゾ・シレンティ
ケイト・マグワン
ロウェッタ
ポール・ライダー
レイモンド・ウォーリング
マニ

LINK

□公式サイト
□IMDb
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す
http://partypeoplemovie.com/
ご覧になるには Media Player が必要となります