原題:INSOMNIA

6日間眠れないほどのあまりにも異常な事件

2002年/アメリカ映画/サミット・エンターテインメント作品 提供:日本ヘラルド映画、ポニーキャニオン 配給:日本ヘラルド映画

2003年03月19日よりDVD発売&レンタル開始 2002年9月7日より 丸の内ピカデリー1ほか 松竹・東急系にてロードショー

公開初日 2002/09/07

配給会社名 0058

公開日メモ 「メメント」で世界を驚愕させた新鋭C・ノーラン監督。その才能に惚れ込んだS・ソダーバーグ。三人のアカデミー賞スターの初競演! 超一級のサスペンスが幕をあける!!

解説



その事件は、24時間太陽が沈まない町で起こった。アラスカのナイトミュート。白夜の晩に殺されたのは、17歳の少女。死体は、ゴミ置き場に捨てられていた。髪を洗われ、爪を切られ、全裸のままゴミ袋に入れられて。やがて起こる第二の殺人。事件の異常な展開と沈まない太陽は、L.A.から捜査に招かれたひとりの刑事の眠りを奪っていく……。
5月24日の全米公開と同時に、早くも「オスカー候補No.1」の呼び声があがった超一級の傑作サスペンスが登場した。監督は、『メメント』で一躍時の人となったクリストファー・ノーラン。製作総指揮は、ノーランの才能にいち早く目をとめ、自ら彼の売り込みを買って出たスティーブン・ソダーバーク。ハリウッドのトレンドセッター役を担う21世紀の巨匠が、3人のアカデミー賞スターを主演に迎えて放った『インソムニア』。白夜のアラスカという異空間を舞台に、追う者と追われる者の息苦しいまでの心理対決を描いたこの作品は、観客の眠りをも奪う魔力を秘めた恐怖サスペンスの最高峰だ。
 主人公は、L.Aのベテラン刑事ウィル・ドーマー。過去に数々の猟奇殺人を解決に導いてきた彼は相棒のハップと共にアラスカへ飛び、現地で起きた少女殺しの捜査にあたる。地元警察が見逃していた小さな証拠から、次第に犯人像を特定していくウィル。彼は、霧深い海岸の小屋に容疑者をおびきよせるが、追跡の途中、誤ってハップを射殺してしまう、、その事故か自分のミスだと言い出せないまま、ウィルは捜査を続行。そんな彼のもとに、ハップの死の「目撃者」となった少女殺しの犯人から電話
が入る……。
 追う者と追われる者の立場の逆転。その背景にうごめくウィルの過去の秘密。猟奇殺人に端を発し、巧妙に展開していくプロットは、犯人ウォルター・フィンチの執拗な追求によって善と悪の暖昧な領域に迷い込んでいくウィルの葛藤を克明に追い、見るものを幻惑の境地に誘っていく。それを増幅させるのが24時間太陽が照り続ける白夜の設定だ。
前作の『メメント』では、「思い出せない」苛立ちを観客との接点にして物語を語りあげたクリストファー・ノーラン。今回は、白夜のせいで「眠れない」ウィルの焦燥と抑圧を接点に、圧倒的なパワーで観客を映画の世界に引き込んでいく。窓を覆っても差し込んでくる太陽の淡い光が、神経にチクチクと突き刺さってくるような映像のタッチは、どしゃ降りのダークな光景に彩られていた『セブン』とは対照的。定型を覆す手法でジリジリと恐怖を高めていくノーランの演出は、驚樗の真実が明かされるクライマックスで一層のダイナミズムを帯びていく。
 刑事ウィルには『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』でオスカーを受賞したアル・パチーノ。彼のストーカーと化す少女殺しの犯人にはオスカー受賞作の『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」をはじめ、数々のヒット作で活躍するロビン・ウイリアムズ。通俗ミステリー作家らしい凡庸さと、死体に周到な清めの儀式を施す異常さが同居するフィンチを、ゾクゾクするキャラクターに仕立て上げたウイリアムズの悪役ぶりは、全米でも話題の的。とりわけ、フェリーを舞台にしたパチーノとの直接対決シーンは、名優同士の息詰まる演技が堪能できる本作のハイライトだ。そしてもうひとり、『ボーイズ・ドント・クライ』でオスカーを手にしたヒラリー・スワンクが、ウィルに憧れるアラスカの新人刑事エリーを好演。ウィルとの共同捜査を通じて成長を遂げていくキャラクターに、ハツラツとした魅力を輝かせている。
その他の共演陣にも個性的な顔ぶれが揃った。ウィルの相棒ハップに扮するのは、ハル・ハートリー監督作の顔として知られ、「ある貴婦人の肖像」で全米映画批評家協会賞の助演賞を受賞したマーチィン・ドノハン。眠れないウィルの話し相手になり、心の安らぎを与えるロッジのマネージャー、レイチェルを演じるのは、「ER/緊急救命室」のレギュラーとしてエミー賞候補になったモーラ・ティアニー。また、殺された少女の恋人ランディの役で『ディープ・エンド・
オブ・オーシャン』の演技が高く評価されたジョナサン・ジャクソンが出演している。
 1997年製作の同名のノルウェー映画を元に、個々のキャラクターを掘り下げた一級の脚本を書き上げたのは、トニー・スコット監督の「Taking Lives」も手がけている新鋭ヒラリーサイツ。神秘的な白夜の光景を第2の主役としていかす映像を作り上げたのは、「メメント」の撮影監督ウォリー・フィスター。同じく「メメント」組からは、編集のドディ・ドーン、音楽のテビッド・ジュリアンが参加し、本作でメジャー進出を果たしたノーラン監督をガッチリと支えている。さらに、「トラフィック」のオスカー受賞監督スティーブン・ソダーバークと、彼と共に『オーシャンズ11』を大ヒットさせたジョージ・クルーニーが製作総指揮に名を連ね、ノーランの良きサポーターぶりを発揮しているのも大きな話題だ。

ストーリー


氷に覆われた原野と森と海が荒々しいハーモニーを奏でるアラスカ。事件らしい事件が起きたことのないナイトミュートの町で、17歳の少女の変死体が発見された。彼女ケイは、地元の学校に通う平凡な女子高生。金曜の夜、たまり場へ遊びに出かけた彼女は、ボーイフレンドと口論したすえ店を飛び出し、そのまま行方不明になっていた。発見されたのは、ゴミ置き場。顔面に撲殺のあとが生々しく残る遺体は、全裸のままゴミ袋に詰めてあった。猟奇殺人事件を得意にするロス警察のベテラン警部ウィル・トーマー(アル・パチーノ)と、相棒のハップ(マーチィン・ドノバン)が、助っ人としてナイトミュートにやって来たのは、死体発見の翌日のことだった。地元の刑事エリー(ヒラリー・スワンク)の出迎えを受けたふたりは、さっそく警察署に出向き、検屍台の上に置かれたケイと対面する。まず、ウィルの注意を引いたのは、遺体の髪か発するシャンプーの香り。犯人は、ケイを殺したあとに髪を洗ったのだ。さらに調べると、手と足の爪を切りそろえたあとも。犯人は冷静に自分の痕跡を消している。
そこから顔見知りの犯行と目星をつけたウィルは、ケイの部屋の捜査に駒を進め、デザイナーズ・ブラントのドレスを発見する。彼の鋭い鼻は、はやくもケイに秘密のスポンサーがいたことを嗅ぎつけていた。
 ハップと共にレイチェル(モーラ・ティアニー)がマネージャーをつとめるロッシに宿をとったウィルは、白夜のせいで眠れない一夜を過ごしたあと、ケイのボーイフレンドだったランディ(ジョナサン・ジャクソン)を学校に訪ねる。ケイの秘密のスポンサーは誰なのか?それをしつこく問いただすウィルだったか、ランディはシラを切り通すばかり。だが、署に戻ると思わぬ進展があった。事件当夜のケイの所持品か発見されたのだ。 バッグに入っていたのは、教科書、ミステリーのペイパ一バック、日記。その内容を捜査チームに調査させるいっぽう、犯人を罠にかける方法を思いついたウィルは、警察がケイのバッグを探しているという情報をマスコミを通じて流したうえで、バッグを発見場所に戻し、犯人の訪れを待つ。
 かつての鉱山地帯に建つ海辺の小屋。張り込みを続けるウィルたちの前に、ついに犯人が姿を現した。だが、小屋の中に逃げ込んだ人影は、地下の抜け穴から脱出。濃霧に覆われてほとんど視界かきかなくなった岩場へと逃げていく..。すかさず後を追ったウィルの傍らで、地元の刑事ファーレルが崩れ落ちた。銃を持っていた犯人に足を撃ち抜かれたのだ。ファーレルの安否を確かめた後、なおも追跡を続けるウィル。その視界に、再びおほろな人影が浮かび上がった。夢中で銃の引き金を引き絞ったウィルは、撃ち倒した男かハップだと知って樗然とする。「俺を殺そうとしたのか…?」恐怖と嫌悪の入り交じったまなざしでウィルをみつめ、息を引き取るハップ。
 放心状態のウィルは、警察署長チャーリー(ポール・ドゥーリー)の事情聴取を受けるが、ただ犯人を取り逃かした悔しさを口にすることしかできない。結局、ハップ殺害の事件はエリーの担当となり、ケイ殺しの犯人と同一人物の犯行という線で捜査が進められていく。罪悪感にさいなまれなからも真実を告白する機会を逸してしまったウィルは、ロッシの部屋の床下に、犯人が落としていった38口径の拳銃を隠した。そのウィルに不気味な電話かかかってきたのは、彼が不眠状態に突入して3日が経過した明け方のことだ。「眠れないのかい?僕もそうだ」囁き声の主は、まぎれもなくケイ殺しの犯人ウォルター・フィンチ(ロビン・ウイリアムズ)だった。「君が相棒を撃つのを見た。いまは僕らが相棒だ」落ち着き払ったフィンチの言葉に、動揺と苛立ちをつのらせるウィル。脅迫者の出現と沈まない太陽は彼を狂気の淵にまで追い込んでいく。

スタッフ

監督:クリストファー・ノーラン
製作総指揮:スティーブン・ソダーバーグ、ジョージ・クルーニー、
トニー・トーマス
原作:ロバート・ウエストブルック(新潮文庫)
撮影監督:ウォリー・フィスター
美術:ネイサン・クローリー
編集:ドディ・ドーン
衣裳デザイン:ティッシュ・モナハン
音楽:デビッド・ジュリアン

キャスト

ウィル・ドーマー:アル・パチーノ
ウォルター・フィンチ:ロビン・ウィリアムズ
エリー・バー:ヒラリー・スワンク
レイチェル・クレメント:モーラ・ティアニー
ハップ・エクハート:マーティン・ドノバン
フレッド・ダガー:ニッキー・カット
チャールズ・ニューバック:ポール・ドゥーリー
ランディ・ステッツ:ジョナサン・ジャクソン

LINK

□公式サイト
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す