バベル／失われた地図と魔法の水晶

『ハリー・ポッター』の地球規模の大ヒットにより、子供たちが主役のファンタジー作品が見直されている。23億円を投じて製作された本作品は、98〜99年にフランスを始めとしてアメリカ、カナダ等で公開され、子供達を楽しい冒険へと誘ったファンタジー大作である。
主人公デビッドのクラスの教師アリス役に『ヘンリー＆ジューン／私が愛した男と女』で注目を集めたマリア・デ・メディロス、バベルたちと同じように水晶石を探し求める富豪ネムロッド役に『ドーベルマン』『ジャンヌ・ダルク』『キス・オブ・ザ・ドラゴン』などで抜群の存在感を見せつけるチェッキー・カリョ。
個性派キャストと一流スタッフが集結したファンタジー・アドベンチャー超大作！！

【チェック・ポイント！】

　主人公の少年・デヴィッドがハリポタ風眼鏡君なのはいかがなものかと思うけど(苦笑)、“バベルの塔”の伝説を題材に、現代ファンタジーとして仕上げているのがちょっと面白いジュブナイル・ファンタジー。
　設定のそこここに、ジャンル・ファン向けの要素が散見され、ファンならニンマリすることは必至かも。好奇心一杯、不思議大好きなデヴィッド君、劇中最初に観ているＴＶ番組は、伝説のシリーズ『トワイライト・ゾーン（『未知の世界』『ミステリー・ゾーン』）』、しかもモノクロ・オリジナル・シリーズのオープニング・タイトルだ。確かに最近では日本でも、ＣＳ放送なんかで放映されてたりする機会も増えてきたようだけど、モノクロ番組でも極々当たり前に繰り返し再放映されているむこうの状況が垣間見れて、なんとも羨ましいかぎりである。
　物語のキーとなるのが、5000年前から人間と造物主の仲介役のような役割を演じてきたドワーフ族のバベル人。メカニカルを仕込んだスーツで表現されたバベル人３人衆は、今は亡きエンパイア・ピクチャーズ製作の『トロル』(86)あたりを髣髴させますな。彼らが学校の理科室で、様々な備品等を使って伝説のあらましをデビッドたちに説明する場面は、ジュブナイルＳＦの王道『Ｅ．Ｔ．』からの引用だね。月面をよぎる影とか、同作へのオマージュ的な部分は他にもあるぞ。ただ、お話の細部やキャラ設定等全体的には、大人も大満足なジュブナイルの域には、もう一つ力及ばずの観もあるが、夏休みのお友達のお楽しみには絶好の１本と言えそう。
　フランス＝カナダ合作作品ということで、欧州系実力派キャストの競演も見所。嬉々として悪役ネムロッドを演じるチェッキー・カリョの貫禄も楽しいが、『ヘンリー＆ジューン／私が愛した男と女』(90)のマリア・デ・メディロス演じる母性とキュートさを兼ね備えた女教師アリスが魅力的だ。