原題:chicken heart

やりたいことがみつからなくて・…

第55回カンヌ国際映画祭国際批評家週間招待作品

2002年/日本映画/ヴィスタサイズ/上映時間:1時間45分/ドルビーSR/ 配給:オフィス北野

2003年02月25日よりDVD発売開始 2002年8月3日より東京・ユーロスペース、シネマ下北沢、大阪・扇町ミュージアムにてロードショー

(C)2002 バンダイビジュアル・TOKYO FM・テレビ東京/オフィス北野

公開初日 2002/08/03

配給会社名 0020

公開日メモ あっちもこっちも、あいつもこいもウソだらけ。らいおんハートなんか遠い日の夢・・・。2002年・夏のニッポンはチキハ(チキン・ハート)な人々がまぜっかえす。

解説



あっちもこっちも、あいつもこいもウソだらけ。らいおんハートなんか遠い日の夢・・・。2002年・夏のニッポンはチキハ(チキン・ハート)な人々がまぜっかえす。
岩野(27歳)は、今の生活がそれなりに気にいっている。昼はティッシュ配りに落書き消し、夜は酔っ払いリーマン相手の「殴られ屋」で何となくその日暮らし。何より束縛されない気楽さがいい。『やりたいことはまだみつかってない』し、へたに就職して正社員にでもなったら『逃げられなくなるのがコワい』のだ。そんな岩野にいろいろと仕事を手配してくれるのが浅田ことサダさん(53歳)。新人戦でアッパーを食らってリングに沈んでから燃えなくなった岩野を、説教するでもなく、ありのままに受け入れてくれたのが同じアパートの住人のサダさんだ。いつも照れた笑いを浮かべているが、ぶつきら棒に投げつけるコトバは人生の真実をついている。殴られ屋のタイム・キーパー役は丸さん(36歳)。何となく大学を出て教師をやってはみたものの、今は叔父の暇な帽子屋に通いで勤めている。『まいったな〜』が口癖だが、本人はぜんぜん参ってない。ラッキーアイテム&カラーの選びしだいで、明日はきっと運が開けると固く信じている。そんな3人が毎晩、殴られ屋の仕事明けに立ち寄るのが屋台のおでん屋。親父(荒木経准)ときたら客そっちのけで携帯ラジオやプレイヤーの修理に熱中、ショーバイは時間つぶしみたいな感じ。こんなチキハな男たちの人生が突然、キビしい現実に直面。アパートの取り壊しと女性問題(丸さんは見込みゼロの合コンにはりきり、岩野は誘惑されて)をきっかけに、大変化していくことに…。

どこにでもいる、あなたかもしれないこのチキハな3人。ボクシング・チャンピオンの夢に敗れてから燃えるものがなくなった岩野を演じるのは、今年最も注目の俳優・池内博之。目力(めぢから)のあるルックスに秘めたピュアなスピリットで、ブレイク確実だ。彼を中心にゆるゆるな正3角形を結ぶのが、丸さんに扮する劇団大人計画主宰・松尾スズキと、サダさんを演じるカリスマ・忌野清志郎。映画、舞台、ロツク。それぞれのステージで確かなポジジョンを持つ3人が、『チキン・ハート』の現場に素の個性で参加。そのほか岸部一徳、尾美としのりと、昧ありのチキハな面々がひっきりなしに登場する。ビミョーな間(ま)のずれがスクリーンに絶妙なコラボレーションを醸し出す!

2002年夏。何かとヤバい今のニッポン、フツーの若者の生活を力を抜いて切り取ったエピソードに「カンヌ国際映画祭」が注目、今年の国際批評家週間招待作品に選定した。監督は清水浩。デビュー作「生きない」(ダンカン主演、ロカルノ国際映画祭アキュメニカル特別賞受賞)に続くこの作品では、脚本も書き下ろし、自身の体験や周囲の人間に渋谷や下北沢の街頭で取材、観察してつかんだイメージを膨らませてキャラを設計。キャストの素の魅力(迫力)を高めるのが、対象に寄らず距離を保ったロング&俯瞰ショットの多用。そして鈴木慶一の音楽。チキハな人々を笑っているあんただってチキハじゃんというわけ。こんな作品をライブの感覚で楽しんでもらうために、選んだのが渋谷と下北沢を発信地とする全国のミニ・シアター。深くて痛い、この笑いの渦に一度はまったらもう逃げられない。

ストーリー


生まれも育ちも年齢も違うのにヘンに気が合うおかしな3人組。岩野(池内博之)とサダさん(忌野清志郎)と丸さん(松尾スズキ)は同じアパートの住人で、毎晩、盛り場の片隅で「殴られ屋」をやっている。殴られ役は岩野。対戦相手の酔っ払いサラリーマンを相手に、巧みにパンチをかわす。元ボクサーの彼は、3回戦ボーイから新人王戦までひた走ったが、アッパーを喰らってリングに沈んだ日からリングに上がれな<なったのだ。今宵もグラブをつけたとたんに顔が変わり、視線も鋭<なる酔っぱらいたちの欝憤が吹き出す。「このヤロー!」…怒りを込めたパンチの矛先は、上司や得意先の担当、それともふられた女?彼らの欝憤は岩野にかわされ敢えな<空を切るばかり。「タイム・アップ!」と割り込むのがタイム・キーパーの丸さんで、元締めのサダさんが「2分間、2千円也」の料金を徴収する。 3人の一日の終わりは屋台のおでん屋。高速道路上のドン詰まりの広場に、「BAR」なんて人を食った名前の店で、いまどき珍しの携帯ラジオとかプレイヤーの修理が趣味の、ヘンな親父(荒木経惟)がやっている。そこでおでんを突っつきビールを飲んで、3人はゆるゆるの一日を終えるのだ。27歳の岩野は、何をしても燃えな<なって、とりあえずサダさんが手配して<れるティッシュまきや落書き消しで毎日を過ごしている。心配した兄の公一(尾美としのり)が訪ねてきて、「インターネットの会社を始めるから手伝え」と誘うが、岩野は決心がつかない。まだ本当にやりたいことが見つからないし、「正社員になったら逃げられな<なる」のがいやなのだ。 丸さん(36歳)の1日は占いで始まる。「占いなんかで人生決められるもんか」とサダさんからは馬鹿にされっばなしだが、毎日のラッキー・アイテム&カラーを確認しないと落ち着かないのは、それまでの人生が徹底してツキに見放されていたからだ。歴史の教員免許を持て余し叔父さんの帽子屋で店番をしているが、客足もさっぱりの上に叔父から「近<店をたたもうと思ってる」なんて言われて、まったくツイてない。 クールな自由人。世間のジョーシキにとらわれないハチャメチャなサダさん(53歳)は 岩野の憧れだ。「何でもいいからやってみろよ、そっからだよ」と突き放した物言いの裏で、何かと気にかけて<れて仕事を回して<れる。サダさんは船を買った。免許を取って長年の「夢」だった自由気ままな旅に出るという。自分には絶対できないことをふつーの顔をしてやってのけるサダさんを、岩野は実は尊敬していたりする。ある日、アパート取り壊しの通知が舞い込んだ。立退き料は滞納した部屋代と棒引きにするからと、大家はとりつくしまもない。逃げてばかりのチキハな3人にも、それぞれ願い望んだ道がある。けれどその道がなかなか見つからない。いま一歩が踏み出せない岩野。いやいやまともな仕事に就いたものの、要領が悪くて思うようにいかない丸さん。自由気ままに自分の夢に近づいていくサダさん。居場所をな<した3人は、それぞれの道にぎこちない第一歩を踏み出そうとするのだが・・・・・・。

スタッフ

プロデューサー:森昌行、吉田多喜男
アソシエートプロデューサー:川城和実、古川一博、石川博
ラインプロデューサー:小宮慎ニ
撮影:高瀬比呂志
照明:小野晃
美術:新田隆之
録音:岩倉雅之
編集:三條知生
スクリプター:松澤一美
助監督:大野伸介
製作担当:甲斐路直
キャスティング:吉川威史
音楽:鈴木慶一
監督・脚本:清水浩

キャスト

岩野修:池内博之
浅田智史:忌野清志郎
丸誠二:松尾スズキ
京子:馬渕英里何
美樹:春木みさよ
岩野公一:尾美としのり
屋台のオヤジ:荒木経惟
村瀬:岸部一徳

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