原題:bright future

第3回東京フィルメックス・特別招待作品::http://www.filmex.net/

2002年/日本/カラー/115分/1:1.85/DTSステレオ/HD・35mm 配給:アップリンク

2003年10月11日より11月7日まで渋谷シネ・アミューズにて“海外バージョン”限定公開 2003年06月27日よりビデオ発売&レンタル開始 2003年06月27日よりDVDリリース 2003年1月18日より渋谷シネアミューズにてロードショー公開

完成披露試写会レポート::http://www.cinematopics.com/cinema/c_report/index3.php?number=297

公開初日 2003/01/18

配給会社名 0009

解説


世界が待望する黒沢清 2年ぶりの新作、ついに完成

カンヌを沸かせた回路から2年。世界が待望する黒沢清監督『アカルイミライ』がついに完成した。黒沢監督のオリジナル脚本による本作では、相手と判り合えないという事実を受容しながらも人々が共存している世界が、世代間の対立を交えて感動的に描かれている。登場人物たちには、それぞれの未来が横たわっており、その在り方もまた多様だ。また本作では、初めて黒沢組に参加するキャストやスタッフも多く、そのパワーと個性が監督のもとに集結し、ここに新しい世界『アカルイミライ』が築き上げられた

オダギリジョー・浅野忠信・藤竜也の初コラボレーション

アカルイミライの俳優たちも、そのほとんどが黒沢組初参加となる。いま最も注目を浴ひているオタギリジョーは、自分をもてあまし、荒々しい気持ちで日々を送る青年雄二の心の内部の成長を見事に表現し、日ごろの明るいキャラクターとは全く違う顔を見せている。雄二が唯一慕う存在、守役の浅野忠信は、一見穏やかでありながら、内面に激しい怒りを抱えた青年の葛藤を、静かな悲しみをたたえたクールなまなざしとともに画面に焼き付け、その印象を決定的なものにした。そして、黒沢監督が初めて自分よりも上の年代の人を起用したという藤竜也は、色気と野性味のある存在感に、切なさを湛えた中年過ぎの世代の思いが加味され、映画に厚みを与えている。この男たちの魅力的なコラボレーションが、完成以前から大きな話題を呼んだ。

フィルムからデジタルへ 光と闇が交錯する映像美
アカルイミライの撮影は、全編24PHDとDVで行われた。黒沢監督と撮影監督の柴主高秀は、黒が本物の黒そのものとして映ることに、当初からこだわっていた。ハーフ・トーンを潰し、影の部分が真っ黒になったことで、画面の至るところで光と闇が鮮明なコントラストを描き、ドラマに自然な臨場感を与えている。また、本作ではライトなしでも撮影をすることが可能なデジタル・カメラの特性が存分に生かされ、東京の街の夜景がとりわけ美しく描かれている。

黒沢清+北村道子による新境地

トップ・スタイリストとしてCM、ドラマ、PVなど様々なジャンルで活躍をしている北村道子は、映画の衣装製作でも数多くのクリエイターとのコラボレーションを成功させている。脚本に込められた思いを見事にキャッチしていた彼女は、黒沢監督にも多くのインスピレーションを与えた。監督の衣装のイメージは“この映画の中の人々は、みな貧しい。だけどものすごくカッコイイ”というもの。北村はこのイメージとそれそれの役の内面性を、構築されたフォルムを壊すことで表現し、黒沢映画のビシュアルに新境地を開いた。

若者に人気のTHE BACK HORNが主題歌で参加

準備稿が出来上がった段階からエンディングの主題歌は、この映画のトーンを決定するものとして重要だった。多くの候補者の中から選はれたTHE BACK HORNが本作のために書き下ろした主題歌「未来」は、この映画の最年少世代の心情を鮮やかに描き出している脚本と断片的な映像、そして監督との対話から彼らが創り上げた力強いメロディーは、明るい未来への予見とともにラストを観る者の心の中に導き、この映画を人々の記憶にさらに深く焼き付けることだろう。

ストーリー

仁村雄二と有田守は、おしぼり工場で働く同僚。守はいつも他人とうまくわたり合えない雄二を気にかけ、「俺がこうやったら(親指を自分の方に向ける)待てで、こうやったら(人差し指を相手に向けたら)行けだ」とサインを出すことを提案する。守は人を殺すほどの猛毒を持つアカクラゲを大切に育てているが、雄二が彼の家を訪ねた日、工場の社長の藤原が突然やって来る。相変わらず面白くもない藤原の話も笑顔でやりすごす守に反し、雄二は苛立ちを隠せない。藤原は水槽にクラゲを見つけ、手を伸ばしてみる。あわてた雄二を制止した守は、藤原をじっと見つめたまま、何も言わない。なぜか危険を感じた藤原は、自ら手を引っ込めるのだった。

その翌日、藤原がクラゲの猛毒のことを言わなかった守をクビにすると言う。守は、雄二に“待て”のサインを残して工場を後にする。夜、むしゃくしゃした雄二は、突然暴力的な衝動に駆られ、鉄パイプを手にして藤原の家に急ぐ。そこには、血の海で倒れている夫婦の死体かあった。わけが分からないまま家に戻った雄二は、暗闇の中必死で守に電話をかけるが、いくら呼んでも守の応答はない…

刑務所の面会室。「俺が藤原を殺しておけば良かったんだ」と口走る雄二に、「黙ってろ、俺が待てと言ったら待てなんだ」と声を荒げた守は、事件のことよりも雄二に譲ったクラゲのことばかりを気にかけている。離婚して疎遠になっていた父親の有田真一郎も息子の守を訪ねて来る。ぎごちない会話をする真一郎に面会の礼を言う守。それか親子の5年ぶりの再会だった。

面会室。守は今日もクラゲを真水に慣らすことだけを懸命に頼んでいる。守の出所をいつまでも待つと詰め寄り「もう絶交だここへも来るな」と怒鳴られた雄二は、預かった水槽を倒し、クラゲはそのまま床下に流れ去ってしまった。

再び訪ねて来た真一郎に、冷徹に自らの死刑について語った守は、人差し指を“行け”のサインに固定したまま独房で自らの命を絶つ。同じ頃、ふと目をさました雄二は、誘われるように部屋の床板を剥がしてみた。すると暗闇の中で、光を放つクラゲが流れている。興奮した雄二は、翌日守にそのことを報告しようと刑務所に急くのだった。

守の遺骨を手に火葬場を後にする真一郎を追った雄二は、彼のリサイクル工場で働き始める。雄二は守の意思を継ぐように、配達の道々で繁殖させたクラゲのエサ(ブライン・シュリンプ)を河にまき「守さんの飼ってたクラゲが東京のどこかにいるんです」、と真顔で語るが、海に棲息するクラゲが東京の河にいるという話を真一郎は信じられない。

土砂降りの昼、雨宿りに立ち寄った廃屋で、雄二は再びクラゲを発見する。まるで予想でもしていたかのように落ち着き払う雄二とは裏腹に、初めて真水の中で行きるクラゲを目の当たりにした真一郎は驚きを隠せない。

工場で居眠りをする雄二の隣には、守るがいる。もちろん真一郎にもその姿は見えい。興味深げに工場を見渡す守は、何を思ったかブライン・シュリンプの電源を切ってしまう。目が覚めてそのことに激怒した雄二は、真一郎にやつ当たりをし、見境を無くして、金庫の金を奪おうとする。見かねた真一郎が「君はなぜこの現実を見ようとしないんだと詰め寄るが、雄二はそのまま工場を飛び出してしまう。後を追う真一郎。しかし雄二の姿はどこにもなかった

自暴自棄になった雄二は、深夜のゲームセンターで知り合った若者達を誘い、妹の夫高木の会社に忍び込み、金を盗み出すしかし、彼らは警備装置で発動した警察にあえなく捕まってしまう。一人だけ逃れた雄二は、再び真一郎の元に逃げ込む。真一郎は、「君たちを許す」と雄二を受け容れる。テレビでは、都内の川に大量発生したクラゲのニュースが流れている。河原で、海を目指すクラゲの大群を見つけた真一郎は「守るの願いがかなった」とどこまでもクラゲを追っていく。

守の思いを胸に雄二が去った後、工場で一人作業をする真一郎。傍らには守がいる。街には、いつもの店にたむろして、することもない若者たちがいる。やがて……彼らはどこかに向かってまっすぐに歩き出した。

スタッフ

監督:黒沢清
エグゼクティブプロデューサー;浅井隆、小田原雅文、酒匂暢彦
プロデューサー;野下はるみ、岩瀬貞行
アソシエイツプロデューサー:藤本款
製作:「アカルイミライ」政策委員会
 アップリンク、クロックワークス、デジタルサイト
製作強力:ソニー

キャスト

藤竜也
浅野忠信
オダギリジョー

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