原題:Rue des plaisirs

私、恋してるの。

2002年2月13日フランス初公開

2002年/フランス/カラー/91分/DTS / Dolby Digital 配給:シネマパリジャン、松竹、メディア・スーツ

2003年10月25日よりDVD発売&レンタル開始 2003年10月25日よりビデオレンタル開始 2003年3月1日よりシネマライズにてロードショー公開

公開初日 2003/03/01

配給会社名 0043/0003/0066

解説


愛の名匠パトリス・ルコント監督が誘う、
1945年の巴里、夢の娼館《オリエンタル・パレス》

『髪結いの亭主』『橋の上の娘』などセンシュアルな映像表現では定評ある愛の名匠パトリス・ルコント監督が、今回あなたを誘うのは、無償の愛と酔いしれるような官能の舞台、1945年の巴里最期の娼館《オリエンタル`パレス》。そこはシャンペンのしぶき、香水とおしろいのかほり、柔肌にしなやかな光沢を放つシルクの下着を纏った客待ちの女たちの陽気な笑い声に満ちた欲望の館。まるで開演を待つバレリーナのように、ヒースのランプシェートの灯りに浮かび上がる、娼婦たちの艶やかな姿態。赤いヴェルヴェットの壁。金色の額装の中から妖しく輝く鏡、万華鏡のごとく光を反射するガラスの香水瓶。そしてアルレッティ、リュシエンヌ・ボワイエ、ミスタンゲットらのノスタルジックなシャンソンの歌声。《ムーラン・ルージュ》の楽屋部屋を覗くようなあの時代の色香が、『橋の上の娘』の脚本家と『髪結いの亭主』の撮影・美術セット・スタッフ、そしてルコント監督の強力タッグチームによって見事に再現されている。

YSL最期のミューズ、レティシア・カスタの本格的主演映画

アンナ・ガリエラ、ヴァネッサ・パラディ、ジュリエット・ビノシュ、シャルロット・ゲーンズブール…。これまで、ルコント映画を彩った珠玉の“ファムファタル”女優の歴史に、今回、新たに名を刻んだのが、レティシア・カスタ。引退したイヴ・サンローラン最期のミューズとして知られ、シャネル、ゴルチエ、ウェストウッドらトップメゾンの顔としてコレクションに参加。ロレアルパリ、ダニエル・スロワフスキー、ギャルリー・ラファイエットのイメージキャラクターとしても世界のビルボートを飾り、そればかりかデビュー1年間で世界の一流モード誌40誌の表紙を飾るという偉業を達成。またフランス国民が誇るフランス女性だけが選ばれる名誉ある、新世紀を導く“マリアンヌ”にも選ばれるなど、レティシア・カスタの存在は、常に大きな話題とともに語られてきた。本格的な主演映画となる本作では、フル・オーケストラを従えて、モーリス・シュヴァリエの往年の名曲《手のひらに書いてあったから“I was Luck”》のカヴァーを披露するなど、彼女の持つ存在感の“オーラ”が全編に溢れんばかりだ。そして何より、一途に信じた愛のゆくえをまっとうする感動のラストシーンで見せる彼女の無垢なる美しさは、観る者の心を深く揺さぶるに違いない。

薄幸の娼婦マリオンと、数奇な運命を生きたプチ=ルイの
美しくも哀しい愛の物語

一方、《オリエンタル・パレス》で、お客と娼婦のアクシデントでこの世に生を授かったプチ=ルイは、娼館の中だけで育ち、娼婦たちの世話を焼くためたけにその半生を費やしてきたような男である。そんな彼の幼い頃からの夢は、「いつか運命の女の人と出逢って、その人を一生を賭けてしあわせにする」こと。そして、ある日彼は、まさに夢に描いていた“運命の女”とめぐり逢うのだ。その彼女こそが、マリオンだった。薄幸の娘マリオンは、本当の愛もしあわせもまだ知らない。プチ=ルイは思わず彼女に呟く。「……あなたをしあわせにします、僕の一生を賭けて…」。
さながらシラノ・ド・ベルジュラックのように、見返りのない愛をマリオンに捧げ続けるプチ=ルイを演じるのは、『ペダル・デュース』『パパラッチ』のパトリック・ティムシット。プチ=ルイは、「僕は、マリオンには相応しくない。きみを笑顔にできる男が必要なんだ」と自らの愛の感情を抑し殺して、マリオンの恋をサポートする。『仕立て屋の恋』のイール氏や、『橋の上の娘』のカボールとも一脈通じるような、まるで運命に逆らうように報いを求めない全身全霊の純愛の世界に身を投じる彼をティムシットは、これまでの“怪優”のイメーシを一新するナイーヴな一挙手一投足によって、プチ=ルイの心に生き続ける「永遠の少年」を息づかせる、まさに「この役はパトリックしかありえない」というルコントの期待を上回る名演を見せている。ラストの川岸で、少年時代の自分自身と向きあうプチ=ルイの姿には、儚い美しさと、愛に生きる男の強靭さがあふれ、涙を誘う。
そして、《第三の男》、マリオンの“運命の恋人”ともいうべきディミトリを演じるのは、『青春シンドローム』『原色パリ図鑑』のヴァンサン・エルバズ。まだまだ青春の無防備な破天荒さを引きずりながら、不器用にマリオンを愛し抜くディミトリの生きざまを、そこはかとないいなせな色気を振りまき体現したエルバズの姿は、どこか憎めない“やんちゃ坊主”の愛矯そのもので、マリオンならずとも母性本能をくすくらずにはおかないだろう。

ルコント映画の集大成というべきスタッフが結集

「私は、《オリエンタル・パレス》をシャンペンのしぶきであふれ、ほとんど全裸の女たちがけたたましく笑う、欲望の館にしたかった。扉を開くと、心落ち着く、夢のような別世界が広がっているんだよ」。40〜50年代のフランス女優をイメージしたというルコントのそんなファンタジーを銀幕に甦らせるため、スタッフにはこれまでのルコント作品の集大成ともいうべき、気心の知れた信頼できる一流スタッフが参集した。セルジュ・フリードマンは、『大喝采』でルコントに抜擢されて以来、『ハーフ・ア・チャンス』『橋の上の娘』でも起用された気鋭の脚本家だ。本作では長年温めていたアイディアをルコントのために書き下ろし、また劇中、印象的なシャンソンの使用もフリードマンの提案から生まれたものだという。撮影のエドゥアルド・セラは、いわずとしれた『髪結いの亭主』『サン・ピエールの生命』なとでルコントの期待に見事に応えた盟友のひとり。最近は『鳩の翼』や『アンブレイカブル』など国際的にも活躍しているが、《オリエンタル・パレス》の色彩が交錯するめくるめく映像美は、さすがルコントと息のあった手腕を遺憾なく披露してみせる。ほかに、美術のイヴァン・モシオン、編集のショエル・アッシュ、衣裳のクリスチャン・カスクなど、その誰もがこれまでのルコント作品を支えた精鋭ばかり。そして、スクリプトには愛娘マリー・ルコントが名を連ねる。ちなみに、劇中、マリオンとテベトリが逃げ込む映画館で上映されている映画は、『仕立て屋の恋』の原作であるジョルジュ・シムノンの「イール氏の婚約」を、ジュリアン・デュヴィヴィエが1946年に映画化した「パニック」“Panique”である。

ストーリー

穏やかな陽光が、森の葉陰から木漏れ日となって降りそそぐ小川のほとり、すっかり人影のないシートの上には、食べかけのバゲットやチーズといったピクニックの名残りが、幸福なひと時を留めるかのように散らばっているそして、脇に置かれた蓄音機の針はカタカタと空回り。まるで何か運命的な出来事を暗示しているかのように……。
それは、1945年初めのこと、歓楽通りの娼館《オリエンタル・パレス(東洋の宮殿)》に娼婦の息子として生まれ育ち、館の女たちからは弟のように可愛がられているプチ=ルイ(パトリック・ティムシット)は、突然ふらりと“日替わり定食”一.つまり新入り娼婦として、この館に現われたマリオン(レティシア・カスタ)をひと目見て、こう決意する。「あなたの世話がしたい、僕の一生をかけて」。こうして、プチ=ルイの《特別な女性》マリオンヘの、“誰も真似することはできない”愛の日々が始まった。
どこか、少年の心を持ったまま大人になったかのようなプチ=ルイは、マリオンが幸福になることだけを願っている。空襲の間にも、ふたりは将来、マリオンが叶えるべき“しあわせのリスト”を書き記すのだった。マリオンの希望のひとつは、“有名人になること”。そして、プチ=ルイはマリオンの“運命の男”を探し出すこと。彼は、マリオンを幸福にするのは「僕ではなく、“君を笑顔にできる男”さ」と告げる。はかなげな微笑を浮かべながら、マリオンはプチ=ルイのいこう答えるのだった。「いつも一緒にいて」。その夜、フランスは解放された待望の終戦の瞬間がやって来たのだ。派手に花火が打ち上げられた夜空に、一台のメトロが高架を走るその車中にたたずむひとりの男、ディミトリ(ヴァンサン・エバズ)こそが、やがてマリオンの“運命の男”となることを、彼らはまだ知るよしもな。その夜以来、《オリエンタル・パレス》は客が次々と押し寄せる大盛況だ。何せ男たちの冷えた心を暖めるものは、女性の柔らかな肌しかないのだから。マリオンはプチ=ルイの“運命の男”の話を聞いて以来すっかり客に対して惚れっぼくなってしまう。マリオンはこう言う。「彼の目を見れば判るのよ」。けれど、そういった勘違いの恋の後始末をするのも、またプチ=ルイだった。落胆するマリオンのために、その浮気な男につかみかかるプチ=ルイ。こうして彼の額に刻まれた名誉の負傷に、マリオンはそっとくちづけをする。
折りしも、ラジオから政府による娼館廃止のニュースが流れていた頃、プチ=ルイは街角に大きく貼りだされたラジオ局主催の歌手オーディションのポスターを見て、早速、マリオンをこの会場に連れ出した。どこか心ここにあらずのマリオンに対して、興奮しているのはむしろプチ=ルイの方だ。やがて「28」のプラカードを握りしめたマリオンが《手のひ
らに書いてあったから》を歌い、結果は見事、合格。マリオンは、夢のひとつである「有名人になること」の第一歩を、踏み出したのだった。
そしてその同じ瞬間、マリオンはラジオ局の楽屋口で偶然、ディミトリとmrぐり逢ったのだ。プチ=ルィは、ディミトリこそマリオンの“運命の男”に違いないと確信するが、何者かに追われている様子のディミトリは、デートのホテル代さえ、満足に払うことができない。彼女がプレゼントした新品の腕時計さえも、充分にディミトリの腕に留まる間もなく、ギャンブルのカタに消えてしまうのだ。娼婦仲間たちは、「恋が娼婦をダメにする」とひたすら仕事に明け暮れるマリオンの身を案じるが、当の彼女はこの恋に夢中で、「私、恋してるの。まるで胸の中にストーブが燃えてるよう」といっこうに苦にもしていない様子。実は、ディミトリは闇商売のペニシリンを独り占めし、かっての仲間であるルーマニア人から狙われる身だったのだ。
マリオンのABC劇場への出演が決定して間もなく、噂どおり、フランス中の娼館が閉鎖になった。こうしてマリオンは、ディミトリ、そしてプチ=ルイと奇妙な共同生活を始めることに。夜毎、プチ=ルイはふたりの愛の交歓を、平然を装って見て見ぬふりをしている。しかし、真夜中すきに男たちに追われ、家財道具をスーツケースに詰めこんでは転々とする頃には、さすがのプチ=ルイも「この男は、とんだはずれくじだった」と思い始める。しかし、マリオンに「他の男を見つけてやる」と言っても、もはや後の祭り、遅きに失した。果たして、そんな逃亡生活のスリルもまた、マリオンの恋の炎をかきたてているのだろうか。二人は衝動的に結婚を宣言するが、あいにくその日は日曜日。神父のいない結婚の公証人は、他ならぬプチ=ルイが務めるのだった。
その夜、かりそめのウエディング・パーティが安宿のレストランで開かれることになった。偶然居合わせただけの客たちからの祝福を受け、ディミトリは悪戯で舞い上げた枕の中の羽毛の雪が舞う中、人目もはばからずマリオンのくちひるに熱い接吻を父わす。彼の胸に顔を埋めて、マリオンはディミトリとのささやかな至福のときを噛み締めている様だ。傍らでその光景を見つめていたプチ=ルイに気づいたマリオンは、そっと手を差しのべて彼を引き寄せる。身体を重ね合わせ、音楽に身を委ねるふたり。この時マリオンはそっとプチ=ルイの耳元で囁くのだった、「あなたのことも、私の夢のリストに入っていたのよ」と。
しかしその直後、マリオンとディミトリが会場に踏み込んできたルーマニア人たちに連れ去られてしまう。そして、ひとり取り残されたプチ=ルイのもとに、一味から身代金要求の電話が届く「明目の夜6時までに85万フラン用意しろ」。こうして、プチ=ルイは姉貴分の娼婦たちの協力による“チャリティ・ショー”で、限られた時間でなけなしの金を集めるこ
とに成功する。待ち合わせのチャペル橋の上に、帽子ケースにあふれんばかりの現金を携えて現れたプチ=ルイ。それを見たルーマニア人の部下である二人組が、マリオンとディミトリを押し込めたトランクケースのボンネットを開けた途端、ディミトリが男達につかみかかる。もんどりうちながら、彼らの手にしていた拳銃を奪い取ったディミトリは、躊躇なく男たちを射殺してしまうのだった。
ちょうどその夜は、マリオンの初舞台てもあった。街を駈け抜け、息も絶え絶えに劇場に滑り込んだ3人。こうして何とか開演時間に間に合ったマリオンは、オーケストラの演奏に合わせて《手のひらに書いてあったから》を熱唱する。鮮やかなスカイブルーのドレスを着て、ステージに立つ彼女を見つめながら、プチ=ルイはこれまでの彼女との日々を感慨深く思い起こしていた。その姿は晴れ晴れとした笑顔を浮かべ、観客の誰もを虜にせずにはおかない恋する女の輝かんばかりの魅力があふれている。もう何も望むものはない。それは夢にまで見たしあわせを手に入れた瞬間だったのだが……。

スタッフ

監督:パトリス・ルコント
脚本・台本:セルジュ・フリードマン
撮影監督:エドゥアルド・セラ
美術:イヴァン・モシオン
録音:ポール・レネ
衣装:イザベル・ルゼ
編集:ジョエル・アッシュ
製作:フィリップ・カルカッソンヌ

キャスト

プチ=ルイ:パトリック・ティムシット
マリオン:レティシア・カスタ
ディミトリ:ヴァンサン・エルバズ
レナ:カトリーヌ・ムーシュ
カミーユ:イザベル・スバド
ヴァイオレット:ヴェランジュール・アロー
ルーマニア人:パトリック・フロエルシャエム

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