原題:Week End

1967年/仏伊合作フランス映画/製作:FILMS COPERNIC、ASCOT CINERAID/ 全6巻、2,836M、1×1.66/イーストマンカラー/1時間44分/ 新版字幕:松岡葉子/宣伝協力:堀江可奈子、冨田三起子/ 協賛:TRANS CONTINENTS/(C)2002 GAUMOM 提供・配給:フランス映画社 共同提供:シネフィル・イマジカ

2016年6月4日(土)からポレポレ東中野にて1週間限定上映! 2002年4月27日よりユーロスペースにてロードショー公開

(C)2002 GAUMONT

公開初日 2002/04/27

配給会社名 0094

解説


 1960年代後半のゴダールは、65年に「アルファヴィル」と「気狂いピエロ」の2作を発表し、66年に「男性・女性」を発表しつつ「メイド・イン・USA」と「彼女について私が知っている二、三の事柄」を同時期の撮影で完成し、67年、「中国女」と「ウイークエンド」をほとんど同時に発表する。ゴダールの長編劇映画第15作「ウイークエンド」は、そうした超人的な疾走の頂点で創造パワーが噴出した傑作で、やがて起きる68年のフランス五月革命への予感をはらみつつ、〈宇宙に彷徨った映画〉として、黙示録のように、ついにはエンドマークで映画の終焉さえも刻印してしまう映画だ。
 その〈宇宙に彷徨った映画〉が、2002年の日本に、〈フォーエヴァー・ゴダール〉シリーズ公開の第1弾として帰ってくる。ゴダールが予感した世界が21世紀のいま、より近い現実感で新鮮なことに驚かれるかもしれない。宇宙と地球を往還し、現代と地球の原初時代とを破天荒に縦横する叙事詩的な物語展開、映像と編集の破壊的なパワー、言葉と音楽と沈黙の底知れないエネルギー、いまかえって斬新なファッションと圧倒的な色彩美など、ゴダールのヌーヴェル・ヴァーグ期の活力のすべてが結集して映画の魅力を堪能させてくれるに違いない。
 〈フォーエヴァー・ゴダール〉シリーズは、2001年夏ロンドンで世界のゴダール研究者が結集して行なった〈for ever godard〉、そして2002年1月からオンタリオで行なわれている〈for ever godard part 2〉と期をあわせることになったが、現在のところ世界中で唯一「映画史」全8章までもが劇場公開された日本にこそふさわしいと言えるかもしれない。フランス映画社では、「ウイークエンド」から90年代の新作「JLG/自画像」「フォーエヴァー・モーツァルト」を軸に、〈フォーエヴァー・ゴダール〉2002年版を展開する。
 その第1弾「ウイークエンド」の主人公はパリ16区に住むブルジョワ夫婦、ロランとコリンヌ。毎週週末には二人で妻コリンヌの実家がある田舎町ワンヴィルに出かける。コリンヌの父は死にかけていて、母と遺産をどう分けるかが二人の関心事だ。コリンヌはセラピストの愛人がいることをロランに隠し、ロランは会社に愛人がいることを彼女に隠していて、二人とも、遺産が入った後で相手をどう交通事故で死なせるか企んでいる。コリンヌは愛人に、夢とも現実ともつかぬ乱交の夜の記憶を語る…。
 主演コンビは人気絶頂のマネー・メーキング・スターのミレイユ・ダルクとジャン・ヤンヌ。異色スターのジャン=ピエール・カルフオンが解放戦線の隊長役でロートレアモンの〈マルドロールの歌〉の“老いたる海よ”をドラムを叩きながら朗誦し、ヴァレリー・ラグランジュ(「青い女馬」)が隊長の女を演じ、若きレオーは、革命家サン=ジュストと現代の孤独な青年(空手の名人という設定)を名演。「中国女」のジュリエット・ベルト、ロメール映画で知られるダニエル・ポメルール、脚本家でピアノの名手でもあったポール・ジェゴフ、ゴダールと新婚前後だったアンヌ・ヴィアゼムスキー、先鋭な批評家ミシェル・クルノー、ブレッソンの映画で少女を犯す役どころを数度演じたギルベール(浮浪者役でコリンヌを犯す)、ヒッチコック=トリュフォーの「定本 映画術」で通訳をつとめたヘレン・スコット女史、ゴダール映画の常連ラズロ・サボ、怪優エルネスト・メンゼル、ビートニッタ青年のイヴ・ベネイトンほか、随所で大スターと新鮮な顔ぶれの混在と衝突で活力をあおるゴダール一流のキャスティングだ。
 スタッフの中心は「勝手にしゃがれ」以来の名撮影監督ラウル・タタール。録音のルヴェール、編集のギュモ、スクリプトのシフマン、いずれもヌーヴェル・ヴアーグを支えたつわものが結集している。チーフ助監督にクロード・ミレールがつき、イザベル・ポンスが出演と裏方で活躍。
 音楽は「気狂いピエロ」のアントワーヌ・デュアメル(ユニバーサル・レコードから「気狂いピエロ」とカップリングしたサントラCDを発売中)。レオーが歌うのは、ギイ・ベアール(「突然、炎のごとく」)の当時のヒット・ソング。
 完成当時は、渋滞シーンでの300Mにわたる大移動撮影が撮影時から騒がれ(それをせっかく実現しながらゴダールが2つに割ってしまって製作者が憤慨した)、冒頭のコリンヌの夢でバタイユの「眼球言草」からの引用が観客を興奮にまきこみ、「つなぎ間違い」という映画編集常識をくつがえす話法をうちだしたり、なによりも内容の難解さで、フランス全土をセンセーショナルな話題のるつぼにした。
 「ウイークエンド」の日本初公開は1969年。フィルム・アート社の輸入提供で日本アート・シアター・ギルドの配給、山田宏一氏の八面六臂の活躍で公開された。
今回は30年ぶりの公開になる。

ストーリー



 ウイークエンドは週末旅行。パリの多くの人々と同様、ブルジョワ地区の16区に住む夫婦ロラン〈ジャン・ヤンヌ)とコリンヌ(ミレイユ・ダルク)は、毎週週末、愛車ファセルで出かける。行く先は妻コリンヌの実家がある田舎町ワンヴィル。
大金持ちの、コリンヌの父が死にかけているのだ。父が遺書を書きかえたりしないか、母が遺産をひとりじめにしないか、それが二人の最大の関心事だが、コリンヌはセラピストの愛人がいることをロランに隠し、ロランは会社に愛人がいることを彼女に隠していて、二人とも、遺産が入った後、相手をどう交通事故で死なせるか企んでいるようだ。コリンヌは愛人のセラピストに、夢とも現実ともつかぬ乱交の夜の記憶を語る…。
 二人の出発は土曜日朝。車のバンパーをかすっただけで隣人から銃撃を浴びせられての出発だ。ワンヴィルはイル・ド・フランスの田舎の町でパリからそう遠くはないが、郊外にでた途端に渋滞。さまざまな車や人々が、延々と、まるでサーカスのような光景をくりひろげる。ようやく渋滞を通り抜けて、近道のつもりで順路を変えたが、以後、二人は次々に思いがけぬ事件に遭遇する。
 辺都な田舎町では調子っぱずれのインターナショナルの歌声が高らかに響き、高級車がトラクターに衝突されている事故現場で、ブルジョワ娘(ジュリエット・ベルト)と農夫(ジョルジュ・スタケ)が階級闘争でいがみあい、PHOTOGRAPHIE(写真)ならぬFAUXTOGRAPHIE(写ウソ)が全員の記念写真を撮ってしまう一瞬が入りこみ、ロランとコリンヌはブルジョワ娘と農夫から敵視されて脱走。
 少女のヒッチハイカーにロランがつられて怪しげな男を同乗させると、男(ダニエル・ポメノレール)はむやみに発砲し、“ジョゼフ・バルサモ”(18世紀の大詐欺師、“カリオストロ伯”のフランス名)と名乗る。男は奇蹟を手品のように起こすが、ロランとコリンヌの夢はあきれるくらいくだらない。コリンヌが銃を奪って脅かすと、男は野原の車の残骸を羊の群れに生き返らせ、二人は逃げ、暴走のあげく、ファセルは衝突して燃え上がって…。
 徒歩で迷いこんだ森のなかでは、“エミリー・ブロンテ”と“親指太郎”がルイス・キャロル風に現れ、草原ではフランス革命の若き思想家サン=ジュスト(ジャン=ピエール・レオー)が出現し、青年は現代にも登場して電話ボックスで孤独な愛の歌を歌う。
 コリンヌが大股びらきでヒッチハイクしたトラックは、農場の広場でモーツァルトをピアノ演奏する音楽行動委員会の集会へ。ゴミ清掃車に拾ってもらって二人が出会うのは第三世界のアラブ人とアフリカ黒人。
 やっと到着したワンヴィルの実家では父はすでに死に、母は遺産を分ける話に耳をかさない。母殺しを盛大な事故に見せかけ、夢がかなって大金持ちになったつもりの二人だが、ビートニックのゲリラ戦闘集団が現れる…。

スタッフ

監督:ジャン=リュック・ゴダール
脚本・脚色・台詞:ジャン=リュック・ゴダール
撮影:ラウル・タタール
音楽:アントワーヌ・デュアメル
オリジナル・サウンドトラックCD:ユニバーサル・レコード(UCCM1021)、
モーツァルト〈ピアノ・ソナタ〉K576
シャンソン:ギィ・ベアール〈もしもし、聞こえるかい?〉
録音:ルネ・ルヴェール
編集:アニェス・ギユモ
記録:シュザンヌ・シフマン
製作主任:フィリップ・センネ
製作総主任:ラルフ・ボーム

キャスト

コリンヌ:ミレイユ・ダルク
ロラン:ジャン・ヤンヌ
農夫:ジョルジュ・スタケ
農夫と階級闘争する娘/FLSOの隊員:ジュリエット・ベルト
ジョゼフ・バルサモ:ダニエル・ポメルール
マリ=マドレーヌ/FLSOにいけにえにされる女:ヴィルジニー・ヴィニョン
エミリー・ブロンテ/ピアニストの助手:ブランディーヌ・ジャンソン
グロ・プセ(親指太郎):イヴ・アフォンソ
サン=ジュスト/電話ボックスの若者:ジャン=ピエール・レオー
ピアニスト:ポール・ジェゴフ
音楽行動委員会の聴衆/FLSOのジード嬢:アンヌ・ヴィアゼムスキー
音楽行動委員会の聴衆:ミシェル・クルノー
浮浪者:ジャン=クロード・ギルベール
アラブ人:ラズロ・サボ
FLSOの隊長:ジャン=ピエール・カルフォン
隊長の女ヴァレリー:ヴァレリー・ラグランジュ
FLSOの料理人エルネスト:エルネスト・メンゼル
FLSOの隊員イヴ:イヴ・ベネイトン
FLSOの隊員イザベル:イザベル・ポンス

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