原題:IN THE BEDROOM

本年度ゴールデングローブ賞・最優秀主演女優賞(シシー・スペイセク) 全米放送映画批評家協会賞(最優秀主演女優賞) ナショナル・ボード・オブ・レビュー(最優秀監督賞・最優秀脚本賞) アカデミー賞主要5部門ノミネート

2001年12月25日全米初公開

2001年/アメリカ/カラー/130分/ 配給:UIP映画

2009年04月09日よりDVDリリース 2003年03月21日よりビデオ発売&レンタル開始 2003年03月21日よりDVD発売&レンタル開始 2002年8月3日より日比谷シャンテにてロードショー公開

公開初日 2002/08/03

配給会社名 0081

公開日メモ 夏休みで帰省している一人息子のフランクは、幼い2人の子供がいる年上の女性ナタリーと愛し合っている。しかし、彼女とよりを戻したい夫リチャードは離婚に応じず、度々彼女の家にやって来る。そして、短い夏が終わりに近づいたころ、彼らは思いもよらぬ悲劇に見舞われる。

解説


 ニューイングランド、メイン州の小さな町。マット・ファウラーは開業医で、妻ルースは合唱隊の教師をしている。夏休みで帰省している一人息子のフランクは、幼い2人の子供がいる年上の女性ナタリーと愛し合っている。しかし、彼女とよりを戻したい夫リチャードは離婚に応じず、度々彼女の家にやって来る。そして、短い夏が終わりに近づいたころ、彼らは思いもよらぬ悲劇に見舞われる。
ファウラー夫妻は知的で理性を持つ“普通の人々”だった。けれど、愛する息子を奪われた時、彼らが選んだのはあまりにも衝撃的な結末だった。悲劇に直面した時、初めて鮮明になる夫婦の関係。お互いをいたわり合うように見えて、いつの間にか歯車が狂い、溝が深まっていく。妻は心を閉ざし、今この時をやり過ごすことだけを考え、夫はそんな妻にどう対応すればいいのかわからない。ある時、彼らは正直な気持ちを、ぶつけ合う。そして、やがて本来の自分を取り戻し、再び絆で結ばれる。しかし、それは以前のように幸せな家族の形ではない。彼らは“究極の選択”によって新たな重荷を背負ってしまったのだった。
 初めての監督作にして、たぐいまれな洞察力に基づく深い人間観を見せたのは、「アイズ・ワイド・シャット」などで知られるベテラン俳優、トッド・フィールド。彼は10年ほど前に作家アンドレ・デュバスの書いた物語と出会った。ニューイングランドの中流階級を舞台に家族と人間の絆、失われた愛、暴力の本質に鋭く迫ったその著作群から監督は多大なインスピレーションを受けたという。
それはまさしく“アメリカの意識”だった。彼はロブ・フェスティンガーとともにデュバスの短編を基に脚本を書き上げ、人間の心と魂を情感豊かに描き出した。
 この映画では次に何が起こるのかまったく予測できない。その豊かで奥行きのある物語が醸し出すサスペンスは一級のミステリーのように画面に緊張感をみなぎらせる。そして同時にここで描き出されることのすべてがリアルに映る。映画の中で起こるあらゆる出来事、そこで生まれる感情のひとつひとつが決して他人事ではない。私たち自身の問題でもあるのだ。
 劇中、ルースが牧師に胸の内を打ち明ける。「静かなのに、とてもうるさいの・・・」。
映画にも同じことが言えるかもしれない。語り口は淡々として静かなのに、登場人物の心のざわめきが聞こえてくる。無言のシーンから、彼らの心の痛みがヒリヒリと刺すように伝わってくる。そして、映画は私たちに問いかける。愛とは、正義とは、そして夫婦とは何なのかと・・・。
この作品の成功の鍵を握っていたのは俳優たちの演技だといっても過言ではない。「キャリー」から「ロンリ一八ート」まで5度もアカデミー賞にノミネートされ、「歌え!ロレッタ愛のために」で見事オスカーを手にしたシシー・スペイセクと、イギリス出身ながら「フル・モンティ」「恋におちたシェイクスピア」でハリウッドでも引っ張りだこになったトム・ウィルキンソン。誰もが認める当代随一の役者たちは、ファウラー夫妻のやるせない心情を静かに表現し、見る者の心に訴える。スペイセクはこの作品でゴールデン・グローブ賞、NYとロスの映画批評家賞を受賞。ウィルキンソンもNY批評家賞に輝いている。また、’92年度アカデミー助演女優賞を獲得した「いとこのビニー」や「恋する遺伝子」のマリサ・トメイがナタリーに扮し、これまでのコミカルな演技から大きな脱皮を見せる。悲劇の息子フランクには、12歳のとき「顔のない天使」でメル・ギブソンの相手役を務め、「シン・レッド・ライン」にも出演したニック・スタール。暴力亭主リチャードには「M:1-2」「マグノリア」のウィリアム・マポーザーが扮し、屈折した役を好演している。ニューイングランドの美しい風景の中に、人々の悲しみを静かに写し撮ったカメラは撮影のアントニオ・カルバーチェ。編集のフランク・レイノルズ、衣裳デザインのメリッサ・エコノミーといった一流スタッフのほか、音楽には「アメリカン・ビューティー」「グリーンマイル」の大御所卜ーマス・ニューマンが当たり、情感をよりいっそう盛り上げている。

ストーリー



ニューイングランド、メイン州の沿岸にある小さなカムデン。医師マット・ファウラー(トム・ウィルキンソン)は静かで美しいこの町で診療所を開いている。ニューヨーク生まれの妻ルース(シシー・スペイセク)は合唱隊の教師をしている。
 その夏、建築家を目指している一人息子フランク(ニック・スタール)は秋から始まる大学院の学費を稼ぐため、帰省してロブスター漁のアルバイトをしていた。彼は近くに住む年上の女性ナタリー(マリサ・トメイ)と付き合っている。彼は暴力夫リチャード(ウィリアム・マポザー)と別居中で、幼い息子ジェイソンとダンカンを抱えるシングル・マザーだが二人は心から愛し合っていた。息子たちもフランクになつき、ナタリーはファウラー家に足繁く出入りしていた。そんな二人を父マットは温かく見守っていたが母ルースの心は複雑。女より学業に専念してほしいというのが本音だった。フランクも母の気持ちを察して、彼女の前では“ひと夏の恋”と、真剣な話題になることを避けていた。
 実家での気まずい雰囲気にフランクはしだいにナタリーの家で暮らすようになる。しかし、ナタリーとの離婚に応じないリチャードも、よりを戻そうとして再三彼女のもとを訪れていた。彼にとってフランクは夫婦の間に割り込んできた邪魔者。たまたま居合わせたフランクに暴力をふるうことさえあった。帰宅したフランクの怪我の手当てをするマット。ルースはナタリーの過去のゴシップを持ち出して彼女と別れるように懇願する。どちらにしても警察沙汰にはしたくない。それが彼ら全員の気持ちだった。
 フランクの心は揺れていた。ナタリーとの生活のために大学院への進学を1年遅らせることも考えていた。ロブスター漁をしながら祖父の跡をついで漁師になりたいとも思った。ただ、ナタリーが彼にとって素晴らしい女性であることだけは確かだった。
 ある日、フランクはジェイソンからの電話を受けてあわててナタリーの家へと走った。家はリチャードに激しく荒らされていた。彼は警察に通報しようとするが、ナタリーは泣きながらこれを止める。その時、再びリチャードが現れた。フランクはナタリーと子供たちを2階に避難させるが、リチャードは裏に回ってキッチンのドアから入ってくる。男たちが言い争う声を聞いて階段を下りてくるナタリー。その時、銃声が響き渡る。
 ナタリーからの電話を聞いたマットは無言で立ち尽くした。信じられない、信じたくない恐ろしい現実に、ルースは打ちひしがれた。葬儀の日の墓地で、ナタリーは遠<からニ人の姿を涙の向こうに見やるしがなかった。ルースはガウン姿のまま、テレビの前で1日が過ぎていくのを待った。マットは友人と会ったり、診療所の仕事で気を紛らせようとした。マットは親友ウィリス夫妻から山荘に招待されてルースに相談するが、彼女は心ここにあらず。しかも、リチャードの保釈査問会で、ナタリーが殺害の現場を目撃していなかったことがわかり、裁判の行方にまで暗雲がたちこめていた。殺人でなく故殺と認められれば、わずか5年の刑。それは愛する一人息子を殺された夫婦にとって許せない判決だった。 リチャードは缶詰工場を経営する両親が出した保釈金のおかげで拘留を解かれた。夫婦はウィリスの山荘に出かけた。マットはウィリスとともに森の木を伐採して汗を流したが、ルースの心が晴れることはない。帰宅して、マットがいたわりの言葉をかけてもルースの悲しみが癒されることはなかった。無力感がルースを襲い、怒りだけが大きくなっていった。マットは仲間とポーカーを囲んだが、皆の気遣いが煩わしかった。庭の大木の葉の下に隠れていた木のくいを見てマットの胸は疼いた。それは少年時代のフランクが木登りするために幹に打ちつけた足場だった。  鬱々とした日々が過ぎていった。マットはナタリーが働く食品店を訪ねるが、会話は気まずいものだった。数日後、ナタリーはルースのいる学校の講堂に赴いて許しを与うたが、ルースは平手打ちで応えた。ある日、スーパーでリチャードを見かけたルースの心痛は頂点に達した。  その夜、夫婦は初めて自分たちの本心をさらけ出した。ルースにはビールで悲しみを紛らわせようとするマットが許せなかった。マットは理性が必要だと思ったし、妻のために何をすればいいのかわからなかった。二人はともに相手を責めた。息子に甘くて女遊びをけしかけたマットと、口うるさくして息子をナタリーのもとに追いやったルース。二人は息子の死を相手のせいにしたかった。非難の対象は昔話から性格にまで及び、フランクの言葉を借りて自分を正当化しようとした。その時、玄関に募金集めの少女が現れる。 ふと我に返った夫婦は、互いに謝罪した。優しく抱き合い、再び心を通わせ合った。そして、マットはある決意を抱いていた。絶望感と怒りの中で、それは彼が選んだ唯一の方法だった・・・。

スタッフ

監督:トッド・フィールド
製作:グラハム・リーダー、ロス・ケイツ、トッド・フィールド
原作:アンドレ・デュバス
脚色:ロブ・フェスティンガー、トッド・フィールド
製作総指揮:テッド・ホープ、ジョン・ペノッティ
共同製作:ティム・ウィリアムズ
共同製作総指揮:ステファン・デンビッツァー、ペン・シーレ
撮影:アントニオ・カルバーチェ
編集:フランク・レイノルズ
音楽:トーマス・ニューマン
衣裳:メリッサ・エコノミー
キャスティング:ランディ・ヒラーC.S.A.、ベリンダ・モンテ

キャスト

マット:トム・ウィルキンソン
ルース:シシー・スペイセク
フランク:ニック・スタール
ナタリー:マリサ・トメイ
リチャード:ウィリアム・マポーザー
マーラ:カレン・アレン
ウィリス:ウィリアム・ワイズ
ケイティ:セリア・ウェストン

LINK

□公式サイト
□IMDb
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す