原題:AIKI

日活創立90周年記念作品

第59回ベネチア国際映画祭正式出品作品

2002年/日本/ヴィスタサイズ/ドルビーSR/119分/ 配給:日活

2003年06月25日よりビデオ発売&レンタル開始 2003年06月25日よりDVD発売開始 2002年11月30日よりテアトル新宿、シネ・リーブル池袋ほか全国お正月拡大ロードショー

(C)2002「AIKI」製作委員会 

公開初日 2002/11/30

配給会社名 0006

公開日メモ ただ生きてるだけじゃ、ダメなんだ! 『AIKI』の主人公、芦原太一は、ボクシングに情熱を傾ける21歳。ひたむきに打ち込んできた努力が報われようとしていたその時、不慮の事故で下半身麻痺の身体となり、掴みかけた夢を打ち砕かれてしまう。

解説



 ただ生きてるだけじゃ、ダメなんだ!
『AIKI』の主人公、芦原太一は、ボクシングに情熱を傾ける21歳。ひたむきに打ち込んできた努力が報われようとしていたその時、不慮の事故で下半身麻痺の身体となり、掴みかけた夢を打ち砕かれてしまう。車イスの生活を強いられ、ボクシングという”賭けるもの”を失った彼は、大切な恋人も仲間も拒絶し、自分の殻のなかに籠ってしまう。同情なんか欲しくない、俺に何が残ってるんだ、と…。病院で「生きてるだけ、めっけもんだよ」と励ます姉に、太一が返す言葉「ただ生きてるだけじゃ、ダメなんだ!」は、太一の人生観を表わす台詞として、映画を観るわたしたちの心にもズシリと響く。

受け入れることーAIKI≪合気柔術≫との出会い
過酷な現実を突きつけられて、一時は自殺まで考えた太一だったが、その1年後、風のように生きる不思議な女性・サマ子やテキ屋の親分・権水とのふれあいの中で、次第に明るさを取り戻していく。そして彼にとって最大の転機である<AIKI>=合気柔術との出会いが訪れることになる。
<AIKI>、それは江戸時代に秘密武術として伝承された古来の武道。決して力で人をねじ伏せるのではなく、合気によって相手の力を奪いコントロールするのが特色。”相手を拒絶するのではなく、まず受け入れなければ”という師範・平石の言葉は太一の心を動かす。太一が車イスという運命を受け入れ再生していくことと、<AIKI>が持つ本質は偶然、そして必然的に重なっていく。そのことに気がついたとき、彼は、同じ稽古を続ける仲間たちとなんら変わらない”いち柔術家”としてのスピリットを高めていくのである。 太一の中で、止まっていた”何か”は確実に走り始めていたのだった。そんな太一の変化を見てとった平石から、思いもかけない舞台が用意された!

実在のモデルとの友情が生んだ再生の物語
ともすれば単なる”障害者もの”ととられかねないこの微妙な題材を、人生の”生きる力”に焦点を当て、熱い魂の物語に昇華させたのは、『無敵のハンディキャップ』の天願大介監督。父である今村昌平監督の『うなぎ』『カンゾー先生』『赤い橋の下のぬるい水』の共同脚本家としても知られる天願は、同情に流されない透徹した視線で太一の再生の物語を描き出している。その裏に、太一のモデルとなった黒帯の車イス戦士、オーレ・キングストン・イェンセンとの10年間にわたる固い友情があることも付け加えておきたい。

エネルギッシュな俳優たち
難役である主人公の太一を見事に演じあげたのは、テレビ、CMで幅広く活躍しながら、カンヌ国際映画祭・国際批評家連盟賞を受賞した『回路』(黒沢清監督)の主演など、映画俳優として確実なステップアップを遂げている加藤晴彦。太一が心の闇からはい上がってくるさまをエネルギッシュに、爽快に演じている。また、ギャンブル好きの巫女という異色の設定で、太一にとって再生への大きな役割を果たすサマ子役には、つかこうへい作の舞台「犬を使う女」や利重剛監督の『クロエ』(ベルリン国際映画祭正式出品)の主演と進境著しいともさかりえ。さらに師範・平石役の石橋凌や、桑名正博、火野正平など個性派俳優が熱のこもった演技で、観る者の胸をも熱くするセリフを太一に投げかける。永瀬正敏、田口トモロヲ、松岡俊介ら、天願監督にゆかりの深い俳優陣が意外なシーンで出演しているのも見逃せない。

太一は言う、「人生はクソだ」。
1人の青年が運命を受け入れ再生していくこの物語は、設定は違っても、人生において誰しもが経験する話だろう。
だからこそ、胸を熱くする感動と心を震わせる共感がある。爽快で前向きな青春映画が、いまここに誕生したのだ!

ストーリー



ボクシングに情熱を傾けていた芦原太一(加藤晴彦)にその悲劇が訪れたのは、新人王決定戦の準々決勝で劇的勝利を収めた帰り道だった。興奮冷めやらぬ太一が恋人チカ(木内晶子)を乗せたバイクに、一台の乗用車が突っ込んできたのだ。
 不慮の事故は彼のすべてを奪った。医師の診断は脊髄損傷による下半身麻痺。太一はあれほどまでに打ち込んできたボクシングを捨て去らねばならないばかりか、一生、車イスの生活になると宣告される。失意の太一は、同乗していたものの大事に至らなかったチカや仲間の見舞いもはねつける。そうした様子を見て、「障害者になると、そうやって世間が狭くなっていく」と辛辣な言葉を投げかけたのは、同じ病室の脊髄損傷の先輩・常滑(火野正平)だった。
 すでに男性器すら使いものにならない、と笑って語る常滑の症状は太一よりも重そうだったが、その穏やかな口調は、障害と一生つきあう覚悟が出来ているかのようだ。夜、睡眠薬自殺を試みようとする太一に、常滑は「あと1年だけ生きてみな。それでも面白いことがなきゃ、俺は止めねえよ」と言う。

 それから1年。退院して車イスの生活を送る太一は、職探しもうまくいかず、たったひとりの身内である姉・民子(原千晶)の結婚が自分のために延期になったことも知って、自暴自棄の生活を送っていた。だがある晩、チンピラに絡まれた若い女を救おうとして叩きのめされたところをテキ屋の親分・権水(桑名正博)に助けられ、その勇気を買われて、神社の祭りの露店商の仕事を得る。初仕事の夜、慣れない露店の仕事に客を集めてくれたのは、”イカサマのサマ子”と名乗る謎めいた女性(ともさかりえ)だった。
 サマ子はこの神社で巫女のアルバイトをしているが、実は日本中を放浪している非合法カジノ専門のギャンブラーだという。風のように生きるサマ子は、「人生はクソだ。夢とか希望も、しょせんは全部汚ねえクソの中なんだ」と吐き捨てた太一に、「あたしはひねくれてる暇があったら楽しいことしたいな」と笑みを返す。太一はサマ子の瞳の奥に生きる強さを見た。

 サマ子に背中を押されるように、再びボクシングを始めようとする太一。ジムの会長には「車イスで出来るスポーツをやれ」と断わられるが、彼には自分にとって人生を再び燃やして打ち込めるものは[格闘技]でしかないことが解っていた。しかし太一を受け入れてくれる場所はどこにもない。
 そんな折、神社の境内で行なわれた古武術の奉納演武で、座ったまま、力を使わず門弟を投げ飛ばす師範の鮮やかな技を見た太一は、その<AIKI>=合気柔術に入門を志願する。だが師範・平石(石橋凌)から即答は得られなかった。どうせまた断わられる…そう思っていた太一のもとに後日、平石からの電話が入る。平石は道場で自ら車イスに乗り、同情からではなく、確かな手応えを持って太一を受け入れたのだった。
 平石の道場で修行を積みはじめた太一の表情には以前のような自信が戻ってきていた。朝のロードワークも再開し、露店の仕事にも弾みが出てきた。そして、いつも自信をくれるサマ子に対する想いにも…。

 しかし、そんな自信も打ち砕かれる事件が起きる。朝、ロードワーク中の太一を件のチンピラたちが見つけ、取り囲んできた。彼は慌てずに技をかけようとしたが、次の瞬間、車イスのバランスが崩れて手を放してしまったところをひっくり返され、こっぴどく足蹴にされる。「しょせん車イスじゃ技なんかかけられねえんだ」。ショックのあまり道場で自分を見失う彼に、平石は言う。「正しい質問には正しい答えが含まれている。迷うのは、問いの立て方が間違っているからだ」と。

 草野球の小学生たちにボールを投げ返そうとした太一は、車イスのブレーキを外して反動をつけた瞬間、相手の身体を自分の一部とするというAIKIの基本を会得する。それから太一は車イスのブレーキを外し、それを自分の身体の一部と感じながら稽古をするようになった。太一はみるみる強くなっていく。

 大使館で行なわれる演武会。その代表に平石は太一を指名するのだった…。

(※劇中で登場するAIKIとはすべて大東流合気柔術を意味する。)

スタッフ

監督・脚本:天願大介
製作総指揮:中村雅哉
企画:猿川直人
製作:伊藤梅男、石川富康、岡田真澄、高野力、長澤一史、長橋恵子
プロデューサー:飯野久、松田康史、古賀俊輔
音楽:めいなCo.浦山秀彦、熊谷陽子
撮影:李以須
照明:李龍禹、石丸隆一
美術:稲垣尚夫
録音:矢野正人
音響効果:柴崎憲治
編集:阿部亙英
スクリプター:宮下こずゑ
制作担当:梶川信幸
助監督:武正晴
製作:日活株式会社、株式会社バップ、株式会社衛星劇場、株式会社広美、
   株式会社IMAGICA、株式会社レントラックジャパン、カプリースブリッジ
エンディングテーマ:ウルフルズ「愛撫ガッチュー」アルバム『ウルフルズ』
(東芝EMI)収録
編集協力:佐々木淳
デザイン :A NEW PERSPECTIVE

キャスト

芦原太一:加藤晴彦
サマ子:ともさかりえ
芦原民子:原千晶
チカ:木内晶子
権水松太郎:桑名正博
川添:清水冠助
ビデオ屋の客:佐野史郎
『秘め事』のママ:余貴美子
バーテン:永瀬正敏
バーのアベック男:松岡俊介
郵便配達員:我修院達也
レンタルビデオ店長:神戸浩
石川三郎:田口トモロヲ
宮司:ミッキーカーチス
常滑清:火野正平
平石正嗣:石橋凌

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