ムタが案内した路地のむこうは猫の国。

2002年/日本/カラー/75分/ 配給:東宝

2003年07月04日よりビデオ発売&レンタル開始 2003年07月04日よりDVD発売開始 2002年7月20日より日比谷映画ほか全国東宝系にてロードショー公開 同時上映:『ギブリーズ episode2』

(C)2002猫乃手堂・TGNDHMT

公開初日 2002/07/20

配給会社名 0001

解説


2002年、夏。
企画・宮崎駿、新鋭・森田宏幸監督が贈る、<ニュージブリ・ワールド>

 数々の興行記録を塗り替え、日本全国で2300万人を超す動員を記録した『千と千尋の神隠し』。また、第52回ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞、アジア、欧州、北米などで公開が決まるなどワールドワイドな展開に世界中の関心があつまる中、2002年・夏、今年もスタジオジブリは、日本中が元気になる冒険ファンタジーをお届けします。それが、最新作『猫の恩返し』です。
 この作品は、「『千と千尋の神隠し』の次回作を、若い人に挑戦させよう!」と、3年前宮崎駿が、新人監督が演出することを想定して、企画をスタートさせました。
 宮崎監督は95年に大好評を得た『耳をすませば』の姉妹編をと、原作者・柊あおいに原作を依頼。柊あおいはこの映画のために『耳をすませば』に登場した<バロン・ムタ・地球屋>をモチーフに、『バロン-猫の男爵』(徳間書店刊)を描き下ろしました。そして、宮崎監督は、ジブリの新鋭・森田宏幸を監督に指名。森田監督は『ホーホケキョ となりの山田くん』、三鷹の森ジブリ美術館上映作品『ココロの大さんぽ』の原画を担当し、そのみずみずしい感性を開花させた新鋭の演出家です。宮崎駿&高畑勲両監督に代表されるスタジオジブリに、新しい才能がまた一人誕生しました。

なぜ、『猫の恩返し』なのか。
スタジオジブリの新たなる提言。良いことをすれば、良いことがある。

 『千と千尋の神隠し』では、主人公千尋の<生きる力を取り戻していく>姿が、幅広い世代から熱狂的な支持を受けました。しかし、忘れてならないのが「カオナシ」の存在です。他者とのコミュニケーションが苦手な、幼児性を持つキャラクター。自分のことしか考えられない、他人の存在はどうでもいいという、カオナシの姿に、ちょっと気まずい思いをしながら自分自身と照らし合わせた方も多いでしょう。困ったことに、大人たち同様、子どもたちの心も出口が見えない状況です。だからこそ、千尋によって、カオナシの閉ざされた心が開きかけた時、多くの人々がホッと胸をなでおろしたのかもしれません。<生きろ><生きる力を呼び覚ませ>生きることの意味をテーマに作品を世に送り出してきたスタジオジブリが最新作で提案するもの、それは<恩返し>です。古き良き、言い伝え。懐かしい響きをもった言葉です。「良いことをすれば、良いことがある」。他者への思いやりの気持ちを持つことで、自分に思わぬ幸運がおとずれる「鶴の恩返し」「すずめのお宿」など、繰り返し語り継がれた先人たちの教えです。たとえ、特別な能力や魅力がなくても、ひとを思いやる気持ちは誰もが持てます。この映画のヒロインが助けたのは、猫でした。そのおかげでヒロインは冒険の旅ができます。その体験をとおして生きていく勇気と元気を心に刻むことができるのです。三日、世話になれば一生恩を忘れないといわれる<犬>とは対照的に、<恩知らず>で有名な<猫>たちの<恩返し>が巻き起こす、笑いとユーモアと活劇に満ちあふれた物語なのです。

猫になっても、いいんじゃないッ?
日がな一日ゴロゴロして。天国かもね。イヤーなことみんな忘れてさぁ。

 主人公ハルは、どこにでもいる、不器用な17才の女子高校生。特別な才能を持つわけでもなく、とびきりの美人というわけでもありません。いまいち決断力に欠け、自分ではどうしようもない現実に向き合った時、人の意見に同調することで問題を避ける傾向もあります。その日ハルは、ツイていませんでした。寝坊はするわ、学校に遅刻するわ、みんなの前で恥をかくわ。しかしハルはトラックに轢かれそうになった猫を見たら、自らの危険を顧みず思わず助けてしまう、そういう女の子です。ところが助けた猫が猫の国の王子様(!)だったばっかりに、猫の国に招待されてしまいます。「猫の国ィ? 猫の国もいいかもね。おいしいものいっぱい食べて、お昼寝して、イヤーなことみんな忘れて」そんなことをふと思ってしまうハルの気持ちは、もしかしたら、現代を生きる日本人に通じるものがあるかもしれません。不透明な将来、幸い現実の日々をちょっとだけリセットしてみたい気分が、私たち一人一人の心に蔓延しているかのようです。しかし、猫の国に行ったハルは、猫による大恩返し大会の前に「猫になってもいいかも」と思った瞬間から猫に変身しつつある自分の姿に驚愕するのです。そんな時、猫の男爵・バロンがハルの前に颯爽と登場します。非日常の世界で満足し、本来自分の居場所である<現実>に戻ることをためらうハルに対し、バロンは何度となく語りかけます。「自分の時間を生きるんだ」。とかく現実逃避しがちな私たちの心にバロンの言葉は、どう響くのでしょうか? そして、ハルは無事人間の世界に戻ることができるか? この夏、ハルと一緒に冒険の旅へ出かけませんか?

ストーリー



 その日は朝からついていなかった。ハルは鳴り響く目覚ましの中、遅刻間違いなしの時間に起きてしまう。慌てて学校に駆けつけるもすでに授業は始まった後。おまけに気になる町田君の前で恥をかかされる始末。
 親友のヒロミと愚痴をこぼしながら下校していると、トラックに轢かれそうになっていたネコを発見。間一髪で、ヒロミのラクロスラケットで救い出した。ところが、そのネコは、立ち上がると人間のようにしゃべって礼を述べ、唖然とするハルの前から去って行ったのだった。しかし、これはそれから起きる事件のほんの序章でしかなかった。
 その夜、ハルの家の前には、どこからともなく沢山のネコが集まってきた。そしてその猫たちが見守る中、猫行列と共に「猫車」に乗った猫王が現れた。昼間の猫はこの猫王の王子だったのだ。猫王はハルに、王子を助けた恩返しに幸運を授けようと告げ、楽の音と共に去っていった。
 翌日からおかしなことが起こりはじめた。ヒロミの家にラクロスのラケットが山積みされ、自宅の庭は猫じゃらしだらけ。学校の下駄箱にはネズミのプレゼントが届けられる。愕然としているハルの元へ猫王の側近が現れた。ハルを猫の国に招待するという。そして混乱したハルは、何がなんだか分からない内に、猫王の王子ルーンの妃になる約束をさせられてしまったのだった。
 困っているハルの頭上から、不思議な声が響いてきた。「ハルちゃん、猫の事務所を探して」。ハルはその声に誘われるまま、街の野良猫、ブタネコのムタに出逢い、不思議なドールハウス街で人形バロンと対面する。その時夕日が差し込み、バロンはたちまちネコの男爵に姿を変えたのだった。
 猫の事務所に入ったハルはバロンの仲間、ムタや大ガラスのトトたちに事のあらましを説明する。バロンは、ハルのために猫の国へ乗り込み、何とかしようと約束した。その時、事務所の戸が「トントントン」と叩かれた。ハルもバロンの言葉に安心したのか、無造作に扉を開けた。猫王の側近! と思うまもなく、猫の大群が乱入し、ハルは猫の国へ連れ去られてしまうのだった。後を追うバロン、ムタ、トト。
 ネコの国では着々と婚礼の支度が進んでいた。ちやほやされるハルは思わず「猫の国もいいかも・・・」と何気なく考えてしまう。その時ハルにはヒゲが生え、耳はネコになってしまった。夜明けまでにこの世界を脱出しなければ、ハルは本当に猫になってしまうのだ。その時バロンが颯爽

スタッフ

製作:松下武義、氏家齋一郎、星野康二、宮川智雄、相原宏徳、石田敏彦
企画:宮崎駿
原作:柊あおい(「バロン-猫の男爵」徳間書店)
脚本:吉田玲子
音楽:野見祐二
主題歌:つじあやの(ビクター/スピードスターレコード)
製作プロデューサー:鈴木敏夫、高橋望
制作:スタジオジブリ
監督:森田宏幸
作画監督:井上鋭
美術監督:田中直哉
色彩設計:三笠修
映像演出:高橋賢太郎
録音演出:林和弘
整音:住谷真
制作プロデューサー:田中千義
制作担当:奥田誠治、藤巻直哉
制作:スタジオジブリ
製作:「猫の恩返し」製作委員会
特別協力:ローソン

キャスト

ハル:池脇千鶴
フンベルト・フォン・ジッキンゲン男爵(バロン):袴田吉彦
ユキ:前田亜季
ルーン:山田孝之
ひろみ:佐藤仁美
ナトリ:佐戸井けん太
ナトル:濱田マリ
ムタ:渡辺哲
トト:斉藤洋介
ハルの母:岡江久美子
猫王:丹波哲郎

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