原題:Monsoon Wedding

あまい涙。 しょっぱい涙。 にがい涙。 涙の数だけ幸福になれる。

2001年ヴェネチア映画祭金獅子賞受賞

2001年12月12日フランス初公開

2001年/インド・アメリカ・フランス・イタリア/ヒンディ語・英語/カラー/114分/Dolby Digital 配給:メディア・スーツ

2003年01月24日よりDVD発売開始 2002年8月17日よりbunkamuraル・シネマにて公開

(C)2001 Mirabai Films,Inc.all rights reserved.

公開初日 2002/08/17

配給会社名 0066

公開日メモ 2001年ヴェネチア国際映画祭で、アレハンドロ・アメナーバル、アモス・ギタイ、キム・キドゥク、ケン・ローチといった巨匠たちの作品をおしのけて、みごとインド人女性監督初のグランプリ(金獅子賞)に輝いた、インドを代表する監督ミラ・ナイールによる躍動感にあふれた人生讃歌の最新作

解説


2001年ヴェネチア国際映画祭で、アレハンドロ・アメナーバル、アモス・ギタイ、キム・キドゥク、ケン・ローチといった巨匠たちの作品をおしのけて、みごとインド人女性監督初のグランプリ(金獅子賞)に輝いた、インドを代表する監督ミラ・ナイールによる躍動感にあふれた人生讃歌の登場である。
ドットコム社会と伝統が共存する現代インド。ニューデリーのビジネスマン、ラリット・バルマは可愛い娘アディティのために、モンスーンの時期に伝統にのっとった結婚式を挙行する。世界各地に散らばったバルマ一族が集まり、結婚式までの日々にさまざまな感情のレリーフがかたちづくられることになる——。
結婚を承諾しても不倫を精神的に清算できないアディティの顛末。幼い頃に受けた忌わしい出来事をひた隠しにしてきた従姉の葛藤。従兄に一目ぼれしてしまったセクシーなティーンエイジャーの情熱的なアプローチ。式を引き受けたウェディング・プランナーとバルマ家の貞淑なメイドの恋。そして式の成功に心を砕くバルマ氏にも大きな試練と、5つのストリーがゴージャスな映像のなかに紡がれていく。
結婚式を素材にした群像ドラマといえばロバート・アルトマンの『ウエディング』(78)などが頭に浮かぶが、ナイールはきめの細かい演出で集う人々の想いを浮かび上がらせる。インド・パンジャブ地方の伝統作法に貫かれた、マリーゴールドで埋め尽くされた絢欄たる式のなかて、愛と憎しみ、モラル、親と子の絆という普遍的なテーマが描きだされつつ人生の旅立ちの喜びが余韻として残る。苦悩をふりはらい人生は前向きに進むこと。なにより愛は選び取るものだというメッセージが前面に押し出されているのだ。
『India Cabaret』(85)をはじめとするドキュメンタリーで頭角を現し、長編デビュー作『サラーム・ボンベイ!』(88)では社会を鋭い視点で切り抜き『大人は判ってくれない』インド版と絶賛を受けてカンヌ国際映画祭新人賞(カメラドール)に輝いたナイールは1996年には一転して『カーマ・スートラ 愛の教科書』でメロドラマチックな映像世界を構築してみせた。本作品では随所にニューデリーの現在を手持ちカメラでリアルにスケッチしながら、新旧の音のモザイクを散りばめ、華麗かつ巧みに情の機微を語っていく。モンスーンの雨があらゆる悩みを流し去り、新しい道が拓けるインドの人々のそうした想いを称えながら、現代的でありながら伝統を重んじる故国インドに対する並々ならぬ愛が満ち溢れる。これそ作家性と娯楽性をあわせもつ、現時点でのナイールの最高傑作といっても過言ではないたろう。
脚本はナイールの教え子てあったサブリナ・タワン。ニューデリー出身であるダワンにとっては初の長編作品となる。同じような環境で育ったダワンとナイールはリアルな現代インドを語るには、結婚式を舞台にすることが恰好であると考え、このストーリーをニューヨークでつくりあげた。
撮影はマイク・フィギスの『リービング・ラスベガス』(95)やルイ・マルの『42丁目のワーニャ』(94)などで知られるデグラン・クイン。ナイールとは『カーマ・スートラ 愛の教科書』でチームを組んでいるだけあって、呼吸もピッタリ。カラフルでヴィヴィッドな映像を生み出している。
モダーンな視点で鮮やかなインド世界を表現した美術には、アン・リーの『アイス・ストーム』(97)やゲイリー・マーシャルの『プリティ・ブライド』(99)で力をみせたステファニー・キャロル。『天井桟敷のみだらな人々』(98)で卓抜した仕事をみせた衣装のアージュン・バシーンともども、こちらも『カーマ・スートラ 愛の教科書』に参加している。編集は『ディナー・ラッシュ』(2002年公開予定)のアリソン・C・ジョンソン。製作は『センターステージ』(00)のキャロライン・バロン。製作総指揮はカリン・クサマの『ガールファイト』(00)やキンバリー・ピアースの『ボーイズ・ドント・クライ』(99)を送り出したジョナサン・セーリングとキャロライン・カプランが引き受けている。
また映画の魅力を倍増している音楽は『エキゾチカ』(94)をはじめ6本のアトム・エゴイヤン作品で実力を高く評価されたマイケル・ダンナ。ナイールが“インド人の兄弟”と呼ぶダンナはインドで最高のミュージシャンを起用してオリジナリティにあふれた旋律を披露している。彼はスコット・ヒックスの『アトランティスのこころ』(02)にも参加するなど、現在もっとも注目されている存在である。なおバングラ・ロックの主題歌は、パンジャブ人シンガー、サクウィンダー・シンが作曲し歌っている。
出演者は日本では馴染みがないが、インドを代表する俳優が揃っている。ラリット・バルマを演じるのは、国内外を問わず125本以上の映画に出演している偉大な俳優ナシルディン・シャー。その妻にベテランの舞台女優で監督としても知られるリレット・デュベイ。娘のアディティには有名なポップシンガーで映画出演はこれが2作目となるヴァソンダラ・ダス。花嫁の従姉リアに扮するのは1998年『Satya』でインドのアカデミー賞といわれるフィルムフェア批評家賞で最優秀主演女優賞を獲得したシェファリ・シェティ。ウェディング・プランナーには、インド国立レパートリー劇団に所属する演技派ヴィジェー・ラーズ。そのお相手となるメイド役には、デリー大学の学生でこの映画がデビュー作となるティロタマ・シヨーム。
ミラ・ナイールという才能がつくりあげた、すばらしくいとおしい愛の贈り物。
流す涙の数だけ幸せになれると信じて日々を生きれば、マリーゴールドに包まれた明日がきっとやってくる——。

ストーリー



インドのデリーに住むビジネスマン、ラリット・べルマ氏の庭では結婚式の準備が始まった。長女アディティが親の決めた縁談を急に承諾。相手は現在、アメリカで仕事をするエンジニアのヘマント・ライ。彼女はテレビ局の仕事も辞めて、彼の住むヒューストンについていくことになっていた。ベルマ氏はモンスーンの時期に親戚縁者を集めて伝統にのっとった式を挙げようとする。しかし、これがはからずも集う人々の愛のタペストリーを織り成すこととなった——。

いよいよ式まで4日。アディティは担当していた番組のスタジオに別れを告げに行く。それは毎回激しい討論が交わされることを売りにしている番組で、仕切っているビクラムと彼女が不倫関係にあることはスタッフ関係者なら誰もが知るところだった。
スタジオからの帰り、アディティは父方の従姉のリアを迎えに行く。彼女にとって、リアは本音を話せる唯一の親族。車のなかで、アディティは今回の縁談を受け入れた理由がビクラムの不誠実さだと告白する。
翌日、ヘマントの一家がたくさんの貢物を抱えてやってくる。両家の親族が見守る前で、アディティとヘマントは指輪を交換、昔ながらの作法でふたりの婚約は成立する。しかし、アディティの気持ちは決して晴れなかった。
式の前日、アディティはヘマントを呼び出し、彼女は不倫関係にあった恋人がいたことを打ち明ける。彼女の告白を聞いたヘマントは混乱しながらある決断をする……。
ベルマ氏は娘の結婚式を盛大にするため、腐心していた。衣装に賛を尽くすのはもちろん、庭に大きなテントを張り、インドの結婚式の花であるマリーゴールドで埋め尽くそうと考えていた。連日の準備はハードで、ベッドについたときはくたくた。妻の要求にも応えられない。嫁ぎゆく娘の寝顔をしみじみみつめて、こんなに速く成長するなんてと嘆くばかりで、妻の寂しさには気づかない。
バスルームで隠れてタバコを吸う妻の横顔には、長年、古風な結婚生活に耐えてきた苦悩が刻み込まれていた……。
ベルマ家の結婚式を仕切るウェディング・プランナー、P.K.デュベイは、常に携帯電話を手放さないやり手で、飾り付けを担当する職人たちとの信頼関係も充分。テントを白から色物に替えろといわれたときも追加料金を請求するしっかりものだった。すべてに前向きな彼の悩みは母親が口うるさいこと。早く孫の顔がみたいと催促されるが、気ままな独身生活に決別する勇気がなかったのだ。ところが、ベルマ家のメイド、アリスとぶつかったときにすべてが変わっってしまった。常に控えめで、伏目がちで楚々とした風情の20歳のアリス。アディテイの部屋でこっそりとアクセサリーを身にまとい、鏡に向かってうっとりしている彼女の姿を盗み見たデュベイは、すっかり彼女に心を奪われてしまう……。
父を早くに亡くし、叔父ラリットを本当の父のように慕ってきたリアも、いまでは作家として嘱望される存在。本当の姉のように慕ってくれるアディティの結婚を心の底から喜び、思い出深いベルマ家に戻ってきた。屋敷には親族が次々に集まり、リアにとっても楽しい宴会が続いたが、叔父のテージ・プリが幼い従妹に向ける眼差しに気づいて怒りに燃える。彼女が28歳まで独身を続ける理由が、そこにはあった……。
新婦の父方の従妹、17歳のアィシャは、べルマ家を訪れた瞬間から恋に落ちる。相手は“オーストラリア”と呼ばれている、シドニーの大学に通う新婦の母方の従兄ラーフルだった。アデイティの婚約パーティで大胆な振り付けで踊るアイシャに、ラーフルも急激に惹かれていく……。
結婚式の準備が着々と進むなか、9人の男女はそれぞれの悩み、愛に対してさまざまな選択をしていく。季節は厳しい夏の日差しを一掃するモンスーン。生命の再生と喜びをもたらすモンスーンの雨が苦悩を洗い流し、躍動感に満ち溢れた未来を指し示していく……。

スタッフ

監督:ミラ・ナイール
プロデューサー:キャロライン・バロン、ミラ・ナイール
製作総指揮:ジョナサン・セリング、キャロライン・キャブラン
脚本:サブリナ・ダワン
撮影監督:デクラン・クイン
美術監督:ステファニー・キャロル
編集:アリソン・C・ジョンソン
音楽:マイケル・ダンナ
アソシエイト・プロデューサー:ロビン・アロンスターム
衣装:アージュン・バシーン

キャスト

ラリット・バルマ:ナジルラディン・シャー
ピミ・バルマ:リレット・デュベイ
アディティ・バルマ:ヴァソンダラ・ダス
ヴァルン・バルマ:イシヤーン・ナイール
リア・バルマ:シェファリ・シェティ
P.K.デュベイ:ヴイジエー・ラーズ
アリス:ティロタマ・ショーム
ヘマント・ライ:パルビン・タバス
アイシャ・バルマ:ネハ・デュベイ
ラフル・チャダ:ランディープ・フダ
テージ・プリ:ラジャット・カブール
C.L.チャダ:クルプーシャン・カルバンダ
シャシ・チャダ:カミニ・カナ
アリア・バルマ:ケマヤ・キドウァイ
モーハン・ライ:ローシャン・セス
サロージ・ライ:ソニー・ラダン

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