原題:MUSÍME SI POMÁHAT

2000年チェコ・ライオン賞主要5部門受賞 2000年度アカデミー賞外国語映画賞ノミネート 2000年バンクーバー国際映画祭観客賞受賞 2000年ヨーロッパ・フィルム・アワードノミネート 2000年パーム・スプリングス国際映画祭観客賞受賞 2000年コトブス国際映画祭国際批評家連盟賞 2000年モントリオール世界映画祭公式上映 2000年サンダンス映画祭特別上映

2000年/チェコ共和国/カラー/ビスタ/123分/ドルビー・デジタル 提供:大映、博報堂、日本ビクター/後援:チェコ共和国大使館 配給:大映株式会社

2003年02月21日よりDVD発売開始 2002年6月29日より岩波ホールにてロードショー

公開初日 2002/06/29

配給会社名 0058

公開日メモ 『この素晴らしき世界』は、チェコがナチス支配から解放されるまでの厳しい歳月、人々が生き抜いてゆく姿を笑いと涙をまじえて描いている。戦争の愚かしさを鋭くとらえ、敵、味方を隔てることなく、可笑しくて哀しくもある人間の行いを、やさしく慈しむ感動作である。

解説



第二次世界大戦下、戦場から遠く離れたチェコの小さな町にもナチスの影がしのびよる。ある日、子宝に恵まれない夫婦ヨゼフとマリエは、収容所から逃げてきたユダヤ人青年ダヴィトをかくまうことになる。この家に出入りするナチスシンパのホルストはマリエに横恋慕していた。彼は隠し事をしているような夫婦の様子に疑いを持ち始める。彼らの運命は、思わぬ方向へ——。
『この素晴らしき世界』は、チェコがナチス支配から解放されるまでの厳しい歳月、人々が生き抜いてゆく姿を笑いと涙をまじえて描いている。戦争の愚かしさを鋭くとらえ、敵、味方を隔てることなく、可笑しくて哀しくもある人間の行いを、やさしく慈しむ感動作である。
チェコ国内の主要な映画賞をすべて独占し、大ヒットを記録。この作品の評判は、ヨーロッパ中に拡がり、アメリカではアカデミー賞最優秀外国語映画賞にノミネートされた。ヴァラエティ誌は「過酷な時代を生きた人々が苦悩のすえにとった決断を、スタイルをもたせて、思いやり深く上品に、ユーモアをまじえ、最高のバランスで作られている。素晴らしいとしか言いようがない」と評した観客の支持も熱く、バンクーバー国際映画祭とパーム・スプリングス国際映画祭では観客賞を受賞し、サンダンス映画祭で特別上映された際には、上映終了後スタンディングオベーションが続いたという。
1967年生まれのフジェベイク監督は、発表した3本の長編劇映画すべてが権威あるチェコ・ライオン賞を受賞した、世界の注目する新鋭である。彼が14歳の頃からの友人、脚本家のヤルホフスキーとつくった長編第二作『PELISKY(心地よい居場所)』(1999)は、記録的な興行成績を収め、チェコ映画界に旋風を巻き起こした。
第3作にあたる本作のアイデアはヤルホルスキーが聞いた大戦中に隣近所までも危険にさらしてユダヤ人をかくまったという人の逸話から生まれた。二人は、さまざまな実話をとおして戦争という異常な状況が、普通の人々に及ぼすことに思いをめぐらせた。小さな過ちが大きな悲劇となり、小さな善意が英雄的な行為となる。これらは交錯していて、善悪を単純には決められない。人間のもつ弱さとともに、寛容さやヒロイズムがもたらすであろう運命。戦争が過去のものではなく今も身近にあることを思い起こした二人は、世界がまさにこのようなテーマを必要としていると考え、映画化にむけて動き始めたフジェベイク監督は、この悲喜劇で、人間一人一人の尊厳がいかに強いものであるかを訴えたかったという。
この物語の背景には、聖書がある。家に飾られた聖母子やイエス・キリストの絵、チェコ語読みでヨゼフとマリエの夫婦は、イエス誕生のヨセフとマリアを彷彿とさせ、他の登場人物も同様である。廃墟でヨゼフが赤ん坊を抱き上げるラストシーンに流れる音楽は、J.S.バッハ『マタイ受難曲』のアリア「神よ、憐れみたまえ」である。また映画の原題「私たちは共に助けあわねば」はホルストがモットーとしてレるマルコ伝からの有名な言葉「手を携えよ、さもなくぱ滅びん」からきている。
この作品には、チェコとスロバキアのベテラン俳優が結集している。ヨゼフ・チージェクを演じるのは、チェコとスロバキアの映画に多数出演しているボレスラフ・ポリープカ。彼はコメディアン兼エンターテイナーとレて知られ、最近の「真面目な役」はチェコの人々を驚かせている。「亡くなった父のことを思い出し役作りを膨らませていった。この作品で人々に涙を流させると同時に笑わせることもできれば…。ぼくにとってそれはとても美しいことだ」。
彼の妻マリエを演じるアンナ・シィシェコヴァーはスロバキアの劇場出身の女優で、この作品で一躍注目を集めた。「マリエは私にとてもよく似ている。自分ではどうしょうもない状況に陥りつつもその中でとるべき行動をいつも考えている」。
チージェク夫妻に厄介ごとばかり持ち込むチェコ系ドイツ人ホルスト・プロハスカを演じるのは、ヤロスラフ・ドウシェク。多彩な才能をもつ彼は、即興の名人として知られ、チェコ映画の脇役には欠かせない。
「ホルストのおかれた状況や行動の理由を私なりに理解しようとして、彼という人物のよい側面を見るようにした」。
ダヴィト役のチョンゴル・カッシャイは、スロバキア出身の俳優。またチェコ映画の伝説的俳優であり、数々の賞を受賞しているシモナ・スタショヴァーとイジー・ペハ、イジー・コデットが脇をかためている。

ストーリー

第二次世界大戦も終わりに近い、ナチ占領下のチェコの小さな町。ヨゼフとマリエの夫妻は、長いあいだ子宝に恵まれずにいた。戦争のために職を失ったヨゼフはすっかりやる気を無くし、賑やかなお向かいのシマーチェク家の子どもたちにまで悪態をつく始末。
そんな二人のもとに、ポーランドの収容所を脱走したユダヤ人青年のダヴィトが転がりこんでくる。ダヴィトはヨゼフのかつての上司の息子である。ダヴィトの一家はユダヤ人ゲットーに収容される前の一時、ヨゼフの家に身を寄せていた。一方、この家にはヨゼフのかっての部下で、ドイツ系チェコ人のホルストが出入りしていた。彼はナチス信奉者であるうえに、マリエに不将な思いを寄せ、土産物を持って頻繁に訪れていた。
ヨゼフはナチスを毛嫌いしていたのだが、ダヴィトを家の隠し部屋にかくまうことになり、表向きナチスに迎合しているように見せなければならなくなった。ホルストが世話してくれた、ユダヤ人から財産を没収する仕事にもいやいやついた。ダヴィトのためというよりも、家族や隣近所をナチスの共同制裁から守るためだ。ホルストは隠し事をしているような夫婦の態度に、次第に疑いを抱きはじめる。
ナチス幹部のケプケは、出征させた息子たちを次々に失い打ちひしがれていた。まだ少年だった三男まで、脱走の罪で銃殺されたのだ。地位を追われ、館を出ることになったケプケは、あろうことかホルストの紹介で夫妻の家をたよってきた。マリエは、自分が妊娠していて、生まれる子どものために部屋は空いていないと嘘をつく。ホルストは夫婦に子どもができないのは、ヨゼフに原因があることをうすうす感づいている。その場はなんとか取り繕ったものの、いずれダヴィトの存在が明るみに出るに違いない。長い間、近所の人たちをも欺いて隠しとおしてきたことが水の泡だ。崖淵に立たされたヨゼフは絶望の末にある策を考える。ダヴィトに頼み、マリエを本当に妊娠させようというのだ。いやがる二人を説き伏せるヨゼフ。マリエとダヴィトは生き延びるためにこの運命を受け入れなければならなかった。
ナチスの勢力が弱まり、いよいよ連合軍が町に入ってきた。臨月を迎えたマリエは、突然産気づいた。慌てたヨゼフは医者を求めて町をさまよう。連合軍が攻撃し、人々がナチ協力者に暴行を加える中、ヨゼフはナチスの医者が連行された連合軍司令部にたどりつく。しかしすでに医者は服毒自殺したあとだった。そこでホルストが捕らえられているのを偶然見つけたヨゼフは、彼を妻の主治医だと偽り、助け出そうとする。今やレジスタンスとなったシマーチェクから、ヨゼフはナチス協力者と告発されたが、自分はナチスシンパを装いながら自宅にユダヤ人青年を二年間かくまっていたのだ、と抗弁する。
真実を確認するために連合軍司令官は、陣痛に苦しむマリエのもとにシマーチェクや兵士たちを同行させる。ひとの気配に驚いて一度は逃げるダヴィトだが、嘘をついたと処刑されそうになったヨゼフの前に顔を出す。今度は彼がヨゼフの命を助けたのだ。
そしてマリエは、ヨゼフ、ダヴィト、ホルスト、シマーチェク、連合軍兵士、ソ連軍兵士らに囲まれて無事男の子を出産したのだった。

スタッフ

美術:ミラン・ビーチェク
衣装:カタリーナ・ホラー
編集:ヴラジミール・バラーク
撮影:ヤン・マリーシュ
音楽:アレシュ・ブジェズィナ
脚本:ペトル・ヤルホフスキー
プロデューサー:パヴェル・ボロヴァン、オンドジェイ・トロヤン
製作:オンドジェイ・トロヤン
監督:ヤン・フジェベイク

キャスト

ヨゼフ・チージェク:ボレスラフ・ポリーフカ
マリエ・チーシェコヴァー:アンナ・シィシェコヴァー
ホルスト・プロハスカ:ヤロスラフ・ドゥシニク
ダヴィト・ヴィーネル:チョンゴル・カッシャイ
リブシェ・シマーチコーヴァー:シモナ・スタショヴァー
フランチシェク・シマーチェクイジー・ペハ
フイシェル医学博士:イジー・コデット
アルブレヒト・ケプケ:マルチン・フバ
ナチス親衛隊仕官:ヴラジミール・マレック
大尉:リハルト・テサジーク

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