原題:everybody famous!

歌手を夢見る娘のために!ダメ親父、いま立ち上がる

2001年アケデミー賞外国映画賞ノミネート

2000年4月12日ベルギー初公開

2000年/ベルギー・フランス・オランダ/カラー/35mm/95分/ドルビーSRD/ 配給:アルシネテラン

2002年8月17日より、シャンテシネにてロードショー公開

公開初日 2002/08/17

配給会社名 0013

公開日メモ 歌手を夢見るちょっと反抗期の少女と、その娘の夢を何とかして叶えてやりたいと願う父親、そんな2人を少し離れた所から見守る母親の3人が織り成す微笑ましいエピソードの数々と、心温まる人間模様が人々の心をくすぐり、そして胸を打ったのだった。

解説



アカデミー賞外国語映画賞ノミネート!
ベルギー発のハートフルコメディ

2001年のアカデミー賞外国語映画賞には、オスカーを手にした『グリーン・デスティニー』や『アモーレス・ペロス』、『ムッシュ・カステラの恋』といった各国の話題作と並んで、ベルギー代表の『エブリバディ・フェイマス』がノミネートされていた。監督やキャストの知名度も高くはなく、有名な原作があるわけでもなければ、話題性も豊富なわけではないしかし、2000年4月に本国ベルギーで封切られたのを皮切りに、アメリカやカナダ、オーストラリア、そして多くのヨーロッパ諸国で劇場公開された本作は、世界各国で好意的に迎えられた。歌手を夢見るちょっと反抗期の少女と、その娘の夢を何とかして叶えてやりたいと願う父親、そんな2人を少し離れた所から見守る母親の3人が織り成す微笑ましいエピソードの数々と、心温まる人間模様が人々の心をくすぐり、そして胸を打ったのだった。

父の愛が、娘の夢を叶える!?

家族を愛しているものの、不器用でそれをうまく伝えられない中年の父親ジャンは、工場で働く冴えないオヤジ。歌手になりたいという娘マルヴァの夢を一緒に追い求め、オーディションやコンテストには必ず顔を出すものの、娘からは迷惑がられている。しかもあまりに娘の夢に入れ込みすぎて、妻は半分呆れ顔。それでも満ち足りた日々を送っていたジャンだったが、ある日工場が倒産してしまった。突然の出来事に驚きつつも、失業したことを家族に打ち明けることができない。せいぜいバーで管を巻くのが関の山。しかし、そんなジャンに一発逆転ホームランのチャンスが訪れる。大人気歌手のデビーをひよんなことから誘拐する羽目になったのだ。人質を返す条件は、自分の作曲した「ラッキー・マヌエロ」でマルヴァを歌手デビューさせること!デビーのプロデューサーに交換条件を持ちかけて、“マルヴァのテビュー大作戦”が始まった…。
どこにでもいるような娘思いの父親が主人公でありながら、そのストーリーはかなりユニーク。しかし人気歌手の誘拐という突拍子もない出来事も、ストーリー展開の面白さと、生き生きと描かれた個性的なキャラクターによって、いつしか彼らがいとおしく思えてくるから不思議である。お世辞にも才能や美貌に恵まれているようには見えないが、夢を叶えるために挑戦し続けるマルヴァと、愛する娘のために奮闘する父親の姿に、誰もかが元気づけられるだろう…。

一度聴いたら忘れられない
「ラッキー・マヌエロ」

歌手を目指すマルヴァが週末に出場するのは、ベルギー版のど自慢カラオケ大会。マイケル・ジャクソンやオーティス・レディング、クイーンなど、一見ものまね大会かと錯覚しそうな個性的な出場者の顔ぶれだが、マルヴァも負けずに毎回趣向を凝らしたコスチュームで登場する。セクシーなマドンナの衣装で歌う「マテリアル・ガール」や、インディアン風バネッサ・パラティの「ビー・マイ・ベイビー」などキュートなマルヴァの見どころ満載。そして、何より強烈なインパクトを放っているのが、ジャンがマルヴァのために作曲したオリジナル曲「ラッキー・マヌエロ」である。映画を観終わった頃には、あなたも「ラッキー・マヌエロ」の虜となっているに違いない。

巧みな演出と、実力派たちによる確かな演技

愛すべきベルギーの人々の姿を、巧みなストーリーテリングと演出によって鮮やかに描き出したのは、ベルギー映画界の旗手ドミニク・デリュテレ。ブコウスキー原作による長篇デビュ一作『魅せられたる三夜』(87)が各地の映画祭で評判となり数々の賞を獲得するなど、欧米でカルト的人気を得ているが、本作で更なる国際的な評価を高めた。
また、確かな演技力で個性的な登場人物たちを際立たせているのは、いずれもベルギーやオランダで活躍する実力派。味のあるダメ親父を演じるのは、ジャコ・ヴァン・ドルマルの『トト・ザ・ヒーロー』(91)や『八日目』(96)のヨセ・テバウ監督からの信頼も厚く、デリュデレの4作品に出演している。またジャンの妻役のヘルト・ボルタールもデリュデレ作品の常連。本作では、優しく家族を見守る母親を好演している。そして、マルヴァ役で鮮烈な印象を残し、トロイア国際映画祭の新人賞を受賞したのは、本作でデビューを果たしたエヴァ・ヴァンテルフフト。その他、『アントニア』(95)や『キャラクター 孤独な人の肖像』(97)のヴィクトル・レーヴが、知恵の働く敏腕プロデューサー、ミカエルを演じている。

ストーリー



ビンの製造工場で働いているジャン(ヨセ・デバウ)は、妻のシャンタル(ヘルト・ポルタール)と17歳の娘マルヴァ(エヴァ・ヴァンテルフフト)と暮らす。一家の主。生活は平凡そのものだったが、歌手を目指すマルヴァの応援に日々忙しい。マルヴァは歌うことが大好きで、週末になると歌唱コンテストに参加しているのだ。しかし両親の応援の甲斐もなく、優勝はおろか高得点も出せないでいる。母親は半ばあきらめ気味だったが、ジャンはマルヴァの才能を信じ、テープレコーダーにメロディーを口ずさむという原始的な方法で作曲をしながら、歌手になりたいという娘の夢を助けようとしていた。しかし、そんなジャンの努力など、マルヴァは全く気づいていない。干渉しすきる父親にうんざりし、話もろくに取り合おうとしないのだった。

ジャンの同僚ウィリー(ウェルナー・デスメット)は、マルヴァのコンテストにもよく顔を出していた。ジャンとはだいぶ年か離れていたが、なせか2人は馬が合うのだった。娘に相手にされないジャンの境遇に同情しつつ、ウィリー自身も、同棲中の彼女リス(アリス・レイス)にいいように使われている。それでも、いつかは富と栄光を手に入れたいとウィリーも夢見ていた。しかしある日、工場が倒産して2人は路頭に放り出される。彼らの夢は、前触れもなく崩れ去ってしまった。倒産の知らせにすっかり打ちのめされたジャンだったが、家族にそれを打ち明けることができない怒りと苛立ちは限界に来ているものの、バーで管を巻くのが精一杯。何とか世間に仕返しがしたいと思っていた矢先、ジャンは人気絶頂のセクシー歌手テビー(テクラ・リューテン)と出会う。そして、ちょっとした出来心から、彼女を誘拐してしまった!

テビーの誘拐に成功したジャンから連絡を受けたウィリーは、初めは手を貸すことを頑なに拒否していたが、ジャンの熱意に押されて渋々承諾。ジャンは一軒家を借りて、そこにデビーを監禁することにした。見張りにはウィリーをつけた。

テビー失踪のニュースは瞬く間に国中を駈け巡り、彼女がスターダムに上り詰めたテレビ番組では、連日連夜、デビーの誘拐事件が取り上げられた。このミステリアスな話題のおかげでデビーのCDセールスは前人未踏の記録を打ち立て、テビーのブロデューサーのミカエル(ヴィクトル・レーヴ)は、内心大いに満足していた。

世間がデビー誘拐のニュースで一色の中、ジャンはプロのギャングのフリをしてミカエルと接触した。そして、どうしても欲求を抑えることができずに、マルヴァのために吹き込んだ自作のデモテープをミカエルに聞かせたのだった。その瞬間ミカエルは、ジャンがギャンクなどではない全くの素人だということを悟る。そして、ジャンに取引を持ちかけた身代金は要求せす、テビーを安全にかくまうという条件で、代わりにマルヴァをスターに仕立ててあげよう、と。ジャンは一つ返事でその条件を受け入れた。

それからしばらくの間は、すべて計画どおりに事は進んでいった。デビーの新曲は依然大ヒットを記録しており、またミカエルのブロテユースによって、ジャンの作った曲はプロの手でアレンジが施され、マルヴァのテビューに向けてのプロモーションも着々と進んでいた。しかし、しばらくすると世間はこの誘拐事件に飽き始め、テレビ番組の視聴率も下がり、CDセールスも急降下した。人々は事件の進展、そして決着を望んでいたのだ。できれば劇的な結末を。

思わぬことから誘拐犯となったジャンは、事態が大きくなるにつれて、パニックに陥っていた。しかし一方のミカエルは、すべての人々の利益になるような結末を探していた。マルヴァがスターになることを確信していたミカエルだったが、何より彼は世間が望むもの——劇的なフィナーレを演出しようとしていた…。

スタッフ

監督・脚本:ドミニク・デリュデレ
製作:ロレット・メウス、ドミニク・デリュデレ
撮影:ウィリー・スタンセン
美術:ユペール・プイユ
音楽:レイモン・ヴァン・へッドフルーネワウト
編集:ルド・トロフ
録音:レネ・ヴァンデンベルク、ベルト・コーブス、アレク・フーセ
衣装:ロレット・メウス
メイク:ナンシー・ポドゥ
共同製作:ウォルカート・ストラヴケン、エロル・ナイン、
     パスカル・ユデレウィッツツ、アンヌ・ドミニク・トゥーサン
製作担当:ジェラール・ヴェルクラウセ

キャスト

ジャン・ヴェレーケン:ヨセ・デバウ
マルヴァ:エヴァ・ヴァンデルフフト
ウィリー:ウェルナー・デスメット
デビー:テクラ・リューテン
ミカエル:ヴィクトル・レーヴ
シャンタル・ヴェレーケン:ヘルト・ポルタール
リス:アリス・レイス
ガビー:イアン・フレーラッケルズ

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