2002年/日本/115分/ 配給:アスミック・エース、ミコット

2003年12月05日よりDVD発売開始 2003年12月05日よりビデオレンタル開始 2003年4月12日よりシネスイッチ銀座にてロードショー公開

公開初日 2003/04/12

配給会社名 0011/0007

解説


西原理恵子の傑作コミック、阪本順治が遂に映画化

「ビッグコミックスピリッツ」で連載され、第43回文藝春秋漫画賞を受賞した西原理恵子のベストセラーコミック「ぼくんち」が、遂に映画化された。監督は『どついたるねん』で鮮烈なテビューを飾り、日本アカデミー賞最優秀監督賞受賞の『顔』、日韓共同製作による『KT』と、次々と日本映画界にセンセーショナルな話題作を送り込んでいる阪本順治である。そうして出来上がったのは、うらぶれた港町、どん詰まりのビンボー、とことんツキに見放されたような“水平島”でたくましく生きる一太と二太の兄弟と、ふたりを包む強く優しい姉かの子。そして奔放な女だがどこか憎めない母今日子の一家が繰り広げる、一風変わったホームドラマ。西原理恵子と阪本順治のコラボレーションによって、あったかくて切ない、異色のハートウォーミング・ムーヴィーが誕生した。

「シアワセって、どこにある?」

一太と二太の兄弟は、うらぶれた水平島の中でも貧乏人かふきだまる、うらの港に住んでいる。かあちゃんは家出中。とうちゃんは元からいない。ある日、家出してたかあちゃんが、新しい姉ちゃん、かの子を連れて帰てきた。かあちゃんはまたすぐいなくなったけど、その日から、一太と二太そしてかの子の、ささやかだけど新しい暮らしが始まった。

笑って泣いたら、元気が出てくる!

文藝春秋漫画賞を受賞した西原理恵子の原作は、現在までに25万部を売り上げているというべストセラーコミックである。あっけらかんとした笑いの中に底知れぬ深みを内包し、いつの間にかその毒気がクセになってしまうところが、男女を問わず幅広いファンを獲得している所以である。その原作を、人間の本質を描くことには定評のある阪本順治が映像化した。フツーのシアワセを求める、一見フツーでない家族…ちっとも家に居着かない男運の悪い母親、3人とも父親の違う姉弟、水平島の奇妙な隣人たち。シビアな現実の中で世間を生き抜いていこうとする姉弟の姿を、阪本監督は原作のドライなほのぼの感を活かしながら、ペーソスたっぷりに描き出す。その無邪気な一所懸命さはユーモラスで、どこか切ない。
「母ちゃんが姉ちゃんを連れて帰って来たら、ぼくんちがなくなって、ニィちゃんが出てって、今度はなんで僕が、どっか行かなならんの?」。物語の中では皆、何かから卒業し、次の一歩を踏み出していく。町を出ていくことで男になろうとする一太、母を許すことにより母になろうとするかの子、家族との決別を受け入れることによって一歩大人になっていく二太。何かを失うことによってしか次の何かを得られない。自分で超えていかねばならないその痛みと哀しみ。二太は家も親も兄弟も失ってしまうが、二太にとっての家族は、“ぼくんち”は、いつまでも心の中に在り続けるのだ。二太のとびつきりの笑顔は、観る者に明日に向かう元気を与えてくれる。

バラエティに富んだ異色のキャスティング

主演のかの子には、『ナースのお仕事 ザ・ムービー』の観月ありさが挑む。これまでの元気なアイドル的イメージから一転、ふたりの幼い子供を見守る明るく強い姉という母性をたたえた役柄で奥の深いキャラクターを体当たりで演じ、俳優としての新境地を開いている。一太と二太の兄弟はオーディションで選ばれた矢本悠馬と田中優貴。演技経験ゼロのふたりだが、素朴でナチュラル、実の兄弟のように息の合った熱演を見せている。そして、奔放なかあちゃん今日子には、元宝塚の大スター鳳蘭。これが映画初出演となるが、舞台同様、華やかな存在感を見せている。一太を男にしょうとする町のチンピラ、コウイチに、真木蔵人。コウイチの下請け仕事をする末吉まもるに、岸部一徳。一太と二太を見守る水平島のおかしな面々には、鉄じいに仁侠ものには欠かせない名バイプレイヤー志賀勝、猫ばあに舞台女優として関西を中心に活躍する新屋英子、今日子とかの子を島まで運ぶボートの老人に上方芸能の重鎮、笑福亭松之助、二太の親戚のじつちゃんにチャンバラトリオの南方英二が各々扮する。その他にも東映京都撮影所の剣会のメンバーらがどこか間の抜けた住人たちを演じ、脇を固めている。また、テレビのバラエティ番組を中心に活躍中の今田耕司や人気お笑いコンビ“よゐこ”の濱口優等、豪華な顔ぶれがそろった。原作者の西原理恵子が、ピンサロ嬢として顔を覗かせているのもお楽しみである。
脚本は、『顔』で阪本監督とコンビを組んでいる宇野イサム。原作の風合いを生かしつつ、一編の人情悲喜劇にまとめ上げた。撮影は阪本監督とは長年コンビを組んでいる笠松則通。美術は『みんなの家』の小川富美夫。誰もが懐かしさを感じるポップな“昭和”的イメージが、観るものを物語世界に心地よく誘う。音楽は、はじめにきよし、大西ユカリと新世界、KAJA & JAMMIN’、ガガガSPと、関西を中心に活躍するイキのいいバンドが集まった。はじめにきよしの新谷きよしは、アコーディオンを弾く青年として出演もしている。

ストーリー


ここは
関西のようで、
で、ないような、
どいつもこいつもの
水平島
の、ウラ港

一太と二太の兄弟は、うらぶれた水平島の中でもビンボー人がふきだまる、うらの港に住んでいる。かあちゃんの今日子は、買い物に行くと出かけていったきり、もう半年も戻ってこない。とうちゃんは、元からいない。ある日かあちゃんが、離れて暮らしていた姉ちゃん・かの子を連れて帰ってきた。ひとつ屋根の下、食卓を囲んで喜ぶ姉弟。かあちゃんは、またすぐいなくなったけど、姉弟3人のささやかな暮らしか始まった。

親も無く、金も無くとも遅しく生きる一太と二太を見守るのは、ちょっと可笑しな水平島の人たち。町のチンピラ・コウイチは生傷が絶えない乱暴ものだが、女子供には優しい男。猫ばあは、猫のように子供をぽんぽん産んだので猫ばあと呼はれていて、今は野良猫に囲まれて暮らしている。鉄じいは川のほとりに住んでいて鉄屑を集めている。ビニールハウスに3人の子供と暮らす男やもめ末吉まもるは、コウイチの下請け仕事で食べている。中華屋「新庄」は、味はマズイが町で一軒しかない中華屋なので繁昌している。いつもお巡りに捕まっては刑務所送りになっている子悪党・安藤くんは、二太にいろんな事を教えてくれる。二太の幼なじみのさおりちゃんは、お金のこと以外には興味がなく、二太の想いには気付いてくれない……

家の権利書が、いつの間にか売られてしまった。今日子が新しい男に貢いだらしい。家を追われ、かの子は弟たちを養うためにピンサロ勤めに戻り、小さなマンションを借りた。二太は無邪気にかの子に甘えるが、一太は一所懸命働くかの子の姿を見ると素直になれない。かの子の世話になどならず早く独り立ちしたいと、コウイチに裏の商売の手ほどき受ける。

二太は一太に誘われて、空家になった“ほくんち”に忍び込んだ。一太は宝物のハンカチを二太に託すと、二太の手を振り切って、オモテの港を目指して町を出て行った。「いつか金持ちになって、帰って来たる!…姉ちゃんと、仲良うせえよ」一方、かの子の勤務先には、家出していた今日子が突然ふらっと訪ねてきた。また、男に逃げられたらしい。かの子は呆れなからも、そんな今日子を憎みきれない。かの子は母を許し、ある一つの決断をする。

水平島に、旅立ちの季節がやってきた。

スタッフ

監督:阪本順治
原作:「ぼくんち」(西原理恵子原作/小学館刊)
製作総指揮:三宅澄二、畑利明
脚本:宇野イサム

キャスト

観月ありさ
矢本悠馬(新人)
田中優貴(新人)
鳳蘭
真木蔵人
今田耕司
笑福亭松之助
濱口優
南方英二
志賀勝
岸部一徳

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