原題:GANGSTER NO.1

男は吼える。「俺がギャングスター・ナンバー1だ!」

2000年6月9日イギリス初公開

2000年/イギリス・ドイツ/105分/ 配給:ギャガ・コミュニケーションズ

2003年12月17日よりDVD発売開始 2003年12月05日よりビデオレンタル開始 2003年5月24日より渋谷シネマライズ、ほか全国順次ロードショー公開

公開初日 2003/05/24

配給会社名 0025

解説


1960年代の後半、スウィンギンク・ロンドンから現代へ交錯する時間軸。裏社会頂点に君臨する男の絶対的な存在と、その彼に憧れ、全てを模倣し、やがて彼を越えるナンバー1になることに取り憑かれていく若きギャングスターの狂気。英国インディペンデントをになう気鋭の俳優ポール・ベタ二一が若きギャングスターを、そして『時計じかけのオレンジ』(71)の怪優マルコム・マクダウェルが、昇り詰めた男の心の空洞と孤独を見事に演じきる。

ギャンクたちが縄張りを巡ってしのきを削っていた時代。異常なまでの力への執着。頂点を手にした者だけが享受することのできる最高の贅沢。思わず目を背けたくなるような激しい暴力。そして次の世代にいつ追い落とされるか分からない不安…。ギャング映画というのは大なり小なりそんな要素を備えているものだが、アーヴィン・ウェルシュの同名小説『アシッドハウス』(98)で映画界に名乗りを上げたポール・マクギガン監督は、斬新な映像とディテールヘの執着、そして息もつかせないストーリー展開によって、ロンドン・ノワールともいうべき新世代のギャング・ムービーを誕生させた。

特筆すべきは、その執拗なまでのディテールヘのこだわりだ。若きギャングスターが憧れたその男は、完壁なビスポーク・スーツに身を固め、イタリア製の手縫いの靴を履き、濃紺のアストンマーチンを乗り回す。30年後、自らが頂点に君臨しこの世の春を謳歌するギャンクスターは、高級ホテルのボクシングショーを、シャンパンを飲みながら観戦する。昇り詰めた者だけが味わうことのできる一流の舞台がそこにある。

そんなスタイルを完壁に演じる役者陣もまた強烈だ。若き日のギャグスターには、『ビューティフル・マインド』(01)そしてラース・フォン・トリアー監督作『Dogville』(03)などで注目される、英国インディペンデントをになう俳優ポール・ベタニーを起用し、男が男に憧れる純粋さと、狂気に取り憑かれていく瞬間のギャンクスターの傲慢さを見事に描き出した。また55歳になった30年後のギャングスターには、なんとあの怪優マルコム・マクダウェルが扮し、『時計じかけのオレンジ』(71)のアレックス役で世の中に衝撃と寒気を与えて以来久々に彼の本領を発揮している。そして『シャンドライの恋』(98)のデヴィッド・シューリスは、若きギャングスターが憧れたフレディ・メイズとして、全てにおいて洗練を極める大人の男の自信と色気を振りまく。その彼が、愛情をつらぬき、ギャンクスターの嫉妬の矛先となる女性カレンを、『リービング・ラスベガス』(95)のマイク・フィギス監督の妻サフロン・バロウズが好演するなど、イギリスを代表する演技陣がそれそれの役柄に生命を吹き込んでいる。

ストーリー


現代のロンドン・アンダーワールドのナンバー1に君臨する老練なギャングスター(マルコム・マクダウェル)は、高級ホテルで開かれるボクシング・マッチを上席で観戦していた。猛禽のようにぎらぎらした目、勲章のように刻まれた深い皺が、トップに辿り着くまでに彼が何をしなければならなかったのかを物語っていた。その席で不穏な報せが耳に入る。フレディ・メイズ(テヴィッド・シューリス)が出所するという。投獄されていた彼の元ボスが。ギャングスターは動揺を隠せない。その意識は既に過去のあの日を泳いでいた…。

1968年のロンドン、ギャングたちが縄張りを巡ってしのぎを削る時代に、悪徳警官を嬲り殺しにして”メイフェアの惨殺者”と恐れられていたフレディ・メイズがその頂点に君臨していた。最高級のビスポーク・スーツに袖を通し、イタリア製のシルクシャツと手縫いの靴、高価なカフリンクを身につけ、アストンマーチンを気の向くままに乗り回す彼は、女ばかりか、男たちでさえ一目置くようなスタイルに輝いていた。彼は若い駆け出しのギャングスター(ポール・ベタニー)にとって憧れの対象であった。ギャングスターはフレディに取り入ることに成功すると、嬉々としてフレディのために悪事をこなすことで、彼の右腕と呼ばれるまでになった。2人に怖いものはなかった。フレディが命令を下し、ギャングスターが遂行する。ギャングスター自身の言葉を借りるなら、2人は「モエ・エ・シャンドンのようなチーム」だった。

ギャングスターはフレディの力、持ち物、身のこなし、所有する高級マンションの調度品に魁了され、フレディが彼の世界の全てとなった。1人の女が現れるまでは。フレディがカレン(サフロン・バロウズ)という女に惹かれるようになると、2人の関係は崩れ始める。純粋な憧れが嫉妬という狂気に形を変えていった。そんな時、彼は敵対するギャングのボスがフレディの命を狙っていることを知る。だが彼はそのことを誰にも知らせずに、ある策略を練った。フレディと敵のボスを同時に陥れ、しかも自らがナンバーワンに昇り詰めるという狡猾な罠を仕掛けた。

ギャングスターは、フレディに罪を着せ刑務所送りにすることで、新たなトップの座を手に入れた。それから30年、そのフレディが帰ってきた。彼のいない間、頂点を極め最高の贅沢を謳歌しながらも、人を信用できないまま仲間を排除し、ひたすらフレディを“摸倣”してきた、自分というものが存在しないギャングスターの中に、嫉妬と憎悪の炎がめらめらと再燃し始める。愛を貫いたフレディは、もうギャングを卒業していた。フレディにあって自分にないものとは何か。ビルの屋上に立ち、ギャングスターは吼える。制覇したロンドンを眼下に、その暗闇の先に彼が見ていたものとは…?

スタッフ

監督:ポール・マクギガン
製作:ノーマ・ヘイマン、ジョナサン・カヴェンディッシュ
脚本:ジョニー・ファーガソン
撮影監督:ピーター・ソーヴァ
編集:アンドリュー・ハルマー
音楽:サイモン・フィッシャー・ターナー
作曲:ジョン・ダンクワーズ
共同制作:ニッキー・K・バーンズ、ウルリッヒ・フェルベルク
製作総指揮:ピーター・ボウルズ
プロダクション・デザイン:リチャード・ブリッジランド
ヘア&メイクアップ・デザイン:ジェニー・ブリッジランド
コスチューム・デザイン:ジェイミー・テミメ
キャスティング:ジーナ・ジェイ

キャスト

若き日のギャングスター:ポール・ベタニー
55才のギャングスター:マルコム・マクダウェル
フレディ・メイズ:デヴィッド・シューリス
カレン:サフロン・バロウズ
レニー・テイラー:ジェミー・フォアマン

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