原題:THE HOURS

たくさんの愛と驚きと時間たち、そして感動 人生はいつもミステリーに満ちている

2001年12月25日全米初公開

2002年/アメリカ/カラー/114分/ 配給:アスミック・エースエンターテインメント

2003年11月28日よりDVD発売開始 2003年11月28日よりビデオレンタル開始 2003年5月17日より丸の内ピカデリー2ほか全国ロードショー公開

公開初日 2003/05/17

配給会社名 0007

解説


3つの時代に生きる、3人の女
ヴァージニア・ウルフに書かれたベストセラーを「リトル・ダンサー」のスティーヴン・ダルドリーが完全映画化
豪華共演陣で描く文芸大河ロマンの決定版

2003年第75回アカデミー賞に主要9部門でノミネートされた今年最大の話題作『めぐりあう時間たち』。ピュリッツァー賞とペン/フォークナー賞W受賞に輝くマイケル・カニンガムの同名ベストセラーを、『リトル・ダンサー』のスティーヴン・ダルドリー監督が完全映画化。ヴァージニアウルフの書いた「ダロウェイ夫人」をモティーフに、歓びと哀しみ、驚きと感動、幸せと不幸せ、人生に潜むミステリーを鮮烈に切り取ったエンタテインメント・ロマンです。アメリカでは年末に公開され、絶賛を浴びてナショナル・ボード・オブ・レヴュウ最優秀作品賞を皮切りにすでにたくさんの賞を獲得。今年に入ってゴールデングローブ賞ドラマ部門最優秀作品賞とニコール・キッドマンの最優秀主演女優賞をW受賞、いよいよ日本上陸となります。

時を超えて企画される三つのパーティ。一つは1923年ロンドン郊外、「ダロウェイ夫人」執筆中の作家ヴァージニア・ウルフが姉とお茶を楽しむために。一つは1951年ロサンジェルス、「ダロウェイ夫人」を読む妊娠した主婦ローラが夫のために考える誕生パーティ。そして現代、2001年ニューヨーク、「ダロウェイ夫人」と同じ名前を持つ編集者クラリッサは、エイズで死に行く友人の作家を祝福するために受賞パーティの企画に智恵をしぼる。それぞれの時間に生きる三人の女は、やがて「ダロウェイ夫人」に誘われひとつの物語へと紡がれていく…

誰のために人生を送るのか?自分のために?愛する大事な人のため?家族のために?自分の居場所を見つけ、自分らしく生きていく人生を送るのは、決して簡単なことではない。映画は3つの時代を生きる3人の女のある一日を取り出して、観客に問い掛ける。ケーキをつくるのは夫を愛している証拠と息子に語ってしまう主婦ローラ・ブラウンは、誰のために生きているかわからない。何年も自分を抑え込みながら愛する友人の看護を続ける編集者クラリッサ・ヴォーンだが、一方で自分の思い通り人工授精で娘を産んでいる。神経がやられ、夫を思い、自ら死を選んでいく作家ヴァージニア・ウルフにはその方法を採るしか無かった。人は皆、多かれ少なかれ、自分の生きている時間と空間に縛られて生きている。その中で、どういう決意をし行動を決定するか、映画は見るものに強く訴えかけてくる。本作はそうした難しいテーマを展開しているが、観客はまるでジェットコースターに乗ったかのようにオープニングからクライマックスまで一気に持っていかれてしまう。見ている間はスリリングで息も出来ない緊張感が心地よく貫き、見終わった後には一種の爽快感、喪失感を伴う大きな感動、何よりも“映画”と呼ぶにふさわしい興奮を観客に与えてくれる。今までに全く見たことの無い、新しい映画の誕生である。ここまで知的にエンタテインさせてくれ、深いテーマを伴った映画がかつてあったであろうか?誕生と共にクラシックたりえたと言っても過言ではない新しい傑作の登場である。

3つの時代に生きる3人の女を描いた原作をどのように映画化したら成功するだろう。本作では、優秀なスタッフと俳優たちが、大変に困難なモデルケースに敢然と対峙し、精妙巧繊に織り上げている。まずは脚色、『ダメージ』で知られるデイヴィッド・ヘアが、独白のヴォイスオ一ヴァーや過去と現在を行き来するフラッシュバックをほとんど使わず見事に原作を捉えるという偉業を成し遂げている。その脚本を、『リトル・ダンサー』のステイーヴン・ダルドリー監督がシャープで抑制された演出で具現化、無駄が一切無く刻まれた映画として創り上げた。脚本と演出を助ける鮮やかなモンタージュは『クイルズ』のピーター・ボイル、通常よりも何秒か早くリズムを刻むその編集は映画中の時間の流れを決定している。『クンドゥン』フィリップ・グラスの音楽は、絵繋ぎと共に効果的に次のシーンヘとバトンを渡す役目を忠実にこなす。映画中の空気とリアリティは、撮影『ハイ・フィデリティ』シーマス・マクガーヴィ、プロダクションデザイン『リトルダンサー』マリア・ジャーコヴィク、衣装デザイン『イングリッシュ・ペイシェント』アン・ロスの確かな仕事が醸成している。

そして、強い印象を残す豪華演技陣。2003年アカデミー賞主演女優賞ノミネートですでにゴールデン・グローブ賞を受賞している『ムーランルージュ』のニコール・キッドマン。旬の演技者のオーラが漂い、ヴァージニア・ウルフが持っていたであろうカリスマを表現するのに成功している。『エデンより彼方に』で同じく2003年アカデミー賞主演女優賞ノミネートのジュリアン・ムーア。揺れ動く決意、ローラ・ブラウンの糸のような繊細な感情を油の乗った手練の演技で披露。そして、“Adaptation”でアカデミー賞助演女優賞ノミネート、ゴールデン・グローブ賞受賞、現代最高の女優メリル・ストリープ。クラリッサ役を映画のリアリティを納得させてくれるナチュラルな、粋を極めた演技で見せてくれる。脇役、助演も最高の演技陣を揃えている。『ビューティフル・マインド』エド・ハリス、『アバウト・ア・ボーイ』トニー・コレット、『ターミネーター3」クレア・デインズ、『ブラッドワーク』ジェフ・ダニエルズ、『ウエルカム・トゥ・サラエボ』ステイーヴン・ディレイン、TV『ザ・ホワイトハウス』アリスン・ジャニー、『シカゴ」』『ギャング・オブ・ニューヨーク』ジョン・C・ライリー、『クライング・ゲーム』ミランダ・リチャードスン、『ダロウェイ夫人』の脚本家アイリーン・アトキンズ、そして天才子役ジャック・ロヴェロ。ジェフ・ダニエルズの言葉を借りれば、まさにスポーツで催されるオールスター戦のような壮観も、本作の大きな感動に繋がっている。

ストーリー


第二次世界大戦が始まって間もない1941年、イギリスのサセックス。コートを着込み、足早に川に急ぐヴァージニア・ウルフ。川の流れに太陽光が反射しキラキラと輝くさまを見つめながら、残してきた遺書の文章を心の中で繰り返していた・・・。死を決意したヴァージニアはコートのポケットに石を入れ、ゆっくり川の中へと足を進める。流れに身を委ねた瞬間、彼女は勢いよく水の底を流されていく…。

誰の人生にもある普通の朝がまたやってきた。

三つの時代の、三人の女たちの、それぞれの一日が始まろうとしていた…。

1923年、イギリス、ロンドン郊外のリッチモンド。緑が美しい樹々に囲まれた屋敷。作家であるヴァージニア・ウルフの病気療養のためウルフ夫妻はこの町に移り住んできた。物静かだが優しい夫レナードの気遣いをよそに、彼女は書斎で煙草を吸いながらゆっくりと眩いていた。「…ミセス・ダロウェイは言った、花は私が買ってくるわ」。煙の中に物語が見えてくる。今日のように心地よく晴れた6月のある日、一人の女のたった一日の出来事、その一日に主人公の全ての人生が入っている。傑作『ダロウェイ夫人』が生まれようとしていた。

1951年、ロサンジェルス。閑静な住宅地に住む妊娠中の主婦ローラ・ブラウンは、ベッドの中で一冊の本を手にしている。「…ミセス・ダロウェイは言った、花は私が買ってくるわ」。本の題名は『ダロウェイ夫人』。夫のダンは子供の世話を見てくれる、良き父であり夫だった。ローラは夫が望むような理想の妻を演じることに疲れていたが、会社に出かける夫を聖母のような優しい微笑みとキスで送り出す。今日はダンの誕生日、夜のパーティのために幼い息子リッチーと一緒にバースデイケーキを作り始める…。

現代2001年、ニューヨーク。道端に雪が残っているが爽やかな朝。美しい一日の始まりに上機嫌の編集者クラリッサ・ヴォーンは、同居している10年来の恋人サリーに言う。「サリー、花は私が買ってくるわ」。親しい友人である作家リチャードが栄えある賞を受賞したのを機に、彼を元気付けるためにクラリッサは祝賀パーティを企画する。彼女は花屋で美しい花を買いこみ、エイズに冒されたリチャードのアパートへ向う。病の詩人リチャードは幻聴が聞こえると言い、生きることに疲れていた。クラリッサに“ミセス・ダロウェイ”と呼びかけ、強い言葉を投げかけるリチャード。「僕のアパートに何年通っている。君自身の人生は?」。クラリッサは授賞式とその後のパーティのため、3時半に迎えに来ると、彼に告げアパートを後にする…。

朝の次には昼がやってくる。

ヴァージニアの家に、姉のヴァネッサとその息子クエンティンとジュリアン、娘のアンジェリカが訪ねてくる。しかし、その到着は約束の時間より一時間半も早かった。姉妹は久しぶりの再会を喜び、姉は妹の病状を気にかげながらロンドンの話に花を咲かせる。やがて、四時になりお茶のパーティとなったが、別れの時間はすぐにやってきてしまう。ヴァージニアは姉に激しい別れのキスをする。夕方になり、突然ヴァージニアはロンドンに向うため駅へと急ぐ。妻の不在に気付いた夫レナードは慌てて後を追って駅に駆け込む。プラットホームに一人佇む妻を見つけて激しく怒るレナードに、逆にヴァージニアはリッチモンドでの生活の不満、ロンドンヘの憧れ、病気の苦しみ、すべての苦悩を爆発させる。彼は二度も自殺未遂を起こした妻の病状の悪化を日々怖れていたが、彼女の心からの叫びにロンドンへ戻ることに同意するのだった…。

ローラが息子と作ったバースデイケーキは不細工に出来上がり、大失敗となった。いらつく彼女のもとへ親友キティがやってくる。傍目には明るく幸せそうなキティだが、腫瘍のため入院するとローラに告げ、暗い影を見せる。ローラは不安げに泣くキティを慰めるために抱きしめ、ふと優しく口づけをしてしまう。キティを見送った後、今度は綺麗にバースデイケーキを作り終えたローラは、ある決意を胸に家を出る。そして、彼女は隣人のラッチ夫人にリッチーを預け、ノルマンディ・ホテルヘと向かう。ローラのバッグには大量の薬瓶が入っていた。ホテルの部屋でローラは、『ダロウェイ夫人』を開き膨れたお腹をさすり始める…。

クラリッサがパーティの準備で料理を作っていると、リチャードの元恋人ルイスがサンフランシスコから予定より早く訪ねてきた。クラリッサはルイスに、リチャードの変わり果てた姿に心の準備をして欲しいと忠告する。ルイスは、昔3人で訪れた思い出の場所に行ってきたと、話し出した。過ぎ去った懐かしい日々、突如彼の話を聞いていたクラリッサは泣き始める。昔、リチャードが自分につけたニックネーム“ミセスダロウェイ”に執りつかれ、彼の世話を何年も続け感情を抑え込んで生きてきた。黙って出て行ったルイスと入れ替わりに、誰よりも大事な娘ジュリアが帰ってきた。感情の揺れがまだ収まらないクラリッサは娘に向って語る。「若い頃、ある朝起きて心の中で思ったわ。これが幸せの始まりなのね。でも違った。あれこそが幸せだったのよ」。そして、クラリッサは授賞式とパーティのため、リチャードを迎えに彼のアパートヘと向う・・・。

昼の次には夕方がやってきて、その後には夜がやってくる。

三つの時代の、三人の女たちの一日は、それぞれの終わりへと向っていた・・・。

スタッフ

監督:スティーヴン・ダルドリー
原作:マイケル・カニンガム
製作:スコット・ルーディン、ロバート・フォックス
製作総指揮:マーク・ハッファム
脚色:デイヴィッド・ヘア
撮影:シーマス・マクガーヴィ,BSC
プロダクションデザイン:マリア・ジャーコヴィク
音楽:フィリップ・グラス
衣装デザイン:アン・ロス
編集:ピーター・ボイル
キャスティング:パッツィ・ボロック、ダニエル・スウィー

キャスト

ヴァージニア・ウルフ:ニコール・キッドマン
ローラ・ブラウン:ジュリアン・ムーア
クラリッサ・ヴォ—ン:メリル・ストリープ

1921年
レナ—ド・ウルフ:スティーブン・ディレイン
ヴァネッサ・ベル:ミランダ・リチャ—ドソン
クエンティン・ベル:ジョージ・ロフタス
ジュリアン・ベル:チャ—リィ・ラム
アンジェリカ・ベル:ソフィ・ウィバード
ロッティ・ホープ:リンジ—・マーシャル
ネリィ・ボクサール:リンダ・バセット
レイフ・バートリッジ:クリスチャン・クールスン
医者:マイケル・カルキン


1951年
ダン・ブラウン:ジョン・C・ライリ—
キティ:トニ・コレット
リッチ—:ジャック・ロヴェロ
ラッチ夫人:マーゴ・マーティンゲイル
ホテルのフロント:コリン・スティントン


2001年
リチャード:エド・ハリス
サリー:クレア・デインズ
ルイス・ウォーターズ:ジェフ・ダニエルズ
花屋のバーバラ:アイリーン・アトキンズ
隣人:カルメン・デ・ラヴァラーデ
ロドニー:ダニエル・ブロックレバンク

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