原題:玻璃少女/GLASS TEARS

水槽の中の私−−−初めてひとを信じて、陸にあがる。

2001年香港国際映画祭出品 2001年カンヌ国際映画祭監督週間上映作品 2002年香港電影金像奨新人賞(ゼニー・クォック)ノミネート 2002年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭審査員特別賞::http://www.nifty.ne.jp/fanta/yubari/index.htm

2001年/香港/カラー/92分/1:1.85/ 配給:ギャガ・コミュニケーションズ アジアグループ

2006年06月23日よりDVDリリース 2004年02月06日よりDVDリリース 2004年02月06日よりビデオリリース 2002年8月3日より新宿武蔵野館にてロードショー公開

キャロル・ライ監督インタビュー::http://www.cinematopics.com/cinema/topics/topics.php?number=417 ゼニー・クォックさんインタビュー::http://www.cinematopics.com/cinema/topics/topics.php?number=490

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公開初日 2002/08/03

配給会社名 0025

公開日メモ 2001年カンヌ国際映画祭監督週間上映作品に抜擢されるなど、内外で高い評価を集めた本作は、2002年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭審査員特別賞を受賞。

解説



●ヤン・ハーランなどの著名人が賞賛

02年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で上映された本作は、審査員長であるヤン・ハーラン(キューブリック監督の義弟で、『シャィニング』『A.I.』等のプロデューサー)の絶大な支持を受け、審査員特別賞を受賞した。映画祭終了時には英語字幕がついたビデオを送るよう、配給会社に依頼して帰国したという程、本作を高く評価した。また、同じく本映画祭の審査員を務めた大林宣彦監督や塩田明彦監督にも好意的に迎えられた。

●期待の星、キャロル・ライ監督

前作『Father’s Toy』(98/未<51分>)の評価を受けて、これまでインディーズとは一線を画していた商業映画界が、初めて製作費から関与した作品がこの『金魚のしずく』。香港芸術発展局の政策補助金が交付されるなどキャロル・ライ監督の手腕に香港映画界全体が大きな期待を寄せていたことがうかがえる。そして、01年香港国際映画祭でワールドプレミアされ好評を得、また、01年カンヌ国際映画祭監督週間に正式出品となり、見事にその期待に応えた。

●信頼できるひとに出会える喜び

Pは、ひとを、大人を信用していなかった。最も身近な大人である、両親に裏切られたからだ。しかし、ウーと出会いPは変わりつつある。ウーと離れ離れになる時の涙は寂しさの涙、とても素直な感情の浮黷ニ解釈できる。トーフの体温、ウーのあたたかい眼差し。本作は信頼できるひととの出会いを喜び、信じることの大切さを我々に再認識させてくれる。

●ガラス

本作の原題は、『破璃、少女。』。破璃とは、中国語でガラスを意味する。少女期から大人への通過点がまるでガラス=冷たくて、脆い=のようだと監督が感じたことから、このタイトルが付けられた。

●16歳の少女と初老の島番の出会い

キャロル・ライ監督には民生員の経験があった。その仕事を通して、いわゆる‘不良’と呼ばれる若者に多数出会う。しかし、そのレッテルは、周囲が勝手に唐チただけで、実際に根っからのワルは非常に少なく、彼らの外見と反比例するように、一度心を開くと素直であることに気付く。そこに若者特有の純粋さ、愛らしさを、監督は見出した。しかし、中国返還後の香港の現状に、彼らが漠然とした未来への不安を抱くようになり、その不安が、少年少女を街へと繰り出させてしまうのは事実である。
一方、前作『Father’s Toy』で主役を演じた宋多三氏の経歴が、本作でのウー役に反映された。劇中の孤島も実際には宋氏が管理しており、そこに暮らしているという。この両者に感化され、両者が融合し、ひとつに具現化された時、『金魚のしずく』が誕生した。

●役名の由来

主人公の16歳の少女は、Pという通称を持つ。それは、今風の子という意味で、パャRンのP、‘PCDog’(日本では‘アイボ’)のPなど最先端の若者文化を椰楡して、香港ではこう呼ぶのだそうだ。また、Pのボーイフレンドのトーフは、漢字で書くと「豆腐」、そう、あの豆腐である。今時の男の子は軟弱で捉えどころがないということに由来している。

●魅力あるキャスト陣

反抗的な中にも少女期の繊細さを併せ持ち、不安定な時期に停む16歳を体現した、ゼニー・クォックはなんと本作が映画初主演だった。演技に対して、プレッシャーを感じていたものの、ひとのぬくもりを求めながらもそれを認めない、強情なのに無防備、というアンバランスさを演じ、少女Pに成り切った。それには、ゼニー自身の家庭環境もまた映画に似ていた故、彼女の撫?ノより一層の真実味を帯びさせたのだろう。
ロー・リエは、かつてヨーロッパで初めて大ヒットしたといわれる、カンフー映画『キングボクサー 大逆転』(72)に主演、タランティーノやブルース・リーをも魅了した。01年カンヌ国際映画祭で、タランティーノから直々にロー・リエに会いたいと連絡があったそうだが、スケジュール上、現地では会えなかったとか…。カンフーはもちろんのこと、本作では多くを語らずとも多くを理解し、老年の哀愁を醸し出し、Pやウーのような若者も受け入れる優しさを見事に阜サし、ウー役に息吹を吹き込んだ。
チョーの父親を演じたタッツ・ラウは、実際にも有名な音楽家で劇中のアコーディオンも自らが演奏している。また、母親役のキャリー・ンは、演技のできる実力派ということで選ばれた。

ストーリー



香港。チョーは、両親と中国大陸からやってきた新移民。故郷でミュージシャンだった父親(タッツ・ラウ)は、香港では仕事が見付からず精細がない。一家の家計は母親(キャリー・ン)の収入に頼っており、夫婦仲は冷え切っていた。家出をした娘チョーの身を案ずる彼女は、父親のウー(ロー・リエ)に連絡する。砂浜にポツンと立つ、野ざらしの電話が鳴った。
ウーは、すぐさま娘夫婦の住む市内に向かう。チョーの携帯電話からPの存在を知った彼は、Pと落ち合う。彼女は、チョーにお金を貸していると言う。大抵の若者の例にもれず、年齢のかけ離れた‘オヤジ’の存在を毛嫌いするPにそのボーイフレンドのトーフ(チョイ・ティンヨー)も加わり、奇妙な3人組での‘チョー捜し’が始まる…。
そんな矢先、Pは母親代わりの民生員マミーが自殺未遂を起こしたと知り、3人で病院へ向かう。その帰り道、Pは泣きながらカッターで自らの腕を傷つける。自鮪ゥ棄のPをウーとトーフは、身を挺して守った。
3人は、チョーが通っていたというスケート場を訪れた。リンクで幼い女の子と一緒に滑るウーの姿を目で追うPの撫?ノ変化が生じる。いつもの不機嫌さからは想像ができないほど、やわらかで無邪気な笑顔を見せた。
その後、チョーへの手がかりがあるかも知れないと、Pはウーとトーフを連れて実家に戻る。若い愛人に心を奪われている母親に改めて失望したPは、開きかけていた心の扉を閉じるようにウーとケンカをし、別れる。しばらくは、Pとトーフ、ウーと、それぞれの生活を送った。
再び市内に舞い戻ったウーは、持病の発作で倒れてしまう。Pとトーフはウーを介抱し、共に島へ行く。一面に広がる青い海と眩しい太陽の下、Pとトーフは今までにない開放感を味わう。
しかし、いまだチョーの行方はつかめない。島からチョーの家へ3人で赴き、その父母と話し合うも解決の糸口は見付からない。難航するチョーの捜索に諦めを見せ、島へと引き揚げるウー。先に電車を降りる彼を見送ったPは、大粒の涙を流した。
数日後、道を歩いていたPは、偶然にチョーと遭遇する。チョーは、家へ帰るところだと言う。
そして、また浜辺の電話が鳴る。そう、それは待ちわびたチョーからの電話だった。

スタッフ

監督:キャロル・ライ
脚本:キャロル・ライ、ルイ・ホウチョン
プロデューサー:ジョー・マー
撮影:チョン・トンリョン
編集:ダニー・パン、キャロル・ライ
美術:プーン・イックサム
音楽:アリアン、オーケー
製作:美亜電影製作有限公司
共同製作:天下電影製作有限公司、自主工作室

キャスト

P:ゼニー・クォック
ウー(チョーの祖父):ローリエ
トーフ:チョイ・ティンヨー
チョーの母:キャリー・ン
チョーの父:タッツ・ラウ

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