原題:Jazz Seen: The Life and Times of William Claxton

音楽とともに生きる喜び、写真というアートの素晴らしさ。そして美しい人生を生きた人の幸福な笑顔がある。

2001年/ドイツ/カラー/ヴィスタ/80分/ 配給:ギャガ・コミュニケーションズ

2004年06月25日よりDVD発売開始 2002年3月2日よりシネ・アミューズにて公開

公開初日 2002/03/02

配給会社名 0025

公開日メモ ジャズを愛し、その音をカメラで捉え、目に見えるアートに表現することを、50年代から今にいたるまで心から愛しつづけている名カメラマン、クラクストンの半生を、彼の伝説的ショットとカメラの後側の感動的なエピソードで綴っている。

解説



今注目されるミンドセンチュリー・テザイン全盛の50年代、新しい空気をともなった時代のアメリカ西海岸で、生き生きとした写真と斬新なアートテザインが一躍人々の話題をさらった。それが1952年にスタートした「パシフィク・ジャス」レーベルのアルバム・ジャケットである。印画紙にトランペットのネガをすらしながら感光させた『チエット・ベイカー・アンサンブル』(1954)、ジャケットからタイトルなど一切の文字を省いた『ラス・フリー
マン・トリオ』(1954)、モンタージュの効果を使った『ジェリー・マリガン・カルテット』(1955)、海から上がってきたダイバーにトランペントを持たせた『ジャズ・ウエスト・コースト』(1957)、そして演奏するジム・ホール(g)のハンクで画家のジョン・アルトゥーンにペインティングをさせている『ジム・ホール:ジャズ・ギター』などなど。いずれも、作り手の若々しい想像力と遊ひ心か、素晴らしいアートになっている。
ニューヨークのジャスと一線を画した、これら後に「ウェストコースト・ジャス」と呼ばれるロサンシェルスやサンフランシスコのジャズのウィジュアル・イメーシを創造し、レコードジャケットをアートに高めたのが、「パシフィク・ジャズ」の写真とテサインを手かけたウィリアム(ビル)・クラクストンである。しかも、その仕事始めは、20歳そこそこの若さだった。映画『JAZZSEEN/カメラが聴いたジャス』は、ジャズを愛し、その音をカメラで捉え、目に見えるアートに表現することを、50年代から今にいたるまで心から愛しつづけている名カメラマン、クラクストンの半生を綴っている。
監督は『BLUE NOTE/ハート・オブ・モダンジャズ』のジュリアン・ベネディクト。東海岸のジャズをとりあげた前作から西海岸へ、今回はクラクストンの数々の名ジョイントと彼を知る錚々たるアーティストのインタビュー映像を編集し、彼の才能とともにその温かな人柄を伝えてインタビューシーンに登場するのは、現代ファンション写真の巨人の一人であるヘルムート・ニュートン、トップクラスのヘアスタイリストとして著名なウィダル・サスーン、有名な英国人カメラマンのデヴィッド・ベイリー、『終身
犯”フレンチ・コネクション2』などで知られる映画監督ジョン・フランケンハイマー、ジャズ愛好家でカメラマンでもある俳優のデニス・ホッパーら多彩なジャンルのアーティストたち。無論、ジャスの生き証人たち、チコ・ハミルトン、ラス・フリーマン、ベニ—・カーターなども登場し、彼ら、いわゆる「真正のプロフェンショナル」が語る言葉はいずれも興味深く魅力的だ。
また、若きチェット・ベイカーやアート・ペッパー、チャーリー・パーカーの巨人たち、ゴスペルのマヘリア・ジャクソン、フ
ルースのマディ・ウォータ—ズらはクラクストンか撮った伝説的ショットで登場する。とくに、クラクストンの写真がスターとしての人気に大きく貢献したといえるチェット・ベイカーは、秘蔵写真もまじえて生き生きと描かれている。
 一方、映画のアクセントになっているのは、クラクストンのファンション・カメラマンとしての側面である。クラクストンは、60-70年代に活躍した革新的ファッションデザイナー、ルディ・ガーンライヒのモードを1962年から撮り始めた。モテルは、ガーンライヒの女神であり、現クラクストン夫人のペキー・モフィット。映画では二人の出会いから、今でも仲睦まじい様子が描かれている。さらにマレーネ・ディートリッヒ、クリント・イーストウッド、スティーブ・マックイーンなど映画スター達のショットやエピソードもまじえ、映画は50年代以降のアメリカのポップカルチャー史をも感じさせる内容となっている。
しかしこの映画でもっとも胸を打つのは、何といっても数々のジャズメン達のカメラの裏側のエピソードであり、それを見つめたクラクストンの眼の優しさだ。時に切なく、時に悲しく、時代を駆け抜けたジャズの天才たち。彼らの最もきらめく一瞬を捉えてきたクラクストンか、彼らを語る言葉のひとつひとつに、観客はあふれるほどの愛情を感じるだろう。そして、その愛情ゆえに、多くのアーティストの永遠に刻まれる一瞬を彼が撮り得たのだと理解するのである。
音楽はもちろんチャーリー・パーカーからジェリー・マリガン、チェット・ベイカー、ダイアナ・クラールまでのジャズを満載し、現代の人気トランペッター、ティル・ブレナーが音楽監督としてオリシナル・スコアを提供している。ジャズの魅力、写真とジャケットアートの魅力を伝えるとともに、こんなふうに音楽と生きられたら、こんなふうに人を愛せたら、という幸福な気分を温かく感じさせてくれるフィルム・エッセイである。
 

ストーリー

スタッフ

監督:ジュリアン・ベネディクト
製作:マリナ・ミュラー
撮影:マシュー・J.クラーク
音楽:ティル・ブレナー
配給:ギャガ・コミュニケーション

キャスト

ウィリアム・クラクストン
ペギー・モフィット
チコ・ハミルトン
ジョン・フランケンハイマー
ヴィダル・サッスーン
デニス・ホッパー
ベネディクト・タッシェン
ベン・ハーパー
バート・バカラック
ジャッキー・テラソン
カサンドラ・ウィルソン

LINK

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