原題:Bad Guy

最悪最上の純愛に、世界は騒然とした…。 ヨーロッパを席巻する韓国の鬼才、キム・ギドクが放つ衝撃の純愛ワールド——

第6回(2001)釜山国際映画祭「韓国映画パノラマ」部門招待 第6回(2001)釜山国際映画祭アジア映画振興機構(NETPAC)賞Special Mention受賞作品

2001年/韓国/カラー/103min/ビスタ/ドルビーデジタル/ 配給:エスピーオー

2004年08月06日よりDVD発売開始 2004年2月28日より新宿武蔵野館にてロードショー

(c)2002 By Tube Enterainment All Rights Reserved

公開初日 2004/02/28

配給会社名 0116

解説


あまりに激しすぎる運命の出会い。

孤独なヤクザ—ハンギは、街角で偶然見かけた可憐な女子大生ソナにひとめ惚れをする。しかしソナは冷たい視線を向けるだけ。次の瞬間、ハンギは強引にソナの唇を奪うが、平手打ちと侮蔑の眼差しを注がれ、深い屈辱を味わうことに…。強い復讐心と所有欲にかられたハンギは、ある策略を実行する。それはソナを自分の仕切る売春宿に〈娼婦〉として売り飛ばすことだった。彼女の人生はハンギによって思いもよらぬ方向へと狂い始める。売春街のネオンの陰で、苛烈な運命に立ち向かうソナ。売春宿のマジックミラー越にソナの変貌を見つめ、〈悪い男〉から〈愛する男〉へ変わっていくハンギ。そして二人の間の絶望と憎しみは、いつしか激しい愛へと変化していく。光と闇が交錯する街、極限状況の中でしか生まれない〈究極の恋愛〉がそこにあった……。

ベネチア、ベルリン3年連続コンペ選出!
世界中から熱い視線を集める鬼才、
〈韓国の北野武〉キム・ギドク監督!

これまで監督した9作品全てが海外映画祭で高い評価を受けているキム・ギドグ監督。2000年には『魚と寝る女』(99)、2001年には、「受取人不明」(仮題/01)がベネチア国際映画祭に、2002年には本作『悪い男』がベルリン国際映画祭にと3年連続でコンペティションに選出された。同年カルロヴィヴァリ、ブエノスアイレスなど5つの海外映画祭では特集上映が組まれている。そして最新作「春夏秋冬…そして春」(仮題/03)がソニークラシックスによって全米配給されるなど、ヨーロッパ・北米で今、大きな注目を浴びている気鋭の映像作家である。痛覚を刺激するスタイリッシュな描写と、光と闇が織り成す強烈な映像美で、疎外された人間の裏側に潜む暗い情熱を見事に映し出す。台詞に依存することのない、エネルギッシュで独自な映像表現、ベネチアをはじめヨーロッパでの熱狂的な支持など、まさに“韓国の北野武”ともいえる存在である。
「この世はどうしたって変わらない。私が映画を通して伝えたいことは社会問題や政治ではなく、心理的な開放感です。人間は社会の底の底まで降りていく勇気があってこそ幸せになれるのです」と語るキム・ギドク監督は、今韓国映画ブームを支える、映画教育を受けたエリート監督たちとは一線を画している。
小学校卒業後、17歳で工場労働に従事し、海兵隊で5年間の軍隊生活を経験した後、絵画を学ぶため単身パリへ渡る。帰国後、脚本執筆を始め映画監督になったという彼の経歴は、学閥意識の強い韓国社会では異端ともいえる。しかしその経験こそが彼の比類ない映像世界の源になっている。鮮やかな陰鬱の対比、絵画を思わせる艶やかな色彩で寓話的な恋愛ワールドを描きながら、彼のみつめるものは社会から疎外された人間たちの生きざま、その憎悪と哀しみである。

「女性蔑視」か「究極の愛」か。
ベルリン、韓国で論議を巻き起こした〈愛のあり方〉

2002年ベルリン国際映画祭において、ドイツのマスコミは「愛と憎悪における寓話」(Berliner Morgenpost ベルリナ・モルゲンポスト紙)と絶賛する一方で、「これは愛ではなく、性倒錯症的な関係に過ぎない」(Tagesspiegel タゲスシュピーゲル紙)と掲載。韓国の新聞、雑誌にもフェミニズムの観点からの批判的意見から、精神科医による映画分析まで数多くの論評が載せられ、『悪い男』、ひいてはキム・ギドク監督自身に関する考察が展開された。インターネット上でも映画を支持するか否かで熱い論争が繰り広げられ、社会現象にまでなった。

台詞はたったひことだけの主演俳優チョ・ジェヒョン。
運命に立ち向かう美しきヒロイン、ソ・ウォンの演技に絶賛!

この映画のもうひとつの魅カは二人の主役、ハンギとソナ。上映時間103分間のうち、たったひとことの台詞で観客を魅了した〈悪い男〉ハンギ役チョ・ジェヒョンは、傷つけることでしか伝えられない不器用な愛情、優しさ、人間としての尊厳まで圧倒的な存在感で演じた。キム・ギドク監督作のほとんどに出演、「監督のペルソナ(分身)」とも言われ、韓国ではTVドラマと映画を股にかけ活躍する人気実カ派俳優だ。そして壮絶な運命を辿りながらひとりの成熟した女性として磨かれていくソナを演じたソ・ウォン。映画出演2作目にして、女子大生から娼婦に身を落とすという難役をこなし、激しい愛のかたちを見事に体現した。

誘惑の光の底でうごめく売春街、運命を導く海辺…

昼は生活の温もりと侘しさが漂い、夜は誘惑の光に包まれ、全く違った顔を見せる売春街。撮影はソウル・スタジオ・コンプレックスのセットで行われた。監督のアクションの声で、女優たちが通行人に声をかける。そのリアルな演技は、ここを実際の売春街と錯覚させるほどだった。二人が並んでベンチに腰掛けるオープニングシーンは、ソウルの繁華街、明洞(ミョンドン)ロッテ百貨店の入口付近で撮影された。そして運命を導く海辺は、工業都市として有名な慶尚北導浦項(ポハン)でロケが行われた。二人が初めて海辺を訪れるシーンで挿入される印象的なナンバーは、イタリア・シチリア出身のジャズ・シンガー、Etta Scolloが歌う“I Tuoi Fiori(あなたの花)”。
また、ハンギがソナに渡した本は28歳で夭逝したオーストリアの表現主義画家エゴン・シーレの画集で、彼女が書店で切り取ったページは“Embrace(抱擁)”(1917)というタイトルの作品である。

ストーリー


昼下がりの繁華街。華やいだ雰囲気とは明らかに異質な風貌、凄みを湛えた眼差しの男が、人ごみをお彷徨っている。男の名はハンギ。売春街を仕切るヤクザの頭(かしら)である。
ハンギの目にベンチに腰掛ける一人の女性の姿が飛び込んできた。膝にのせた“西洋美術史”の教科書と足元の白いサンダルが眩しい女子大生、キム・ソナ。ハンギはソナの無垢な魅力に引き込まれ、彼女の隣に腰を下ろす。しかしソナはまるで汚いものでも見るかのような侮蔑の視線をハンギに向け、そそくさと立ち上がり、待ち合わせをしていたボーイフレンドの元へ行っしまう。が、次の瞬間、ハンギは強引にソナの唇を幸い、街頭はパニックに陥る。通りすがりの軍人に捕らえられたハンギに対しソナは、「最低な奴」と唾を吐きかけ、怒りをあちわにする。雑踏の中、ハンギに深い屈辱と惨めさが押し寄せた。
…そして、ある策略を思い立つ…。それは、ソナの人生を大きく狂わすとんでもない計画であった。
ある日、ソナは書店で大金の入った財布を拾い、思わず中味を抜き取ってしまう。財布の持ち主に捕まったソナは、自分が手にした300万ウォン(約30万円)とは桁外れの金頭が入っていたはずだと問い詰められ、高利貸しから借金をするはめに。その契約書には「返済できない場合には身体に対する権利を放棄する」と書かれていた。
ソナはハンギの陰謀にはまり、娼婦として彼の仕切る売春宿に売り飛ばされる。ソナの暮らす部屋(そこは彼女が身体を売る場所でもある)の壁面にある鏡はマジックミラーになっており、ハンギは毎日、鏡の裏の隠し部屋に立ち入り、娼婦に変わっていくソナを見守ることとなる。ソナは悪夢のような現実に狂いそうになろ。恥辱と恐怖におびえ、やつれていくソナを見つめながら、ハンギはこれまで感じたことさえなかった自責の念にかられていく。
ところが、ハンギの子分ミョンスがソナに惚れてしまい、お金を払って関係を持ち始める。そして情事のあと、ミョンスは思わず口を滑らす。「1ヵ月前、百貸店の前で男と採めたろ…」。ソナはハンギの策略でここに連れて来られたことを知り、激しい憎悪を燃やす。
ある日ソナは、ミョンスの助けを借りて売春宿からの脱出に成功する。なんとか自宅の玄関までたどりついたが、またもや、ハンギによって売春街に連れ戻されてしまう。
次第に売春街の日常に染まり始めるソナだったが、自分の周囲をガードするハンギを突き放すことも受け入れることもできずにいた。そんな頃、ハンギは宿敵ダルス派の襲撃を受ける。
ハンギのもうひとりの子分ジョンテは、復讐のためにダルスを殺す。ところがハンギは、死刑になることを知りつつもジョンテの代わりに出頭し、刑務所に送られる。
あんなに憎んでいたはずのハンギが死刑になる…ソナは居ても立ってもいられずジョンテとともに、刑務所へ面会に訪れる。
死刑囚となったハンギを前にし、「勝手に死ぬの?私をこんなにして…」と絶叫するソナ。しかし、ハンギは彼女に一言の言葉さえかけることはなかった…。
ついにジョンテが自首をしハンギが釈放されたことを、ソナは売春部屋で聞かされる。その知らせに鏡の前で呆然とするソナ。そしてソナはついに発見する…鏡の向こう側からかすかな光とともに浮かびあがるハンギの顔を…。

スタッフ

製作総指揮:キム・スンボム
製作:イ・スンジェ
プロデューサー:アン・サンフン
脚本・監督:キム・ギドク
助監督:チョ・チャンホ
撮影:ファン・チョリヨン
照明:パク・ミン
音楽:パク・ホジュン
美術:キム・ソンジュ
編集:ハム・ソンウォン
提供:TUBE ENTERTAINEMNT
製作:LJ FILMES

キャスト

チョ・ジェヒョン
ソ・ウォン

LINK

□公式サイト
□IMDb
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す