原題:Le Monde De Marty

まぶたを閉じれば、ウィ。瞳を動かしたら、ノン。 マーティはベランの「目」と会話する。 悪戯大好き少年マーティと車椅子老人ベランがつむぐ奇跡の友情!

2000年1月26日フランス初公開

2000年/フランス映画/カラー/ビスタサイズ/89min/Dolby SR/日本語字幕:寺尾次郎 提供:ツイン、(株)徳間書店/配給:東光徳間、ツイン

2002年08月07日よりDVD発売開始 2001年12月22日よりシネマカリテにてロードショー

(C)2000 OUTSlDER PRODUCTlONS/CAROLlNE PRODUCTlON

サブ題名 ラ・プロミッセ

公開初日 2001/12/22

配給会社名 0052/0251

公開日メモ 悪戯好きの少年マルタンは、小児ガンを宣告された10歳の少年。ある日、高齢者病棟に忍び込んだマルタンは、ベッドに横たわったまま話すこともできない70歳の老人アントワーヌ・ベランに出会う。 老人と少年との友情から奇跡が起きる。

解説

“友情とは、晴天ならば二人乗り、
悪天候では一人乗りの大きさの船である”’
アンプロ一ズ・ビアス『悪魔の辞典』

マーティの毎日は病院の中。
マーティの遊び相手は看護婦と看護士。
マーティの目標は病気をやっつけること。
マーティの武器はバイタリティと生きる意思。
マーティのチャンスは生死の境をも超える愛…。

マーティことマルタンは小児ガンを宣告された10歳の少年。けれど『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の主人公にちなんでマーティと呼はれている彼は、だれよりも快活だ。生きることを精いっぱい楽しんでいる。ある日、高齢者病棟に忍ひ込んだマーティは、ベッドに横たわったまま話すこともできない70歳の老人アントワーヌ・ベランに出会った。お茶目なイタスラをしなから病院内を駆け回る悪ガキと、体は動かないけれど明晰な意識の下で皮肉な心の声を発している頑固な老人。ともにユニークさにかけてはひけをとらないふたりの間に、やがて誰にも断ち切れない強くて深い友情が芽生える…。

舞台は病院、病気の少年と入院中の老人の話と聞くと暗い映画を想像しがちだか、『約束〈ラ・プロミッセ〉』は信じられないほど爽やかで、愉快で、そして心に響く切ない友情の物語だ。
未来を奪われようとしている少年と、過去の記憶が失われつつある老人。楽しいことが大好きな少年と、いつも不機嫌で自分の殻に閉じこもっている老人。まるで対照的なマーティとベランか出会ったとき、二人は大切なものを与え合い、お互いを変えていく。マーティはベランに話しかけて遊び相手にし、ベランはマーティの無邪気さに触れて生きる喜びを取り戻す。共に独りぼっちで愛を必要としていたふたりは、お互いを愛し、友情を結ふことで生きる力を見出していく。

監督のドニ・バルティオは、これか長編テビュー作となる30歳(撮影当時)。リュック・ベッソン後援のシナリオ・コンテストで最優秀賞を獲得し、ベッソンのバックアップで撮った短編『ペナール』がシャムルース国際映画祭審査員大賞など多くの映画寅に輝いたフランス期待の新鋭である。
バルディオは、大好きだというイギリス映画のテイストを盛り込んで、悲しみと笑いを絶妙なバランスで配合した。伏線となる登場人物ひとりひとりへの愛情深い台詞のプ□ットが役柄に生命を吹き込む。シニカルなのにユーモアを忘れない個性的なキャラクターたち。リアリティと虚構を交錯させながら、ごく自然で日常的なのにとても独創的な物語が綴られていく。この作品は切なく哀しいメロドラマではない。微笑みと温もりと感動に包まれた現代の寓話なのだ。
辛口のヨーロッパ映画界が絶賛したのは、老人の心をナレーションで表現したという発想とテク二ック。映画の成功の鍵を握るこのアントワーヌ・ベラン役には『Mr.レディ Mr.マダム』シリーズや『クリクリのいた夏』『アサシンズ』などのフランスを代表するベテラン俳優ミシェル・セローがあたっている。監督が“ダメもと”でオファーしたところ、「話すことができないという設定が気に入って」出演を快諾した。ナレーションの奥に隠された本物の感情を、わずかな顔の動きと目の表情だけで表現するさすがの貫禄。まさに存在感そのものが演技といった風情で、キャラクターの人間味を豊かに伝えている。マーティにはオーディションに集まった300人以上の少年からジョナサン・ドゥマルジェが選ばれた。くるくるとよく動く表情、時にみせる大人びた視線。どんなイタズラをしても頬ずりしたくなるような愛らしさはもちろんだが、セロ一との相性も、物語を地でいくような素晴らしいコンビネーションである。
また、アントワーヌの妻シュザンヌに『ギャルソン』『ジェルミナル』等のアニタ・アラーヌ。また、『猫が行方不明』のカミーユ・ジャピィ、『しあわせはどこに』『つめたく冷えた月』(脚本/監督/主演)、『愛するための第9章』等のパトリック・ブシテー、『サン・ピエールの生命』『裸足のトンカ』のクリスチャン・シャルムタン、『恋人たちのパリ』のミリアム・モスコー、『フレンチ・コネクション2』『ボウァリー夫人』他のジャック・ティナムといったフランス映画界の重鎮俳優たちが脇を固めている。

ストーリー

ある病院の集中治療室。10歳の少年マルタン(ジョナサン・ドゥマルシェ)に、窓の外からママと主治医が微笑みかけている。しかし、マルタンは医師の唇をよみ顔を曇らせた。——「楽観は禁物です」。
マルタンはレゴを集めるのが趣味。映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の主人公にちなんでマーティと呼ばれている。小児ガンに冒されている彼の今の“世界”は病院の中にしかない。しかし、病院職員や看護婦を困らせるくらい精力的に遊び回っている。
ある日、高齢者病棟に忍び込んだマーティは、407号室の患者アントワーヌ・ベラン(ミシェル・セ□一)に出会った。脳内出血のためにアルツハイマー型痴呆症になり、動くこともしゃべることもできない寝たきりの老人。マーティにとってベランは、無害で動かないからこそスーパーマンのようにカッコいい存在だ。しかし実のところベランは明断な意識を持ち、持ち前の頑固さで皮肉に、満ちた言葉を周囲に発し続けている。反面、妻や自分の名を繰り返しなから、懸命に失われゆく記憶の断片を呼ひ戻す日々を過ごしていた。勝手に引き出しを開けて古い家族写更を持ち出したり、有料テレビ用の小銭を失敬したり、イタズラばかりしているマーティはベランにとって頭痛のタネ。入院してから半年。毎日見舞いにやってくる妻シュザンヌは肝心な時には居眠りで役に立たない。ベランは帰路につく妻の後ろ姿に、自分が早く死ねばみんなが楽になると話しかける。
ベランを担当する看護婦が若いミリアムに代わった。「心臓麻痺で殺そうという医者の魂胆か?」。ミリアムの白衣の胸に自を釘付けにしながら、お得意の悪態をつくベラン。そして夜毎忍び込んでくるマーティにも、「静かに死なせてくれ!」と叫んだ。心の底ではマーティがやってくるのが楽しみになってはいたのだが。
マーティにとってベランは格好の遊び相手。しかし、ベランの腕をヒモで吊って動かして看護士たちを驚かせ大騒ぎを起こしたせいで入室を禁じられてしまう。ママも度を超したイタズラをたしなめるが、翌朝、マーティがベランの隣のベッドで寝ているのを見て考えを変える。寂しい息子にとってこの老患者が特別な存在であることが、彼女にはわかっていたからだ。病院にふたりを同室にしてくれるよう頼み込むママ。ミリアムもベランにとっていい刺激になると応援する。最初は「ディズニーランドじゃない!」と突っぱねた教授もついには根負けした。
病院中がすっかりマーティのペースにはまりこんでいた。ベランですらサッカーに車椅子で担ぎ出され、不動のゴールキーパーにされても「いいアイテアだ」と楽しめるようになった。そんなころ、ベランの旧友ダンクールが見舞いにやってくる。最初は誰だかわからなかったアントワーヌも、しだいに記憶を取り戻して懐かしさに浸る。一方、事務室に侵入してファイルを覗き見たマーティは、ベランの職業が情報局主任捜査官と知ってますます好奇心をつのらせる。翌日の407号室は手書きの“007”号室に変わり、サングラスをかけられたべランが座っている。そこで生き生きとゲームを楽しむマーテイ。
老人と少年の心は徐々に近づいていく。ベランの誕生日をマーティが医師の部屋から盗んできたワインで祝う。「我が意を得たり」と少年に語りかけるベラン。やがてマーティは、ベランのまばたきで“ウィ”か“ノン”かを見分け、会話するようになる。マーティはカード・ゲームでイカサマをしてベランを怒らせたりもするが、そんな何気ない日常的なことが老人に生きる希望を与え、表情を甦らせていくのだった。
ポラロイドカメラを手にしたマーティはベランの家族写真のように、みんなで並んで記念撮影しようと言う。しかしその写真を憶えていないベランは苦悩する。病院仲間が家族のようだと大喜びするマーティ。しかし、その直後シュァンヌが発作を起こして急死してしまう。本当の孤独がベランを襲った。そして、マーティの姿もベッドから消える。彼はその頃、無菌病室にいた…。
ようやく起きられるようになったマーティは病室を抜け出すと、ベランを車椅子に乗せて夜の町に繰り出す。クリスマスー色の町を車椅子に乗って駆け抜けて行く。目的はある。でも、ちょっとだけオモチャ屋でレゴをウィンドウ・ショッピング。輝くようなマーティの顔をノエルのディスプレイの明かりが照らす。やっとの事でたどり着いた目的地はベランの老友ダンクールのバー。旧友たちが集って彼を出迎えた。彼にとって何よりも嬉しいプレゼントになった。
マーティはダンクールに頼んで車で夜明けの海へと向かった。力の限り砂浜で車椅子を押し波打ち際まで行こうとするマーティ。既に彼等の間は言葉がなくとも互いの意志が通じるようになっていた。アントワーヌはマーティに封筒を渡そうとする。そこにはクリスマス・カードとレゴランドヘのパスポートがあった。大喜びするマーティ。ベランは彼にそっと心から語りかける。「約束しておくれ、いつまでもいつまでも生き続けると…」。

スタッフ

製作:ローラン・ブロシャン(アウトサイダー・プロダクションズ)、
   ディディエ・ディアス、ブリューノ・オデゥベール(力□リーヌ・プロダクション)
監督:ドニ・バルディオ
脚本:アレクサンドル・ジャフレイ、ドニ・バルディオ
音楽:アレクサンドル・ジャフレイ
撮影:アラン・ルヴァン
録音:ザヴィエ・グリエット
記録:マリー・テレーズ・ロピ
編集:アンヌ・アルグース
美術:リシャール・カウール・ド・ヴィルジュ
製作監督:アラン・アルチュール
助監督:ミシェル・デュボワ
衣裳:シルヴィ・ド・セゴンザク
キャスティング:ナタリー・シュロン
ゼネラル・マネージャー:リュック・トラモン
メイク:ステファニー・スルヴァ
スチル:ジャン・ルイ・ザヴィエ

キャスト

アントワーヌ・ベラン:ミシェル・セロ一
マーティ:ジョナサン・ドゥマルジェ
シュザンヌ:アニク・アラーヌ
ミリアム:フロランス・エベリンク
クレア:カミーユ・ジャピィ
ブリクー:ジャン=クリストフ・バール
ジルベルマン教授:パトリック・ブシテー
リュグエ教授:クリスチャン・シャルムタン
ジョジアンヌ:ミリアム・モスコー
脚の悪い婦人:マリ=アンジュ・デュテイユ
ダンクール:ジャック・ディナム
ポール:ベルナール・シュロン
ルネ:ジャン=ポール・ボネール

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