原題:LE VENT DE LA NUIT

狂おしいほど甘くはかない真夜中の刹那、女と男は出逢った。

1999年ヴェネチア国際映画祭正式出品作品

1999年3月3日フランス初公開

1999年/フランス/カラー/シネマスコープ/95分/ドルビーSR 配給:ビターズ・エンド

2002年08月30日よりDVD発売開始 2002年08月30日よりビデオ発売&レンタル開始 2002年2月9日より新春、銀座テアトルシネマにてロードショー

公開初日 2002/02/09

配給会社名 0071

公開日メモ 甘やかな夜風に包まれて、重なり合う女と男の心の傷痕は、いつしか癒えてゆく。若い恋人との逢瀬を重ねる人妻の禁断の愛、目と目があったその瞬間に身も知らぬ相手を激しく求め合う究極の愛の形。むせかえるような夜の濃密な時間に繰り広げられる、芳醇で濃厚な大人のためのラブストーリーが誕生した。

解説


◆カトリーヌ・ドヌーヴが魅せる、成熟した女の愛の苦悩と悦び近年『ポーラX』『ダンサー・イン・ザ・ダーク』など気鋭の監督たちの作品に出演し、その圧倒的な存在感で大女優の実力をみせつけるカトリーヌ・ドヌーヴ。待望の主演作となる本作はドヌーヴ自らがフィリップ・ガレル監督にrあなたと映画を作りたい」とラブ・コールを送りつづけて遂に実現した話題作である。若い恋人との愛に溺れる人妻の役をノーメイクさながらの迫真の演技で臨んでいる。ベッドに横たわりシャワーを浴びる恋人を待つ剥きだしの表情、愛を求める溢れんばかりの感情を抑えられずに惑う姿、失われゆく若さへの焦燥感。飾りたてた美しさとは正反対にある、うちに秘めた精神の純粋さと豊かさ。陽の差し込む窓辺にたたずむドヌーヴの崇高なまでの美しさは、まるで聖母のように清らかだ。咲き誇る気品溢れた美しさはそのままに、成熟した女の愛の苦悩と悦びを大胆かつ繊細に演じるドヌーヴは、さらなる新境地を切り開いたといえよう。
 愛の残り香を探し求めてパリの昼下がり。古いアパルトマンの一室で、年下の恋人ポールの愛を激しく求める人妻エレーヌ。しかしポールは、エレーヌの一途な想いを次第に受け止められなくなっていく。ポールを探して、夜の街をさまようエレーヌ。そんな彼女を待っていたのは、同じ愛の痛みを抱えたセルジュとの運命の出逢いだった…。疾走する赤いポルシェとともに舞台はナポリからベルリン、そして再びパリヘ。甘やかな夜風に包まれて、重なり合う女と男の心の傷痕は、いつしか癒えてゆく。若い恋人との逢瀬を重ねる人妻の禁断の愛、目と目があったその瞬間に身も知らぬ相手を激しく求め合う究極の愛の形。むせかえるような夜の濃密な時間に繰り広げられる、芳醇で濃厚な大人のためのラブストーリーが誕生した。
◆神話に彩られた映画監督フィリップ・ガレル。J=L.ゴダールからレオス・カラックスまで、世界の映画作家たちが心酔するフィリップ・ガレル監督。64年、わずか16歳で撮った処女作(その後自らの手で廃棄)がフランス映画界で話題となり、「恐るべき子供(アンファン・テリブル)」と騒がれるも、その後アメリカに渡り、60年代後半、アンディ・ウォーホールのファクトリーに参加。前衛的かつ実験的な作品を撮り続ける。かのジーン・セバーグに愛され、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの歌姫ニコとの愛の蜜月を送った数々の神話的色彩を帯びた映画作家。『ギターはもう聞こえない』『愛の誕生』、その作品は一貫して、自伝的要素を色濃く反映させながら、ストイックなまでに男と女、その出逢いから生まれる愛の誕生と喪失という普遍的なテーマを描き続ける。
◆エレーヌを巡る2人の男たち妻を亡くした哀しみから苦悩に溺れる建築家セルジュを演じるのは、『クリスマスに雪は降るの?』(96)のダニエル・デュバル。寡黙なクールさとは裏腹に、やり場のない想いを胸に一人真夜中の街を紡律し、朝もやにつつまれた明け方の河岸を歩くセルジュのみせる弱さには孤独な男の哀愁を感じさせる。そしてセルジュが自ら命を絶つという選択に至るラストシーンには、ガレルの、死に急いだ愛する者たち(ジーン・セバーグ、ニコ、親友である映画監督ジャン・ユスターシュ…)への鎮魂歌(レクイエム)として鳴り響く。また、年上の恋人エレーヌを愛しながらも、若さゆえにその愛から逃げるポールに『ポネット』のグザヴィェ・ボヴォワ。本作の共同脚本も手がけ、「きみは死ぬことを忘れるな」(95)、ブノワ・マジメル主演「マチューの受難」(00)など自らの監督作品が高く評価されている多才な映画人である。

ストーリー



狂おしいほど甘くはかない真夜中の刹那、女と男は出逢った。パリの昼下がり。ひとりの女が古いアパルトマンの階段を上がる。すれ違う若い女性に羨望と嫉妬のまなざしを向けて。女の名はエレーヌ。何不自由ない夫との生活がありながら、身も心も満たされず、若い恋人ボールとの情事を重ねている。ベッドで待つポールの前で窓辺にたたずむエレーヌは、ポールが要求するままに、髪を上げ、地味なメガネをかけ微笑み、裸でベッドに入り込む。そしてエレーヌはポールの腕に抱かれつかの間の至福を味わいながらも、自らの衰えゆく身体を感じ、つねにポールの愛に怯えるのだった。別れ際にポールから、彫刻のお披露目のために数日間ナポリに行くことを告げられたエレーヌは、自分も同行したいと懇願するがポールは遠回しに拒否する。広大な海を見おろすナポリの古城でひらかれる彫刻展。自分は彫刻家だとエレーヌに嘘をついているボールは、まだ助手の身分だ。そこで知り合った師匠の友人で建築家のセルジュに空港まで送ってもらうことになった。途中車をおりて港町ポジターノの景色を眺めるふたり。セルジュはかつてこの街で共同生活を送っていたことを漏らす。車中、好奇心旺盛なポールは口数の少ないセルジュから、かつてパリで革命に参加していたこと、革命後囚われていたこと、妻が自殺をしたことを聞く。不思議な魅力をもつセルジュに惹かれ、ポールはパリまで同乗させてほしいと頼むのだった。パリに戻ってきたポールと久しぶりに逢ったエレーヌは、情事の後送ってくれたポールを自分の家に誘い、夫に会わせようとする。何も知らぬ夫は若いポールを前に、哲学を語るがエレーヌは落ちつかない。話も尽き、ポールが帰ろうと立ち上がった瞬間、エレーヌはテーブルに置いていたグラスを割り、その破片で自らの手首を切った。大事には至らなかったものの、エレーヌの信じがたい突然の行動にポールはショックを受け、セルジュがベルリンへ行くことを聞き、自分も連れていってほしいと頼む。翌日ポールはホテルの前にいた娼婦を買う。一方セルジュはひとり車を走らせ、亡き妻の墓の前にいた。部屋に戻らないポールを探して夜の街をさまようエレーヌ。前に停まった一台の車からポールが顔をみせる。エレーヌが同乗して3人は日本食レストランへ行く。エレーヌの愛を恐れ、また自分が彫刻家であると嘘をついていたポールは疲れたからと先に帰ってしまう。残されたエレーヌとセルジュ。見も知らぬふたりは、お互いが以前に会ったことがあるようなデジャヴを感じ、見つめ合い、急速に求め合うのだった。ふたりはホテルでベッドをともにする。安心しきって寝息をたてるエレーヌの横でひとりタバコの煙をくゆらせるセルジュ。エレーヌを残し、セルジュはある決意を胸にホテルを出、自分の部屋に戻るのだった。

スタッフ

監督:フィリップ・ガレル
脚本:フィリップ・ガレル、マルク・ショロデンコ、グザヴィエ・ボヴォワ、アルレット・ラングマン
音楽:ジョン・ケイル
彫刻:フェノーザ
撮影:カロリーヌ・シャンプティエ
カメラ:ジヤン=セザール・シアボ
編集:フランソワーズ・コラン
録音:ルネ・レヴエール
調整:テイエリー・デロール
衣装:エリザベット・タヴェルニエ

キャスト

エレーヌ:カトリーヌ・ドヌーヴ
セルジュ:ダニエル・デュヴァル
ポール:グザヴィエ・ボヴォワ
エレーヌの夫:ジャック・ラサル
彫刻家ジャン:ダニエル・ポムルール
医者:マルク・フオル
ドイツの娼婦:アニータ・ブロント

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