O[オー]
原題:O
僕は・・・・・失敗作なのか? ふりだしに戻る運命の輪
第14回東京国際映画祭コンペティション部門出品::http://www.tiff-jp.net/
2001年8月31日全米初公開
2001年/アメリカ/カラー/ビスタサイズ/95分/ ギャガ=ヒューマックス共同配給
2002年6月7日よりビデオ&DVD発売 2001年12月22日よりシネマスクエアとうきゅう他全国ロードショー公開
公開初日 2001/12/22
配給会社名 0025
公開日メモ 現代のハイスクールを舞台に蘇るシェイクスピアの「オセロ」。主演にはハリウッド若手俳優の中でも人気・実力ともトップクラスとなったジョシュ・ハートネット。
解説
『パール・ハーバー』で人気急上昇中のジョシュ・ハートネット主演最新作。
ジェームズ・ディーン以来、若者が抱える苦悩を等身大で演じ切る事ができる本格派若手俳優が遂に登場した!
アメリカ、全寮制エリート高校。バスケットボール部のヒューゴ(ジョシュ・ハートネット)とオーディンは親友だったが、何においても自分より優れているオーディンに対しヒューゴは嫉妬心を抱いていた。バスケのスター選手として全校生徒に尊敬され、コーチであるヒューゴの父からも我が子以上の愛情を受け、ヒューゴが思いを寄せていたデジーとも愛し合っているオーディン。そして彼が全校生徒の前でMVPを受賞したとき、なんと彼がその栄誉を分かち合いたいと指名した名前は、ヒューゴではなかった…。——自分より優れた人間への憧れが歪み、自分の中の何かが壊れたとき、ヒューゴは彼を破滅させるために、どんな罵でも仕掛けることを密やかに誓う。青春の痛みと苦悩を描いた、シェイクスピア悲劇の最高傑作”オセロー”の現代版。
また、本作は、監督のティム・ブレイク・ネルソンが長編映画2作目ということで、今年の東京国際映画祭のコンペ部門にも参加している。
シェイクスピアの名作『オセロー』の舞台を現代のハイスクールに置き換える?
そんなあきれるほどに無謀な、しかしこのうえなくエキサイティングな試みを成功させたのが、『 O 』。思えば、『オセロー』はエリザベス朝に編まれた古典だが、イアーゴが抱く”嫉妬”は普遍のもの。現代に生きる誰もが、好むと好まざるとにかからわず、心の奥底に潜めているものだから、現代版といえども、ドラマは複雑にして深い。しかも、原作のイアーゴにあたる、親友に嫉妬するあまり自分ばかりか周囲の人々まで破滅に追い込む少年ヒューゴを演じるのは、『パール・ハーバー』で世界中の女性の熱い視線を独り占めにしたジョシュ・ハートネット。これまで純情な少年役が多かった彼が、持てる演技力をフルに出し切って、初の”汚れ役”に挑戦。その孤独と哀愁に彩られた邪悪な少年の風情は、見る者の興味と共感をあおり、やはり女性の胸を痛くさせる。舞台は、アメリカ南部の全寮制エリート高校。オーデインは唯一の黒人学生だが、バスケットボール・チームの花形選手であり成績も優秀なため、学園のヒーローだった。チームの一員であるヒューゴは、そんなオーディンに複雑な想いを寄せる。チームのコーチをつとめる父親や美しい校長の娘デジーたちに愛されるオーデインに強く憧れてはいるものの、同時に堪え難いほどの嫉妬心も抱いていたのだ。そしてさらなる父親の冷淡な態度が、ヒューゴの心に芽生えた邪悪な芽を大きく育ていく。堪え難い孤独に苛まれる彼は、やがて狡滑な罠を仕掛け、オーディンを破滅へと導いていくのだ。しかし、それは想像を絶する悲劇の始まりだった。
人種、学園内暴力、親子の断絶、10代のセックス、そしてドラッグ……。シェイクスピア悲劇の最高傑作『オセロー』の現代版である『 O 』は、ひとりの少年の”嫉妬”によって多くの人間の人生が崩壊していく様を描きつつ、人間の本質のダークサイドと、現代社会に生きる若者たちが直面している”いまの問題”を浮き彫りにしていく。その巧みに現代性を反映させた脚本を書いたのは、TV界から映画界へと進出し、いま脚本家として最も期待されているブラッド・カーヤ。そして、カーヤの脚本を繊密な演出で映像化したのはティム・ブレイク・ネルソン監督。97年のサンダンス映画祭で絶賛された『EYE OF GOD(神の眼)』で、監督として脚光を浴びたネルソンは、『シン・レッド・ライン』(98)や『オー・ブラザー!』(00)などで俳優経験もある。その経験をフルに生かして、出演者から想像以上の名演を引きだしている。
キャスト陣もまた豪華。邪悪な策略を巡らすヒューゴを演じたジョシュ・ハートネットは、これまで乱用(?)していたチャーム・ポイント”ハートネット・グランス(相手をチラリと見て視線を外す演技)”を監督に禁じられ、新たなる魅力を披露。ストレートな演技で圧倒的な存在感を出している。また、タイトルロールを担うオーデインを演じるマカーイ・ファイファーも、『クロッカーズ』(95)で脚光を浴びた期待のブラック・アクター。最近では『クローン』(Ol)でも重要な役どころを担い、大物の予感。そしてヒロイン、デジーを演じるのは、今回TV版『恋のからさわぎ』(99)、『ハムレット』(00)に続いて、現代版のシェイクスピア劇に挑戦し、最近では『セイブ・ザ・ラストダンス』で注目を集めているジュリア・スタイルズ。ニューヨークの舞台で培った演技力は、ハリウッドの若手女優ナンバーワンと高い評価を得ている。またコーチでヒューゴの父でもあるグルディングを演じるのは、『地獄の黙示録』(79)で脚光を浴びて以来、数々の名作に出演しているベテランのマーティン・シーン。若手演技派たちに胸を貸しつつ、彼らに劣らぬエネルギッシュな演技を披露しているのは、さすがである。
《古典と現代を結ぶ接点》
本作の公開には、少々因縁がある。というのも、もっと早い時期に公開される予定だったのだが、アメリカのコロンパイン高校で銃の乱射事件が起こったために、同じように学園内殺人を描いた本作の公開が延期になったのだ。しかし、監督ティム・ブレイク・ネルソンは、こう語る。
「僕自身としては、事件を知ってもビックリしなかった。なぜなら、あの事件の前にも4〜5の高校で発砲事件が起きていたから。だからこそ、僕はこの作品を作ろうと思ったんだ。コロンパインより犠牲者は少なかったけど、実際に学校内で起こった殺人事件が、現実と『 O 』との接点になると思ったんだよ、そして、暴力を行使すれば、どういう結果になるか。どういう悲劇を生むか。それをこの映画で描いたつもりだったんだ。」
《幼稚すぎる青春映画に終止符》
シェイクスピアの悲劇を現代の高校のバスケット・チームに置き換えるアイディアを思いついたのは脚本家のブラッド・カーヤ。「最近の若者向けの映画は、ホラーかバカなコメディばかりで、少々幼稚すぎる。そこで、もっと本当に中身のある、骨太な作品を10代向けに作るべきだと思い、この企画を思いついたんだ。」サンダンス・インスティチュート・ライター養成所で『 O 』の脚本を書いたカーヤは、完成品を即、ティム・ブレイク・ネルソンに送った。最初は映画化を渋っていたネルソンだったが、脚本のおもしろさに興味を持ち、カーヤとともに1年間をかけて脚本を練り直し、見事に現代性にあふれるシェイクスピア劇を完成させた。
ストーリー
《僕は空を飛びたかった、鷹のように。嫉妬が醜いのは知っている。だが、空を飛びたかった。人を見下ろしてこそ、生を実感する……。》
アメリカ南部にある全寮制の私立ハイスクール。ここは裕福な家庭の子供たちが通うエリート校。なかでもバスケットボール・チーム”ホークス”の快進撃は、学内ばかりか町中を熱狂させていた。その中心は、キャンパスでただひとりの黒人学生オーデイン・ジェームズ(マカーイ・ファイファー)。天才的なプレイヤーであるばかりか成績も優秀な彼は、まばゆいばかりのカリスマ・オーラを発散させ、人気の的。校長の娘で学園のマドンナ的存在のデジー(ジュリア・スタイルズ)を虜にするのも当然だ。
折しもキャンパスは、バスケットボールのプレップ・リーグ戦の話題で持ち切りだった。オーディンの大活躍でホークスはまたも勝ち進み、準決勝進出が目前となったのだ。コートでは勝利をキメて、歓喜する選手たちが肩を抱きあっている。しかし、そんな喜びの場から一歩離れた場所にヒューゴ(ジョシュ・ハートネット)はいた。チームを率いる名コーチ、グルディング(マーティン・シーン)のひとり息子であり、チームの一員でもあるのだが、親友オーディンと父の抱きあう姿を見つめるまなざしは暗く、深い孤独をたたえていた。そして”孤独”を邪悪な嫉妬へと変化させる運命の時が訪れた。
全校生徒の前で、目覚ましい活躍を讃えられたオーデインは、MVPのトロフィーを授与された。ヒューゴはトロフィーを渡す際の父に言葉に耳を疑った。
「君を本当の息子のように愛している」だって?息子の僕が一番じゃないのか?
更には、オーデインが栄誉を分かち合いたいと指名したのは、チーム・メイトのマイクだった。4年間も影となりオーデインを必死でサポートしてきたつもりのヒューゴにとって、この人選は信じがたいものだ。いや、これで復讐の引き金は引かれたも同然。オーディンを破滅させてやる。
ヒューゴは邪悪な計画を実行する。誰もが抱いている”嫉妬”をあおればいいのだ。まずは、同じようにデジーを熱愛している理事長の息子ロジャーを引き入れ、マイクにケンカを売らせる。それによって、試合出場停止処分を食らったマイクにオーディンは「チームがガタガタだ」と怒りをぶつけた。これこそ、ヒューゴの望んでいた”ミゾ”だ。次に、マイクに近づいたヒューゴは、「復帰を望むならオーディンと仲の良いデジーを口説いて、オーディンからコーチに頼ませろ」とささやく。それを実行しようとするマイクは、ことあるごとにデジーの側にいることになる。そこで、今度はオーディンに「君は嫉妬を感じないのか?」と……。
自分に気のあるエミリーを利用し、オーディンがデジーに贈った大切なスカーフを盗ませたヒューゴ。それをマイクに渡して、さらに罠を繊密に、巧妙に張り巡らしていく彼の策略にまんまとはまり、嫉妬を募らせていくオーディン。気も狂わんばかりのオーディンは、ついにドラッグにも手を出し、破滅への扉を開いてしまう。そして、それを見つめるヒューゴは、計画の仕上げをしようとする。それがあまりにも恐ろしく、あまりにも悲しい結末をむかえることを知りながら……。
スタッフ
監督:ティム・ブレイク・ネルソン
脚本:ブラッド・カーヤ
製作:エリック・ジッター、アンソニー・ルーレン、ダニエル・L・フライド
共同製作:リサ・ジッター、ベッツィー・ダンブリー
製作総指揮:マイケル・I・レビー、ウィリアム・シベリー
共同製作総指揮:フレデリック・B・グッドマン、スティーヴン・A・ケプニス
撮影監督:ラッセル・リー・ファイン
製作デザイン:ダイナ・ゴールドマン
編集:ケイト・サンフォード
衣装:ジル・オハンソン
キャスト
ジョシュ・ハートネット:ヒューゴ・グルディング
ジュリア・スタイルズ:デジー・ブレイブル
マカーイ・ファイファー:オーディン・ジェームズ
エルデン・ヘンソン:ロジャー・ロドリゲス
アンドリュー・キーガン:マイケル・キャシオ
レイン・フェニックス:エミリー
マーティン・シーン:デューク・グルディング
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