原題:Tears of the Black Tiger/Fa talai jone

『シェーン』+『ロミオとジュリエット』÷トム・ヤム・クン!? 愛と友情、そして戦い…怒涛の総天然色アジアン・ウェスタン 快盗ブラック・タイガー見参!

第2回東京フィルメックス TOKYO FILMeX 2001 コンペティション参加作品::http://www.filmex.net/index.htm 2001年カンヌ国際映画祭・ある視点部門出品 2002年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭出品::http://www.nifty.ne.jp/fanta/yubari/index.htm

2000年/タイ/114分/カラー/ビスタサイズ 提供:日活、トライエム/配給:日活、トライエム

2002年12月21日よりDVD発売開始 2002年7月27日よりシネクイントにて公開  

公開初日 2001/11/18

公開終了日 2001/11/26

配給会社名 0006/0244

公開日メモ 第2回TOKYO FILMeX 2001にて上映

解説


TV-CMのジャンルで斬新な映像を提供してきたウィシット・サーサナティヤンが、満を持して放つ初監督作品『快盗ブラック・タイガー』。
あらゆるジャンルのエッセンスとタイ独特の風物が澤然一体となった一大エンターテインメント映画の誕生に、カンヌ国際映画祭でも各国ジャーナリスト、バイヤーたちの間で話題沸騰となった。壮絶な権利争奪戦が繰り広げられ、北米での権利をミラマックス社がピックアップしたことで、さらにヒートアップしていった。
いったい何がそこまで、過熱させたのか。

『快盗ブラック・タイガー』は、時代の先をいく刺激的なノスタルジーを体験させてくれる映画なのだ。

ストーリーの中心となるのは古典的で控えめなロマンス。タイ映画の名作を思い起こさせるシーンも随所に織り込まれ、映画的なウィットとテクニカラーの美しい色彩とともにロマンスを華やかに盛り上げている。
さらに西部劇(西洋)への憧れとタイ映画の伝統(東洋)をプラスして、ロマンスにスパイスを効かせることも忘れていない。
“黒い虎”の異名をもつアウトロー・ダムと良家の子女であるヒロイン・ラムプイの間に生まれた運命的なロマンスに、銃撃戦や裏切りといったドラマティックな見せ場をダイナ
ミックに融合させた『快盗ブラック・タイガー』には、『怪傑ゾロ』のスリルに、『シェーン』の感動、さらにコーエン兄弟のオリジナリティが絶妙にミックスされている。

まさに、あらゆるジャンルを股にかけた前代未聞の異種格闘技!

過去の世界に別れを告げて新たな未来へと観客を誘う映画がここに誕生したのである。
西洋と東洋、現代と過去といった対照的な要素を巧みに融合させた『快盗ブラック・タイガー』は、タイ映画の枠を超えた作品として世界に登場したのだ。

『快盗ブラック・タイガー』を彩るサーラー・ロウ・ナンの悲恋伝説

タイ語のアルファベット1文字で表される“サーラー”は、タイ文化の髄を凝縮した建造物である。
エレガントかつシンプルな発想から生み出された“サーラー”は、人々が憩いの時を過す場であり、バス停や草花が生い茂るつる棚の役自を果たす場合もある。
また、太陽が照りつける水田で働く農民たちが疲れを癒す休憩所も“サーラー”の名で呼ばれている。
その昔、町を行き交う旅人たちは安全な無料宿泊設備として“サーラー”を利用したという。タイの歴史を感じさせる素晴らしい場所、そして人々を守り安らぎを与える屋根。それが“サーラー”なのである。
『快盗ブラック・タイガー』に登場する“サーラー”は、愛の逸話に彩られた恋人たちの場所として重要な役割を果たしている。
“サーラー・ロウ・ナン(乙女を待ちながら、の意)”には、叶わぬ愛の逸話が秘められているのだ。
ある貧しい木こりが富裕な一族の美しい娘と出会って恋に落ちる。禁じられた恋に身を焦がした二人は、初めて出会った場所で再会することを誓い合う。再び会える日を心待ちにしながら、男は木を切り集めて美しいサーラーを建て始める。二人の愛を温かく見守ってくれる場所を自らの手でつくりだそうとしたのだ。だが待ち合わせ場所に向おうとした娘は、父親にみつかって部屋に閉じ込められてしまう。いまや牢獄と化した部屋に鎖で繋がれた娘は、絶望のあまり首を吊って命を絶つ。娘の身に起こった悲劇を知る由もない哀れな木こりは、彼女がやがて姿を現すと信じて疑わなかった。そしてその場所に留まってサーラーの完成を目指しながら、いつまでも彼女を待ち続けたという。

“ネオ・バンコク”な才能が集結!製作会社「フィルムバンコク」

『快盗ブラック・タイガー』は設立間もない製作会社フィルムバンコクと、タイ映画界屈指の歴史と実績を持つファイブ・スター社の共同出資によって製作された。
フィルムバンコクは、BEC-TEROエンターテインメント社と映画界の重鎮として知られるアディレック・ワッタリーラー、そしてタイ映画史上最高の興行成績を記録した『ナンナーク』のナンスィー・ニミブット監督の三者が結集したクリエイティブな製作会社として注目を集めている。
タイではここ数年、毎月のように映画祭が開催され、市場も拡大の途をたどっている。そうした活況のなかで、フィルムバンコクは生まれ変わったタイ映画界を象徴する存在として独自の路線を歩んでいる。
またフィルムバンコクに所属する監督の多くは、すでにその才能をタイ国内及び海外で高く評価されている。

サーサナティヤン監督もリスペクト!
タイ映画界の先駆者ラット・ペスタニー

『快盗ブラック・タイガー』を彩る古典映画の伝統とうっとりするような色調は、タイ映画界の先駆者的存在として知られるラット・ペスタニー(1908〜1970)の影響を色濃く受け継いでいる。
ロンドンで専門技術を学んだペスタニーは、’30年代にイギリスで短編アマチュア映画を発表。帰国後、Phahuphan Yukol王子のもとで映画撮影を担当したことからキャリアを歩み始める。’51年には初の監督作品『Tookata Ja』を発表、翌年には製作会社ハヌマンを設立。ハヌマン社は’54年から’64年までの10年間に6本の長編映画を製作し、初期の2作品はペスタニー自身が監督を務めた。
彼の監督作品として最も有名なのが’57年に発表されたブラック・コメディ『Rongraem Narok』である。舞台を謎めいた田舎のホテルに限定し、怪しげな阿片密売人や京劇役者、ボクサー、そして盗難の被害者となる泥棒一味といった珍客たちの一日を描いた点で非常にユニークな作品だ。

ストーリー


ラムプイとダムが出会ったのはまだ二人が幼い頃だった。

時は太平洋戦争。バンコクを逃れ、のどかなスパンブリ村に疎開してきた裕福なラムプイ一家に住居を与えたのは、村長であるダムの父だった。都会育ちのわがままな少女と内気な田舎育ちの少年は、ほどなく遊び友達になる。
ある日ラムプイにせがまれたダムは彼女を連れて舟遊びに出かける。“サーラー・ロウ・ナン”と呼ばれる川辺の小屋に立ち寄り、かつて裕福な一族の娘と恋に落ちた貧しい木こりが建てたという「サーラー・ロウ・ナン」の伝説をラムプイに語って聞かせる。ダムの話にうっとりと耳を傾けるラムプイ。しかし、家路につこうとした二人を、地元の不良たちが襲撃し、必死にラムプイを守ろうとするダムの反撃もむなしく、ラムプイは川に落ちてしまう。そしてダムもまた額に深い傷を負ってしまうのだ。
ラムプイを危険な目に遭わせたと村人から誤解されたダムは厳しい折濫を受ける。
苦痛にただ耐えるダムに感謝の気持ちを示そうと、ラムプイは自分の名を刻んだ銀のハーモニカを彼に手渡すのだった。
それは彼女がダムに初めて示した愛の証だった。

9年後、バンコクで大学に通っていた2人は運命的な再会を果たす。
またしても不良に絡まれていたラムプイを、ダムが助けたのだ。二人の友情は恋へと発展する。ダムは働いて金を貯めたらラムプイと結婚すると誓い、ラムプイは裕福で頑固な父親がなんと言おうともダムと一緒になると決意する。もし父親がダムとの結婚を許さなければ、ラムプイは川辺のサーラー・ロウ・ナンで彼を待ち続けると誓った。しかし2人の蜜月も長くは続かなかった。
久しぶりに故郷スパンブリに戻ったダムの目に飛び込んできたのは非業の死を遂げた父の亡骸だった。村長の座を狙う盗賊たちの一味がダムの父を襲い、その命を奪ったのだ。復讐に燃えるダムは、過去に決別するために家に火を放ち、凶悪なファーイと子分のマヘサンが率いる地元の悪党集団の一員となる。
ダムは蛇に襲われかけたマヘサンを助けて信頼関係を結ぶが、それでも尚二人の心には強烈なライバル意識が燃え盛っていた…。
一味の蛮行に加わって度胸を示したダムは、ついにはファーイが最も信頼する子分にまで
のし上がる。この時からダムは「黒い虎」の異名で怖れられる存在となった。

一方、いまや地元の総督となったラムプイの父は、スパンブリ村から悪党一味を一掃する使命に燃えるガムジョン警部に娘を嫁がせようとしていた。
盗賊に身を落としたとはいえ今でもダムを深く愛しているラムプイは、父親の企みを知るや乳母を通じて「あのサーラー・ロウ・ナンで待っています。」とダムに伝える。だが、銃撃戦に巻き込ま、れたダムがようやくサーラー・ロウ・ナンにたどり着くと、すでにラムプイの姿は消えていた…。
「もうダムは私を愛していない」…。絶望のあまり自殺を図るラムプイだが、乳母に泣きつかれ、断腸の思いでダムをあきらめ、ガムジョン警部との婚約を承諾する。
ところが、ある暴動でガムジョンがファーイの一味に捕えられてしまう。ガムジョンの処刑を命じられるダムだが、彼が愛するラムプイの婚約者だと知り動揺する。今の自分がラムプイを守りぬくことは無理だと悟ったダムは、己の体にナイフを突き刺しガムジョンを逃がす。しかしマヘサンにわざとガムジョンを逃がした事を気付かれ、裏切り者として命を狙われる羽目になる。致命傷を負ったかに見えたダムの命を救ったのは、幼い日にラムプイから贈られたハーモニカだった。
「やはり彼女に愛を伝えなければ…」そう決心したダムは彼女の住む故郷の村へと向かう。
果たしてダムの無償の愛はラムプイに届くのか……。

スタッフ

監督・脚本:ウィシット・サーサナティヤン
製作:ノンスィー・ニミブット
美術:エク・エームチュン
撮影監督:ナタウット・キッティクン
編集:ドゥサニー・プイノンポー
音楽・音響:アマンボン・メタクナウット

キャスト

ダム:チャッチャイ・ガムーサン
ラムプイ:ステラ・マールギー
マヘサン:スパコン・ギッスワーン
ガムヂョン:エーラワット・ルワンウット
ファーイ:ソムバット・メタニー

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