原題:-less

2001年/日本/107分/スタンダードサイズ/ 制作協力:ムービーワークショップ/制作・配給:ビジュアルアーツ

2001年11月3日〜11月23日までBOX東中野にて毎夜9:10からのレイト(日曜休映) 2001年大阪フェスティバルゲート内シネフェスタにて上映予定

公開初日 2001/11/03

公開終了日 2001/11/23

配給会社名 0234

公開日メモ 専門学校が映画を作る。低予算だが採算性から解放され、またスポンサーの思惑にも縛られない映画…それが『-less』なのである。

解説




映画『-less』の成り立ち

映像教育を掲げた専門学校の中で、ビジュアルアーツは特殊な存在だと云える。他校が専門技術教育を中心とした教育方針をとるのに対して、ビジュアルアーツ大阪(旧大坂写真専門学校)は表現教育、表現のための技術教育を20年以上前から実践してきた。そんな学校が「映画を作る」ことは自然の成り行きだ。
ビジュアルアーツ大阪では、この20年の間に、多くの学生による映画やビデオの試作が行われて来た。その中には、現在プロモーションビデオで主流となった大胆なカット展開や。ストーリーを捨てた実験的な映画やドラマ、極めて個人的なプライベートシネマ、セルフポートレートによるビデオドキュメンタリー。果ては映像すらない文字だけのビデオなど、映像の未来像を感じさせる未完成な映像が多く生み出され、時にはプロの映像人の羨望と苦言を集めて来た。
さて、そんな学校が映画をプロデュースする。脚本、監督は初期卒業生で、講師でもある、としおかたかおが担当する。彼は、映画カメラマンとしての活動の方が知られているが、本当は極めて作家性の強い人間だ。今回、彼が企画した内容は、彼が書きためて来た多くのシノプシスの中からエンターテイメント映画の世界で話にならないと諦めざるを得なかった(派手な事件がない。人が死なない。Hじゃない。オカルトじゃない、第一コミックが原作じゃないという理由で)ものを、新たな視点でシナリオ化したものだ。ストーリーのある劇映画であっても作家の視点を感じるもの。フィクションであっても絵空事ではなく、同世代を生きる人間にとってリアルな内容であること。映画として面白いこと。これが彼に架せられたテーマであった。
スタッフの構成は、この映画の趣旨を理解してくれる数人のプロと、ビジュアルアーツ専門学校の教員スタッフ、及び現役の学生が中心となる。プロスタッフの不足は多少の不安を感じさせるが、利点もある。制作費の削減と何よりも、プロならではの旧態依然たる因習を払拭出来ることである。そのような方法で以前からビジュアルアーツは高嶺監督の『パラダイスビュー』や『つるヘンリー』の制作協力を行っており、それなりの成果も生み出している。
プロデューサーにビジュアルアーツ専門学校・教員で個人映画作家の高見雅計、撮影は新人の長谷川智章(卒業生で現在フリーの撮影部プロスタッフ)、音楽に知る人ぞ知る上野耕路を迎え、新しいスタイルの製作体勢の中で、映画『-less』は生まれた。専門学校が映画を作る。低予算だが採算性から解放され、またスポンサーの思惑にも縛られない映画…それが『-less』なのである。
タイトルのレスは、「ない」や「否定」を表す英語の接尾語である。

ストーリー




団塊世代ジュニアのレイナ(河原輝美)は「先読み出来る未来」に、いささかうんざりしている女の子。頭脳明断だが、何ら主体的な行動もせず、ただ笑顔だけが取り柄の無知な女を演じている。
そんな彼女が長く付き合っていた彼氏の克也と別れることになる。
別れの日、克也はレイナに、自分たちの気持ちを言葉に表そうとして出来なかったノートを託す。
次の日、レイナは、それなりに思い描いた夢を実現した、物わかりの良い両親の家から旅発つ。
最初に身を寄せる相手、陽子は芝居を続けてはいるらしいが、恋人、明夫との同棲生活に疲れ果て、日常に埋没しそうになっている。
明夫は明夫で、テレビ系製作会社のADという職業に希望を失っている。
レイナは明夫の紹介でテレビディレクターの矢野(田口トモロヲ)と知り合う。矢野はレイナに「もはや、描くべきストーリーはもう存在しない」と職業的ジレンマを語り、レイナを売春スナックに連れ込み、その二階で関係を迫るが、そんな自分の「最低さ」に閉口してしまう。
そこは不思議なスナックで、売春婦のママ(吉行由実)はレイナに「昔の彼にまつわる美しい思い出」を語って聞かせるが、それも、ママの作った悲しい嘘。矢野はレイナに対して責任を取ろうと申し出るが、レイナは拒絶。空港脇の道路で一日を過ごしたレイナは、以前知り合っていた嶋田(螢雪次朗)という中年男を呼び出す。そして二人の旅が始まる。
嶋田は過去につながるすべての物を捨てていく。
やがて、旅の途中でレイナは嶋田と関係を結んでしまう。無一文になった嶋田はホームレスになろうとする。レイナは「単なるカッコづけ」と批判するが、嶋田は「絶望こそが、希望なのだ」と告げ、レイナを追い出す。
傷心の内にレイナの旅は終わろうとするが、レイナの生きた六日間は、彼女が無意味だと感じる以上に、多くの出会いと、未来につながる言葉を生み出していた。

映画『-less』完成後のシノプシス

若いレイナには心と体のバランスが必要だ。
作者の私は、もうすぐバランスがとれるようになるかも知れない。
でも、その時は、きっと私は「じじい」になっていて、
今日のレイナの気持ちを切実に感じることも出来なくなっているんだ…と思う。

としおかたかお

スタッフ

監督・脚本:としおかたかお
撮影:長谷川智章
音楽:上野耕路
制作:高見雅計
制作:ビジュアルアーツ、ムービーワークショップ

キャスト

嶋田次郎:蛍雪次郎
矢野健次郎:田口トモロヲ
山下レイナ:川原輝美
「エル」のママ:吉行由美
片岡明夫:高城剛
山下修一郎・レイナの父:南条好輝
山下今日子・レイナの母:高野陽子

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