原題:KT

そのイニシャルから彼はこう呼ばれた

第52回ベルリン国際映画祭インターナショナルコンペティション部門 正式出品作品

2002年/日本=韓国合作/ヴィス夕1:1.85/カラー/DTSステレオ/138min 配給:シネカノン

2004年04月23日よりDVDリリース 2002年10月25日よりビデオ発売&レンタル開始 2002年5月3日(祝)より新宿シネマスクエアとうきゅう、銀座シネ・ラセット、   渋谷シネ・アミューズ、シネセゾン渋谷、他全国拡大ロードショー

(C) 2002 KT production committee

公開初日 2002/05/03

配給会社名 0034

公開日メモ “大統領候補を拉致・暗殺せよ!”「空白の5日間」に起きた謎の事件に迫る傑作ポリティカル・サスペンス

解説



“大統領候補を拉致・暗殺せよ!”
「空白の5日間」に起きた謎の事件に迫る傑作ポリティカル・サスペンス

1973年8月8日、金大中・元韓国大統領候補が、九段ホテル・グランド・パレスから突然姿を消す……5日後、ソウル市内の自宅前で目隠し・傷だらけの姿で発見された。当時、彼の消息を巡って日本と韓国そして米国までをも巻き込んだ国家間の緊張は極限まで高まった。拉致・暗殺指令を受けた諜報部員たちはなぜ彼を殺さなかったのか?計画に関わったとされる日本人が“空白の5日間”に取った行動とは?「政治的妥協}という形で真相究明の道を閉ざされた事件の背後には、一体どんな「真実」が隠されていたというのか…?

巨大な組織の掟と時代の波に翻弄される人々…全編から滲み出る深い哀しみに胸が締め付けられる

映画『KT』は、真に謎に満ちた事件に関する綿密な調査・証言をもとに、関係した日韓全ての人物の心理と行動を大胆かつスリリングに描ききる新しい“ノンフィクション×ドラマ”である。疑惑・スパイ・拷問・殺し屋・秘密警察・至上命令・計画・拉致・暗殺・裏切り。組織の掟に忠実であろうとした結果、国家間の思惑に翻弄され破滅していく人々の悲劇、そしてその奥に潜む熱い思い…。史実に基づいた骨太なせみ・ドキュメントであると同時に、「サスペンス」「陰謀」、「アクション」、「友情」、「ロマンス」などエンタテインメントとしての要素が幾重にも盛り込まれた、斬新でヒューマンなドラマが、今ここに誕生しようとしている。

このタイミングでしか為し得なかった!国境を越えて実現した、当代一流のコラボレーション

中薗英助の『拉致』を原作に、脚本家・荒井晴彦が6ヶ月以上の推敲期間を経て大胆に脚色。メガホンを取るのは『顔』で名実共に日本を代表する監督となった阪本順次。音楽は『新・仁義なき戦い』に続いてのコラボレーションとなる布袋寅泰。製作は『月はどっちに出ている』『のど自慢』を世に送り出し、韓国映画『シュリ』『JSA』を配給した李鳳宇。「日韓W杯開催を前に新世紀の日韓関係を築く礎となるのは、真っ当な歴史認識」との思いのもと、日韓を代表するスタッフが総結集、両国でのロケを敢行し、封印された28年前の「真実」に果敢に挑む。主演に、佐藤浩市×キム・ガプス。緊張感に満ちたやり取りと、そこから醸し出される「男の色気」が全編を色濃く支配し、観る者の眼をひきつけて離さない。さらに、チェ・イルファ、筒井道隆、ヤン・ウニョン、キム・ビョンセ、原田芳雄と日韓を代表する充実したキャスト陣が、物語に深い奥行きを持たせている。

ストーリー


1971年4月28日、韓国弟6代大統領・朴正熙の三度目の就任が決まった。だが野党候補・金大中との差は僅かに95万票、それも組織的な買収・妨害・脅迫など腐敗選挙の限りを尽くした上での辛勝である。朴大統領は、誰よりもこの「政敵」の存在に脅威を感じていた。大統領選に続いて行われた国会議員選の選挙運動最終日である5月25日、金大中の車に大型トラックが突込むという暗殺未遂事件が発生。この事故で受けたた後遺症の治療のため72年10月に日本を訪れた金大中は、朴大統領による非常戒厳令宣言を東京都内のテレビで知ることになる。時の日本政府は、朴政権支持の意向を表明したが、韓国国内では戒厳令のもと、KCIA(韓国中央情報部)によって朴軍事体制に反対する6千人以上もの学生が強制連行され、「北のスパイを粛正する」という名目で苛烈な拷問を受けることになる。そして、「政敵」金大中は日米間を往来する亡命生活を強いられることになる…。

1973年4月。自衛隊陸上幕僚監部二部[陸幕二部]所属の富田満州男(佐藤浩市)は、アルバイトをしながら日本で暮ら李・政美(ヤン・ウニョン)と出会う。諜報活動を主要業務とする陸幕二部別班のなかでも、韓国語の達者な富田は半島絡みの監視・調査任務が多い。張正男という男の依頼で韓国語の家庭教師をしているという政美だが、張は実は北朝鮮のスパイで、KCIA・陸幕二部双方から監視される存在だった。調査任務の為に政美に近づいた宮田だが政美が朴政権下で拷問にあった事を知る。韓国大使館一等書記官・金車雲(キム・ガプス)の指揮により、KCIAは政美までスパイと疑い拉致を試みるが、監視を続けていた富田は政美を救うことになる。韓国の反朴民主化のために精カ的な国外活動を続ける金大中は、都内のホテルを転々と移動してKCIAの監視を逃れながら、日本の要人との会談と支援協カ依頼に励んでいた。夕刊卜ーキョー記者・押川昭和(原田芳雄)は金大中の取材を行うことに成功し、日本国内でも少なからず反朴政権の気運が高まることになる。だがそれは同時に、金大中の身が更に危険に晒されることを意味していた。駐日韓国大使館公使・金俊権(キム・ビョンセ)は、本国より極秘で「KT作戦」実行の命令を下される。集められたのは金車雲のほか5名。プロの殺し屋等を雇わず自分たちの手だけで拉致暗殺を実行するという、あまりに大胆な作戦に戸惑いを見せる者もいる。だがこれは決して断ることの出来ない「至上命令」だという…。

KCIAによる金大中暗殺計画。謀略の噂は日本にも伝わり、金大中を支持する民団東京本部総務部長・趙勇俊(平田満)は、韓青同副委員長・金君雄(木下ほうか)と金甲寿(筒井道隆)にボディガードを依頼する。「いざというときは肉の壁で守ってくれ」突然の話に戸惑う金甲寿だが、恋人の高島俊子(仲本奈奈)との関係もはっきりせず半端な毎日を振り払う如く、この重大な任務を受けることを決意。金大中の大らかな人柄に接し、その言葉を少しでも理解しようと嫌っていた韓国語の習得に励むようになる。同じ頃、朴大統領と陸軍士官学校時代からのつながりを持つ陸幕二部長・塚田昭一(大口ひろし)のもとに、KCIAから民間興信所を開設し「ある任務」をサポートしてて欲しいとの電話がかかる。折しも自ら退官を表明していた富田は「大和リサーチ」所長に収まる。数日後、暗殺指令の責任者である金車雲は「金大中の意図は統一でなく北との合併だ」と富田を説得し、金大中の捜索協カを依頼する。一方で公使・金俊権は、糖尿病の検査入院の為に来日滞在中の民主統一党党首・梁宇東に接触。「金大中に帰国を説得する」事を条件に来日を許された梁宇東は必ず金大中と会うはずなのだが、金大中の行方は知らず未だ連絡もないと言う。「大和リサーチ」の協力も得て、都内潜伏先とされる場所を監視するKCIAだが、何故かニセの情報ばかり。どうやら大使館内に、金大中側に情報を密通している者がいるようなのだ…。

金大中の足取りを何としτも掴みたい金車雪は、インタビューをした神川が何か知っているのではないかと富田に話を持ちかける。富田は、3年前の70年11月25日…市ヶ谷駐屯地・三島由紀夫自決現場で押川と出会っている。総監室に菊の花束を捧げる姿を撮影され、富田は神川を殴りつけたのだった。3年ぶりに再会した富田を、今度は神川がいきなり殴る。金大中に運動資金を提供する人物を紹介したいとの理由で行方を尋ねる富田だが神川も捕まらないと言ってその場を去る。だが実際には、神川は金大中との二度目の取材を取り付けており、富田もまた神川を監視していた。そして富田と共に神川を尾行していた金車雲は、都内のホテルで遂に金大中の姿を確認することになる。

KGIAが金大中の所在地を突き止めたのと同時に、日本の警察庁公安部もKCIAの動きをキャッチ。警察庁に呼び出された公使・金俊権は、警察庁長官からKCIA張り込みの証拠写真をもとに、追跡を即時中止するよう求められる。韓国大使館内部でも金大中拉致の噂が大使の耳まで伝わる。だが「至上命令」の名の下、既に動き出した作戦は誰にも止めることが出来なかった。実行犯のうち公安に写真を撮られた者が担当を外され、金車雲は富田に「最後の相談」を持ちかける。「金大中が8月9日に講演を行う。日本で認知される前に、強硬手段を取らざるを得ない…」暗殺実行の為に富田に提示された小切手の額面はニ千万円。富田は返事を留保する。

大使館下の公衆電話から情報を流していた「密通者」は、神川に接触。すでにKCIAは、金大中の動きを完全にマークし、梁宇東の居る病院を訪れた際の拉致実行を狙っていた。だが神川が書いた暗殺計画の記事に驚き、急落計画を中断すると同時に、密告者の存在を確信。裏切り者と疑われた一等書記官・白哲現は、暗殺の練習台とばかりに粛正されてしまう。
KCIAに残された時間はあと僅か。そして、金大中がホテル滞在中の梁宇東を訪ねる時間を遂に突き止める。8月8日、梁宇東の部屋の隣と前の部屋を押さえ、暗殺の準備をする金車雪と4名の拉致実行班。そこには・暗殺関与の疑惑を恐れた自衛隊から一切手を引くことを言い渡されながら、政美への思いを馳せて小切手を受け取った富田の姿があった…。

スタッフ

監督:阪本順治
原作:中薗英助『拉致−知られざる金大中事件』(新潮文庫刊)
脚本:荒井晴彦
音楽監督:布袋寅泰
ゼネラルプロデューサー:李鳳宇
プロデューサー:椎井友紀子
アソシエイトプロデューサー:石原仁美
撮影:笠松則通
録音:橋本文雄
美術:原田満生
照明:松隈信一
編集:深野俊英
スクリプター:今村治子
装飾:大光寺康
衣裳:岩?文男
メイク:豊川京子
助監督:杉山泰一
製作担当:鈴木勇
主題歌仔:「FROZEN MEMORIES」布袋寅泰(東芝EMI)
製作:『KT』製作委員会

キャスト

佐藤浩市
キム・ガプス
チェ・イルファ
筒井遺隆
ヤン・ウニョン
香川照之
大口ひろし
柄本明
光石研
利重剛
麿赤児
江波杏子
中本奈奈
平田満
白竜
浜田晃
佐原健二
山田辰夫
康すおん
金廣照
木下ほうか
キム・ミョンジュン
リュ・イルハン
キム・デソン
キム・ビョンセ
原田芳雄

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