原題:infinity

高橋巌監督第1回監督作品 何が「現実」で何が「虚構」なのか——

2001年/日本/35mm/カラー/アメリカンビスタ/DTS STEREO/119分 配給:ギャガ・コミュニケーションズ

2002年07月05日よりDVD発売開始 2002年07月05日よりビデオ発売&レンタル開始 2001年12月1日(土)より東京都写真美術館、シネマ・カリテ他にて順次全国公開

公開初日 2001/12/01

公開終了日 2002/01/19

配給会社名 0025

公開日メモ 『インフィニティ∞波の上の甲虫』は、傷つき疲れ果てた男が南の楽園・ボラカイ島で遭遇した奇跡によって、やがて癒されていく姿を描いた大人のためのファンタジー。いつでも胸に残る幻想的な映像が、見る者のココロとカラダもリラックスさせてくれる。

解説


《南の島。そこには海があり、太陽があり、星があり…ひとりの疲れた男は、奇蹟の島で、ゆっくりと癒されていく。》
『インフィニティ∞波の上の甲虫』は、傷つき疲れ果てた男が南の楽園・ボラカイ島で遭遇した奇跡によって、やがて癒されていく姿を描いた大人のためのファンタジー。いつでも胸に残る幻想的な映像が、見る者のココロとカラダもリラックスさせてくれる。

《雅楽界の貴公子・東儀秀樹が映画初主演&音楽プロデュース。アジアン・テイストあふれる全く新しい映画音楽が誕生した!》
癒しを求め深く暗い淵をさまよう主人公”高橋”を演じるのは、これが映画初出演にして初主演となる雅楽界の貴公子・東儀秀樹。幻想の世界へ迷い込み、孤独がやがて安らぎへと変わっていく男の心情を確かな存在感で見せてくれる。さらに、この映画で音楽プロデュースも担当。日本の伝統音楽のルーツである”雅楽”が全編を通してフィーチャーされ、南国の魅惑的な風景と見事な融合を果たしている。今まで味わったことがないアジアン・フレーバーが心地良い、新しい映画音楽がここに誕生した。そして、奥菜恵が”少女”と”娼婦”という物語のカギとなる2役を熱演。時に聖母のような微笑みを見せ、時にエロティックな眼差しで挑発する、そのどちらもが圧倒的に美しい。映画、舞台に大活躍の彼女は演技力にますます磨きをかけているようだ。実相寺昭雄監督の最後の内弟子・高橋巖が初監督。『帝都物語』に特技スタッフとし参加するなど、特撮とSFXの両方に精通している一方、是枝裕和監督の『幻の光』『ワンダフルライフ』でチーフ助監督を務めており、その演出力の確かさはこの『インフィニティ∞波の上の甲虫』を見れば納得させられる。

《ためいきが出るような楽園・ボラカイ島。VFXを駆使した幻想的な映像美にトリップ!》
絵葉書から抜け出したかのような、南の島の風景もまた大きな見どころ。真っ青な空や原色の花々、白く輝くビーチにオレンジに染まる夕日…そんな定番はもちろん、幻想的なムードを漂わせるマリア像とアジアンテイストの原風景、ヒッピー文化の名残りといったボラカイ島にしかない独特な風景が味わいをグッと深めている。世界に先駆けてHDカム24Pで全編撮影を行い、さらにVFXを駆使して美しく幻想的な映像世界を創出。空を飛ぶマンタや波の上の甲虫、南の島に降る雪など、ファンタスティックな映像の数々が穏やかな感動を呼び起こしてくれる。
補足すると、このインフィニティ=oo(無限大)の形をしたボラカイ島は、南の島通が憧れる秘島のひとつ。そのワケは交通の不便さにある。フィリピンの首都マニラからまずは飛行機で1時間、隣のパナイ島へ。飛行場のないボラカイ島へは、ここからバンカーボートに乗って移動するのだ。空港から空港に移動し「はい、リゾート到着!」というお手軽なバカンスとはひと味違って、世俗を離れ島に来たんだという実感が旅気分を盛り上げるのだ。

《本作が本邦初だけでなく世界初となるHDTV-24Pフォーマットについて》
『インフィニティ∞波の上の甲虫』の特徴として、高画質HDTVの使用があげられる。現在注目を集めている1080/24PフォーマットのHDTVカメラを使用しての映画全編製作は本作が本邦初だけでなく世界初となる。限られた製作費の中でクオリティーの高い作品を求められる製作現場において、フイルムと同等質といっていいほどの高解像度を持つHDTVの画質を生かした撮影システムは、今後の映画製作の新しい指針を示すものとなるだろう。またデジタル化によるコンピューター技術との融合で、CGや特殊効果を生かした撮影やノンリニアでの編集が容易に行えることも大きなメリットといえる。現状では映画のフィルムとHDTVは、それぞれの良さがともに認知され共存していくものと考えられているが、映画製作の新たな可能性が広がっていくことは間違いないだろう。今回の使用機種はソニー製のHDCAMカメラ「HDW-F900」。マルチフォーマットの内の24Pフォーマットを使用し、フィルムーHDのスムーズな変換を実現させた。

ストーリー

9月17日 第1日日
南の島には不釣り合いな、全身黒づくめの出で立ちをした男が小さな空港に降り立った。そしてボートに乗り変え、目的のボラカイ島へ。男の名は”高橋”。南の島を舞台に小説を書くためにやって来たのだ。掃除の行き届いた清潔そうなコテージに案内されると、彼はスーツケースからビデオカメラを取り出し、休む間もなくパソコンに物語を打ち始めた。

『今にも墜落しそうなプロペラ機。上空から無限大記号∞のような形をした美しい島を見て、期待に胸を膨らませたひとりの男がボラカイ島に着いた。Tシャツに半ズボン、手にはビデオカメラ。「この島で何を撮るつもりだい?」とパイロットに聞かれ、「宝物だよ」とにっこり微笑んだ男は、チェックインしたコテージでご機嫌にウエルカムドリンクを飲み干した。男の名は”タカハシ”。映画のロケハンのためにこの島へやって来たのだ。案内された部屋でほっとひと息ついた頃、窓から甲虫が飛び込んできた。デスクの上に置かれたカードには『甲虫は島の大切な守神です。どうぞ大切になさって下さい』。「へーそうなんだあ」、面白いことに出会えそうな予感にワクワクし始めたタカハシは、ビデオカメラを自分に向けた。「今日は9月17日晴れ。ボラカイ島に着きました。いい映像が撮れそうです!」』

こうして高橋と、彼が書き始めた小説の主人公タカハシのボラカイ島での8日間が始まった…。

どこまでも青い空、キラキラと輝く波打ちぎわ、緑の葉を風に揺らしそびえ立つヤシの木、真っ赤に咲き乱れるハイビスカスの花。まさに楽園のようなボラカイ島で、高橋と小説の中のタカハシはまるっきり正反対の日々を送りはじめた。

高橋は一日中部屋にこもり食事もせず、あおるようにワインを飲みながら何かに取り付かれたように小説を書いている。だが実は、高橋は小説家ではなかった。認められない小説のかわりに、人を傷つけるようなルポルタージュを書いて収入を得ていたのだ。「食うためだからってごまかして…暴露本で人を死なせてしまった。何か見つかると思った…ここまで、この南の島まで逃げてくれば」。癒しを求め、半ば逃避行のように南の楽園に来た高橋だったが、罪の意識は消えるものではなかった。
そんな彼の前に魅惑的な娼婦マリアが現れる。祖父が日本人だと言う彼女は高橋に興味をもち、暇を見つけては高橋の部屋にやって来た。「ねえ、雪見たことある?おじいさん雪国の人だったって。見たいなあ…」。男を挑発する色気を全身に漂わせながらもどこか少女のピュアな面影を残すマリアに、高橋は次第に惹かれていく。そして、高橋のそんな思いは、彼が書く小説へ形を変え映し出されていった——。

9月19日 3日目
そう、タカハシもまたひとりの美しい少女、砂浜で民族舞踊を踊っている少女に出会った。秋分の祭りの日、イーキノックスデーに踊るため練習しているという。ロウソクの光に照らし出されたマリア像の前、「雪ってなあに?」そう少女に尋ねられたタカハシは、「白くて空から降るんだ。いつか必ず見せてあげるよ」と約束する。

9月20日 4日目
ビーチで出会った少年ロザリトと、彼の父チャリのボートに乗って釣りに出かけたタカハシは不思議な光景を見た。海面ギリギリ波上を甲虫が飛んでいた。

9月21日 5日目
すっかり仲良しになったチャリとロザリト親子と一緒に、今日も海へ出かけたタカハシ。バカンスを満喫するぞとばかりにスキューバダイビングに挑戦した彼は、深く透きとおる海のなかで、大きな大きなマンタを見た。そして夜。夕食を共にしていたチャリは、いつもカメラを手にしているタカハシに質問する。「どんな映画になるんだ?j。「南の島に来た小説家が、南の島の生活を楽しむ男の物語を書いているうちに、いつしか自分が作った世界へ入り込んでいってしまうんだ。でも本当はそれが彼の望んだ世界だったんだ…」。

波の上を飛ぶ甲虫。タカハシが見たものはもちろん、高橋が見たものでもあった。だが、マンタは同じではなかった。バーで高橋に声をかけてきたヒッピーくずれのイギリス人が、”世界の結び目∞”と語った奇妙な無人島・ローレルアイランドで、高橋は竜巻きに乗って青空を舞うマンタを見た!

9月22日 6日目
高橋のパソコンに、打った覚えのない小説の続きが書かれていた。「???どういうことだ?」。困惑したまま島を歩いていた高橋は、ついに自分が作り出した小説世界の登場人物に出会ってしまう。「何が起こっているんだ!?」。現実と虚構、高橋とタカハシ。そうふたりの時空が交差し始めたのだ。

そして9月23日
イーキノックスデー。世界を結ぶという”∞”の日。タカハシの前にマリアが現れ、ふたりは初めからそうなるのが決められていたかのように、抱き合う。高橋の前にはロザリトが現れ、チャりたちと楽しく夕食のひとときを過ごす。そしてふたりに別れを告げ、砂浜を歩き出した高橋の目に映ったのは民族衣装を纏い踊る少女…。ひざまづき静かに少女を抱き締めた瞬間、空から”約束の”雪が降ってきた!高橋とタカハシを癒すかのように、真っ白い淡雪がふたりを包み込む。
「これが…これだったんだ」

スタッフ

製作:藤村哲哉、大野誠一、園山征夫
企画:丸茂日穂、松橋真三、田中尚美、大前毅
プロデューサー:田中和彦、竹本克明、公野勉
協同プロデューサー:油谷岩夫、宍倉徳子、大里俊博
監督:高橋巖
脚本:高木弓芽
原作:いとうせいこう
音楽:東儀秀樹
撮影:八巻恒存
照明:田中公臣
録音:横溝正俊
ビデオエンジニア:山口義彦
美術:池谷仙克
編集:矢船陽介
VFXスーパーバイザー:石井教雄
助監督:阿部吉伸
スチール:熊谷聖司
制作協カ:コダイ
制作:ギャガ・コミュニケーションズ

キャスト

高橋巖:東儀秀樹
フロント:ROMAN SEJANE
ボーイ:DANSON BARRIENTOS
パイロット:CAPTAIN MENDOZA
タカハシイワオ:原田喧太
トライシクルドライバー:PHOL GAAC
フロント:REBECCA CALDA
マリア:奥菜恵
ギター弾き:内海俊夫
ウエイトレス:LEDELYN S.MAMOS
老人:EDDIE OMAM BONG
少女:奥菜恵
ロザリト:KENO AGARO
チャリ:DANIEL B.MAGISA
ショーン:DITHER GRUENBERG
トライシクルドライバー:VON SALVADOR
浜辺のウエイター:尾崎英二郎
カーニバルバンド:D"RRDM VARIETY BAND
老女:GENARA ARCIBAL

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