原題:COMIC STRIP HERO

僕はただ、連載コミックのヒーローになりたかったんだ!

1967年カンヌ映画祭最優秀脚本賞受賞作

1967年10月25日スウェーデン初公開

1967年/フランス/91分/カラー 配給:日本スカイウェイ

2002年06月21日よりDVD発売開始 2002年06月21日よりビデオ発売&レンタル開始 2001年8月11日よりシネセゾン渋谷にてロードショー公開

公開初日 2001/08/11

配給会社名 0107

公開日メモ 眠っていた、ヌーヴェル・ヴァーグの異色作が、ついにスクリーンに甦る。監督・脚本は本作品で67年のカンヌ映画祭最優秀脚本賞を受賞したアラン・ジェシア。現実(実写)と幻想(コミック)を交錯して流れる映像は、まさにコミック・ストリップ(コミックのコマ割りの意)だ。

解説


《ある日突然…コミック中毒の青年が、ヒーローを夢見て美しい人を誘拐し、ジャガーEタイプを盗んで夏のスイスをつっ走った・・・つづく》
《僕はただ、連載コミックのヒーローになりたかっただ!ある日突然…コミック中毒の青年が、ヒーローを夢見て美しい人妻を誘拐し、ジャガーEタイプを盗んで夏のスイスをつっ走った・・・つづく》

だれもが一度は憧れるコミック雑誌のヒーロー。ポップでセックでクールな、いつの時代もかわらない若者のありふれた狂気、エロティシズム、空虚さ。スイスの湖畔を背景に、グルーヴィーなサウンドと乾いたタイプライターの音をミックスさせながら、つぎつぎと現実(実写)と幻想(コミック)を交錯して流れる映像は、まさにコミック・ストリップ(コミックのコマ割りの意)だ。コミックの原画は、60年代フランスで「ポップアートのB.D.(Bande Dessine:バンド・デシネ=フランスのコミック)」と称され、ゴダールやゲンスブール、ウィリアム・クラインをも魅了し、ときをこえてカステルバジャックの2001年春夏パリコレのモチーフにもなったギィ・ペラート。サイケデリックなサウンド・トラックはフランスNO.1のジャズ・ピアニスト、ジャック・ルーシエ。主演は『007サンダーボール作戦』のボンド・ガール、クローディーヌ・オージェ。名優ジャン・ピエール・カッセル、この作品でデビューしたミシェル・デュショッソワ。その他、私生活では監督夫人であるアンナ・ゲイロールや黒人歌手ナンシー・ホロウェイが特別出演している。監督・脚本は本作品で67年のカンヌ映画祭最優秀脚本賞を受賞したアラン・ジェシア。眠っていた、ヌーヴェル・ヴァーグの異色コミックが、ついにスクリーンに甦る。

ストーリー


ここは、スイス、ヌシャテルの湖畔。豪華なビラの庭にいま、四人の男女が集い、鏡のような湖面に見入っている。奇妙な和やかで、安らぎに満ちたその光景は、見るものに、ふと不思議な思いを起こさせる。この四人は何者なのか、そして、一体、どういう関係なのだろうか、・・・・・・

ピエールは小説家。絵書きである妻のジャクリーヌと組んで、ハードボイルド調の小説や連載マンガを書いていた。ある日、一人の若者がこの夫婦のもとを訪れた。それが、ボブだった。ボブは、ピエールのファンであるといい、彼の作品はほとんど全部読んでいること、特に”絶望のジャングル”は気に入ったこと、自分もその舞台であるインドシナへ実際に行ってみたこと、そこで小説のヒーローそこのけの体験をしたこと等々、異常なほどの熱心さで語るのだった。

ボブはピエール夫婦を食事に誘い、更にスイスの別荘へと招待した。”この男、少しアタマがおかしいんじゃないだろうか…”正直、ピエールとジャクリーヌは、そう思った。が、どことなく愛すべきところのあるボブに心ひかれたこと、フトコロが淋しかったのと両方で、二人は結局、ボブの招待を受け入れたのだった。

湖畔の別荘で過ごすバカンスは、快適そのものだった。美しい部屋、おいしい食事。ただ、ボブが予想以上に変わった若者であることに、ピエール夫婦は目をみはった。ボブは、父親が潰した莫大な財産で、母のジュヌビエーブと二人、気ままに暮らしている身分だった。無邪気で人がよくて夢想家で、突拍子もない事件を起こしたことも度々であるという。ジュヌビエーブは、そんな息子が気がかりで、ひそかに私立探偵をつけているほどだった。

小銃を撃ったり、模型飛行機に熱中したり、パンチング・ボールを乱打したり、泳いでいる人の群れめがけてモーターボートを突っ込んだり・・・ジャクリーヌは、そんなボブに恐怖を感じてパリへ帰りたがったが、ピエールはむしろ興味をそそられた。”ボブをうまく利用すれば、面白いヤツが出来るかもしれない”

ピエールは、さり気なくボブにアイディアの相談をもちかけた。案の定、ボブはすぐに乗って来た。”ぼくだったら銀行強盗の話にするな。例えば、ヌシャテル銀行を狙うんだ…”いつか、ボブは、その銀行強盗になりきっていた。深夜、銀行の玄関にダイナマイトを仕かけるボブ・・・・・・危機一髪、ピエールが、ジュヌビエーブの雇った私立探偵アドとともに、そのダイナマイトを取り上げた。

いよいよ、ピエールは、ボブの話をまともにして書こうと、心にきめた。題は、”ヌシャテルの殺し屋”、ヒーローの名は、ミシェル・D。画の方も、ボブをモデルにすることにした。ジャクリーヌの前で、ボブは嬉しそうにポーズを取った。自分の考えた話から作品が生まれるかと思うと、胸が躍るのだった。
仕事は順調に進んでいった。そして間もなく、ピエールの作品の方が、ボブの幻想を追い越して先行しはじめた。何とかミシェルに追いつかなくては・・・ボブが原稿を盗み見たことを知ると、ピエールはパリへ帰ると云い出した。ジュヌビエーブは必死に引き止めた。”ボブには、あなたがたが、必要なのです。パリでの収入の倍額を差し上げますから、どうかこのまま…”意外な申し出に驚きながらも、ピエールは結局とどまることを承知したのだった。

さて、コミックのなかでのミシェルの銀行襲撃計画は、女の裏切りによって挫折した。ミシェルは、その女に復しゅうする——ボブにとって”その女”とはかつて自分の愛を一蹴したストリッパー、リズベストであった……

連載コミックの物語は更に進み、ミシェルはエレーヌという美しい娘に恋をした。社会の祝福を期待出来ない身の上であれば、自分なりの手段で愛を貫くほかはない。エレーヌを誘拐したミシェルは警官に追いつめられ、遂に恋人を殺して自殺する——成行きを見て、ボブがジャクリーヌを連れて姿を消したのは当然と云うべきだろう。ボブは、ひたすら、ミシェルになりきり、その行動をなぞろうと努めていたのだから・・・

しかし、ミシェルならぬボブは、エレーヌならぬジャクリーヌを殺すことは出来ず、自分自身、シャトーの高い塔から身を投げながらも死には到らなかった。

そして、いま、ピエールとジャクリーヌ、ボブ、ジュヌビエーブの四人は、それぞれの思いを胸に、夕暮れの湖を眺めている。ボブは夢を見つづけ、ジュヌビエーブはそんな息子を愛しつづけ、ピエールは小説を書きつづけ、ジャクリーヌは夫のために画を描きつづけることだろう。”ヌシャテルの殺し屋”のミシェルは死んだ、が、しかし、ヒーローというものは、決して死に絶えることがないのだから・・・

スタッフ

監督・脚本:アラン・ジェシュア
音楽:ジャック・ルーシェ
コミック:ギイ・ペラート
配給:N.S.W.

キャスト

ジャン・ピエール・カッセル
ミシェル・デュショッソワ
クロディーヌ・オージェ

LINK

□IMDb
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す