アイス・エイジ

「モンスターズ・インク」「シュレック」などなど、大人も楽しめる……いや、大人が楽しみ、そして家族みんなも楽しめるアニメーションの傑作が、今、ハリウッドから続々とやって来ている。笑って、笑って、素敵な物語に感動して、ラストにホロリ。こんなフレーズは、実写もアニメも、傑作ならばすべてに当てはまる。世界有数のCGアニメーション・スタジオ”ブルー・スカイ”の共同設立者であり、心暖まるCGアニメ”Bunny”でアカデミー賞短編アニメーションを受賞したクリス・ウェッジ監督と20世紀フォックス・ファミリー・フィルムが贈る長編アニメ「アイス・エイジ」も、そんなフレーズにピタリと当てはまる傑作である。3月15日にアメリカで公開されるやいなや、アニメ映画として「モンスターズ・インク」「トイ・ストーリー2」に続く歴代3位のオープニング記録をつくり、その後3週間で早くも1億4000万ドルもの興収をあげ、2002年公開作品として1億ドルを超えた最初の作品となった。その他の国でも大ヒットとなり、全世界興収は2億ドルを超え(4月8日現在)、今なお数字を伸ばしている。
　舞台は2万年前、氷河期(アイス・エイジ)が地球に到来しようとする頃。孤高のマンモスとお調子者のナマケモノ、そして鋭い牙を持つサーベルタイガーの3匹が人間の赤ん坊を親のもとへ届けようとする。だが、この3匹はそれぞれ考え方も生き方も、そして目的さえも違っていた。そんな3匹が出会い、反目したり、協力したりしながら、人間の赤ん坊を助けようと必死になる。マンモスのマンフレッドことマニーは孤独を好む高原の漂流者。他人との交流を嫌い、なぜか氷に覆われた北を目指している。仲間にさえ置いていかれたナマケモノのシドは氷河期よりも目前の食べ物を心配する小心者で、マンモスをボディ・ガードにすれば、危険から身を守れると考えて、マニーについて行く。サーベルタイガーのディエゴは人間の赤ん坊を獲物として狙っていた。三者三様の目的をもって、楽しさと一触即発の危機をはらんだ冒険の旅が始まった。クリス・ウェッジ監督はすでにCM界ではその手腕を認められている実力者。その才能はCMだけでなく、映画「ジヨーズ・アパートメント」(96/V)ではアニメーション監督として、「エイリアン4」(97)や、「スター・トレック/叛乱」(98)などでクリエイティブ・スーパーバイザーとしても発揮されている。ウェッジ監督のCGアニメのひとつの特徴は、動物をキャラクター化することである。「アイス・エイジ」には主人公の3匹以外に、スクラットというリスとネズミを合体させた架空のオリジナル・キャラクターが登場する。氷河期の到来が目に入らず、彼はただひたすらドングリの実を地面に埋めようとする。それが多くの動物たちにどれほど悲惨な出来事をもたらせてしまうことか。アメリカでは予告編に登場したスクラットが観客たちの笑いを誘い、映画公開前に大変な人気者となってしまったそうである。制作スタッフたちにも大人気で、スクラットはみんなのキャラクター・マスコット的存在となっている。彼は物語に繰り返し登場して、観客を大いに笑わせてくれる。アニメのキャラクターたちを身近な存在にしてくれる声の出演者たちは、まずマンモスのマニーにレイ・ロマーノ。彼は96年から全米で放送中の人気TVコメディ“Everybody　Loves　Raymond”の主演を務め、2000年のアメリカン・コメディ賞主演男優賞、2001年のテレビガイド賞のコメディ部門の男優賞、2002年のピープルズ・チョイス賞の人気TV俳優賞を獲得し、99年エミー賞主演男優賞、2000年&2001年のゴールデン・グローブ賞の男優賞などにノミネートされた、全米のお茶の間の超売れっ子スターである。
　ナマケモノのシドを演じるのは、20世紀フォックスの「ロミオ&ジュリエット」(96)、「ムーラン・ルージュ」(01)、そして「サマー・オブ・サム」(99)などで強烈な個性が印象に残るジョン・レグイザモ。サーベルタイガーのディエゴには、全米で放送中の人気TVコメディ“The　Job”(01〜)で主演、製作、脚本の3役を務め、アニメ「バグズ・ライフ」(98)、映画「トゥルー・クライム」(99)、「トーマス・クラウン・アフェアー」(99)などに出演したデニス・リアリー。この他に、ディエゴの仲間のサーベルタイガー、ソトにTV「ER/緊急救命室」、映画「ピースメーカー」(97)などのゴラン・ヴィシュニック、同じくサーベルタイガー、ジークに「愛しのローズマリー」(01)で初主演を飾ったジヤック・ブラック、赤ん坊のロシャンにTVアニメ「バットマン」、CGアニメ「ファイナル・ファンタジー」(01)などで声優として活躍するタラ・ストロングなどが出演。製作はディズニーで「ライオン・キング」(94)、「ポカホンタス」(95)、「トイ・ストーリー」(95)などのスタッフだったロリ・フォート、脚本はジャッキー・チェンの次回作”The　Tuxedo”(02)を執筆したマイケル・ウィルソンほかマイケル・バーグ、ピーター・アッカーマンら3人の共同執筆、共同監督はウェッジ監督と同じブルー・スカイ・スタジオのカルロス・サルダーニャ、音楽は「アナスタシア」(97)でアカデミー作曲賞にノミネートされたデビッド・ニューマン、美術はディズニー・アニメでキャリアを磨き、「美女と野獣」(91)に参加したブライアン・マッケンティー、編集は「美女と野獣」(91)、「チキンラン」(00)などのジョン・力ーナカン。ユーモアと冒険と感動すべてを満載し、笑って、笑って、最後に目頭を熱くさせる傑作CGアニメーションの誕生である。