原題:A Snake of June

一緒に、地獄に行きましょう。

2002年第59回ベネチア国際映画祭審査員特別大賞受賞作品 2002年第59回ベネチア国際映画祭協賛キネマトリックス長編映画部門最優秀作品賞 2002年第34回シッチェス国際映画祭最優秀美術監督賞 第3回東京フィルメックス・特別招待作品::http://www.filmex.net/

2002年/日本/アシディック・ブラック&ホワイト/スタンダード/DTS,ステレオ/77分/1:1.33 配給:ゼアリズエンタープライズ

2003年12月21日よりビデオリリース 2003年12月21日よりDVD発売&レンタル開始 2003年5月24日より渋谷シネアミューズにてロードショー公開

©2002 KAIJYU THEATER / TSUKAMOTO SHINYA ©FOR MATERIALS 2002 THERE'S ENTERPRISE INC.

公開初日 2003/05/24

配給会社名 0040

解説


2002年の第59回ベネチア国際映画祭で塚本晋也最新作「六月の蛇」が審査員特別大賞を受賞した。世界の映画関係者がもっとも期待と注目をそそいだ、今年度新設のコントロコレンテ部門での受賞。より刺激的で未来への可能性を感じさせる完成度の高い作品群を集めた同部門には、スティーブン・ソダーバーグ、フルーツ・チャン、ラリー・クラークら世界の俊英たちの新作も出品されていた。同映画祭で日本映画が受賞したのは、1998年北野武監督作品「HANA-BI」以来。このニュースは、日本のみならず世界各国のメディアによって大きく報道された。ベネチア発、世界を圧倒した“究極の愛”の物語が、上陸する。

自慰。脅迫。盗撮。覗き…。美しく青いスタンダードサイズの画面に、雨が降りつづき、変態的な性愛描写と、肉体的苦痛と性的オルガスムとが刻みこまれてゆく。雨にうたれフラッシュに照らしだされる“都市のイヴ”りん子の裸身。悶える肉体と奔流
する感情の稠密な描写。雨音と喘ぎが四囲を埋めつくし、五官を超え全知覚に鮮烈にフィードバックする。

梅雨の東京。電話カウンセラーとして働くりん子のもとに、彼女自身の自慰行為を盗み撮りした写真と携帯電話がとどく。彼女の言葉で自殺を思いとどまった男・道郎からの狂った脅迫。その日から、りん子の恥辱と恐怖に満ちた日々がはじまる。妻の心の中にひそむ蛇が目覚め、夫は眠らせていた感情をほとばしらせる。

肉体感覚を喪失し、生を実感できない都市生活。現代に暮らす人々の孤独な心の叫びがひびく。

製作、監督、脚本、撮影監督、美術監督、編集は塚本晋也。“都市と肉体”をテーマに撮りつづけ、独自の視点と斬新な手法と天才的センスで作りだす鮮烈な映像が、映画ファンからスコセッシ、ジュネ&キャロらの映像作家まで虜にする、“世界のTSKAMOTO”。本作は、その監督7作目にあたる最新作である。

主演のりん子を「愛について、東京」の黒沢あすか、その夫・辰巳重彦をコラムニストとして活躍する神足裕司、スト一カー・飴口道郎を塚本晋也。そのほか、刑事役に寺島進、りん子の同僚に鈴木卓爾、アダルト雑誌編集長に「鉄男」の田口トモロヲら、常連も出演。

「鉄男」以来塚本作品をてがける石川忠が甘くヘビーでサスペンスフルなサントラを提供し、柴崎憲治監修のもと初参加の北田雅也が繊細で力強い音響効果を実現。ガンエフェクトは唐沢裕一、特殊メイクは織田尚ら、塚本が信頼するスタッフでかためている。

強奪、恥辱、恐怖、恍惚、歓喜、そして生と死。惜しみなく奪い、果てしなく満ちる、至上のエロス。”究極の愛”の物語に愛のすべてを体験する。豊穣な傑作が誕生した。

ストーリー



東京。梅雨。降りつづく雨で蒸しあつく、滲みでる汗が粘りつく。

潔癖症の中年サラリーマン・辰巳重彦(たつみしげひこ)と心の健康センター電話相談室につとめる美貌の妻・りん子。瀟洒なマンションで恵まれた生活を送るふたり。りん子はその熱心な応対でひとりの子供の命を救ったばかりだ。一流企業に勤務する重彦の帰宅は遅く、会社から早く戻るときはキッチンを執拗に磨きあげ、夜になるとダブルベッドをぬけだしていく。そして、
死の病に侵され、生きる気力をなくした飴口道郎(いぐちみちお)が、暗室と隣合わせの居室でひとり孤独に座りこんでいる。

職場で、自殺予告の電話を受けたりん子は、その男に励ましの言葉を与えた。それをきっかけに、男のりん子へのストーカー行為がはじまる。翌朝、りん子あてに封書が届く。彼女の自慰行為を盗み撮りした写真の数々。その日から、りん子の恥辱と恐怖に満ちた日々がはじまる。

次に送られてきたのは、鏡の前で大胆な衣装と化粧で変身してゆくりん子を撮った連続写真と携帯電話。「写真のネガを返してほしければ、言うことをきいてください」。脅迫は続く。モニター上のネット通販のバイブレータに見入り、自宅マンション前の戸外で果て放心するりん子の写真。何者かによって、日常がひき剥がされていく。

重彦の土曜出勤。男の言うままに、りん子は、短いスカートをもって家を出る。携帯電話が命じる。要求は、できるはずのない陵辱的なものへとなっていく。声の主・道郎が操作するリモコンが、意志とは無縁にりん子の体を反応させる。ようやくの思いで、駅の公衆便所にたどりついたりん子は、返却された写真とネガを見つける。恐怖から解放され、リモコンをオンにする。戻ってきた快感に、りん子は、おそるおそる体を浸す。号泣する。帰宅したりん子にリビングの電話器がなる。道郎の声「写真はまだある」、そして意外な言葉。「返してほしかったら…病院にいけ。」

重彦は、妻の病状にうろたえていた。そして、ふだんの生活から想像できない妻の姿がうつっている写真をドアのすき間に見つけた。疑惑と嫉妬がめばえていく。重彦の携帯電話が鳴り、道郎が話しだすと同時に、重彦の意識が失われていく。

夜の建築資材置き場。炸裂するフラッシュ。車を急停車させカメラを構える道郎、妻の後をつけてきた重彦は物陰で、息をのむ。打ちつける雨の中、めくるめく官能の虜となった、はてしなく美しいりん子の裸身が浮かびあがる…。

体が、かってないほどに激しい欲望と強い気持ちで、ふくれあがっていく。聖なる欲望がぶつかりあい、はげしい渦となり、溢れだし、恐怖と絶望を呑みこんで、生命を駆り立てていく。

スタッフ

製作・監督・脚本・撮影監督・美術監督・編集・塚本晋也
音楽:石川忠 
アソシエートプロデューサー&助監督:川原伸一
助監督:小出健、黒木久勝 
撮影:志田貴之 
照明:吉田恵輔 
製作&メイク:福山秀美 
衣装:岩崎浩子
スチール:天満眞也 
録音:小原善哉 
音響効果:北田雅也、柴崎憲治 
特殊メイク:織田尚

キャスト

黒沢あすか
神足裕司
塚本晋也
寺島進
不破万作
田口トモロヲ
鈴木卓爾

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