モスキート

巨大吸血蚊大量発生！
『スパイダーズ』のゲイリー・ジョーンズと『ブロブ／宇宙からの不明物体』『パラダイム』『ゼイリブ』『バットマン・リターンズ』『死霊のはらわた３』『ダークマン』のスタッフが放つモンスター・パニック！
『スパイダーズ』でモンスター・パニック映画の新機軸を打ち出したゲーリー・ジョーンズ監督作品。一瞬で人間をミイラ状態にしてしまうエフェクトは圧巻。
全米NO.1のホラー映画雑誌『ファンゴリア』が絶賛、フルスケールでクリエイトされた巨大蚊が暴れまくる昆虫パニックの傑作！！

【チェック・ポイント！】

　まさに待望の復活である。1994年10周年を迎えた東京国際ファンタスティック映画祭、折り返し地点ともいうべき10月4日の火曜日に上映された作品を皆さんは覚えているだろうか。へっ、『アラビアのロレンス 70mmディレクターズ・カット完全版』？夜に大勢の真っ当な映画ファンを集めたそれもまた正解なんだけど、平日の真昼間ということで決して満席にはならない時間帯なれど、コアなジャンル・ファンが集まった中で上映され、バカ受けだった作品を忘れちゃなんないでしょう。それこそこの、『モスキート』なのだ。東京ファンタ上映後一度はビデオ・リリースされるも、廃盤になってから既に久しい作品である。
　監督は昨年公開された、ヌー・イメージの“男泣き！”巨大生物襲撃パニックの代表作『スパイダーズ』のゲイリー・ジョーンズ。『スパイダーズ』のＤＶＤに収録されたメイキングの中で「僕が監督に選ばれたのは、巨大な蚊が人を襲う映画を撮った昆虫モノの経験者だったからだよ」と得意げに語っていた作品こそが、この『モスキート』なのだ。今年6月に公開されたヌー・イメージの最新“男泣き”映画『スパイダーズ２』とともに、前作『スパイダース』の廉価版とこの『モスキート』が再リリースされるとは、モンスター・ファンには盆と正月が一緒にやって来たように嬉しいライン・ナップなのだ。これを喜ばずに、何を喜べというのだ。思いっきり趣味に走ってしまうが、このまま続けさせてもらおう（笑）。
　エイリアンの宇宙船がある沼に墜落、乗っていたエイリアンの死骸の血を吸った蚊が、人間大のモンスター蚊と化し、群れをなして人々を襲う。一つ断っておくと昨今のヌー・イメージ作品が低予算でも効率的なＣＧＩでモンスターの大暴れを楽しませてくれるに比べると、製作年度がちょっと古めの本作では巨大蚊の特殊効果は、はっきり書いてしまえばチャチであまりリアルさは感じられない。しかし、主人公達の車にを跳ね飛ばされる冒頭の実物大ハリボテ・モスキートをはじめ人間と絡む場面ではフル・スケールモデルで、群れが飛行する場面など独特の動きが要求される場面ではコマ撮りやアニメを併用し、作り物まるだしだろうと、兎に角デカイ蚊と人間の攻防を真っ向から描こうとしたパワフルなＢ級魂は、ジャンル・ファンを魅了すること間違いなし。巨大蚊に襲われた犠牲者が、これも作り物めいてはいるが、体液を一気に吸われミイラ化する場面など、凝った見せ場も盛り沢山だ。
　因みに、主人公達と呉越同舟状態で行動する強盗のリーダーを演じているのが、『悪魔のいけにえ』で電鋸抱えて凶行を繰り返したレザー・フェイスを演じていたガンナー・ハンセン。本作の後半、蚊の群れを避け立て篭もった屋内で武器を探していた時に、たまたまみつけたチェイン・ソーを抱えて「これを持つのは20年ぶりだ。なんていい気分なんだろう」と、これまた気が利いたファン泣かせの台詞を聞かせてくれる。実は御本人がこの作品の脚本にも参加していたようだ。
　なお、ゲイリー・ジョーンズ監督の新作はトビー・フーパー監督の『レプティリア』の続編で、再びヌー・イメージで製作される『CROCODILE2:DEATH ROLL』。既に作品自体は完成しているようなんで、巨大鰐の大暴れを観れる日を心待ちにしつつ、当面はこの『モスキート』から『スパイダーズ２』（この作品のみ、監督はサム・ファーステンバーグ）の“男泣き！”巨大生物襲撃作品三連発を堪能しよう。
（殿井君人）