原題:The Lament of A Lamb

羊の群れに紛れた狼は、さみしい牙で己の身を裂く 映画製作支援サイト・シネマネー第6回支援作品

第14回東京国際映画祭コンペティション部門出品::http://www.tiff-jp.net/

2001年/日本/109分/カラー/ヴィスタ/6巻3924F/ステレオ 制作:ネクスト・プロデュース 配給:グルーヴコーポレーション

2007年07月27日よりDVDリリース 2002年09月25日よりDVD発売開始 2002年09月13日よりビデオ発売&レンタル開始 2002年3月30日より新宿トーアにてロードショー(土曜オールナイト有) 2002年4月6日よりシネ・リーブル池袋にてレイトショー

@copy;2001冬目景/幻冬舎コミックス/「羊のうた」製作委員会

公開初日 2002/03/30

配給会社名 0031

公開日メモ ごく普通の高校生活を送っていた少年が、ある時、一族の奇病——吸血鬼さながらに人の血がほしくてたまらなくなる病——におかされていることを知る。そんな衝撃的な設定で高い人気を博す、コミックス「羊のうた」が遂に映画化された。

解説



ごく普通の高校生活を送っていた少年が、ある時、一族の奇病——吸血鬼さながらに人の血がほしくてたまらなくなる病——におかされていることを知る。そんな衝撃的な設定で高い人気を博す、コミックス「羊のうた」が遂に映画化された。

高城一砂は幼い頃に叔父のもとに預けられ何不自由なく育ったが、母が他界したあと、父親に捨てられたという思いはくすぶりつづけていた。ここのところ古い屋敷に血のイメージがだぶった夢をよく見る。最近は体調もすぐれず、屈託なく笑い合うクラスメートたちにどことなく違和感も感じている。そんな一砂が心を寄せているのは同じ美術部に属している八重樫葉。あまり笑わないところが気に入っていた。夢に招かれるように訪ねた、生家。そこには長い黒髪に和服姿の美しい少女がひとりで暮らしていた。幼い頃、別れたきりの姉・千砂だった。千砂から思いもかけない、母方の一族に伝わる病について聞かされる一砂。高城家のものは人の血が欲しくなる。吸血鬼の家系なのだと。
一砂の、少し退屈なくらいに平穏な生活は一変する。

原作は冬目景。月刊誌「コミックバーズ」にて現在も進行中のため、映画のラストシーンはオリジナルになる。映画『羊のうた』では「なぜ、誰のために生きていくのか」というテーマをていねいにすくいあげ、物語をまとめあげた。「吸血」というショッキングな題材で魅了しつつもグロテスクな描写は避け、むしろ普遍的な青春の揺らぎが胸を打つ。
進路に迷い、家族がなんとなくうっとうしくなる年頃。自意識が強まり、周囲との違和感が強まる。そして、好きな人に対する思いも、時に攻撃的な衝動を伴う時期。一砂の場合のそんなあれこれは「吸血」という病を通して観客により強く訴えかけてくるだろう。
「羊のうた」では誰もが、誰かを愛し、愛されたいと願いながら、様々な困難を抱えて苦しんでいる。一砂と想いを寄せ合いながら、「病」に阻まれた八重樫。絶対的な存在であった父親を失って、そのかわりを一砂に求めようとする千砂。千砂にかなわない思慕を抱き続けている、医師・水無瀬。一砂を愛しながら、救うことができない育ての親。
特別な人達の特別な話ではなく、『羊のうた』は「生きていく」ことの意味が問い直される作品だ。

高城川砂には小栗旬。テレビドラマ「SUMMER SNOW」(00/堂本剛の弟役)や、映画『しあわせ家族計画』(00/阿部勉監督)、舞台と、幅広く活躍してきた力を生かし、複雑なキャラクターを繊細に演じている。その姉、美しく誇り高い千砂には、加藤夏希。『エコエコアザラク』(01/鈴木浩介監督)の黒井ミサ、『STACY』(01/友松直之監督)の詠子、と主役をつとめた作品が続々公開される注目のスーパーヒロインだ。一砂との苦しい恋に悩む八重樫には新人、美波。『バトル・ロワイアル』(00/深作欣二監督)では川田の恋人、慶子役で出演。「笑わないところがいい」と言わせるだけの陰影のある個性を発揮している。
また、高城家の秘密を共有している医師、水無瀬に鈴木・一真、一砂の父に映画監督の利重剛、一砂の夢にしばしぱ現れる幻想的な母親役に高橋かおり、叔父・叔母に田中健と永島暎子と、コミックの世界を実写の世界へと橋渡しできる力量の役者たちが周囲をかためた。

ロケ場所には長野県須坂市が全面協力。原作者も「よくこんなにぴったりのところが」と感心した日本家屋をはじめ、美しい夏の風景がノスタルジックな雰囲気を漂わせる作品になっている。
監督は花堂純次。「永遠の仔」(00)「別れさせ屋」(01)など数々のテレビドラマや、オリジナルビデオを手がけたキャリアを生かし、今回、満を持して映画監督としてのデビューになる。

《シネマネーについて》
シネマネー(cinemoney.com)は、インターネットWEBサイトを使って、制作予定がある有力タイトルのストーリーや配役を一般の人に公開し、その映画を「見たい、ぜひ制作して欲しい」という意見を応援団入団の予約をすることで意思表示してもらい、製作を援助する資金を集めるインターネットサービスサイト。

ストーリー



《羊の群に紛れた狼は、さみしい牙で己の身を裂く》
四方を山に囲まれ、豊かな渓流が人々の心を癒す緑豊かな、どこにでも見られる、とある地方都市。高校生、高城一砂(たかしろ・かずな=小栗旬)は最近体調もすぐれず、むしょうに眠い時がある。やっと眠りについても不思議なイメージの洪水が襲ってくる。とはいえ級友たちと興ずる日頃の屈託のない会話と、はじけるような笑いは、彼らにとってはいつもの日常だった筈だ。しかし、最近感じる違和感は何だろう?笑い合ってはいるものの、一人だけ友人たちとどこか距離を感じる様になったのはいつからだろうか?

風鈴の涼やかな音色が、少し早い暑さにあえぐ空気をひんやりと染めていく。高校の教師面談は、生徒たちをいやがうえにも進学を真剣に考えさせる、そんな初夏の季節となっていた。
一砂は珍しく放課後の美術室に顔を出した。風になびくカーテンを背景にキャンバスに向かう一人の女子生徒。八重樫葉(やえがし・よう=美波)である。人の気配に振り向く彼女。そういえぱ滅多に笑顔を見せることない彼女の、どこか他人を拒絶するその風情を、一砂は密かに気にいっていた。彼女が画布を外そうとする際キャンバスにひっかけた指先。「・・・痛い」その指先にとどまる深紅の小さな血の玉に何故か鼓動の高鳴る一砂。そんな彼に絵のモデルをと、ためらいがちに申し出る八重樫。その刹那、一砂は気の遠くなるのを感じた。再び襲う悪夢のイメージ。
頬をなでる優しい風にふと気付く川砂を心配そうにのぞき込む八重樫に、どうしても素直な礼の言葉を呑み込んでしまう・・・。
幼いころ死んだ母、いない筈の父の代わりの育ての親でもある叔父夫婦の家。その目に飛びこむ窓辺の風鈴は、夢の断片を鮮やかに紡ぐ最後の手掛かりでもあった。夢なかに頻繁に現れるあの家こそ一砂の幼き日々、過ごした家だった。
もう長らく見ることもなかった両親の古い写真を取り出す一砂。幼い彼を残して立ち去る父の姿がフラッシュバックする。
いつもの食卓で一砂を養子に迎えたいと申し出る江田の叔父さん(田中健)と叔母さん(永島映子)。しかし、彼の気持はそぞろである。いつもの夢が彼を幼い淵に呼び戻す。そして今朝はとうとう母さえも夢に現れた。果たして彼はその夢にいざなわれるように、学校とは正反対の、郊外に向かう私鉄に乗り込む。ようやく目的の駅にたどり着くと、そこは旧家が多く残る戦前の古い屋敷街だった。堀の多いその街並みにいっそう懐かしさがこみ上げる。神社の鳥居は幼い彼を残して立ち去る父、志砂(しずな=利重剛)を見送ったままのただずまいを未だ残していた。神社からほど遠くないところにその家はあった。土塀に囲まれ旧家然とした重厚な造りは確かに以前、自分が住んでいた家に相違なかった。中庭に続く、くぐり戸を抜けるとそこは木々に囲まれた見覚えのある、そして何度も夢に重なるあの光景が広がった。硝子戸越しの廊下を隔てて見える和室にも、庭の向こうに隣接している小さな医院にも記憶があった。その懐かしさにひたる間もなく背中に浴びせかけられる声。「だれ?」・・・!。一砂の姉の千砂(ちずな=加藤夏希)である。見覚えのある彼女の濃紺の着物は母がかつて着ていたものだ。そんな安らぎを感じるのも束の間、一砂は姉、千砂から高城家に代々伝わる秘密を伝えられる。人の血が欲しくてたまらない血液の病気。それは思春期の少年の心に重くのしかかる、あまりにもかなしい血の系図だった。そして生きていると信じていた父は半年も前に死んでいた・・・。ショックを受ける一砂、しかし叔父夫婦は一切そのことには触れなかった。

翌日。いつもの美術室。昨日学校に来なかった一砂を気遣う八重樫。そんな彼女を介さぬ風の一砂。赤い絵具が戦標すべき吸血のイメージを喚起する!たまらず雷雨の校庭に飛び出す一砂。その声に千砂の声がリフレインする。「吸血鬼の家系なの…!」
知らず、彼の足は高城の家に向かう。
気付いた時は高城家の居間である。彼を救ったのは水無瀬(みなせ=鈴木一真)、千砂の主治医でありまた父、志砂に師事した男である。
水無瀬は一砂に師の面影を見て取るのだった。高城の家で初めて過ごす姉とのとりとめのない時間は二人の目に見えぬ絆をいっそう強固にする。今までただ一人この病気と対持していた姉と、これから一砂はニ人で高城の運命に身を預けなければならない・・・。これを機に一砂の日常には変化が訪れる。一人自室で、何故か頬を伝う涙が彼の心に、ある決意をもたらす。翌日、放課後の美術室で彼を待ち受ける八重樫。誰も傷つけずこの街を去りたい一砂の口をついて出た言葉は、気持ちと裏腹な、無垢な少女を絶望の淵に追いやるには充分残酷なものだった。たまらず学校を飛び出しスケッチブックを抱えて川辺を急ぐ八重樫に、こみ上げるは涙。鳴咽を噛み殺す八重樫。緑色の風がただ水面を走るのみ。

一方、姉の千砂を診察する水無瀬の胸中も複雑である。恩師への思いと千砂への秘めたる気持ち。千砂もまた、弟の突然の出現に新たな生への気持ちを強くする。いつの間にか一砂は高城家の傍の神社にいた。心中を去来する八重樫の儚げな微笑が彼の心をいつまでも締めつける。と、急激な発作が彼を襲う。行過ぎる人もない神社の境内に、導かれるかのように干砂が現れた。すべてを察した彼女は静かに自ら左のかいなに小さなナイフを走らせる。ほっそりした透き通るような白い腕にゆっくりと一筋の血が指先へと滴りおちる。それを一砂に差し出す千砂。震える一砂は血の滴る指先を唇にとふくみ、その姉は弟の髪を優しく撫で付ける。時の流れは、ふたりのためにしぱしとどまる。樹齢を重ねた占い神木のやわらかな木漏れ日が二人を優しく包み込む。かつて発病した若き日の母に自分の腕を傷つけて血を与えた父の姿にも似て・・・。
以来、高城家に戻った一砂は、哀しい運命ゆえに死の淵に立たされた両親を思いやる。父のいた病院で、すわったであろうその椅子で家族を思う父の気持ちに思いをはせる一砂。そして一砂のいなくなってしまった空間をえもいわれぬ淋しさで思いやる、残されたひとたち。それぞれの哀しさが交わることは決してない。それでも叔母が高城家にやって来た。訴える遠い肉親の言葉は充分優しい。八重樫の時と同様、裏腹な言葉で拒絶せざるを得ないかたくなな決意の少年。同じ頃、その八重樫も高城家に向かう。庭先で応ずる姉の千砂。しかし呪われた高城の人間は、もう誰とも会わない。傷心のまま帰路につく八重樫は以前描いた一砂の画きかけの肖像を、高い橋の上で破り捨てる。二人で過ごした時の断片は水に浮かび流れさるのを見つめるしかない。

いつもの発作を起こした一砂の傍らに水無瀬と千砂がいた。もう何年も前から、父が千砂に施したようにして、今また弟に接する姉への思いを更につのらせる水無瀬。彼さえも高城家には相容れない。姉弟はこうして代々の哀しき宿命に身をゆだねながら、それでも時は緩やかに流れる。日を重ねつつ生きることへの意味を自問自答する一砂。そんな折り再び高城家に歩を進める八重樫がいた。渓流のごつごつした川原で一砂を見つける彼女は、自分の気持ちを伝えようとする。そして彼女は一砂の発作によりついに高城家の秘密を知ることになる。担ぎ込まれた病院で彼女は初めて、水無瀬から血を渇望する血液障害の病気のことを間かされた。驚きを隠せない八重樫だがもはや、どうすることも出来ない、ただ生きていて欲しい。まして自分の体を傷つけてまで一砂が守った少女の存在は、千砂にはいっそう衝撃だった。彼女もまた、限られた時間のなかで残された生命を刻んでいた。果たして今度は千砂が発作に見舞われた、初めて見る姉の発作に…砂はなす術もなく・・・。

スタッフ

監督:花堂純次
制作:成澤章、田中正雄
企画:尾川匠、荒木功
原作:冬目景(ソニー・マガジンズ「コミックバーズ」連載)
プロデューサー:内堀雄三
脚本:花堂純次、渡辺麻実
撮影:藤井良久
証明:林和義
美術:金勝浩一
音楽:貴三優大、浜口史郎
録音:井家眞紀夫
編集:伊藤伸行
助監督:芝祐二
制作担当:大西洋志
プロデューサー補:松葉勢津子
ラインプロデューサー:鈴村高正
題字:赤松陽構造

キャスト

高城一砂:小栗旬
高城千砂:加藤夏希
八重樫葉:美波
水無瀬(医師):鈴木一真
江田夏子(一砂の養母):永島暎子
江田新(一砂の養父):田中健
高城志砂(父):利重剛
高城百子(母):高橋かおり

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