原題:KWAI THE MOVIE

世に不思議なし 世はすべて不思議なり 〜七人みさきとは〜 山や川などで不慮の死を遂げたものの死霊という意。 同じところで七人同じような死人を出さないと成仏できないという言い伝えがある。 京極夏彦のミステリアスかつ妖艶な美の世界が今、ここに…。

2000年/日本映画/97min/ヴィスタサイズ 製作協力:松竹京都映画株式会社/製作:C.A.L 配給:松竹株式会社

2001年8月25日DVD発売 2000年8月12日より渋谷シネパレス、シネアルゴ梅田他にて夏休みロードショー!

公開初日 2000/08/12

配給会社名 0003

解説

1997年に『笑う伊右衛門』で泉鏡花賞を受賞、その後も『絡新婦の理』『どすこい(仮)』など次々とベストセラーを発表し、絶大な人気を誇る作家、京極夏彦の時代劇ミステリー、今年1月にWOWOWで放映され好評を博し、いよいよ満を持してディープにバージョン・アップした劇場完全版が公開となる。
暗雲立ちこめる城下町で、女の死体が発見され、領民たちは、百年前に農民たちに殺された城主の怨念か、はたまた5年前に怪死したミサキ御前の祟りかと、口々に噂する。そしてこの死は、7人の娘が殺される“七人みさき”の3人目の犠牲者にすぎないのだと。魔除けの札を撒いて歩く御行の又市、人形遣いの山猫廻しのおぎん、怪談を求めて旅する戯作者、山岡百介の3人は偶然この町で行きあい、“七人みさき”をめぐる謎、そして江戸で流行している“無惨絵”との関わりを探り始める。
愛と死の因縁を抱えた多彩な人物が交錯する奥深いミステリーに、妖しい殺しの美学を織り込み、耽美的なエロティシズムを生みだす京極夏彦の独特な小説世界は、雑誌のアンケートでも、読者の「いちばん好きな作家」の第1位に選出され、同時に映像化も熱望されていたが、この『七人みさき』でついに実現。本作では京極夏彦自らが脚本・企画に乗り出し、劇中、戯作者役で顔も出すなど、なみなみならぬ意欲を見せているのも話題だ。
出演は、御行の又市に映画『四月物語』や、テレビドラマ『月下の棋士』などで活躍中の田辺誠一。昨年、『DOG−FOOD』で映画監督デビューを果たし、初エッセイ集『眠らない羊』も好評とますます活動の場を広げ、アーティストとして注目を集めている。また、山猫廻しのおぎん役には『高校教師』でデビューし、最近ではバラエティ番組でも活躍している遠山景織子。山岡百介役には数々の話題のドラマで個性派俳優として実力を発揮し、昨年は『カラオケ』で映画監督に挑戦した佐野史郎。ほかに、夏八木勲、小木茂光、三原じゅん子、小松政夫など、異色の顔ぶれが共演する。
監督は『忠臣蔵外伝 四谷怪談』『鬼平犯科帳』などで助監督としてキャリアを築いてきた酒井信行。また美術監修に、『地獄門』『炎上』など、日本映画史に残る名作を数多く手がけてきた西岡善信が参加し、重厚な映像世界を作り上げるのに貢献している。
なお、タイトルの「七人みさき」とは土佐地方(高知県)でいう行き合い神の一種で、不慮の死を遂げ、海に出る死霊のことをいう。一人に取り憑くとそのうち一人だけが成仏し、殺されたものが新しく加わり、いつまでも七人の数は減らないというものである。
最近、日本映画界は、『梟の城』『御法度』『どら平太』と時代劇への注目が集まっているが、この『七人みさき』は本格時代劇に昨今ブームのホラーの要素を加えることで、従来の枠を超えた、まさに21世紀に相応しい新感覚の傑作が誕生したといえるだろう。

ストーリー

朝まだ早い獣道を、魔除けの札売り、御行の又市(田辺誠一)がひとり歩いている。あたりには人気がなく、又市の持つ鈴の音が透き通るように鳴り響いている。
そこへ突然、何かに追われるように切迫した表情の農民たちが現れ、幕府への訴状を又市に託して逃げるように散っていく。しかし彼らは、追いかけていた侍たちに、次々と斬り殺されてしまう。さらに又市に侍たちの刃が向けられるが、すんでのところで東雲右近という浪人(小木茂光)に助けられる。彼は、「まとまった金があれば仕官できる」と聞き、“武士の誇りと引き換えに稼いだ金”を手に入れた、江戸からの旅の帰りだった。こうして又市は、右近の旅の道連れとなる。その頃、城下町の河原で女の水死体があがった。各地に伝わる異聞怪談を収集するため、旅をする戯作者山岡百介(佐野史郎)は、江戸で流行している「無惨絵」の売り子、平八(ひかる一平)とこの地を訪れていた。偶然、人形遣いの山猫廻しのおぎん(遠山景織子)と行きあった百介は、この地に伝わる「七人みさき」という祟りの噂を聞く。美しい娘ばかり七人惨殺される事件が、一昨年起こり、今年もこの女性、るいで三人目だという。
るいと妹のかな(聖はるか)は、右近の暮らす長屋の隣に住んでいた。右近の妻、涼(三原じゅん子)は連れ添った10年目にして初めての子供を身ごもり、右近の仕官も生まれてくる子供を養うための決意だったのだ。
こうして顔を揃えた又市、おぎん、そして百介の三人は、「七人みさき」の祟りに憑いて情報を交換しあう。どうやらその伝説は、百年前、淫祠邪教に没頭し、おぞましい行為を繰り返した城主・川久保弾正が、乱心のあげく、七人の農民たちに殺された事に端を発しているのだという。現城主の北林弾正(四方堂亘)は、先々代城主・北林善虎(藤田まこと)が妾に生ませた子で、病弱だった前城主である兄の急死を受けて、5年前に跡目を相続したのだった。そして兄の正室・楓姫(朝岡実嶺)は天守から身を投じ、自害したというのだ。そして楓姫こそが、他ならぬ領民から“ミサキ御前”と呼ばれていたのだ。実は、るいには許婚の与吉(梶原善)がいたが、「与吉が姉さんを侍に売った」というかなの言葉を聞いた右近は、家老の樫村兵衛(小松政夫)から口封じの金を握らされている与吉を目撃し、事の真偽を問いつめる。しかし、そこに現れた謎の尼僧が、与吉を毒針で殺害し、その罪は右近になすりつけられる。こうして右近は身を隠すが、四人目の犠牲者となったのは涼だった。彼女はお腹の赤子もろとも、無惨な死体となって発見される。一方、おぎんは、養父である御燈(みあかし)の小右衛門(夏八木勲)のゆくえを追って、この地にやってきたのだった。そして又市は、その影に、小右衛門と楓姫の浅からぬ因縁があることを突き止めるのだった。やがて百介は、事件は「無惨絵」の“見立て”であることに気づくが、そんな折、右近とかなが、弾正の側近たちに連れ去られ、城の地家牢に幽閉されてしまう。
こうして、小雨降る城下の町、又市の鈴の音が鳴り響き、おぎんもまた、人形とともに城内に忍び込んだ。“陰陽の気が乱れるもののけの宵”に、城下を支配する祟り、そして複雑にからみあった愛の狂気は絶ち切ることが出来るのか。又市の叫びがとどろく。「御行一してたてまつる!」

スタッフ

製作:加地隆雄
原作・脚本:京極夏彦
『巷説百物語』(角川書店刊) 『続巷説百物語』(季刊『怪』連載中)
企画:京極夏彦、山田誠二
プロデューサー:小野寺信司、濱野 隆、水野純一郎
美術監修:西岡善信
音楽:栗山和樹
撮影:石原 興
照明:井上 武
美術:犬塚 進
録音:河合博幸
助監督:井口誠一
製作主任:阿曽芳則
エンディングテーマ曲:『SPICY STEP』スーサイド・スポーツ・カー(ユニバーサル)
監督:酒井信行

キャスト

御行の又市:田辺誠一
山猫廻しのおぎん:遠山景織子
山岡百介:佐野史郎
小右衛門:夏八木 勲
樫村兵衛:小松政夫
東雲右近:小木茂光
涼:三原じゅん子
北原弾正・川久保弾正:四方堂 亘
かな:聖はるか
荻之介:津田健次郎
白菊:麻田かおり
桔梗:平 沙織
平八:ひかる一平
与吉:梶原善
楓姫:朝岡実嶺
北原善虎:藤田まこと

©C.A.L

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