原題:THE WISDOM OF CROCODILES

今最も美しい輝きを放つジュード・ロー主演

1999年ブリュセル・ファンタジ映画祭ヨーロッパ最優秀ファンタジー映画賞

1998年/イギリス映画/カラー/98min/ドルビーSRD/日本語版字幕:松浦美奈 ゼニス・プロダクション=ゴールドウィン・フィルムズ=フィルム・ファウンドリー・パートナーズ=エンタテインメント・フィルム・ディストリビューター作品/ 配給:アスミック・エース

2002年04月26日よりDVD発売&レンタル開始 2001年6月22日DVD発売/2001年6月22日ビデオ発売&レンタル開始 2000年11月18日よりシネクイントにてロードショー!

公開初日 2000/11/18

配給会社名 0007

解説

今最も美しい輝きを放つジュード・ロー。『ガタカ』、『オスカー・ワイルド』などで一躍イギリスを代表する若手スターとして認められ、今年のアカデミー賞では『リプリー』で見事助演男優賞にノミネートを果たした。彼の妖しくもミステリアスな魅力が存分に引き出されているのが、この『クロコダイルの涙』である。

 美貌の青年医師スティーヴンには秘密があった。自分を愛してくれる女性の血を吸わないと死んでしまうのだ。彼は次々と女性を誘惑しては完全犯罪を重ねていくが、不審な死体遺棄事件を追うヒーリー警部が、スティーヴンの身辺を執拗に探り始める。そんな時、新しい獲物アンが現れた。不思議な魅力を持つ彼女にスティーヴンはいつしか心から惹かれていくが。

原題のThe Wisdom of Crocodilesつまり“鰐の英知(分別)”とは、哲学者フランシス・ベーコン(1561〜1626)の随筆集からの引用で、鰐が獲物を食らう時に罪悪感を拭おうと涙を流してみせるような知恵・分別=自己愛を戒めるもの。自分を愛しすぎるものは往々にして不幸になる。スティーヴンは生き永らえるために自分を愛してくれる女性の血を求め、同時に本当の愛も求めている。だがスティーヴンは理性にのみ生きている感情を知らない人間で、愛も結晶という形でしか認識できない。心寂しい女たちは次々とスティーヴンの虜になっていくが、最期の瞬間に噴出するのは“激怒”や“絶望”、“怨念”や“失望”ばかりだ。彼は真に自分を癒してくれる完璧な愛を求めるが、それはどんな結果をもたらすのだろうか。

本作にはヴァンパイア伝説を始めとする様々な伝承や思想、あるいは神話的なモチーフがちりばめられているが、それらのメタファーは人間の本質を鋭くえぐる。
スティーヴンはモンスターではなく、あくまで人間だが、それゆえに苦しむ。人間らしい感情を取り戻したとき、彼は皮肉にもその感情によって苦しめられるのである。愛する人と自分の命、最後の瞬間にどちらを選ぶべきか?これは愛と生についての究極の物語、永遠の寓話なのである。

主演は、今最もセクシーでアップ・カミングな俳優ジュード・ロウ。クールな気品と危険な香りを同時に放つ存在感は、まさにはまり役である。女たちを魅了するのみならず、ヒーリー警部や街の凶悪なチンピラ、果ては証言台に立つ彼の目撃者までもが、その瞳に見つめられると射すくめられたようにあらがえなくなってしまう。当初40代の中年のイメージだったスティーヴン役は、ジュードを得てその魅力を確実に増した。美しいだけではない、内面に広がる闇の深遠さをも同時に体現できるのは、彼を置いて他にはいないだろう。

対するヒロインのアンには、ハル・ハートリーの一連の作品や『バスキア』ノエリナ・レーヴェンゾーン。感情を知ることのなかったスティーヴンの心を揺り動かしていく存在として、現代女性の強さを演じきっている。スティヴンを執拗に追うヒーリー警部に『秘密と嘘』やケネス・ブラナー監督『ハムレット』の実力派ティモシー・スポールヒーリーとコンビを組む若き刑事ロッシュは、『リプリー』でもジュード・ローと共演している注目株ジャック・ダヴェンポート、スティーヴンの餌食になるマリアに『エンジェル・アット・マイ・テーブル』、『シャロー・グレイブ』のケリー・フォックス。

現代のロンドンを舞台にしてはいるが、実際いつの時代でも、どこな場所でもないような不思議なシチュエーションでストーリーは展開していく。このダーク・ファンタジー的な世界観を具現化したのは、『風の輝く朝に』、『上海1920 あの日みた夢のために』のレオン・ポーチ監督。脚本はこれが処女作となるポール・ホフマン。撮影は『ラブ&デス』のオリヴァー・カーティス。舐めるようなカメラワークでジュードの存在感を際立たせている。衣装は『シンドラーのリスト』などハリウッドでも活躍するアナ・シェパード。プロダクション・デザインは『ヘルレイザー2』のアンディ・ハリス。モダンと古風が見事にマッチしたスティーヴンの部屋など、幻想的な雰囲気を醸成させている。

ストーリー

「獲物をのみ込むとき涙をこぼす。それが鰐の分別である」フランシス・ベーコン自分を愛しすぎるものは、往々にして不幸になる。

美貌の青年医師スティーヴン・グリルシェは、すべてを手に入れている。ハンサムで、聡明で、寛大で、成功した男。彼は難なく女を虜にする。しかし彼にとって、それはただの戯れではない。孤独で命懸けの行為だった。彼は自分を愛してくれる女の血を吸わないと死んでしまう、文字通り、女の愛なしで生きてはいけない男なのだ。完璧な愛だけが彼を癒してくれる。彼は次から次へと女を誘惑しては、完全犯罪を重ねていった。

ある日スティーヴンは、地下鉄のプラットホームで飛び込み自殺を図ろうとした女マリア・ヴォーンを助けた。数日後、街で再び出会った彼女に彼は自分の名刺を差し出した。スティーヴンはマリアの心を巧みに開いていく。スティーヴンから婚約指輪を贈られたマリアは、ベッドで愛し合いながらこの上ない幸せを味わっていた。その時、マリアの首筋を愛撫していたスティーヴンの手に力がこもった。

テレビのニュースが、違法漁船によってマリア・ヴォーンの死体が発見されたことを告げていた。追跡の手が自分にも伸びるだろうと考えたスティーヴンは、捜査の協力者として自ら警察へ近づく。その誠実で協力的な態度、動機も見当たらないことから、ヒーリー警部は彼を黒とは思いかねていた。しかし若き熱血漢ロッシュ刑事の疑念は晴れない。半年前にもスティーヴンの元恋人が交通事故で死んでいるのだ。
スティーヴンの前に、新しい獲物アン・レヴェルズが現れた。知的で情熱的、そして気まぐれなエンジニア。彼女もまた、この謎めいた美青年に惹かれていった。
感情を知らないスティーヴンは、奪った血から生じた結晶に触れることでしか、自分を愛した女たちの愛を感じることしかできない。だがこれまで彼女達が残していったのは“絶望”や“失望”、そして“怨恨”だった。スティーヴンは完璧な愛を求めて、アンに近づく。

ヒーリーとロッシュは、捜査を続けていた。だが、高速料金所の職員からも海岸で不審な車を見たという男からも、決定的な証言は得られない。捜査は行き詰まった。質の悪いチンピラたちに絡まれたところをスティーヴンに助けられたヒーリー警部は、彼の無実を信じるようになる。スティーヴンを犯人とする具体的な証拠はないし、何より彼のような男が殺人を犯すとは思えない。ヒーリー警部は捜査を切り上げた。
スティーヴンの身体は、限界が近づいていた。早くアンの血を摂らなければ、彼の身体は崩壊し、数週間で死に至るだろう。アンがスティーヴンを訪ねてきた。そして、いつものように獲物をベッドに誘い込んだスティーヴンが、最後の決断を下す瞬間が来た。

スタッフ

監督:レオン・ポーチ
脚本:ポール・ホフマン
音楽:ジョン・ラン、オアーランド・ガフ
編集:ロビン・セイルズ
キャスティング:ミシェル・ギッシュ
プロダクション・デザイン:アンディ・ハリス
アート・ディレクション:ベン・スコット
衣装:アナ・シェパード
共同製作総指揮:スコット・ミーク、ドロシー・ヴァーウィン
ナジェル・スタホード=クラーク
製作:デヴィッド・ラッセルズ、キャロライン・チョア

キャスト

スティーヴン・グリシェ:ジュード・ロウ
アン・レヴェルズ:エリナ・レーヴェンゾーン
ヒーリー警部:ティモシー・スプール
マリア・ヴォーン:ケリー・フォックス
ロッシュ刑事:ジャック・ダヴェンポート
マーティン:コリン・サーモン
料金所の職員:リック・ラモント
ナンカロウ氏:ジョセフ・オコナー
カレン:アナスタシア・ヒル
作業員:クリフ・パリシ
司祭:ルパート・フューリィ
事故処理班:スチュアート・バウマン、C・J・ディセンバー
チンピラのリーダー:アシュレイ・アータス
チンピラのメンバー:トム・ウー、ホンピン・タン、アントニー・コットン
リチャード・ミラン、カールトン・ヘドレイ
ニーラン・バーソウド
治療室の少女:ジュリア・デイヴィズ

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