原題:On The Way

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2000年/カラー/1時間12分/日本+韓国+ドイツ/ヴィスタ・サイズ/ドルビ_SR 配給:イメージフォーラム

2002年7月6日よりイメージフォーラムにて公開

公開初日 2002/07/06

配給会社名 0250

公開日メモ 現代美術家の崔在銀監督第1回作品。

解説


この作品は、一人の老人を旅人として、過去の記憶=“「閉じた」境界を産み出し続けた20世紀の人間の歴史”をふりかえり、一方で自然の姿=“「共生」により豊かな生態系をはぐくむ生物たちの生きる姿”を見つめながら、人間を生命体の一つとして個に立ち戻らせ、未来=“知恵とモラルと想像力にあふれた「開かれた」存在が「共生」する新しい時代”をイメージし、その途上=“On The Way”である「今」を見つめるドキュメンタリー・ドラマです。

南北分断後初めて映画撮影が許可された板門店(共同警備区域=JSA)、いまだに死の影が色濃い室内とは対照的に花々が生を謳歌する初夏のアウシュビッツなど、ドイツのドキュメンタリスト、ハンス・ロンバッハのカメラに映し撮られた美しい映像と、心の隅々にまでしみわたる細野晴臣・真壁尚也の音楽。この作品の基本な考え方を端的な言葉で綴る生物学者・中村桂子の詩。そしてその言葉を語る、現代音楽シーンをリードするイギリス人ミュージシャン・作家デビッド・トゥープのナレーション。これらが心地よく溶合い、崔のアートとして、静かにそして力強くフィルムの中で息づいています。
今回初めて監督をつとめる崔在銀(Jae Em Choi)は、76年に来日後草月流で学び、勅使河原宏氏に師事。84年草月ギャラリーで初の個展を開催し、その後も多くの個展やグループ展をはじめ、韓国大田国際万国博覧会「リサイクル・パビリオン」(1992〜1993)、パリュネスコ本部での「巴里大茶会」(1993)、第46回ヴェニス・ビエンナーレ日本代表(1995)など、彫刻やインスタレーションの枠を越えた作品で国際的に活動を続けています。最近作には、さいたま新都心合同庁舎給排気塔アート計画「蓮家」があります。

99年5月7日にアウシュビッツで始まった撮影は、6月7日この映画のクライマックス・南北境界線である板門店(共同警備区域=JSA)での撮影を迎えましたら南北分断後初めて行われた映画の撮影に、韓国ばかりでなく世界のメディアも注目。この様子はCNNやYahooのインターネットニュースでも配信されました。
ほんの10センチ程の高さのコンクリートで区切られた境界線からわずか3mほど韓国側で行われた撮影を、北朝鮮軍の兵士達も、ある者は国連軍兵士の説明に耳を傾け、あるものはビデオカメラで撮影しながら、興味深く見守っていました。
その後撮影は7月8日ベルリン市内でのカットを最後に終了。ここれらの新撮映像とその後集められた膨大な資料映像の中から崔の感性で選び抜かれた映像を編集し、2000年11月末遂にこの作品は完成しました。

ストーリー


この作品は、人の歴史を振り返りながら、自然界すべての普遍的な在り方を見つめた美しい魂の映像詩である。
旅人の老人は、自らの経験によって人間の哀しみと愛を深く理解し、叡知にあふれた人間の象徴として、また20世紀の歴史の証人として、それらを次の世代に伝える者である。
そして、それらを学び、次の世紀を、新しい時代を作る担い手の象徴として少女達が登場する。
また、この映画には、いたるところに様々な自然の姿があふれている。花や木、昆虫や鳥や魚、動物たち、すべての生命体が象徴する力強く美しい「生」は、ここでとりあげる20世紀の出来事に潜む「死」との対比であり、またすべての生物が実践している優れた「共生」の方法が、次の時代を生きる道を指し示してくれるのである。
あらゆる生物が、それぞれが独立した多様な存在でありながら、生物と密接にかかわりあい、共生しているのは、彼らが「開かれた」存在であるがらだ。供生は決して甘い関係ではない。人間も本来は個人や国家が各々のアイデンティティを確立しながらも、相互にコミュニケーションを図り、共生する「開かれた」存在であるはずだったが、実際には20世紀の人間社会は、外界とのコミュニケーションの中で、国家単位のニゴイズムを押し通すような、「閉じた」境界を次々に産み出してきた。

この映画の中の老人による旅はこれら20世紀の人間の歴史をふりかえり、過去をみつめる旅であると同時に、豊かな生態系をはぐくみながら、長い間続いてきた、またこれからも続いて行くであろう生物たちの生きる姿をめぐる旅である。
この旅を通して我々は、人間という生命体の一つとして「個」に立ち戻り、「開かれた境界」という矛盾にみちた言葉こそ生を支えるものであることを実感する。知恵とモラルと想像力にあふれた「開かれた」存在が「共生」する新しい時代=未来をイメージする。
そして、その途上(on the way)である「今」という時を見つめるのだ。

スタッフ

監督・製作・編集:崔在銀
脚本:中村桂子、崔在銀
撮影:ハンス・ロンバッハ
音楽:細野晴臣、真壁尚也
製作:(株)スタジオ崔在銀
エグゼクティブ・プロデューサー:ハンス・ロンバッハ
プロダクション・マネージャー:ユキコ・スモト・シュバーン
製作協力:Seven Years FiIm GmbH、映画On The Way製作実行委員会
協賛:韓国文化庁、資生堂、伊藤忠商事、
   石橋財団、一口サポ一夕ーズ、企業メセナ協議会認定
資料協力:広島平和記念資料館、宮島達男、
     Christo and Jean-Claude、Korean Film Commission、
     アウシュビッツ・ビルケナウ国立博物館、ほか多数。

キャスト

マンフレッド・オットー
ターン・ヤン・ムーン
スー・ヤン・リー
ギャビー・チュン
ヤン・ヒー・パーク
テ・スーン・ジョン
ナレーション:デビッド・トゥープ

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