人はまたやり直せる。 逃げることは、何かを追うこと也。

1999年/日本映画/2時間3分/ビスタサイズ/DTSステレオ/配給:東京テアトル

2002年07月25日よりDVD発売開始 2001年2月21日ビデオ発売&レンタル開始 2000年8月12日よりテアトル新宿、テアトル梅田にて公開

公開初日 2000/08/12

配給会社名 0049

公開日メモ 観客を笑わせ、泣かせ、感動させることにかけては天下一品。日本喜劇界のカリスマ女優、藤山直美の映画初主演作が遂に登場!

解説

 実母の葬儀後に吉村正子(35)=当時、以下同=が手にした赤い毛糸が妹の首に食い込む。
 生まれてから家庭で、社会で傷つき、卑屈で歪んだ生活を送っていた彼女は、長年の憎悪を爆発させ妹を絞殺した。偽名を使い逃亡劇を繰り返す内、皮肉にも人生の楽しさを知ることになった正子。逃亡の果てに一体何を見つけたのだろうか?

主演:藤山直美、監督:阪本順治。
この組み合わせに胸騒ぎ

 観客を笑わせ、泣かせ、感動させることにかけては天下一品。日本喜劇界のカリスマ女優、藤山直美の映画初主演作が遂に登場!メガホンをとるのは阪本順治。『どっいたるねん』『鉄拳』『傷だらけの天使』などピュアで泥臭い男たちを主人公に、アウトローたちの鮮烈な生き様を描き、「男性ドラマの阪本」とも評されてきた彼が、初めて女性を主人公にしたドラマに挑戦。舞台での圧倒的な存在感に観客が息を呑む日本一のコメディエンヌと、アウトロー映画の名匠という異色の組み合わせでありながら、「等身大の血のかよった人間」を表現することにかけては互いに譲らない二人による本作『顔』は、「日本映画がかつてなしえをかった新しい女性映画の傑作が誕生」と早くも内外の注目を集めている。

泣いて笑って逃げて…

 父親に捨てちれた孤独感、妹や周囲に対する劣等感や自己嫌悪に満ちた日々を過ごしてきたヒロイン正子(藤山直美)。妹を殺し、逃亡犯になってしまっ光彼女は生まれて初めて家を飛び出す。警察の追跡に伝え、他人をだまし続ける生活は辛いはずなのになぜか気持ちは弾む。逃亡の中で別の女を演じ、自分とは違う人生を演じることで、今までの生活で欠けていた生きている実感を思いっきり味わってしまったのである。逃亡生活を続けていく中で出会った男たち、女たちもたった一人で生きていく正子に触発され、それぞれの人生に決着をつけていく。
 前向きに逃げる正子は、今までの人生のNEVERを取り戻し一層輝きを見せていく…。

ストーリー

 寒い冬の日、靴も履かずに駅へと急ぐ女、吉村正子。
 幼い時から家に閉じこもり続ける彼女は、クリーニング店を営む母の元で洋服のかけはぎをしながら、ひっそりと暮らしていた。

「いっぺん入院したらええわ。お母ちゃんもそう言うてた」
 実家に立ち寄った妹の一言に、正子は半狂乱になり、後先考えずに家を飛び出し電車に乗り込んだ。あてもなく、終着駅に立ちつくした時、一人の男が何気なく声をかけた。
「靴下でどうしたの?そこ靴屋あるよ!」
 そして、正子は名も知らぬ男、池田に恋をした。

 家に戻った正子は、再びクリーニング店での静かな生活に戻った。
 そして相変わらず家に閉じこもり、ミシンに向かうか、テレビや漫画のメロドラマに熱中する日々を送るのだった。しかし、心の不安定さを隠した奇妙で静かな正子の生活が突然崩れ去った。
 母が急死したのだ。

 通夜の後、悲しみに暮れる妹とその恋人の前で、家族を捨てた父親のことを口にする正子。通夜の席にも出ず、無神経な言動を取る正子に、唖然とし、苛立った妹は姉をののしった。
「わたし、子供のときから、お姉ちゃんのこと恥ずかしかった」
 長年の、姉妹互いの恨みつらみの憎悪が増幅して爆発する……
 姉は妹を殺してしまう。

 正子は、香典袋を手に三十五年間閉じこもってきた家を後にした。
 そんな時、都市を突然大地震が襲った。数多くの死傷者を出した大災害が、庇肉にも殺人犯である正子の逃亡を容易にしてしまう。

 惨劇の中で生き延びていく正子の中に、微かながら、生きる自信と勇気が芽生え始めた。そして夢中で逃亡を続けていく。
 正子は、逃亡の中で、様々な男たちと出会い、時に喜び、時に失望しながら生きていく。家族を捨てた父親への思慕と、父と娘の間に横たわるどうしようもなく深い溝。酔っ払いに強姦された屈辱。死を覚悟した男とのつかの間のいたわり合い。正子の体を強引に客に売った男への怒りとその後悔。そして忘れ得ぬ男、池田との再会…。
 それぞれの出会いと別れを潔く受け止める正子。

 こうして、不器用ながら自分自身で生きている実感と、そこから生まれた僅かな誇りを持って、力強く生き、逃亡を続けていく。

 しかしその一方では、大災害に紛れていた一つの殺人事件が再びクローズアップされ始め、正子に警察の追ってが迫ってきていた…。

スタッフ

監督:阪本順治
脚本:阪本順治、宇野イサム
製作:宮島秀司、石川富康、寺西厚史、中沢敏明、椎井友紀子
音楽:coba
撮影:笠松則通
照明:石田健司
録音:橋本文雄
編集:深野俊英
衣裳:宮本まさ江

キャスト

吉村正子:藤山直美
中上洋行:豊川悦治
狩山健太:國村隼
吉村由香里:牧瀬里穂
喫茶店の女:内田春菊
狩山咲子:早乙女愛
吉村常子:渡辺美佐子
山本俊郎:中村勘九郎
花田英一:岸部一徳
池田彰:佐藤浩市

LINK

□公式サイト
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す