原題:SEUL CONTRE TOUS

おとうさん、私をみつけて・・・・・ 『カルネ』を憶えているだろうか。

■1998年第51回カンヌ国際映画祭批評家週間賞 ■1998年第13回ナムール国際映画祭ゴールデン・ベイヤード最優秀男優賞 ■1998年 アビニョン国際映画祭審査員特別賞 ■1998年ストックホルム映画祭最優秀作品賞、最優秀撮影賞

1998年フランス/レ・シネマ・ドゥ・ラ・ゾーヌ作品/カラー/スコープ/1時間33分/ドルビーSR 日本語版字幕:齋藤敦子 書籍発売:奥田鉄人著「カノン/ダイアローグ・インテグラル版」(仮題)角川書店より7月予定 協力:シネマキャッツ、日活/配給:アスミック・エース

2001年6月22日DVD発売/2001年6月22日ビデオ発売&レンタル開始 2000年09月30日より渋谷シネマライズにて公開

公開初日 2000/09/30

配給会社名 0007

解説

『カルネ』を憶えているだろうか。
馬の肉を売る父親と口を聞かない娘の奇妙な関係を通し、タブーが氾濫する現代パリの裏側を40分に凝縮したビザール・シネマ。
この作品で鮮烈なデビューを飾った監督ギャスパー・ノエが、不感症な全ての観客に贈ったフランス映画だ。
そしてここに、4年という製作期間を経て、父と少女の“誕生”から“その後”を描き、世紀末の闇から明日に向けて、強烈な“愛”の物語『カノン』を完成させた。

 94年に制作は開始。
 しかし、過激な内容ゆえに様々な問題を抱え撮影は難航。さらには自然主義を貫くヴィジュアル・スタイルを完全徹底したため、4年の歳月が過ぎていった。
 「撮影が進むにつれ、よリ緊迫したものになっていった」とギャスパーが語るように、長い時間の中で、テーマはより深められ、リアルな現実がむき出されていった。「この激しさは、フランス映画の中では決して紹介されないフランスの側面。僕が日常的に見る、一般的に否定されている現実、隠されているパリです。
 編集ラッシュを見た友人たちは、『ドーベルマン』のヤン・クーネン監督の「この映画を上映したら殺されるぞ」という一言を皮切りに、誰もが「これは上映禁止になるよ」と忠告した。
 やがてセンセーションを巻き起こすであろうこの作品の噂は、同世代の監督たちの間で広がりを見せた。

 そして完成した本作は、98年カンヌ国際映画祭・批評家週間からの招待を受け、ワールド・プレミアが行われた。
 「上映中に退場者が出たら嬉しいね。残った観客は“強い”と感じるだろうから」と、観客・批評家の両方から攻撃されることを賞悟で乗り込んでいった。しかし、大きな物議は醸したものの、批評家はこぞって絶賛し、「批評家週間大賞」まで獲得。さらに上映終了後、全世界の映画祭からオファーが殺到、ニューヨーク、ロンドン、モントリオール、トロント、エジンバラ、ストックホルム、さらに翌99年にはサンダンス、ロッテルダム、ベルリンヘ、その年のフランスを代表する作品として、すべての主要な国際映画祭に出品を果たした。過激でショッキングな内容に耐えられない多くの観客を動揺させながらも、数々の賞を受賞していった。

 “三面記事”的なビザール感覚の前作『カルネ』から一転、この地球上で孤立したひとりの男の怒りが、愛に昇華されるまでの瞬間を、今までイメージしているフランスを根底から覆すような衝撃をもって描き出していた。噂は本当だった。監督ギャスパー・ノエは、まるで“一面記事”的な問題作を完成させていたのだ。

 各国映画祭を経て、99年2月7日、本国フランスで先行公開され、予想を上回る大ヒットを記録。続いて同年春イギリス、アメリカと立て続けにヒットを飛ばしていった。
 さらに公開時、現在活躍しているフランスの監督たちから大きな応援を受けた。それは“誰も描けなかった問題作を完成させてしまった”という作家としての勇気への賞賛だった。
 またこぞって絶賛を贈った批評家たちが注目したのは、同世代監督たちとは明らかに違ったアプローチで“ヴァイオレンス”や“セクシャリティ”に挑んでいる点だった。
 ギャスパーは盲う「パゾリーニもキューブリックも、非現実的な色彩を持つヴィシュアルを創り出す。にもかかわらず、“人間の身近な出来事”を語ってきたところが僕は好きなんだ」。

 2000年、日本に上陸。今まで誰も描けなかった映像とは、世界とは。

ストーリー

 パリ郊外、馬の肉を売る店に女の子が生まれた。母親は彼女を父親にゆだね失踪する。年月がたって成長していく少女は、いつまでも沈黙の殻を破らなかった。彼女は生まれてから1度も口を聞いたことがないのだ。そんな少女を喜ばすため、父親は彼女を揺り木馬に乗せる。
 少女が13歳になりかける頃、彼女の体は女らしい変化を見せる。
 ある時、浮浪者が少女にいたずらをしようとする。泣きながら店に現れた少女のスカートには血の跡がついていた。彼女は初潮をむかえたのだ。しかし、娘が強姦されたと信じ込んだ父親は怒り狂い、その浮浪者の口に肉切り包丁を突き刺す…。投獄された父親は、療養所に入れられている娘に宛てた手紙を書くのだった。刑期を終えた父親は、店をはじめ全てのものを失っていた。そして彼は、バーのウェイターの仕事につき、店のマダムの愛人となる。満たされない怠惰な日々は続く。やがてマダムは妊娠し、父親は、新しい人生をやり直そうというマダムの申し出を受け入れる。療養所を訪ねた父親は、娘に別れを告げる。娘は一言も口を聞かない。
 翌朝、彼とマダムは車でパリを後にする。

 「CARNE」という単語から連想される「肉・馬・馬の肉・肉体・ふしだらな女…」等のイメージを、様々な映像によって出現させ、タブーが氾濫する現代パリの裏側を凝縮したビザール・シネマ。
 たった40分という短編にもかかわらず、その衝撃性、過激さで人々を驚樗させ、芸術志向の最近のフランス映画の流れに飽き飽きしていた若者たちを挑発し、ナイト・ムーヴィーとしてロングランされた。また同時に、フランスの観客は久々に自分たちの新しい映画の発見に酔いしれた。
 カンヌ国際映画祭を始め数々の賞を受賞。「4時間の『美しき諍い女』か、40分の『カルネ』か」や「絶頂期のゴダールをさらに過激にした作品」など、フランス公開時の批評は、人々の驚喜が見事に反映された。「もう何度も見たわ! 是非日本の若い人たちにも見せるべきよ」と来日時のロマーヌ・ボーラシジェが興奮していたのは記憶に新しい。

スタッフ

監督・脚本・製作・カメラ:ギャスパー・ノエ
製作:ルシール・アザリロヴィック
共同製作:アニエスb.=ラブ・ストリームス・プロダクション
映像:ドミニク・コラン
録音:オリヴィエ・ル・ヴァゴン
特殊効果:ジャン=クリストフ・スバダチーニ
編集:ルシール・アザリロヴィック

キャスト

馬の肉を売る男:フィリップ・ナオン
娘:ブランディーヌ・ルノワール
愛人:フランキー・パン
叔母:マルティーヌ・オドラン

©1998 CINEMA DE LA ZONE

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