原題:ORFEU

情熱のカーニバル、燃え上がる宿命の恋、神はオルフェに嫉妬した。

(初公開:全米ブラジル1999年04月21日公開)

1999年/ブラジル映画/上映時間111分/ドルビーSR 配給:KUZUI/発売:アミューズピクチャーズ

2001年2月23日DVD発売開始 2001年2月23日ビデオレンタル開始 2000年9月9日よりシネマライズにて公開

解説


 1999年4月にブラジルで公開され、空前の大ヒットとなった話題の映画、それが「オルフェ」。古代ギリシャ神話に題材を得たロマンティックで胸を締めつける愛の物語が、現代のリオ・デ・ジャネイロに舞台を移し、3日間にわたるきらびやかなカーニバルの狂騒の中に語られる。
 カーニバルの圧倒的なエネルギーと昂揚する祝祭感。一緒に踊りたくなるような躍動的なサンバのリズム。カエターノ・ヴェローゾによるしっとりとしたバラード…。すべてが融合されたとき、映画全体から狂おしいほどの愛のエモーションがほとばしる。
 今、ラテンの風に乗って「オルフェ」の情熱が日本に上陸する!!

 オルフェはリオのファヴェーラ(ゲットー)、“カリオカの丘”に生まれ育った若き天才ミュージシャン。彼の美しい詩と曲を聴くと、人だけでなく花も動物も魅了され、太陽も昇ってくる。神も嫉妬するような才能の持ち主だった。彼はカーニバルのカリオカ・チームのリーダーとして、今年も優勝を目指して練習に励んでいた。
 ある日オルフェは、カーニバルを数日後に控えたカリオカの丘に叔母を訪ねてやって来た少女ユリディスと出会い、たちまち恋に落ちる。彼はユリディスのために、幼なじみで今は麻薬王として丘を支配しているルシーニョと対決し、家族も友だちもカーニバルも捨ててこの地を出ていく決心をした。しかし、ルシーニョの悪のパワーは無惨にも二人の愛を引き裂こうとする…。

 監督のカルロス・ヂエギスは、60年代に世界で注目されたブラジルのチネマ・ノーボ(ニュー・シネマ)の中心的人物。各国の映画祭での受賞経験の一方で娯楽性も併せ持ち、多くのヒット作を放ってきた。日本でも「バイバイ・ブラジル」(日本未公開・80)が映画祭で紹介されている。
 「オルフェ」は、偉大なボサ・ノヴァの詩人、ヴィニシウス・ヂ・モライスがギリシャ神話にインスパイアされて書き下ろした芝居のための脚本をもとにしている。1956年に初演された舞台はフランスの監督マルセル・カミュによって「黒いオルフェ」として映画化され、カンヌ映画祭のパルムドールを獲得した。しかし、ヂエギス監督は今回の作品が「黒いオルフェ」のリメイクではなく、同じ題材を扱った全く新しい作品だと言い切る。バズ・ラーマンが作ったディカプリオ主演の「ロミオ&ジュリエット」(97)が過去の作品とは一線を画すオリジナルな作品であったように。そして、舞台を10代のころ見て震えるような感動を覚えたという監督は、その記憶を今、改めて我々の前で甦らせてくれる。それは、サンバのリズムのように身体に響きわたってくる燃えるような愛の感情。いつの世も変わらぬ普遍的な人間の心の物語なのだ。
 スタンダード・ナンバー(『カーニヴァルの朝』『フェリシダーヂ(悲しみよさようなら)』など)や心を揺さぶる往年の名曲、激しいサンバのリズムや現代ブラジルの最先端の音楽を取り入れた自由自在にミックスしたサウンドトラックは、ブラジリアン・ポップ・ミュージックの大御所カエターノ・ヴェローゾが担当。撮影はチネマ・ノーボの代表的作品である「アントニオ・ダス・モルテス」(69)のほか、最近ではペドロ・アルモドバルの「ライブ・フレッシュ」(97)「オール・アバウト・マイ・マザー」(99)などを手がけているアフォンソ・ベアト。史上最多色を使った映画と言われるほど、原色が鮮やかに際立つ画面は、映画をよりエネルギッシュに彩っている。また、通常、スタンドからの撮影しか許可されないリオのカーニバルでパレードに入ったカメラが捉えた圧倒的な映像も全編に散りばめられ、華麗な雰囲気を盛り上げる。
 オルフェに扮してカリスマ的な魅力を体現しているトニ・ガヒードは、ブラジルで人気のブラジリアン・レゲエ・バンド、シダーヂ・ネグラのボーカリスト。これが俳優としてのデビュー作になるが、映画の大ヒットによってすでに確立していた国民的スターの座を不動のものにした。
 リッキー・マーティンや「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」(99)などのヒットにより、ラテン文化がかつてないほどの盛り上がりを見せている今、そのラテンブームの炎を最高に燃え上がらせるエネルギーがほとばしる映画だ。

※サントラのタイトルは、「オルフェ」の日本版サントラに準じました。

ストーリー



画面いっぱいに映る白い月を、小さな飛行機が横切っていく。これにかぶさるナレーション——“恋とはいつも危険なもの。思いがけず、夜空にぽっかり月が浮かんで、月明かりの中に歌が聞こえてきたら、男は用心した方がいい。女が近づいている”——。
 リオの一角にあるカリオカの丘。斜面にへばりつくように建つ小さな家に貧しい者たちが住むこのスラム街は、麻薬の売人ルシーニョ(ムリロ・ベニーシオ)が牛耳っている危険な場所だ。
 オルフェ(トニ・ガヒード)は詩人にしてミュージシャン。彼がギターをつま弾き、歌を歌うと人も動物も耳を傾け、太陽も昇ってくる。カーニバルのパレードで2年連続優勝を続けているカリオカ・チームのリーダーである彼は、丘の女たちの憧れの的。今はプレイボーイ誌の表紙を飾るミラ(イザベウ・フィラルディス)とつき合っているが、何か満たされないものを感じている。
 オルフェのギターの音とともに夜が明け、飛行機から一人の少女が降り立った。彼女ユリディス(パトリシア・フランサ)は、奥地のアグレ村から叔母のカルメン(マリア・セイサ)を頼ってカーニバルの準備で活気に満ちたカリオカの丘にやって来た。オルフェはたちまち彼女の虜になった。ユリディスもまたオルフェに強く惹かれたものの、ミラの存在を知って彼の気持ちを素直に受け取れない。

 崖の上で、少女をレイプしたという中年男がルシーニョらのリンチにあって殺された。これを見たユリディスはその残酷さにショックを受ける。彼女から事件のことを聞いたオルフェはルシーニョのもとを訪れ、丘を出て行くよう言い渡す。部下はオルフェを殺すように進言するが、彼と幼なじみのルシーニョの気持ちは複雑だった。
 オルフェの勇敢な態度にユリディスの恋心は一気に高まる。二人はカルメンの家で結ばれた。めくるめく愛の交歓が終わったとき、ユリディスは一緒に丘を出ることを提案する。

 やがてカーニバルのパレードが始まった。ビルの屋上では、ルシーニョの部下がチームの先頭に立って歌い踊るオルフェにライフルの照準を合わせていた。しかし、テレビで彼の姿を見たルシーニョは、間一髪、部下に狙撃の中止を指令する。
 そのころ、ユリディスは崖の上にいた。ちょうどそこへ現れたルシーニョは、彼女への気持ちを抑えきれずにキスをしようとし、逃げ出した彼女を威嚇する。そして、撃った弾が岩に跳ね返って彼女に命中してしまう。

 パレードが終わったとき、オルフェはユリディスのためにすべてを捨てて丘を出ることを決意していた。しかし、夜が明けても彼女は家に戻らない。オルフェは方々探し回った挙げ句、ルシーニョの隠れ家にやって来た。ルシーニョはユリディスが死んだこと、それが事故だったことを告白する。ルシーニョに案内された崖の上で、オルフェは憐憫と許しの意を込めて彼を抱きしめながら、銃を放った。そして、ユリディスに会うべく、険しい崖を降り始める。土砂降りの雨の中、オルフェは愛する人の亡骸を抱きながら挽歌を歌うのだった。

 オルフェは亡骸をかかえ、まるで魂の抜け殻のように詩を口ずさみながら丘に帰ってきた。悲しみのあまり、狂ったかのようにユリディスの名を叫び続けた。それを見たミラは、嫉妬に耐えきれずにカーニバルの槍で彼の身体を刺し貫く。広場に横たわる二つの死体。そのとき、テレビの声がカリオカ・チームの優勝を伝える。やがて、そこにいる人々はみなサンバのリズムをとり始め、これにテレビ画面に写ったオルフェの姿が重なる。彼の横にはユリディスの姿があった。二人の顔は幸せそうな笑顔で輝いていた。

スタッフ

製作:ヘナッタ・ジ・アウメイダ・マガリャンエス/パウラ・ラヴィンニェ
監督:カルロス・ヂエギス
脚本:カルロス・ヂエギス、エルマーノ・ヴィアナ/
   アミルトン・ヴァス・ペレイラ/パウロ・リンス/ジョン・エマヌエル・カルネイロ
原作:ヴィニシウス・ジ・モライス作『オルフェ・ダ・コンセイソン』
音楽:カエターノ・ヴェローゾ
編集:セルジオ・メクレール
撮影監督:アフォンソ・ベアト
衣装:エミリア・ダンカン
美術:クロヴィス・ブエーノ

キャスト

トニー・ガヒード
パトリシア・フランサ
ムリロ・ベニーシオ
ミウトン・ゴンサウヴェス
イザベル・フィラルディス

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