原題:THE OGRE

『ブリキの太鼓』から20年余、さらに壮大なスケールで再び贈る、 美しく、哀しい、そして最も残酷な叙情詩、それが『魔王』である。 夜が更けて風をつき、馬を駆っていくのは誰?

1996年/ドイツ・フランス・イギリス/118分/カラー&モノクロ/ヴィスタサイズ/ 提供:日活 配給:ケイブルホーグ

2002年04月26日よりDVD発売開始 2002年4月26日ビデオ発売 2001年9月8日よりシネ・リーブル池袋にてロードショー公開

公開初日 2001/09/08

公開終了日 2001/11/02

配給会社名 0029

公開日メモ 『ブリキの太鼓』から20年余、さらに壮大なスケールで再び贈る、美しく、哀しい、そして最も残酷な叙情詩、それが『魔王』である。 夜が更けて風をつき、馬を駆っていくのは誰?

解説


 ドイツが生んだ巨匠フォルカー・シュレンドルフ監督が 全世界を震撼させた『ブリキの太鼓』(’79年・カンヌ映画祭グランプリ / アカデミー賞外国語映画賞)から 20年余、さらに壮大なスケールで再び贈る、美しく、哀しい、そして最も残酷な叙情詩、それが『魔王』である。”OGRE”とは人食い鬼を意味し、子供達が読む絵本の中の 悪魔として親しまれている言葉。シュレンドルフ監督は「”OGRE”とは聖と悪を持つ存在であり、つまり誰もが皆持っている心の二面性なのだ」と語っている。『ブリキの太鼓』は醜い大人になることを拒み、自らの成長を止めた少年が主人公であったが、この作品の主人公は子供の心のまま大人になってしまった男。彼が運命に 翻弄されながら戦時下の東プロシアの森を“お伽話の旅人”のようにさ迷い、したたかに生き抜く姿が優しさと不思議なユーモアに包まれパワフルに描かれている。
 原作は日本でも人気の高い作家ミシェル・トゥルニエの代表作「魔王」(みすず 書房より刊行)。主人公アベル役は『マルコヴィッチの穴』そして公開が待たれる最新作『シャドウ・オブ・ヴァンパイア』など、演技派俳優として人気、実力ともに昇華させてきたジョン・マルコヴィッチ。 “この映画はマルコヴィッチという存在そのものが始まりとなっている”とシュレンドルフに言わしめるほどのハマリ役となった。そのほかキャストには『バグダッド ・カフェ』のマリアンネ・ゼーゲルブレヒト、『X−ファイル』『シャイン』など数 々の大作に出演しているアーミン・ミューラー・スタールなどの実力派俳優が名を連 ねている。
 
 製作総指揮はクロード・ベリ(『愛人/ラマン』『王妃マルゴ』)、ジェレミー・トーマス(『御法度『BROTHER』)、リュウ・ライウィン(『シンドラーのリスト』) 。脚本はシュレンドルフ監督と、『欲望のあいまいな対象』 『ブリキの太鼓』などのジャン=クロード・カリエールの共同であるが、その進行には原作者のミシェル・トゥルニエも加わり、3人がアイデアを持ち寄り、何度も話 し合いながらイメージのすべてを確実なものにしていった。

 当初、いちばん困難とされていたのは、ミシェル・トゥルニエの幻想的で美しい世界を映像化することであった。そこで、この物語には欠かせぬ舞台、ドイツ兵に縁のあるマリエンバートの大自然をバックにロケーションは決定したのだ。そこには今でも古城が残されているが 未だに国家機密のため、なかなか使用許可が下りず、ついには中世の美しい情景を完全なまでに再現し、『シラノ・ド・ベルジュラック』『プロヴァンスの恋』などを手掛け、またスカラ座を拠点として活躍するオペラ舞台の売れっ子であるイジオ・フリゲリオが限られた城の空間を利用し、実物よりさらに重厚なセットを作り上げた。

その美しい幻想的な映像にマイケル・ナイマンの美しくも哀しい旋律が響きわたる。こうしてヨーロッパの最強スタッフ&キャストにより、ドイツ=フランス=イギリスの 共同製作のもと3年の歳月をかけて、大自然を背景にした見事なまでの壮大な世界が 誕生したのだ。

ストーリー

 1939年、パリ郊外。幼い頃から教師やガキ大将の言いなりになってしまう内向的なアベルは、巨漢の親友ネスターにいつも守られていた。しかし、ふとしたいたずらから、彼らの寄宿学校は火事になり、ネスターは死んでしまう。アベルの手元には、彼がたびたび読んでくれた一冊の絵本のみが残されたのだった。

 アベルは成長して自動車修理工となるが、人付き合いの苦手な彼にとって心のよりどころは近所の子供達と戯れ写真を撮ることであった。そんな彼の前に天使のような美少女マルティネが現れる。二人のあいだにほのかな友情が生まれたかに見えたが、彼女の理不尽な嘘によりアベルは強姦罪で摘発されてしまう。
 ところが、おりしも戦時中の為、アベルは刑務所ではなく前線に送られることになる。そして、すぐにドイツ軍の捕虜となるが、目立たない存在ゆえに捕虜でありながら、アベルはこっそりと森へ抜け出しては山小屋を拠点として自分の世界に浸っていた。
 そんなある日、フォレスター林務官が山小屋にやって来て、アベルと出会う。フォレスター林務官は、アベルの従順で純粋な性格を気に入り、車の整備員としてゲーリング 元帥の狩猟館に連れて行く。
 
 森の中にそびえる御伽話の巨人の城。ゲーリングの館での生活は、アベルにとって、すべてが刺激的なものとなった。しかし戦況の悪化にともない館は閉鎖され、ゲーリングはベルリンへ呼び戻され、フォレスター官長はスターリングラードへ向かう。そしてアベルは自ら志願し、いつも遠くから見ていたカルテンボーン城・ドイ軍士官学校(Napola)へ雑用係として任命される。
 希望に溢れ精気に満ちた少年達との生活は夢のように過ぎて行く。ある時アベルが村の少年達を城に連れて来たことから、上官は「お前は素朴でいい、適任だ」と、彼に少年のスカウトを命ずる。馬にまたがり、3匹のドーベルマンを従えて、田舎の小さな村々に未来のドイツ兵を捜し求めるアベル。彼はいつしか”鬼”の名で知られるようになった。しかし、彼にとって自分がおこなっていることは、子供達を救うことであり、その使命を疑う余地など微塵もない。
 だが連合軍の進攻により、ドイツ軍の敗色が次第に濃厚になったとき、彼は初めて己の意志で立ち上がり子供達を導こうとする。ところが彼の切実な願いは踏みにじられ、少年達は無惨な運命に巻き込まれていく。
 

 そして、ついに連合軍は士官学校にまで迫ってきた。爆音が響く森の中、そこには少年を背に担ぎ、真実に向かって突き進むアベルの後ろ姿があった。

スタッフ

監督:フォルカー・シュレンドルフ
原作:ミシェル・トゥルニエ
音楽:マイケル・ナイマン
脚本:ジャン=クロード・カリエール
製作総指揮:ジェレミー・トーマス、クロード・ベリ

キャスト

ジョン・マルコヴィッチ

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