オトナは、忘れてしまっている。

2001年/16mm/カラー/80分 製作:マザーランド   『こどもの時間』映画上映委員会

2001年12月22日よりBOX東中野にて、冬休みアンコールモーニングショー決定!! 2001年7月14日よりBOX東中野にて、夏休みモーニングロードショー決定!!

公開初日 2001/07/14

公開終了日 2001/11/02

配給会社名 0185

公開日メモ 埼玉県桶川市にある、いなほ保育園の子どもたち5年間のドキュメンタリー。 火と水と動物とともに育つ0歳から6歳の子どもたちの力強く生きる意欲と輝きの記録。

解説


『こどもの時間』に登場するこどもたちは、埼玉県桶川市にある、いなほ保育園に通っています。
こどもたちはO歳から6歳の友だちおよそ100人と、おとなと、山羊や馬と、火や水とともに生きています。その姿を5年あまり撮影して、この作品ができました。
いなほ保育園が誕生したのは1981年。最初は小さな園庭からの出発でした。その後、こどもが存分に駆けまわれる約4000坪の土地を借り、園舎を築き、今日にいたります。

言葉では多くを語らない、幼い子供たち。
その心の動きや自分の意志で何かしているときの自然な姿を、
とっくり見て欲しいから、この映画をつくりました。————演出/野中真理子

ストーリー


《プロローグ》

1.〈いなほ保育園卒園式〉
この記録映画のとらえた子どもは、就学前の0歳から6歳である。
ファーストシーンは、数日後に小学校に入学する6歳の子どもの晴れ舞台、巣立ちの時だ。卒園証書を受け取る誇らしげな姿の中に、一人一人が精一杯生きた6年間がある。

2.〈いなほ保育園の冬〉
埼玉県桶川市の田園地帯に、4000坪の土地を借りて建つ、いなほ保育園。この空間で子どもたちおよそ100人の物語が紡がれる。

《第一章 冬〜火の季節》

3.〈肉をめぐるケンカ、手掴みでサンマを食べる〜1歳と2歳の昼ごはん〉
幼い子どもにとって『食べる』ことは即ち『生きる』こと。ごはんは楽しい時間、そして真剣な時間。冬の庭で肉じゃがの小さな肉をめぐってケンカが起きる。
焚き火で焼いたサンマを、分け合いながら手掴みで一生懸命食べる。

4.〈冬の朝キンタさんが焚き火を作る、和子さんがご飯を炊く〉
冬は毎朝、園長先生の夫であるキンタさんが、高さ1m以上の大きな焚き火を作って子どもを迎える。そして園長先生の和子さんはお釜でご飯を炊いて子どもを迎える。
冬の子どもは焚き火の炎に育てられる。

5.〈焚き火を囲んで子どもの一日が始まる〉
半纏を着た子どもが次々焚き火のまわりにやって来る。お釜の湯気をみつめて舌なめずりする子。湯気を捕まえようとする子。体と心が温まり、目覚めていく。

6.〈兄弟姉妹のように暮らす〉
子どもはおよそ100人の友だち全員と遊び、全員の名前を知っている。年齢ごとに組分けはあるが、組でまとまって散歩に出かけたりする以外の時間は、年上でも年下でも好きな子と遊んでいる。女の子は赤ちゃんの面倒をみるのが大好きだ。

7.〈赤ちゃんの散歩、動物棟へ〉
赤ちゃんたちも、雨でないかぎり外の光を浴び、冷たい空気を吸って暮らす。今朝も乳母車に乗って冬の木々を眺め、馬や山羊の暮らす園内の放牧場にでかける。

8.〈動物と話す子ども〉
子どもの世界で動物は『飼われているもの』ではなく『一緒に暮らしている友だち』。毎日相手にメッセージを送り、受け取り、心を通わせる。

9.〈動物のごはんを作る子ども〉
毎朝子どもたちが動物の世話をする。年下の子は年上の子の真似をして、同じようにやる。重たいバケツを運んだり、ワラと干し草の配分を考えるのはやりがいのある面白い遊びである。
自分の作ったごはんを動物が美味しそうに食べるのも嬉しい。

10.〈自分の手で食べる赤ちゃん〜0歳の昼ごはん〉
生後数カ月の赤ちゃんも、食べさせてもらうのでなく自分で食べる。顔も手も服も食べ物だらけにしながら、手と口で触感を楽しみながら、旺盛な食欲でひたむきに食べていく。

11.〈焚き火で『お焦げ』作り〉
6歳の子どもが焚き火でお焦げを作って食べるのは、冬の風物詩の一つ。大人の手を借りずに竈に薪をくべ、火加減水加減をみながら焚き火のまわりで長い時間を過ごす。
0歳の頃から知っている火。火傷する子はいない。

12.〈氷点下の雪降る庭、焚き火を囲んで食べる〜3歳と4歳の昼ごはん〉
雪が降っていても、焚き火のそばが部屋の中よりも暖かいという子どもたち。冷たい雪を頂き、熱い味噌汁をすする顔に幸福感が広がる。味噌おでんの甘い匂い。

《第ニ章 春〜土の季節》

13.〈ひな祭りの台所〜昼ごはんを運ぶ子ども〉
戸外には春の足音が聞こえる。台所では春のご馳走を作る音が聞こえる。5歳の子どもがごはんを運ぶのを待ちわびている。子どもたちは、自分で食事の用意をしたい。出来るだけ重い鍋や皿を運ぶことが誇らしい。特別メニューを縞麗に盛りつけ心が弾む。

14.〈ひな祭り〉
6歳の子どもたちが『春駒』の衣装で、若い馬のように疾走してくる。待ちかねた春の訪れを喜び、0歳の子どもまで順に踊り歌う。どの子の体にも、芽吹く直前の梢のようなエネルギーが満ち、輝いている。

15.〈畑に種を蒔く〉
子どもは土にも育てられる。借りている広い畑を耕し、春の土の匂いをかぎながら大事な作物の種を蒔く。小さな種がどれほどうまい野菜に育つか、子どもは体で知っている。

《第三章 夏〜水の季節》

16.〈水の季節が始まる5月〉
新緑が地中の水を吸い上げきらきらする頃、子どもは水の精霊と戯れ始める。バケツに組んだ水を、裸の体いっぱいにかぶり気勢をあげる子。蛇口からほとばしる水が手や顔の上で千変万化する様に夢中になる1歳の子。
子どもたちは、渇きを癒す以上の水の心地よさを味わっている。

17.〈小川で遊ぶ〉
芦野原のせせらぎも子どもを招く。小さな流れだが、裸足で踏みしめる川底の泥や小石や草の感触にも、橋に見立てた木切れを渡ることにも心は躍る。

18.〈お昼寝〉
カー杯遊んで、食べて、毎日安らかな眠りに落ちる。お昼寝は、夢の中で遊ぶ時間。友だちの寝息と木漏れ日に包まれて怖い夢は見ない。今日は何をして遊ぼうか…。

19.〈ロバの子が生まれる〉
今日の夢には、ロバの赤ちゃんが出てきた。今朝生まれたばかりの、可愛い友だち。

20.〈お父さんたちのプール作り〉
梅雨の晴れ間、父親が汗を流してプールを作る。大小2つ。大きい方は縦15mの立派なものだ。プロの大工さんはいないから、毎年キンタさんと試行錯誤して作る。
子どもの喜びと安全を願いながら、父も育つ。

21.〈プール〜水の子ども〉
プールのある夏の3ヵ月間、子どもは魚のように水鳥のように水中で時を過ごす。飛び込んだり潜ったり、公営プールでは禁止の飛びこみも、ここでは自由自在。
泳ぎは誰に教わるでもなく、年上の子の見よう見まねで上手になる。水を感じ水に鍛えられ、毎日自分と水との物語を織りなしていく。
サンマを手掴みで食べていたあの子どもが成長し、冒険に出る。

《第四章 集中の時》

22.〈夏の雨〉
土や木々を打つ雨の音、1歳の女の子が傘もささずに立っている。髪と服から滴をしたたらせ、凛々しい面差しで何事かを感じている。

23.〈畑でトマトとスイカを満喫する〜1歳と2歳の散歩〉
赤ちゃん組の子どもが成長して、よちよち歩きで畑へ散歩に行く。水たまりを渡り、裸足で草をかき分け泣きながらたどり着くと、キンタさんが赤いトマト、大きなスイカをもいでくれる。黙々と夢中でかぶりつく時間、空は青く、夏の実りは甘くうまい。

24.〈園庭を疾駆する子馬〉
暴れん坊の雄馬タローに初めての子が生まれた。子馬は園庭に放たれ疾駆する。子どもたちにとっても初めての子馬。駆ける姿に感嘆の声をあげる。

25.〈板切れをめぐるケンカ〉
ケンカの起承転結には、子どもの優しさが凝縮されている。5歳の男の子に邪気はなく、自分の気持ちを伝えきれないもどかさが、蹴ったり叩いたりの激しい訴えになる。思いを吐きだしたあとは、ひたすら仲直りがしたくなる。仲直りすると、怒りは跡形もなく雲散する。

26.〈和子さんの紙芝居〉
絵本や紙芝居を読んでもらうとき、子どもの心は目を通して物語りに吸い込まれている。刺激的な音響効果も飛び散る光もないのに、驚くほどお話の世界に入り込む。言霊に感応しているのだろうか。大人には失われてしまった時間が流れる。

27.〈カブト虫採り〉
早朝の森にいるのは一人の少年とカブト虫、そして薮蚊。真剣な眼差しで雄カブトを探す少年の静かな時間。薮蚊と格闘しても見つけたい、一途な思いがほとばしる。
象徴的な、子どもの時間。

28.〈夏の終わりの夏祭り〉
提灯や灯篭のぼんやりと暖かい光や、笛や太鼓の音。そして今日ばかりは夜まで外で遊べることが、どれほど子どもの心を躍らせるものか。
畑から大きな打ち上げ花火が上がり、夜更けても興奮さめやらぬ。

《第五章 冬再び〜成長と開花》

29.〈いなほ保育園冬の朝〉
いくつかの夏が過ぎ、再び冬。冷え切った木造の園舎が朝日を浴びて目覚めていく。キンタさんがやってきて焚き火を作り始めると、子どもがやってくる。変わらぬ冬の朝。

30.〈冬野原を駆け小川の氷を割る〉
夏の畑へよちよち歩きで出かけスイカを頬張っていた子どもが4歳になり、冬野原を駆け抜ける。
冬の川の楽しみは氷割り。小枝を手に川のあちこちで単純な遊びに熱中する。

31.〈落とし穴作り〉
4歳のいたずら坊主たちが園庭の山を掘っている。鍬や木切れを使って大きな穴を掘り、蓋をして枯れ草や土で隠していく。やがて予期せぬ出来事が続いて発生、大笑い。知恵を出し合い、失敗して笑う友だちがいる楽しさを体で知っていく。

32.〈赤鬼現る〉
今日は節分。恐ろしげな赤鬼が現れて次々子どもをさらおうとする。逃げまどう子、泣き叫ぶ子、勇敢に豆を投げつける子。身も心も縮み上る恐ろしい時間。

33.〈6歳になったナオヤの竹馬〉
サンマを食べていた2歳の頃からその成長を見つめていた少年が6歳になり、卒園の日が近い。今日は山に材木の橋をかけ、その上を竹馬で渡ることに挑戦している。転んでは立ち上がりまた渡る。そして成功し、少年はまた一つ、頑張った分の喜びを知る。

34.〈糸と針で縫う子ども〜巣立つ日の支度〉
6歳の子どもが限りない集中カで針を運ぶ。巣立つ日に着る衣装に丹念な刺繍をほどこし縫い上げる。自分の子どもの時間を生ききって、6歳の花を咲かせる。

《エピローグ》

135.〈プールで水しぶきをあげる子どもたち〉
ふたたび夏が巡り来る。歳月は移れども、変わらぬ子どもたちの弾んだ声が響く。
プールの青い水面、木々や園舎、そして広い畑や夏空。

36.〈エンディング〉
スチールカメラで撮影された子どもたちの写真が映し出され、静かな子どもの時間が流れていく。

スタッフ

語り:イッセー尾形
演出・編集:野中真理子
撮影:夏海光造
音響:米山靖
制作:寺中桂子
協力:いなほ保育園のみなさん
製作協力:テレビ東京
製作:マザーランド『こどもの時間』映画上映委員会

キャスト

いなほ保育園のみなさん

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