原題:The Tailor of Panama

手玉に取るか、取られるか。二人の男が仕立てた極上の罠。 世界の勢力図を一変される、白熱の諜報戦。 今、パナマが熱く燃え上がる。

2001年3月30日全米公開

2001年/アメリカ・アイルランド/109分/カラー/シネマスコープ・サイズ/SDDS・SRD・SR/ 字幕翻訳:松浦美奈/原作「パナマの仕立屋」集英社刊 配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

2007年11月28日よりDVDリリース 2004年09月08日よりDVD発売開始 2001年11月9日DVD発売&レンタル開始 2001年11月9日ビデオ発売&レンタル開始 2001年6月30日より、日比谷みゆき座ほか全国東宝洋画系にて

公開初日 2001/06/30

配給会社名 0042

公開日メモ もしも、パナマ政府が運河の他国への売却を企てたら?その政府に反旗を翻すレジスタンスが暴動を起したら? これは、そんな現実味を帯びた危機的状況下で、一人の仕立て屋の"情報"から巻き起こる国際的"事件"を、知的スリル満点に描いたニュータイプのスパイ・ムービーだ。

解説



太平洋と大西洋を結ぶ海上交通の拠点、パナマ運河。
約100年にわたってアメリカの手中にあった運河の支配権は、1999年12月31日、ついにパナマへ返還された。
だが、老朽化した運河の運営には、現在も様々な問題を抱えている。
もしも、パナマ政府が運河の他国への売却を企てたら?その政府に反旗を翻すレジスタンスが暴動を起したら?
これは、そんな現実味を帯びた危機的状況下で、一人の仕立て屋の”情報”から巻き起こる国際的”事件”を、知的スリル満点に描いたニュータイプのスパイ・ムービーだ。

陰謀の火付け役になるのは、ピアース・ブロスナン演じる英国諜報員のアンディ・オズナード。ジェームズ・ボンドばりのプレイボーイ・ライフを実践した結果、局内の反感を買ってパナマへ飛ばされた彼は、現地で仕立て屋を営むハリー・ペンデルに接近。パナマの要人たちと直に接する機会の多いハリーから、極秘情報を引き出そうとする。ハリーがもたらすパナマ運河にまつわる国家的陰謀が見え隠れする情報を元手にアンディが一儲けしょうとたくらんだことから、事態は米軍が出動する、一触即発の一大事へと発展していく。
虚構と現実が巧みに練り合わさった物語の展開は、スリルと興奮とブラックなユーモアに満ちたノリ。アンディに求められるまま苦しまぎれに嘘の上塗りを重ねるハリー。自分たちの存在価値を誇示したいがために、アンディの流したニセ情報に飛びつく英米の国家機構。そんな彼らを手玉に取ろうと、さらなる策略をめぐらせるアンディ。ハリーの弱さ、国家機構の愚鈍さ、アンディの狡狙さが相乗効果をあげる形で、巨大な陰謀が一着のスーツのごとく繊密に仕立てあげられていく様は、見る者をエキサイトさせずにはおかない。
その陰謀の中核にあって、シナリオ全体を操るアンディは、くモラルをなくしたボンド>とも言うべきキャラクターだ。それを、今回のブロスナンは実にチャーミングに快演。エレガントなアンチ・ヒーローの魅力をたっぷりと楽しませてくれる。
対するハリーに扮するのは、『シャイン』でオスカーを受賞し、近作の『クイルズ』でもオスカー候補にあがった当代きっての演技派ジェフリー・ラッシュ。偽りの人生を送る男の悲哀と、小市民的なイノセンスを滲ませた彼の熱演は、ドラマの深いコクの決め手。とりわけ、いかがわしいホテルやゲイのディスコを舞台に、彼とブロスナンがコン・ゲームさながらの駆け引きを繰り広げる場面は、両者の演技が冴え渡る作品の大きな見どころだ。
原作は、英国が生んだスパイ小説の巨匠ジョン・ル・カレが1996年に発表し、「ポスト冷戦スパイ小説の最高傑作」と絶賛されたベストセラー小説「パナマの仕立屋」(集英社刊)。「寒い国から帰ってきたスパイ」「ロシア・ハウス」「リトル・ドラマー・ガール」など、過去の映画化作も多いル・カレだが、今回は初めて自ら脚本を執筆。原作以上に緊迫したクライマックスを用意してドラマをダイナミックに盛り上げつつ、スパイ行為からもたらされる官能、官僚主義に対する風刺、偽りの人生を送る者が果たす贖罪といったおなじみのテーマをプロットに織り込み、ファンの期待を120%満足させてくれる。
監督は、『脱出』『戦場の小さな天使たち』でアカデミー賞候補になり、前作『ジェネラル/天国は血の匂い』でカンヌ映画祭の監督賞を受賞したジョン・ブアマン。『エメラルド・フォレスト』『ラングーンを越えて』など、エキゾチックなシチュエーションを背景にした社会派テーマの作品で定評のある彼は、今回もその持ち味を存分に発揮。加えて、これまでにないシャレっ気たっぷりのストーリー・テラーぶりをうかがわせ、新境地を開拓している。

ストーリー



アンデイ・オズナードは、MI-6に所属する英国のスパイ。女とギャンブルで身を持ち崩した彼は、上司のラッタスモアに厄介払いされる格好でパナマへ飛ばされる。与えられた任務は、1999年12月31日をもってアメリカから運河の所有権を返還されたこの国の政情を探ること。さっそくアンディは、情報源になりそうなパナマ在住の英国人をチェック。コンピューターのリストから、ハリー・ペンデルを選び出した。ハリーは、〈ペンデル&ブレスウェイト〉というオーダーメイドの紳士服店を営んでいる腕のいい仕立て屋だった。妻は、パナマ運河委員会に勤めるアメリカ人のルイーザ。ふたりの子供にも恵まれた夫妻の暮らしは幸せで満たされていたが、実はハリーには重大な秘密があった。自らの経歴の詐称。銀行への多額の借金。これらのことを、彼はルイーザに打ち明けられないでいた。
そんなハリーにスパイエ作を務めさせようと目を付けたアンディ。客を装って〈ペンデル&ブレスウェイト〉にやって来た彼は、弱みを握っていることをちらつかせながら、ハリーを自分のゲームに誘い込む。秘密の発覚を恐れると同時に金も必要としていたハリーは、報酬と引き換えに情報を流すことを承諾するしかなかった。
実際、ハリーはスパイには最適の男だった。大統領をはじめ、地元の有力者全員を顧客に持つ彼は、トップ・シークレットを耳にすることもしぱしばあったからだ。その晩、ハリーの案内で出かけた会員制のクラブで、名士たちのスキャンダルをハリーが囁くのを聞いたアンディは、自分の選択眼に狂いがなかったことを確信する。だが、そんな彼も見落としていたことがあった。それは、ハリーが夢想家の一面を持っていたことだ。
ある日、スーツの試着で大統領に謁見したハリーは、アンディが待つラブホテルに出かけていく。アンディから情報をせっつかれたハリーは、思わず官邸で聞きかじった会話をヒントに、「運河の利権をめぐって各国の争奪戦が起きている」と話してしまう。それを聞いたアンディは、さっそく英国大使館に報告。大使のモルトビーや、アンディと情事を楽しむ仲になった大使館員のフランチェスカは、信愚性に疑いを抱くが、パナマ政府が運河を売却するかもしれないという情報は、彼らにとっても聞き捨てならないものだった。
ハリーから、さらに詳細な情報を引き出そうとしたアンディは、ルイーザが持ち帰った運河委員会の書類を盗み撮りするように命じる。もはや後に引けなくなったハリーは、1枚千
ドルの値がついたその仕事を引き受けた。自分に隠れて何かをやっているらしい夫の様子に不審を抱くルイーザ。ハリーが単なる仕事の相手だと言い張るアンディを、娘の誕生日のピクニックに招待するよう頼んだ。
ピクニッックの日。ルイーザは、アンディにハリーとの関係を問い質す。「ハリーはゴシップを流しているだけだ」と嘘吹くアンディは、プレイボーイの本領を発揮してルイーザを誘惑。だが、試みは失敗に終わる。そのウップンを晴らそうとするかのように、フランチェスカをベッドで喜ばせるアンディ。さらなるスパイ・ゲームの進展を願う彼は、運河争奪戦の話に、ハリーが作り上げたもうひとつの話を結び付け、アメリカ政府から金をかすめとる作戦を思いつく。
そのもうひとつの話とは、ノリエガ将軍時代、反体制運動に参加していたハリーの友人ミッキーと、同じ運動で国防軍の拷問にあったハリーの秘書マルタが、現在も〈サイレント・オポジション〉(静かなる抵抗)という愛国者の地下運動を組織しているというもの。これに目をつけたアンディは、活動資金を提供するから〈サイレント・オポジション〉を煽動しろと、ハリーに要求。ハリーの口から出た金額に自分の取り分を上乗せして〈サイレント・オポジション〉が行動を起こそうとしている旨を上司のラックスモアに報告した。パナマへ飛んで来たラックスモアは、返す刀でアメリカへ飛び、国防総省で状況説明を行う。かくして、事態は英米両国を巻き込み、パナマ攻撃に米軍が出動するという大事へと発展していった!

スタッフ

製作・監督:ジョン・ブアマン
製作総指揮:ジョン・ル・カレ
共同プロデューサー:キーバン・バーカー
脚色:アンドリュー・デイビスandジョン・ル・カレandジョン・ブアマン

原作:ジョン・ル・カレ
撮影:フィリップ・ルスロA.F.C
美術:デレク・ウォラス
編集:ロン・デイビス
音楽:ショーン・デイビー
衣装:メーブ・パターソン

キャスト

オズナード:ピアース・ブロスナン
ハリー:ジェフリー・ラッシュ
ルイーザ:ジェイミー・リー・カーティス
マルタ:レオノラ・バレラ
ミッキー・アブラクサス:ブレンダン・グリーソン
ベニー叔父さん:ハロルド・ピンター
フランチェスカ:キャサリン・マコーマック
マーク:ダニエル・ラドクリフ
サラ:ローラ・ブアマン
ラックスモア:デビッド・ヘイマン
モルトビー:ジョン・フォーチュン

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