ハピネス
原題:HAPPINESS
“ハピネス”を追いかける人たちのおはなし
1998年カンヌ映画祭批評家賞受賞
1998年/アメリカ/134分/カラー/アメリカンヴィスタ/ドルビー/字幕翻訳:石田泰子 配給・宣伝:シネカノン
2001年2月23日DVD発売/2001年2月23日ビデオ発売&レンタル開始 2000年7月渋谷シネ・アミューズにてロードショー!
公開初日 2000/07
配給会社名 0034
解説
《『ハピネス』が年間ベスト100の第4位にランクイン!》
トッド・ソロンズの最新作『ハピネス』がここまで人気を博すことを誰が想像しただろうか。ジョン・ウォーターズ監督は「この10年間で最高の1本」と惜レみない賛辞を贈り、エドワード・ノートン、クリスティーナ・リッチも熱狂、その年のファイバリット・フィルムに選出。98年カンヌ映画祭では批評家賞をかっさらい、米プレミア誌のCRlTlCS’CHOlCE BEST 1OO‘98 では『トゥルーマン・ショー』『メリーに首ったけ』『バグス・ライフ』『シン・レッド・ライン』などを抑え堂々の第4位。「なぜここまで心を揺さぶり、ショックを与え、それでも惹きっけるのか!?」(タイムアウト誌)と賞される傑作とはいったい……?
前作『ウェルカム・ドール・ハウス』で96年サンダンス映画祭グランプリを受賞したソロンズ監督は、NY大学在学中から高い評価を受け、米インディペンデント・フィルム界に影響を与えてきた存在。「問題描写」ゆえに一旦は配給契約破棄の憂き目に遭うが、ただちに別の配給元によって公開、たちまち各地から大反響、大絶賛を巻き起こした。
クセのある監督とクセになりそうなキャストが織りなす『ハピネス』。マイケル・スタイプ(R.E.M.)率いる“ハピネス・バンド”が歌う主題歌“ハピネス”が流れるラストにたどりついたとき、きっとジョン・ウォーターズやエドワード・ノートンやクリスティーナ・リッチと同じ気持ちを味わうだろう。
「すごい映画を観てしまった」と。
ストーリー
ある3つ星半のレストランにカップルが横に並んで座っている。どうやら女が男に別れ話を切り出しているようだ。女の名前はジェイ(ジェーン・アダムス)。
男の名前はアンディ(ジョン・ロビッツ)——別れ話を切り出されるのも頷ける、見るからにうだつのあがらなそうな男。ジョイはアンディにプレゼントを贈られ“いいお別れ”ができそうに思ったようだが、アンディは突然、静かにキレてしまった。
「僕はクソ男じゃない、クソなのは君だ」
そのころ、一人の太った男が精神科医に自分の妄想を語っている。男の名前はアレン(フィリップ・シーモア・ホフマン)。同じアパートの隣に住む美女を縛りたい、でも本当は気持ちを伝えて両思いになりたいなどと言っている。そんなどうしようもない話を神妙な面持ちで聞いているのは精神科医のビル(ディラン・ベイカー)だが、実はビルの頭の中にはこれからの買い物の予定やら歯医者の予約なんてことしかない。
「今度会ったら、迷わずに僕の気持ちを伝えるんだ。君は魅力的だって」
クルマから美しい女が降り立ち自分のアパートへ帰ってきた。彼女の名前はヘレン(ララ・フリン・ボイル)。エレベーターで一緒になったのは、隣人の太った男——アレンだ。勇気を持って会話の糸口を見つけようとするアレンだが、今回も失敗に終ってしまった。ヘレンはロクな挨拶も交わさずに部屋へとはいってしまった。肩を落として自分の部屋へ戻ったアレンは電話帳を片手にイタズラ電話をかけ、卑猥な言葉を飛ばす。
「ちくしょう、押し倒すぞ!」
アンディに思わぬしいぺ返しをくらったジョイは、姉のトリッシュ(シンシア・スティーブンソン)の家を訪ねるがショックが抜けきれず、些細なことがきっかけで思わず泣き出してしまう。男運もなく、作曲家志望なのに芽が出ないジョイに比べ、トリッシュは幸せそうだ。ジョイを哀れに思ったトリッシュは、なんとか彼女を励まそうとする。
「あなたは不幸な人生を送ると思ってたけど、よかった、まだ希望があるのね」
さきほどアレンの妄想を聞いたビルが公園でライフルを乱射している……というのはビルの妄想。彼はセラピストでありながら自らもセラピーに通っている。その夢を見た後はすっとする、家庭は幸せだがと語るビルは帰宅途中、少年ポルノ雑誌を買いクルマの後部座席でズボンのジッパーを下げる。明るく帰宅するビルを迎えるのは、愛妻トリッシュと息子のビリー(ルーファス・リード)。深夜、元気のなかったビリーがビルのベッドにやってくる。「イク」ことがよくわからないと言うビリーに、大丈夫と励ますビル。
「パパがやってみせようか?」
ところ変わってフロリダの高級マンション、老夫婦が何やら冷めた雰囲気である。
夫の名前はレニー(ベン・ギャザラ)、妻はモナ(ルイーズ・ラッセ)。そこに彼らの娘、トリッシュからの電話が鳴る。離婚することになると告げるモナ、驚いてトリッシュは父と話すがレニーは怒鳴って取り合わない。しかし電話を切った後、レニーは一人になりたいのだと、モナに向かって別居を申し出る。
「今よりもっと独りになりたいのね」
ヘレンが電話で仕事が忙しいから今日は行けないわと言っている。電話の相手はジョイ。がっかりして電話を切ったジョイだったが、そこにすぐにまた電話がかかってくる。電話の主は男…、ということはトリッシュが紹介してくれると言ったダミアン?ジョイは緊張しながらも明るく自己紹介する。でもその電話の主の質問がだんだん暴力的になり、下着はどんなものだと聞かれたとき、ジョイはその電話が何であるかを把握した。そのとき、アレンはひとり部屋の中で受話器を握り締めていた。
「今、何を着てるんだ!?」
すっきりした(?)アレンの部屋をノックする音がする。ドアを開けるとまた別の隣人クリスティーナ(カムリン・マンハイム)が立っている。アレンに負けず太った女性。アパートの夜警ペドロ(ホセ・ラベロ)が殺されたと言う。葬式用カンパを集めているというクリスティーナは、何気なくアレンをデートに誘うがにべもなく断られてしまう。そしてペドロの話をする彼女は、どこか意味ありげだ。
「しかもどうやら、アレが消えているらしいの」
ジョイが自作の“ハピネス”という歌を歌っている。ジョイの人生や人柄そのままな、ポジティブなのにちょっと哀し気な歌だ。そこへ警察から電話が入る。別れた恋人アンディが自殺を図ったというのだ。翌日、電話オペレーターの仕事をしながらも涙が止まらないジョイ。しかし、同僚たちは誰もアンディのことを覚えていない。そこへアンディの母親と名乗る女性からジョイに電話が入った・
「死ね、地獄に落ちろ」
最近ジョイは職を変え、難民教育センターの英会話教師を始めたようだ。かってジョイとアンディが別れ話をしたレストランで、トリッシュトヘレンは久しぶりの再会を楽しんでいるが、結局、話題にのぼるのは2人の妹ジョイの不幸ぶり。
「あれじゃムダに年を取ってるだけだわ」
さて、こちらは野球のグラウンド。ビルがビリーの試合を応援している……が、やがてその目は可愛らしい一人の少年に止まってしまった。その少年の名前はジョニー(イヴァン・シルバーバーグ)。その夜、ジョニーがメイプルウッド家に泊りにきた。ビルが何やら不穏な動きをしている。ジョニーのためにツナサンドまで作ってやり、その中になにやら粉をパラパラと……。翌朝、やけにすっきりした顔のビルと対照的にジョニーは具合が悪そうだ。
「おじさん、僕の家まで送ってくれる?」
再びフロリダのモナとレニー。モナは自立するために自分の部屋を探し、レニーはモナが浮気相手と疑っていた色気溢れる年増女ダイアン(エリザベス・アシュレイ)に、別居するのかと問いつめられる。
「話し相手が欲しくなったら連絡してちょうだい」
そのころヘレンは、レイプ体験もない自分がエロティックな作品など書けるわけがないと作家敵苦悩(?)に陥っていた。そこへ卑猥な電話が。もちろんその主はアレン。ヘレンはオートリダイアルでアレンに電話をかけ直し「ファックして」と囁く。予想外の展開に慌てるアレン。その夜、悪酔いして倒れたアレンの側に、クリスティーナが寄り添うのだが…。
「そこで何してる。出てけ、失せろ!」
不幸の乱れ打ちで泣きながら歩いているジョイに、一人の男が声をかけている。
男はロシア人のタクシー運転手ヴラッド(ジャレッド・ハリス)。ジョイのクラスの生徒だ。ヴラッドに家まで送ってもらったジョイは、なりゆきで彼を家に招き、彼の歌うラブ・ソング(デビー・ブーンの77年の大ヒット曲“恋するデビー”)にほだされて関係を結んでしまう。束の間の幸せに浸るジョイだったが、翌日、学校に一人の女がやってきていきなりジョイに殴りかかる。どうやら、ヴラッドの女のようだ。
「あなたは生きていく私に希望をくれた」
その朝、ジョニーがレイプされたことが発覚してしまった。夜、ベッドに入ったビルは不安に駆られてトリッシュにこう尋ねる。
「何があっても僕を愛していられるか?」
モナとレニーの関係が少しずつ変化しているようだ。自立心が芽生えたモナはレニーに泣いたり怒ったりすることがなくなった。逆に寂しさが増すレニーはダイアンを訪ねてみる。そして、事に及ぶ二人。しかし……。
「ダメだ。何も感じない」
再びアレンがヘレンに電話をかけている。しかしヘレンの「会いたいわ」の言葉に慌てて電話を切ってしまう。そこへ、またまたクリスティーナがやってくる。
アレンはクリスティーナを場末のバーに誘い、チークを踊る。曲はエアサプライの80年のヒット曲“オール・アウト・オブ・ラブ”。その後、彼女は驚くべき告白をする。実は夜警のペドロを殺したのは自分で、レイプされた後でその首をへし折った、私はセックスを嫌悪している、と。唖然とするアレン。帰宅後、アレンは意を決してヘレンの部屋をノックする。「僕が……」とアレン。部屋に招き入れるヘレン。しかしそこに流れるのは気まずい空気。やがてアレンは何もしないままヘレンの部屋を後にして、クリスティーナのドアをノックするのだった。
「これは失敗よ。タイプが違う」
ジョイはヴラッドの部屋を訪れた。自分を殴った女もそこにいる。部屋を見渡すとジョイのギターとステレオが置いてある。どうやらヴラッドが勝手に持ち帰っていたようだ。人のいいジョイは女に謝るつもりで来たのだが、なぜかヴラッドに金を無心され500ドル与える羽目になってしまう。
「バカなアメリカ人だ」
一家団欒のビルと家族たち。しかしあおこにジョニーの父から「殺してやる」と電話が入り、その直後には警察もやって来た。翌朝になると家の外壁には大きく「連続レイプ犯」とスプレーでの落書き。ビルの犯罪がいよいよ明るみに出てしまった。しかも、ジョニーだけではなかったのだ。深夜、父親に向かって涙ながらに何をしたのと尋ねるビリー。「僕にも同じことを?」と尋ねるビリーにビルは涙をこぼしながらこう答えるのだった。
「いや。オナニーで我慢する」
そして半年後。フロリダのモナの家のダイニングをレニー、ヘレン、トリッシュ、ジョイが囲んでいる。ビリーはベランダで外のプールサイドの女性を見つめている。ジョイたちが「幸せに」と乾杯したところで、ビリーが駆け込んできた。
「僕、イッたよ」
スタッフ
監督・脚本:トッド・ソロンズ
製作:テッド・ホープ、クリスティン・ヴァション
撮影:マリゼ・アルベルティ
美術:テレーズ・デペレス
編集:アラン・オクスマン
キャスティング:アン・グールダー
音楽監修:スーザン・ジェイコブス
音楽:ロビー・コンドール
主題曲:『HAPPINESS』byマイケル・スタイプ(R.E.M.)withレイン・フェニックス
キャスト
ジョイ:ジェーン・アダム
アレン:フィリップシーモア・ホフマン
ビル:ディラン・ベイカー
ヘレン:ララ・フリンボイル
トリッシュ:シンシア・スティーブンソン
ビリー:ルーファス・リード
モナ:ルイーズ・ラッセー
レニー:ベン・ギャザラ
ヴラッド:ジャレッド・ハリス
クリスティーナ:カムリン・マンハイム
ダイアン:エリザベス・アシュレイ
アンディ:ジョン・ロビッツ
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