原題:PASSION OF MIND

目覚めたら、そこにあなたがいてくれる。 プロバンスの私……母親、恋人は小説家 ニューヨークの私……独身のキャリアウーマン 恋人はエージェント もしも同時にふたつの人生を生きることができたら?

(全米2000年05月26日公開)

2000年/アメリカ映画/レイクショア・エンタテインメント/パラマウント・クラシックス作品/ レイクショア・エンタテインメント・プロダクション ロン・バスプロダクション共同製作/ 105min/カラー/シネマスコープ/ドルビーデジタル 字幕翻訳:栗原とみ子 共同提供:松竹、大映、徳間書店、徳間ジャパン 配給:松竹

2000年10月28日より丸の内ピカデリー2他 全国松竹系にてロードショー! 2001年4月27日DVD発売/2001年4月27日ビデオ発売

公開初日 2000/10/28

配給会社名 0003

解説

 今の生活が本当に自分に合っているのだろうか?もしも違う人生を歩んだとしたら、そんな自分になっていたのだろうか?とりたてて現状に不満を抱いてなくても、誰しもが“もう一つの人生”を夢想することがある。それは、心はずむ空想の世界への旅であり、見知らぬ自分を発見するチャンスである。人もうらやむニューヨークのキャリアウーマンでありながら、プロヴァンスで穏やかな家庭生活を営む。そんな、まったく違う2つの世界で生きられたら、どんなに豊かな人生であろうか。しかし、そんな幻想も渡が過ぎれば、まったく思いも寄らぬ自分の深層心理を探り当てる“危険な心の旅”の始まりにもなりかねないのだ。『薔薇の眠り』は、そんな心の旅の途中で迷子になった女性がヒロインだ。

 2つの人生を同時に生きるという甘美な体験をしながらも、混乱した不思議なアイデンティティーゆえに不安な時を過ごすヒロイン。演じるのは、ハリウッド女優の中でもメジャー作品で主役を張れる数少ない実力派のデミ・ムーアだ。デミといえば完ぺき主義者としてもつとに有名で、前作、『G.I.ジェーン』(97)では、屈指の海軍女性になりきった。しかし、本作ではそのイメージは微塵もない。未亡人マリーを演じる時には、自愛に満ちたほほ笑みも心和ませる柔和な女性に。そしてキャリア・ウーマン、マーティを演じる時には、セクシーでポジティブで、しかも内面の脆さも垣間見せる魅惑の都会派女性に。そのまったく違った女性像を巧みに演じ分けるデミは、見る者を時間、空間、感覚を超越したロマンチックな物語に引き込んでいく。

 また、ヒロインの恋のお相手をつとめるのは、プロヴァンスの恋人ウィリアムスにステラン・スカルスゲールド、ニューヨークの恋人アーロンにウィリアム・フィッチナー。『RONIN』(98)などで渋い存在感を放つスカルスゲールドだが、本作ではマリーに恋する情熱的な作家を熱演。またフィッチナーはジョージ・クルーニー共演の新作『パーフェクト・ストーム』(2000)ではタフな漁師を熱演しているが、本作では繊細で思慮深い理性の男性を好演。マーティのすべてを包み込む優しい存在感が、本作のロマンチックな風味をいっそうかきたてている。このほか、プロヴァンスのマリーを支える親友ジェシーにはロイヤル・シェークスピア・カンパニーの舞台にも数多く出演しているシニード・キューザック、ニューヨークの精神分析医には『ローカル・ヒーロー 夢に生きた男』(83)で脚光を浴びた個性派ピーター・リーガートが扮している。

 脚本を担当したのは、『レインマン』(88)でアカデミー賞最優秀脚本賞を受賞し、『ベスト・フレンズ・ウェディング』(97)や『グッドナイト・ムーン』(98)など多数の作品を手がけるロン・バス。夢と現実の間で揺れ動く女性を主人公にしながら、凡庸な心理ドラマにせずに、叙情的な女性の成長物語に仕上げたお手並みはさすがだ。監督は、ベルギー出身で、フランス映画界で活躍、本作でハリウッド進出を果たしたアラン・ベリネール。べりねールは“本当は自分が女の子だと信じている少年”を描いた長編デビュー作『ぼくのバラ色の人生』が98年ゴールデン・グローブ賞最優秀外国映画賞を受賞し、脚光を浴びた俊英。それだけに、幻想的な世界に迷い込んだ主人公を描く手腕は鮮やか。本作でもマリーとマーティの幻想的な心の旅を、時にミステリアスに時にロマンチックに描いていく。また、そんなベリネールの演出を微妙な光と影のコントラストを駆使して美しく映像化したのは撮影監督のエドゥアルド・セラ。パトリス・ルコント監督の『髪結いの亭主』(90)やイギリスアカデミー賞を受賞し、アカデミー賞候補にもなった『鳩の翼』(97)などを手がけたベテランだ。

ストーリー

 この世には、私と言う人間が2人いる。いったい私は、何者…?

 南フランス、プロヴァンスの小さな村。2年前に夫を亡くしたマリー・ウィリスは、残されたふたりの幼い娘と静かに暮らしている。夫のいない寂しさには慣れないけれど、それでも日々の暮らしはそれなりに充実している。ニューヨーク・タイムス紙に書評を書きながら、美しい庭や小さな畑の手入れを楽しみ、成長していく娘たちの世話をする。そんな暮らしが、気に入っている。しかし、子供たちにお休みのキスをして、自分もベッドに横たわるとき、マリーの胸に必ずかすかな不安と期待がよぎるのだ。

 マリーが眠りから覚めるのは、きまってニューヨークの瀟洒なペントハウスのベッドの中。そこでは、マリーはマーティに変身している。マーティは有能な文学エージェントにしてセクシーで洗練された美しき都会派のキャリア・ウーマン。言い寄る男は星の数ほどいるが、それでも人を真剣に愛したことはない。戦場のようなオフィスでの一日を過ごして、ペントハウスに翼を休めたとき、マーティは充実した生活に満足しつつも、ちょっとした虚しさを感じる。それは、もうひとりの自分、マリーの穏やかな暮らしを思うからだ。

 そう、マリーとマーティは、同一人物。同時に2つの人生を生きている。毎夜、ベッドに入り別の場所で目覚める生活を繰り返しているのだ。夢と現実の往復?最初はそう思ったのだが、それにしてはどちらの生活もあまりにリアルすぎる。それぞれの世界でかかった精神科医は、偶然にも同じ結果を口にする。それは彼女が現実の世界に欠けているものを補う“夢の世界”を造りだしているのだと。

 もちろん、そうかもしれない。田舎で暮らすマリーは、都会派の自分を欲しがっているのかもしれない?またキャリアを万進するマーティは、穏やかで家庭的な自分に憧れているのかもしれない。

 しかし、そのどちらにしても、もはや彼女にはマリーが現実の自分なのか、またはマーティが現実の自分なのか、区別がつかなくなっている。いや、むしろ違った2つの人生を味わえる、二重生活に身をゆだねる快感すら感じているのだ。

 そんな危うい二重生活のバランスを崩すきっかけとなったのは、プロヴァンスのマリーの前にウィリアムが現れたことだった。マリーに無残な書評を書かれたことのある作家のウィリアムが偶然に村を訪れ、3歳の娘メーガンと仲良しになった。それを機に、急接近するマリーとウィリアム。ウィリアムの情熱的な愛の告白に戸惑いつつも、マリーは愛に身をゆだねていく。

 その官能的な時間を過ごした体は、ニューヨークのマーティにも影響を与える。クライアントの会計士アーロンの存在が妙に気になりだしたのだ。やがてはアーロンの誠実な態度に魅了され、思わずもうひとりの自分の存在を告白した。すると、意外なことにアーロンはマーティのすべてを受け入れた。それがきっかけとなり、マーティはアーロンの腕に抱かれ、かってない安らぎを覚えたのだ。

 しかし、そうなるとマリーはウィリアムが何も知らないことに後ろめたさを感じる。そこで、マリーの良き理解者にして親友ジェシーのアドバイスを無視し、アーティとアーロンの存在を告白。最初はアーロンに嫉妬したウィリアムだったが、彼もまたマリーのすべてを受け入れ、より深い愛を注ぐようになった。

 マリーとウィリアム、マーティとアーロン。情熱的な愛に結ばれて、充実した2つの暮らしを享受する。一見、うらやましいほどの幸せな女性の運命だ。しかし、愛する女性のすべてを受け入れつつも、彼女の心を独占できない苦しみに耐える男性ふたりの姿は痛々しすぎる。そしてなにより、マリー/マーティ自身も心の底で不安におののいている。

 ふたつの愛のうち、現実の愛はどっち?ふたりの恋人の間で揺れ動く自分はいったい何者?そろそろ、本当の自分、いや、新しい人生を見つける時が来たことを知る。

スタッフ

監督:アラン・ベリネール
脚本:ロン・バス、デヴィッド・フィールド
製作総指揮:ゲイリー・ルチェッシ、ウィリアム・ケッパー
      テッド・タネンボーム、シグルヨン・シグヴァトソン
製作:キャロル・スコッタ、トム・ローゼンバーグ、ロン・バス
共同製作:アンドレ・ラマル
撮影:エドゥアルド・セラ,A.F.C.
音楽:ランディ・エデルマン
編集:アン・V・コーテス,A.C.E.

キャスト

マリー/マーティ:デミ・ムーア
ウィリアム:ステラン・スカルスゲールド
アーロン:ウィリアム・フィッチナー
Dr.ピーターズ:ピーター・リーガート
ジェシー:シニード・キューザック
ジェニファー:エロイス・エオネット
サラ:チャヤ・クエノ

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