原題:TITUS

愛するものを奪ったあなたを、私は決して許さない…。 『ライオンキング』の天才演出家ジェリー・ティモアが魅せる映像美、 美しき復讐者、極限の愛憎。独創の世界に観る者はすべて心を奪われる…。

(全米1999年12月25日公開)

1999年/アメリカ映画/162min/カラー/シネマスコープ/SRD SR 配給:ギャガ・ヒューマックス共同配給

2007年12月07日よりDVDリリース 2000年11月25日より、日比谷アみゆき座他 全国東宝洋画系にて<禁断>のロードショー! 2001年4月27日DVD発売/2001年4月27日ビデオ発売

公開初日 2000/11/25

配給会社名 0025

解説

 舞台『ライオン・キング』の演出で、女性として初めてトニー賞ミュージカル部門の演出賞に輝いたジュリー・テイモア。誰にも真似のできない豊かな発想と、仮面劇や人形劇の様式を取り入れた斬新な造形美で、舞台芸術の分野に新時代を切り開いた彼女は、いま世界でもっとも熱い視線を集める気鋭のアーティストのひとりだ。そのティモアが、映像の世界に大胆な挑戦をしかけた。グラマラスなビジュアル、パワフルでエキサイティングなドラマ、超一流の演技陣。およそ映画に求められるすべての魅力を、ティモアが雄大なビジョンのもとに束ねあげた本作は、シェイクスピアの37本の戯曲中、もっともショッキングな作品と言われる『タイタス・アンドロニカス』を映画化した極上の芸術エンターテインメントである。

 古代ローマの武将タイタスと、長男を生贄にされたゴート族の女王タモラ。ふたりの復讐が復讐を呼ぶドラマに散りばめられているのは、謀略、レイプ、手首の切断、カニバリズムといったおどろおどろしいエピソードの数々。それら、人間が犯しうる限りの残酷さに塗りこめられた物語を、テイモアは自在にイマジネーションの翼を広げて料理。作家の個性が強烈に匂い立つ独創的なスタイルを通じて、見る者を驚愕の映像体験に誘っていく。

 食卓にオモチャの兵隊を並べた少年が戦争ごっこに興じる光景で幕を開ける映画は、シェイクスピアの生み出した世界と、暴力が日常的に氾濫する現代との接点を、明快に物語るシンボリックなイメージにのせて展開する。少年と共に我々がワープする古代ローマは、ときにナチス・ドイツの面影が宿る街に、ときにフェリーニの映画の爛熟と頽廃をたたえた街に変貌。登場人物たちも、皮のコートやメタリックなドレスなど、時空にとらわれない様々な衣装で現れる。コロシアムの闇のなかで、機械的に動き回る兵士たち、切断された両腕に枯れ枝を刺されて沼地にたたずむ娘、カーニバルの見世物のよぷに現れる生首、ゲームセンターに変貌する宮廷の地下室……。めくるめく悪夢のイメージで構成されたシーンは、1ショット1ショットが絵画を思わせる完成度の高さ。それでいてドラマの流れが少しも損なわれていないのは驚くばかりだ。ある種のケレンを用いて、キャラクターの心情やエピソードの意味を明確にしていくテイモアの演出は、シェイクスピアの原作にある普遍性を、研ぎ澄まされた形で浮き彫りにしていく。その核心をなすのは、本来は美しいものであるはずの親子の情愛が、残忍な暴力を生んでいく悲劇の構図だ。

 誇り高き英雄にして愛情深い父親でありながら、家族と国家の命運を左右するふたつの場面で選択ミスを犯し、『リア王』を彷彿させる凋落の運命をたどる武将タイタス。かってのローレンス・オリビエの当たり役を、ナイトの貫禄たっぷりに演じるのは、イギリスが誇る名優アンソニー・ホプキンス。マクベス夫人の面影を持つ策士であり、母性となまめかしさで男を魅了してやまないタモラには、『トッツィー』『ブルー・スカイ』のオスカー女優ジェしか・ラング。文字通り火花が飛び交うエネルギッシュな演技対決を見せるふたりに加え、共演陣にも強力な顔ぶれが揃った。ヒトラーを連想させる暴君の皇太子サターナイスには、『エマ』のアラン・カミング。その弟で心優しきバシアヌスには、『ほんとうのジャクリーヌ・デュプレ』のジェームズ・フレイン。タモラのふたりの息子には、『ベルベット・ゴールドマイン』のジョナサン・リース・マイヤーズと、舞台『卒業』の主演で注目を集めるマシュ—・リースが扮し、欲望のままに暴走する若者像をリアルに体現する。彼らに人生を破壊される「ローマの宝石」ことラヴィニア役に清冽な魅力を光らせるのは、『ヴァーチャル・セクシュアリティ』のローラ・フレイザー。人種による劣等感から世の中をニヒルな視線でみつめ、タモラの参謀として邪悪な企みに走るムーア人アーロンには、『ゲット・オン・ザ・バス』のハリー・レニックス。また、タイタスの弟で良識を代弁するマーカスには『グレン・グールドをめぐる32章』『レッド・バイオリン』のコーム・フィオールと、英米の選りすぐりメンバーが集結。見ごたえのあるアンサンブルを作りあげている。

 初監督のテイモアを支え、斬新な構想の実現に手を貸したスタッフの豪華さも見逃せない。ビジュアルの要となるプロダクション・デザインを手がけたのは、パゾリーニやフェリーにとのコラボレーションで知られるダンテ・フェレッティ。衣装デザインは、『バリー・リンドン』『炎のランナー』で二度のオスカーに輝くミレーナ・カノネロ。撮影監督は、『運命の逆転』のルチアーノ・トポリ。音楽は、テイモアと数々の舞台で組み、『マイケル・コリンズ』『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』でオスカー候補にあがったエリオット・ゴールデンサルが担当している。

ストーリー

 タイタス・アンドロニカス(アンソニー・ホプキンス)は、ローマ最高の戦士と謳われる高潔な武将。いま、ゴート族との闘いで勝利をおさめた彼は、ゴーとの女王タモラ(ジェシカ・ラング)と3人の息子を人質にローマに凱旋。この戦で死んだ自身の息子たちの魂をなぐさめるため、タモラの長男アラーバスを生贄にせよと命じる。それを聞いたタモラは必死でアラーバスの命乞いをするが、人情より信仰と正義を重んじるタイタスは、彼女の言葉に耳を貸そうとはしなかった。

 そのころ、ローマでは、亡き皇帝の長男サターナイナス(アラン・カミング)と弟のバシアナス(ジェームズ・フレイン)が、激しい帝位争いを繰り広げていた。しかし、タイタスの弟マーカス(コーム・フィオール)ら、市民の声を代表する護民官は、忠国の士タイタスを皇帝候補に選ぶ。その結果、選挙権を委ねられたタイタスは、サターナイナスを皇帝に指名し、娘のラヴィニア(ローラ・フレイザー)を嫁がせることを承諾する。だが、ラヴィニアはバシアナスと愛し合う仲だった。それを知る彼女の兄たちがサターナイナスとの結婚を阻止しようとしたため、タイタスは歯向かう息子のひとりを殺さざるをえなくなった。いっぽう、ラヴィニアに恥をかかされたと激怒するサターナイナスは、タモラを妃に迎え、タイタスにも制裁を加えようとする。それを止めたのはタモラだった。タイタスを追放すれば市民の反感を買うとサターナイナスを説得した彼女は、自らの手で、タイタス一族を滅ぼす機会を狙っていたのだ。

 復讐のシナリオを書いたのは、タモラの愛人でムーア人のアーロン(ハリー・レニックス)だった。狩りが行われた森の中で、タモラの息子、カイロン(ジョナサン・リース・マイヤーズ)とディミトリアス(マシュー・リース)にバシアヌスを殺させた彼は、その罪をタイタスのふたりの息子にかぶせたあげく、「一族の誰かの手を皇帝に献上すれば息子たちを釈放する」という偽りのメッセージを持ってタイタスの元を訪れる。タイタスはアーロンに手首を差し出すが、代わりに彼が受け取ったのは、ふたりの息子の生首だった。さらにラヴィニアにも悲惨な運命が待ち受けていた。バシアヌス殺害の現場からカイロンとディミトリアスに連れ去られた彼女は、強姦されたうえ、両手と舌を切り落とされたのだ。

 悲しみと怒りと狂気を胸にたぎらせたタイタスは、ただひとり生き残った長男ルーシャス(アンガス・マクファーデン)をゴート族のもとへ送り、ローマに向けて兵をあげるよう命じる。タイタスの復讐の火蓋が気って落とされた!

スタッフ

監督・脚本:ジュリーテイモア
原作:ウィリアム・シェイクスピア
衣装:ミレーナ・カノネロ
美術監督:ダンテ・フェレッティ
撮影監督:ルチアーノ・トポリ
音楽:エリオット・ゴールディング

キャスト

タイタス:アンソニー・ホプキンス
タモラ:ジェシカ・ラング
カイロン:ジョナサン・リース・マイヤーズ
ディミトリアス:マシュー・リース
アーロン:ハリー・レニックス
ルーシャス:アンガス・マクファーデン
サターナイナス:アラン・カミング
バシアヌス:ジェームズ・フレイン
マーカス:コーム・フィオール
ラヴィニア:ローラ・フレイザー

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