劇団俳優座創立55周年記念作品。 数奇な運命を辿り成し遂げた、非凡なる凡人の偉業。 大きな“夢”を見てください——第二の人生を賭けた挑戦

2001年/ビスタサイズ/ドルビーSR/127min 配給:東映

2001年11月17日より東映邦画系にて公開

公開初日 2001/11/17

公開終了日 2001/12/14

配給会社名 0004

公開日メモ 伊能忠敬。日本が世界に誇れる〈非凡なる凡人〉のシンボル。堂々十八年間に及ぶ苦心の実測によって初めて〈日本地図〉を作った男。これまで小説、舞台、テレビドラマで我々を感動させた男が、いよいよ大スケールを以って本格的にスクリーンに登場する。

解説


“子午線一度の正しい値を出す、
世界で初めての人になりたい…。”

今から二百年前、一人の男が無限の《夢》に向かって力強く歩き始めた。
男の名は伊能忠敬(1745-1818)十八年に及ぶ苦心の歩行実測によって、初めて《日本地図》を完成させた男。日本が誇る《非凡なる凡人》のシンボルでもある。先頃、その精級で完壁なまでの《伊能図》がアメリカで発見され、世界中を捻らせたことは記憶に新しい。
星には星それぞれの軌道があるように、人には人それぞれの道がある。伊能忠敬は一介の農夫から養子婿となった伊能家のために働き、財産を築きあげ、五十歳を過ぎて隠居。家督を息子に譲り渡したのち、長年の《夢》でもあった子午線一度の長さを測るため、五十六歳にして第二の人生を踏み出したのである。
映画『伊能忠敬−子午線の夢−』では、伊能忠敬の十八年に及ぶ第一次蝦夷地測量(北海道)から第八次九州測量の旅を縦軸に、忠敬を慕う女性・お栄との愛や彼を取り巻く人々の人間模様を横軸に、波欄と苦行に満ちた生涯を感動的に描き出していく。
北の未開の大地では危険と隣合わせ、南の地では暴風雨に晒される。また、行く先々の藩からの妨害や誤解を受けることもしばしば。それでも、昼は海岸線を歩行実測し、夜は星を観測し緯度から位置を計算する。それは想像を絶する作業の積み重ねであり、生命を賭した己との戦いでもあった。
劇中、お栄が忠敬に語りかける…「もっと大きな夢を見てくださいませ」。この言葉は、自信を失った現代人への問いかけかもしれない。《夢》の実現——前人未踏の大事業《日本地図》完成へ向け、男として、夫として、父として、そして一人の人間として信念を持ち、エネルギッシュに第二の人生を生きた伊能忠敬とそれを支えた人々のそれぞれの愛と献身が、ひとりひとりの観客の心に深く清例な感動を呼び覚ますに違いない。
伊能忠敬を演じるのは、先頃紫綬褒章を受章した名優・加藤剛。舞台でも伊能忠敬の前半生を演じ、今回、俳優人生の集大成とも言える円熟した演技は心に迫る。
そしてお栄には賀来千香子、忠敬の長女・イネに西田ひかる、幕府天文方・高橋至時に榎木孝明、島津重豪に丹波哲郎、山片幡桃に中野誠也が扮するほか、愛川欽也、浅利香津代、前田吟ら豪華俳優陣、さらに関宮林蔵に増沢望、忠敬の長男・景敬に田中壮太郎、次男・秀蔵に加藤大治郎(加藤剛の長男で親子役として共演)、娘婿・盛右衛門に鈴木周といった新鋭俳優が加わり、歴史ある俳優座創立五十五周年記念作品に華を添えている。
監督は『鬼平犯科帳』シリーズのベテラン小野田嘉幹。四季を追って収められた日本全国の情景をバックに、《非凡なる凡人》の生涯を珠玉の大河ロマンに築きあげた。脚本は『敦煌』『必殺!主水死す』などの吉田剛が、音楽は『影武者』『うなぎ』などの池辺晋一郎がそれぞれ担当した。

ストーリー



天明三年(1783年)の冬。下総国佐原村の名主・伊能忠敬(加藤剛)は、わずか十六歳で伊能家の養子婿となってから、二十二年の間、働き詰めに働き総財産三万両を築きあげていた。妻ミチは四十三歳で病死。その後、長男・景敬が家督を相続し、忠敬ははれて隠居の身となった。
五十歳になったとき、忠敬は江戸の深川黒江町に居を構えた。いよいよ長年温めてきた夢——地球の南北を結ぶ子午線を測り、そこから地球の大きさを割り出すという夢に向けて歩き出したのだ。農民ながらその熱意を買われ、浅草蔵前にある司天台で幕府天文方、高橋至時(榎木孝明)から教えを受ける忠敬は、深川から蔵前まで歩測を繰り返す毎日を送っていた。歩数を数えながら歩く忠敬は、人にぶつかるやら、犬のフンを踏みそうになるやら、その奇妙な姿が人目を引いた。町で子供に手習いを教えるお栄(賀来千賀子)は、そんな忠敬に興味を抱く。彼女と忠敬はすぐに意気投合し、以降お栄は忠敬の夢の大きな手助けとなるのだった。
ある日、忠敬は願ってもない話を至時から持ちかけられた。幕府は、ロシアの脅威を感じ蝦夷地の地図を欲しがっている。地図を作成しつつ南北に伸びる奥州街道を計測すれば、正確な子午線の値が出るのでは…。もちろん農民である忠敬に測量が赦されるはずもなかったが、自費でなら、という条件付きで測量試みの許可が、下りた。、長女・イネ(西田ひかる)ら子供たちの、反対を押し切り、次男・秀蔵(加藤大治郎)らを連れて、忠敬は百五十日にわたる測量の旅に出かけるのだった。この時、
忠敬はすでに、ん五十六歳になっていた。
歩測をし、間縄で測り、星を測って緯度を出し、可能な限りの正確さを期しつつ測量をしながら進む忠敬。しかし仙台では公儀の密偵と勘違いされ賄賂が押し付けられる始末。真面目に返そうとする忠敬は、そこで星学の町人学者として有名な山片幡桃(中野誠也)と出合った。
ようやくたどり着いた蝦夷地は、考えていた以上に険しく広大だった。そのうえ保身に走る役人は非協力的で、当初の予定が遅れ始める。やむを得ず雇ったアイヌの人夫や関宮林蔵(増沢望)に助けられながら苦しい測量を続けたが、江戸から思いもよらない知らせが届く。十月中に江戸に、戻らなければ、地図完成の見込みはないとして公儀測量方の身分が剥奪されるとの下達だった。後ろ髪を引かれながら江戸に戻り、忠敬は午線一度を二十七里と、至時に報告、年内の献上を目指してお栄、秀歳らの手を借り地図の作成に取りかかった。
出来あがった地図の精妙さに幕府は驚愕する。老中からの要望は、さらに関東、奥州、北陸の地図をとのことだった。あまりの苦労に気が進まない忠敬だったが、至時に子午線の数値のズレを指摘されると闘志を燃やし、さらなる測量に出発するのだった。
そしてついに、東日本地図が完成する。忠敬は子午線の実測値は二十八里二分と病床の至時に報告するが、西洋では既に子午線の実測値が出ていることを告げられる。世界初の実測者をH指していた忠敬は落胆するが、死の床にある至時から、息子・景保とともに世界に誇れるような日本地図の作成を託されるのだった。
東日本全図は幕府に認められ、日本全図の作成の命が下りた。身分は小普請組・伊能勘解由として取り立てられ、もはや自由に測量することもままならなかった。さらに役人達と対立する息子・秀蔵を測量隊から外さざるを得なくなる。そしてここまで、忠敬を陰になり日向になり助けてきたお栄とも別れの時が来た。日本全図が
完成するまで待つと言うお栄に、何年かかるか分からないのに犠牲にはできないと別れを告げる忠敬。イネの説得もむなしく、お栄は去っていった。
日本地図完成まであと、一歩に迫った頃、公儀隠密探索方となった間宮林蔵が忠敬の元を訪れ、薩摩測量を中止するように諭した。密偵と間違われて危険だという。それを押し切って九州南部の測量に向かった忠敬は大きな壁にぶつかった。将軍家の舅である島津の御隠居、島津重豪(丹波哲郎)に屋久島、種子島への船を出すことを拒否されたのだ。降り続ける大雨を空しく眺める忠敬。そんな時、鉄砲水が出たとの知らせが走る。重豪の大喝にも動じず、農民を救おうとする忠敬の肚の座りように、重豪は忠敬を認め、島行きの船が出された。
ついに十八年間に渡る測量の旅が終わった。忠敬七十四歳。しかし、「大日本沿海輿地全図」の完成を見ることはなく、忠敬はこの世を去った。

スタッフ

監督:小野田嘉幹
製作:古賀伸雄
プロデューサー:永井正夫、坂東誠一、上松道夫、木村純一
協力プロデューサー:太田賢司
脚本:吉田剛
音楽:池辺晋一郎
撮影:坂本典隆
照明:西表灯光
美術:春木章
録音:松本修
編集:西東清明

キャスト

伊能忠敬:加藤剛
お栄:賀来千香子
伊能イネ:西田ひかる
高橋至時:榎木孝明
伊能景敬:田中壮太郎
伊能秀蔵:加藤大治郎
伊能盛右衛門:鈴木周
間宮林蔵:増沢望
島津重豪:丹波哲郎

山方幡桃:中野誠也
善右衛門:愛川欽也
シカ:浅利香津代
滝沢角五郎:前田吟

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