原題:VENGO

アンダルシア・・・・ フラメンコの陶酔はここからはじまる

2000年ベネチア国際映画祭クロージング作品 2001年セザール賞最優秀映画音楽賞受賞

2000年/スペイン・フランス/ビスタサイズ/カラー/89分 日本語字幕:石田泰子 オリジナル・サウンドトラック:ワーナーミュージック・ジャパン 後援:スペイン大使館 日本フラメンコ協会 配給:日活

2002年03月22日よりDVD発売開始 2002年3月22日よりビデオ発売開始 2001年5月26日よりシネマライズにて公開

公開初日 2001/05/26

配給会社名 0006

公開日メモ 『モンド』『ガッジョ・ディーロ』と常に自らのルーツであるロマ(ジプシー)をテーマに映画を撮り続けてきたトニー・ガトリフ監督の最新作『ベンゴ』は、「フラメンコの揺籃」と称されるアンダルシア地方を舞台にした情熱のフラメンコ映画である。

解説

『モンド』『ガッジョ・ディーロ』と常に自らのルーツであるロマ(ジプシー)をテーマに映画を撮り続けてきたトニー・ガトリフ監督の最新作『ベンゴ』は、「フラメンコの揺籃」と称されるアンダルシア地方を舞台にした情熱のフラメンコ映画である。

移動、迫害、いく世代にもわたる旅を経てアンダルシアに辿りついたロマ民族のたくましさ、民族の誇りと血の絆がヨ−ロッパ大陸の片隅アンダルシアの地で、壮大な自然のエネルギーと長い歴史の中で結びつき生まれた生きざまの音楽、フラメンコ。アントニオ・カナーレス、トマティートほか現代フラメンコの頂点に立つ多くの天才的ダンサー、ミュージシャンたちと共に本物のフラメンコを見事に映像化し、ガトリフ監督は自らの血に流れるロマの魂をあぶり出し、誇り高き民族の物語を作り上げた。2000年ヴェネチア国際映画祭のクロージングを賑やかに飾った熱いフラメンコ魂が、世界中を揺るがせる。

物語はアンダルシアの男カコが年頃の一人娘ペパを亡くした悲しみを紛らわすために 開く盛大なフラメンコパーティから始まる。カコのそばには、彼を慕いフラメンコを心から愛する甥ディエゴがいた。不自由な体いっぱいで喜びを表すディエゴの命はカ ラバカ家によって狙われていた。カコの兄マリオがカラバカ家の一人を殺し、行方不明になっていたからだ。カラバカ家の仇討ちが遂行されるまで、ディエゴを追い続け る死の影。家族、祝祭、音楽、嫉妬、後悔、哀しみに溢れる一族の歴史の中でカコは否応なしに仇討ちの闘争へと巻きこまれていく。
カコの苦悩、ディエゴの希望…胸を打つエピソードが、情熱のフラメンコと共鳴し、血の復讐の物語はカコの死をもって、誇り高きロマの魂の物語へと昇華されていく。

題名である『ベンゴ』は、“VENGAR =復讐する”と“VENIR=何かがやって来る”を意味するスペイン語である。

ストーリー

スペイン。アンダルシア地方。大きな手にいくつもの金の指輪、金のブレスレット、派手な柄のスカーフをまとうアンダルシア人 カコ(アントニオ・カナーレス)。最愛の娘ペパを亡くしてまもない彼はその深い悲しみから立ち直ることができない。人里離れた教会へ行き、聖母マリア像と向き合い涙を流すカコ。家に帰ると、真っ白い壁に“サンドロ お前の敵は討つ”の文字が…。
カコの兄マリオは、かつては幼なじみであったカラバカ家の長男サンドロを痴話げん かから殺してしまいカラバカ家から追われる身になっていた。兄が行方をくらましていたため、その怒りは全てカコ一家に向けられていた。マリオの息子 ディエゴ(オレステス・ビリャサン・ロドリゲス)の命が狙われていた。ディエゴは生きる喜びにあふれフラメンコを心から愛している。そんな甥っ子ディエゴを自分の息子のように可愛がる不自由な体いぱいで生きる喜びを表し、心からフラメンコを愛している。素直で陽気なディエゴと一緒に過ごす時間の中で安らぎを感じていた。

セビージャ(セビリア)にくりだすカコとディエゴ。あるバーで、カコは古い友人・娼婦カタラナ(マリア・ファランコ)と待ち合わせをしていた。カコはディエゴに女性との体験をさせようと考えていた。カタラナは包容力に溢れ、美しく、やさしくディエゴに話しかける。カコが席を外し二人になると、ディエゴは語り始めた。「君は、ペパにそっくりだ。僕は叔父さんの一人娘ペパが大好きだった。もう死んでしまったけれど…。」

レストランで歌い手(ラ・カイータ)の叫ぶような歌声と、賑やかな掛け声とパルマ(手拍子)が響いていた。カコ一家は、パーティを開き、音楽に酔っていた。日々の苦しみを立ちきるように、酒を飲み騒ぐカコ。ディエゴも歌声に合わせて全身で踊っていた。奥に座っていた兵隊たちもこの勢いに押され、引き寄せられるようにラ・カイータの周りに集まり歌い出した。皆が、叫ぶ「これが本物のフラメンコだ!!」
ディエゴがペパの好きだったテープをみつけてカコに聴かせる。そこには、エジプトからきたスーフィ教の音楽と心も体も解き放たれた魂の歌声が流れていた。ディエゴは「これを聴くといつもペパが泣いていた。」とつぶやいた。

グアディアーナ川を一望できる野外パーティ。ダンサーと大勢のミュージシャンが集まり、賑やかなパーティが催された。お目当てのダンサーをみつけ、おめかしをするディエゴ。カコはいつになく神妙な面持ちで座っている。何かを忘れるように、酒を浴びるように飲むカコ。情熱的な歌声と官能的なダンスを前に、カコの眼には涙が流れていた。今のカコには最愛の娘ペパを失った悲しみ、カラバカ家の変えることのできない怒り、危険にされされているディエゴの命など、自分ではどうにもならない運命が迫ってくることをフラメンコを通して感 じていたのだった。「ペパ…」とつぶやきながらカコは倒れてしまった。カコの中には、あのペパが好きだったスーフィ教の音楽が響いていた。

一夜が明け、いつもの朝が始まった。カコはカラバカ家の長フェルナンド(フェルナンド・ゲレロ・レボリョ)に会い、仇 討ちの落書きのことを話す。フェルナンドは、「俺たちではない。もうすぐ殺されたサンドロの幼い娘の洗礼式があり、その時までにマリオを探し出し、この落とし前をつける。」とカコに言った。カコは皆に内緒でアントニオ(ボボート)をよび、モロッコにいる兄マリオに会い、4万ドルを渡してほしいと頼む。そして、ディエゴに連絡をいれるようにと。

静かな夜。ディエゴはカコに告白した。「ペパを心から愛していた。でもペパには打ち明けられなかった…。僕は不安だ、カラバカが僕の命を狙っている。」ディエゴの 告白を聞いたカコは、ある決心をしたかのように、ペパの指輪を渡し「カラバカ家の娘の洗礼式にお前をつれていき話をつける。お前には誰にも指一本、触れさせな い。」と誓うのであった。ディエゴのもとに、モロッコにいるマリオから連絡が入る。ディエゴは無邪気に尋ねる。「お父さん、元気でやってるの、いつ帰ってくるの?」そしてアレハンドロはマ リオに聞こえるように、亡きペパの歌“私はアラモの生まれ”を道路いっぱいに、響き渡るように流した。

カコ一家は船のパーティに繰り出した。そこにはカラバカ家も乗り合わせていた。騒ぎをおこさないことを条件に、船に乗るカコ一家。美女たちがセクシーなダンスを 踊っていた。カラバカ家の一人が、カコが連れていた女性をダンスに誘い出し、お金を渡し、娼婦の扱いをした。それを目の当たりにしたカコは、一族が汚されたと怒り だし「俺に怖いものなんてないのだ!!」と叫びながら自分の体にナイフを突き刺した。カラバカ家とカコ一家の対立は、血の決裁をしなければならないところまできていた。「マリアよ、この哀しみを助けてください。」教会に行き救いを求める。迫ってくる死の恐怖に怯えるカコ。

カラバカ家、娘の洗礼式。歌と踊りで誓いをたてるアンダルシア人。偉大なる母であり、歌い手(ラ・パケーラ・デ・ヘレス)が洗礼の歌を歌っている。そこへカコがディエゴを連れて話し合いのためにやってきた。最後の望みを託し、あくまで紳士的に冷静に。しかしカラバカ家の男達は強い忠誠心と血の代償しか受け入れなかった。話し合いは、しだいに怒鳴り合いとなっていく。カコは一族を守り、ディエゴを助けるには自分が犠牲になるしかないと決心する。誰にも行き先を告げづに一人、カラバカ家のもとに出向いていくのだった。

スタッフ

監督:トニー・ガトリフ
オリジナル脚本:トニー・ガトリフ
脚色&セリフ:トニー・ガトリフ、(協力:デビッド・トゥルエバ)
撮影:ティエリー・プジェ
カメラ・オペレイター:クロード・ガルニエ
音響:レジス・ルロウ
協力:フィリップ・ウェルシュ
編集:ポーリーン・デルー

キャスト

カコ:アントニオ・カナーレス
ディエゴ:オレステス・ビリャサン・ロドリゲス
いとこのアレハンドロ:アントニオ・ペレス・デチェント
いとこのアントニオ:ボボーテ
いとこのトレス:フアン・ルイス・コリエンテス
フェルナンド・カラバカ:フェルナンド・ゲレロ・レボリョ
フランシスコ・カラバカ:フランシスコ・チャベロ・リオス
カラバカ家のいとこたち: ホセ・ラミレス・エル・チェリ、フアン=ルイス・バリオス・
リョレンテ、ヘスス・マリア・ベントゥラ
ペペ・サルディナ:エル・モロ
アンセルモ:マヌエル・ベガ・サラサル
ラ・カタラナ:マリア・ファラコ
アルマ:ナスターシャ・マイギーン
ラ・コネハ:マリア・アルテア・マヤ&トマティート、シャイフ・アマド・アル・ トゥニ、
ラ・カイータ、 グリトス・デ・ゲラ、レメディオス・シルバ・ピサ、ラ・パ ケーラ・デ・ヘレス

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