山口県出身の童謡詩人金子みすゞの世界を描く。

2001年/日本/105分/カラー/1:1.85/ステレオ/ 配給:シネカノン

2004年05月27日よりDVD発売開始 2001年10月27日より銀座シネ・ラ・セット、池袋文芸坐にてロードショー公開

公開初日 2001/10/27

公開終了日 2001/12/14

配給会社名 0034

公開日メモ 金子みすゞは大正後期から昭和にかけて活躍し、1930年(昭和5)に26歳の若さで亡くなった童謡詩人。 その作品は、今もなお広範な世代の人々の心を揺り動かしています。

解説


“若き詩人中の巨星”と西條八十に絶賛を受けながらも26歳で天折した童謡詩人金子みすゞ。没後その作品は散逸し、幻の天才作家として語り継がれていた。しかし、死後半世紀を経て遺稿集が発掘され、全集や選集が次々と出版される。関連書籍を含めた発行部数は170万部を突破。また、詩作の広がりと共にその人物にも注目が集まるようになる。優れた作品を残しながらも若くして自ら死を選んだ理由は…温かく優しい詩作の裏に秘められた真実とは…。
死後70余年を経た今年、その生涯が舞台、TVドラマ、そして本作『みすゞ』として映画化されることとなった。まさに熱い”みすゞ”ブームの中、メガホンをとったのは『地雷を踏んだらサヨウナラ』の五十嵐匠監督。その生涯を端麗な映像美でフィルムに焼き付けた。撮影は全編山口県でのオールロケ。丹念なロケハンによって見つけられた路地や古い建物の佇まいはみすゞが生きた時代の空気を見事なまでに甦らせている。

ヒロインみすゞにはNHK連続テレビ小説『あぐり』、『一絃の琴』の田中美里。その夫役に寺島進。さらに永島暎子、中村嘉葎雄と実力派に加え若手注目株の加瀬亮、また西條八十役にイッセー尾形と豪華なキャストが結集。

また天才写真家アラーキーこと荒木経惟がみすゞの詩に魅せられスチールを担当したことも話題を呼んでいる。

ストーリー

1919年(大正7)年、日本海の港町仙崎。うららかな日差しを浴びながら、本屋の店先で猫とじゃれている金子テル(田中美里)。そこヘテルの家で療養をしていた叔母の訃報に叔父上山松蔵(中村嘉葎雄)と従兄弟の正祐(加瀬亮)が駆けつけてきた。時遅く死に目に会うことは出来なかった。
叔母の死をきっかけに未亡人であったテルの母ミチ(永島暎子)が松蔵の後妻として下関の上山家へ嫁ぐ話が持ち上がる。複雑な思いにかられながらも母を送り出すことになる。
テルは家業である金子文英堂で店番をしながら書物を読み耽る。時折下関より訪ねてくる正祐と兄と3人でトランプ遊びをしたりとまるで3兄弟の様に親しく交流していた。
結婚した兄と嫁に押し出される形で下関、上山文英堂へ移るテル。そこで商品館の中にある小さな間口の店を任せられる。店番のかたわら書いた詩を、”みすゞ”というペンネームで雑誌に投稿。はじめての投稿作品が西條八十(イッセー尾形)に絶賛され彼女の作品は人気誌に次々と掲載される。
テルは一躍童謡詩人の憧れの的となり、金子みすゞの才能は次第に周囲の人の知るところとなる。親友の田辺豊々代(小嶺麗奈)もまた彼女の才能を支援する1人。みすゞの活躍に心躍らせる豊々代であった。
その頃、東京へ丁稚修行に出ていた正祐が、関東大震災で焼け出され帰ってくる。みすゞの最大の理解者である彼は華々しい活躍に賛辞を送る。互いに文化的才能を磨きあいながら心密かに慕いあう2人。そんな折り正祐の元へ届いた徴兵検査の通知。そこには<養子>という2文字が記されていた。
ある意図から店の奉公人葛原信爾(寺島進)とみすゞの縁談を進める松蔵。どちらつかずの態度をとる彼女に、正祐が詰め寄る。「家の為に好きでもない男と結婚する事なんてない。それならばいっそ、作家みすゞとして生きればいいじゃないか、それとも誰か他に好きな人はおらんのか?」
「おるよ、黒い着物を着て、長い鎌を持ってる人」と寂しそうに答えるみすゞ。彼女はとうに知っていた、正祐が幼い頃、養子に出された実の弟であることを…。
店で働くみすゞに熱いまなざしを送る葛原。突然、親友豊々代の死が知らされ、茫然自失となるみすゞ。その傍らにも葛原がいた。
陽光差し込む晴れやかな祝言の日。白無垢の上着を脱ぎ捨て髪を下ろしたみすゞに、夫となった葛原が自分の過去を語り始める。かつて花街の女郎と心中しようとした事、そして自分だけが生き残ってしまった事を…。
やがて葛原は遊郭へ入り浸るようになり、店を出てしまうのだった。しかし落ち延びてゆく葛原にみすゞはついて行かざるを得ない。彼女のお腹の中には既に小さな命が宿っていた。
長女が誕生し、一間の部屋で貧しい生活を送る日々。葛原が良い顔をしないからと詩作が進まないみすゞ。うかない彼女に対し、正祐は告げる「普通になってしまった…」
その頃、フランスから帰国した西條八十を駅のプラットホームで出迎えるみすゞ。投稿詩人と彼女を見いだした作家との出会い、これが生涯一度きりの対面となるのであった…。
遊郭通いが絶えない夫から淋病を移されてしまう。病状の悪化で次第に床に伏せる様になる。そんな状況に追い打ちをかけるように詩作と投稿仲間との文通までも禁じる葛原。みすゞは意を決したように病んだ体をおして自らの作品を3冊の童謡集として清書する。以後、徐々に心身とも繋りを見せ始ていくのであった。
結局、たち行かない生活に離婚を決意し、娘と共に叔父と母の居る上山文英堂へ戻る。つかの間の安息が訪れたかと思った矢先、葛原は娘の親権を主張しはじめる。周囲の熱心な説得にもかかわらず葛原は首を縦にふろうとはしなかった。
その夜も、上山家ではいつもと変わらない団らんを過ごしていた。しかし、明日はいよいよ強行にも葛原が娘を迎えに訪ねてくるという。その晩、みすゞはある1つの決断をする…

スタッフ

企画:株式会社紀伊國屋書店
監督:五十嵐匠
エグゼクティブ・プロデューサー:松原治、村山公明
ゼネラル・プロデューサー:松尾美奈子、村山英世
チーフ・プロデューサー:吉澤泰樹
プロデューサー:福間順子、増田佳彦、山本末男
ライン・プロデューサー:石矢博
脚本:荻田芳久
撮影:芦沢明子
美術:池谷仙克
照明:金沢正夫
録音:堀内戦治
スティール:荒木経惟
タイトル:みすゞ
製作:映画「みすゞ」製作委員会・株式会社桜映画社
   株式会社ポルケ・山口県映画センター
製作協力:山口県シネマ倶楽部協議会
後援:山口県・山口県教育委員会・
   長門市・長門市教育委員会・下関市・下関市教育委員会
協力:
金子みすゞ著作保存会
JULA出版局
角川春樹事務所
配給:シネカノン

キャスト

金子テル(みすゞ):田中美里
上山松蔵:中村嘉葎雄
母ミチ:永島暎子
葛原信爾:寺島進
正祐:加瀬亮
田辺豊々代:小嶺麗奈
西條八十:イッセー尾形

増沢望

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