フリーズ・ミー
原題:Freeze me
あなたを凍らせてあげる・・・
2000年/ヴィスタサイズ/カラー/101分/R-15/配給:日活
2000年5月27日よりシネ・リーブル池袋にて公開 2004年06月11日よりDVDリリース
完成披露試写会::http://www.nifty.ne.jp/rforum/fcinema/topics/200004/27fm/index.htm
©2000ケイエスエス・日活
公開初日 2000/05/27
配給会社名 0006
解説
『GONIN』『死んでもいい』『ヌードの夜』などの石井隆監督が、井上晴美主演で放つサイコ・スリラー話題作。
主人公は東北のある街で、3人組のワルにレイプされた薄幸な女・ちひろ。
彼女は悪夢から逃れるため、都会でOL生活を開始。
恋人とも結婚間近となり、人生を幸せモードに転じようとした途端、人生は暗転した。
忌まわしい3人組が次々に彼女の部屋を訪れては、暴力をふるい、わがもの顔でいすわる。
追いつめられ、ナニかが心の奥ではじけた彼女は、男たちをひとりずつ闇に葬り、冷凍庫の中に死体をコレクションしていく。
彼女を蹂躙した男どもは、冷たい世界に凍結され、ある種の「美しさ」を醸し出しはじめた。
よるべないヒロインには凍結された「死体」が奇妙な美しさをもって迫ってくる。
そんな彼女に一度は別れた恋人が復縁を迫ってくるのだが…。
石井ワールドのヒロイン同様、ここでは男によって身も心も傷ついたヒロインが登場する。
いまどきの「ストーカー現象」を前段にフリながら「癒し」を求めてはいあがろうとする構図は、いまの世相をなぞるような現実感。
しかも、癒しに到達するまで、いくつもの「バイオレンス」が用意されている。
「バイオレンス」と「癒し」。
相反する媒介を得てヒロインは、何度も心の変身をくりかえし、独自の次元に到達する。
これはひとりの女が純化していくような、メタモルフォーゼ・スリラーと呼んでもいい、石井監督の新境地だ。
ヒロインを演じたのは、幻冬舎のアウトロー文庫のキャンペーンガールに起用され、衝撃的なスキンヘッドでヌードを魅せた井上晴美。
今回は映画で初のヌードに挑戦、豊満なバストから筋肉質の脚線まで水泳で鍛えた肢体が存在感を存分に主張する。
男に弄ばれる彼女が、自分だけの「密室」で次第にしたたかな強さを発揮し、男どもを冷凍庫に凍結する姿が変身のはじまり。
冷凍庫の死体を見ながら、「綺麗だわ、フリーズするって」と感に堪えない言葉を発するあたりの、ファムファタールふうの壊れ方は、なんともシュールで蠱惑的だ。
最後の解釈を見る側に委ね、ヒロインへの思いを限りなく引きつける巧みな語り口。
最後の「光の余白」は、なにか。
ひとつには、ヒロインを異次元に転生させたような余韻も漂う。
いずれにせよ、「名美」にこだわってきた石井ワールドに、新たなヒロイン像が孵化したといってもよさそうだ。
映画的な趣向も多彩。
まず、ヒッチコックを思わすサスペンス・タッチが全体に充満している。
最初、バスタブ内で男を殺害したヒロインが返り血を狂ったように洗いながそうとする図からして、『サイコ』のシャワーシーンを思わすヒッチコック・アングル。
俯瞰を多用し「密室」の緊張感をより強調する映像タッチは実にスリリングだ。
次第に腐敗が迫り、死臭が密室を覆うあたりは、ロマン・ポランスキー監督の『反撥』にも似たニューロテックな雰囲気。
3人の死体が「冷凍庫」でフリーズされていくアイデアは、映画全体の「密室感」を増し、いまどきの若年猟奇事件の「ひきこもり」をも先取りしたような浮遊感が漂う。
彼女のもとを訪れ、結果エジキとなる男どもが3人3様。
凶暴なイノセントとでも呼びたい広河役に、『皆月』でキネマ旬報助演男優賞を受賞した期待の北村一輝。
酒によって豹変する小心な小市民・小島役に石井組の常連で『GONIN』『黒の天使』シリーズなどの鶴見辰吾。
そして、画面を占領する図太いヤクザ・馬場役に、これまた石井作品の常連で、『ヌードの夜』『GONIN』などに出演している個性派・竹中直人。
それぞれヤバい言葉虐めを駆使しての見せ場が、おたのしみのひとつ。
そしてヒロインの恋人である野上役には『GONIN2』などの松岡俊介。
ストーリー
それは東北のある街、雪の降る夜の悪夢からはじまった。
女子高生だった山崎ちひろ(井上晴美)は、母の留守に3人組にレイプされ、ビデオまで撮られてしまった。
心に深い傷を負ったちひろは、逃げるように街を離れ、東京でOL暮らしをはじめた。
彼女の心を癒してくれたのは同僚の野上(松岡俊介)。
ふたりは結婚を約束し、ちひろには幸せが訪れようとしていた。
その矢先。
出勤間際のちひろはマンションの入口でひとりの男を目にし動転した。
あの悪夢から5年。
レイプ犯のひとりだった、幼なじみの広河(北村一輝)が再びちひろの前に姿を現したのだ。
広河はちひろの部屋に上がり込み傍若無人に振る舞う。
広河の話では、3人組の主犯格だったヤクザの馬場が間もなく仮出所するので、もうひとりの仲間・小島も加え、ちひろのもとで「出所祝いの4Pパーティをすることにした」と言う。
広河はちひろを自分のモノであるかのように扱い、ジワジワと凌辱する。
ちひろが抵抗の姿勢を見せるや、広河はレイプビデオからプリントアウトした現場写真をマンションの各部屋に配付してまわる。
ちひろの会社に押し掛け暴れ周り、彼女との関係をにおわす。
心配した野上が彼女のもとを訪れるが、広河は野上に昔のレイプの一件を暴露した。
野上だけには知られたくなかった過去の悪夢。
凍り付いたちひろは、自分の幸せが音を立ててくずれたことを感じた。
言葉もなく去っていった野上に、彼女は「サヨナラ」とつぶやくしかなかった。
ちひろの心の中でナニかがはじけた。
バスタブに入ってご機嫌な広河は、ちひろが水をたっぷり補充したペットボトルをもって入って来た時、疑いもしなかった。
「水じゃない。
ビールをもってこい」。
その瞬間、ペットボトルが彼の脳天を一撃、側壁に後頭部を打ち付け、血が滴った。
何度もペットボトルでの鉄槌が広河を打ち据えた。
あっけにとられた広河はちひろをバスタブに引き込み、首を絞めはじめる。
が、広河の出血は激しく、バスタブのなかは赤く染まっていった。
バスタブに浮かぶ広河の死体を横目に返り血を浴びたちひろはシャワーで狂ったように洗い流した。
死体処理のため鋸や金槌を買ってもどったちひろには、第2の男の訪問が待っていた。
小島(鶴見辰吾)だ。
リストラにあった小島は広河に貸した30万円を取り立てる目的できたと言い、ちひろの部屋に上がり込んだ。
小心者の小島は最初ちひろにレイプを詫びるが次第に本性を露にしていく。
広河の携帯電話のみが残されていることを怪しみ、バスタブを覗いたりするが、広河の姿はどこにもない。
酒を食らううち、次第に酒乱と化し、彼女への欲望が頭をもたげた。
「先にバスにつかるわ」と、ちひろは小島に気を持たせる。
その間に小島は冷蔵庫で意外なモノを目にした。
広河のフリーズされた死体だ。
その瞬間、小島はちひろの金槌の一撃で、こと切れた。
ちひろの部屋に新しい冷蔵庫が増えてたとき、第3の訪問者である仮出所の馬場(竹中直人)がやってきた。
彼はちひろの企みをまったく疑っていない。
ちひろは彼の分の「冷凍庫」を用意し、その時期を待った。
「お風呂に入ったら」と馬場を“墓場”に誘うが、一向にのってこない。
ちひろはテレビゲームに熱中し「死ね」と呪文のように唱える馬場にシャワーカーテンを被せ、金槌の一撃で処刑した。
いまや、ちひろには3台の冷凍庫がすべて。
問題はいかに死体を腐らせず、美しくフリーズしつづけるか。
が、電気の容量は3台の冷凍庫を稼働させるのが目いっぱい。
エアコンを切り、じっと夏の暑さを耐える日々が続いた。
腐敗がはじまる死体たち。
ちひろはヨーロッパへの高飛びを考え始めるが、そんな時、別れたはずの野上が訪ねてきた。
彼は彼女を見捨てたことを詫び、恋が再燃するが…。
スタッフ
製作:仁平幸男、豊忠雄
企画:原田宗一郎
プロデューサー:永江信昭、新津岳人、石井隆
脚本・監督:石井隆
撮影:佐々木原保志(J.S.C.)
照明:安河内史之
美術:山崎輝
音楽:安川午朗
録音:宮本久幸
編集:川島章正
スクリプター:田中小鈴
衣装:小野今朝義
メイキャップ:金森恵
スチール:石原宏一
アクション・コーディネーター:柴原孝典
助監督:中村和彦
制作担当:小林由明
アシスタント・プロデューサー:藤本友徳
制作:ファム・ファタル
製作:株式会社ケイエスエス、日活株式会社
配給:日活株式会社
配給・宣伝:日活株式会社
宣伝協力:株式会社スキップ
キャスト
山崎ちひろ:井上晴美
小島篤:鶴見辰吾
広河昇:北村一輝
野上裕介:松岡俊介
馬場実:竹中直人
飯島大介
伊藤洋三郎
夏川さつき
久保田莚子
安藤泰助
高島郷
渋谷拓生
中西未晴
中山俊
村松恭子
速水今日子
前田海帆
出光秀一郎
西沢仁
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